| 韓国はいま 突然大運河構想が動き出す かけはし2009.12.7号 |
手続き・資格等を一切無視
あらゆる便法動員し工事開始 |
イ・ミョンバク大統領は07年の大統領選挙に際し、漢江、洛東江など国内大河川を連結する大運河構想をうちあげ、ニューディールに例えてみせた。しかし当選後、各界の激しい反発にあい、いったんは事実上、撤退するかのように振る舞ったものの最近になって4大河川事業への取り組みを強引に復活させようと急いでいる。だが途方もない環境破壊の問題をはじめ、懸念される課題は置き去りで、各方面からなる反対運動の広がりと激突は避けられない。(「かけはし」編集部)
4大河川事業の「窮極の本音」は何なのだろうか。最近、韓国社会世論研究所の世論調査で回答者の56・1%が「中断すべきだ」と答えた4大河川事業を押しつけようとして、政府は必死のあがきを見せている。世論の反対を押し切って強引に押しつけるものだから、違法・便法をめぐる理非は毎日のように噴き出している。11月10日と12日にはターン・キー工事区間の15工区の優先施工分のクワ入れも始まった。優先施行分というのは施工と設計を同じ会社が担当するターン・キー工事において諸般の工程のうち、急を要すると認定して優先的に施行する工事を言うが、大体にして本工事進行のための臨時事務所や進入路建設などが含まれる。
環境影響評価法違反の論難
さまざまな理非のうち、環境影響評価法違反の論難は最も核心的な問題だ。環境影響評価のいいかげんさについてはさておいたとしても、政府が4大河川事業を今年中に着工することにした過程を探ってみると、環境影響評価それ自体を当初から無視し、事業を急ぎ立てたという情況があらわになる。
手続き無視、変更に次ぐ変更
4大河川事業の費用22兆2千億ウォンのうち8兆ウォンほどを背負いこんだ韓国水資源公社(以下、水公)は10月1日、第1次ターン・キー事業の15工区の実施計画承認要請書を提出し、環境影響評価法違反の論難に火をつけた。
事業実施計画は環境影響評価が終わった後、その内容を反映して「事業施行者」が国土海洋部(省)に承認を要請しなければならない。ところが当時、「公式」の事業施行者は水公ではなく各地方国土管理庁であったのであり、これらが環境影響評価を進めていたところだった。それに先立ち9月25日、国家政策調整会議で水公は4大河川の事業者となったけれども、水公は15日以内に環境部長官に事業者変更の事業を通報すべき義務を履行しなかった。このため既存の事業施工者である地方国土管理庁が環境影響評価や評価の協議を継続して引き継いできたのに、ほかならぬ事業実施計画の承認要請は水公が行ったのだ。
ところで〈ハンギョレ21〉の取材の結果、このとき国土海洋部は水公が出した実施計画の承認要請を受け取らなかった。問題となった環境影響評価のせいではなく当時、水公が15工区の優先施工分のうちの一つである仮設事務所(工事現場の臨時事務所)実施計画だけを出したからだ。国土海洋部は「早くに4大河川事業の着工をしなければならないのに仮設事務所一つ、進入路一つと、こんなやり方で承認していては手続きも複雑だし行政力も浪費するので補完を指示した」と語った。
水公はこの指示を受け入れて工事内容に仮設事務所だけではなく仮水止め工事などを含め、工区の水路を増やして第2次として承認要請書を出した。この時が環境影響評価の協議日の2日前である11月4日のことだった。第1次の承認要請の時と同様に、環境影響評価の協議内容が実施計画には全く反映されていないのだ。それにもかかわらず国土海洋部は早ければ11月20日、遅くとも11月末までに水公の実施計画を承認し、4大河川事業の施行者を水公に変更することにした。
「実施計画の承認申請は環境影響評価とは関係なく、いつでも行うことができる。申請を受けてわれわれが検討する過程で補完の指示を行えば良いのだ。承認要請の資格を問題視しているが、水公は事業施行者となるために実施計画の承認要請を行った」。国土海洋部の解明ではあるが、まるで説得力がない。
環境影響評価を最初から念頭においていない情況は、さらにある。4大河川事業促進本部の関係者は11月13日、〈ハンギョレ21〉と行った通話で「優先工事分は第1次ターン・キー工事の落札者を決定する際、すでに基本設計と実施設計が相当部分、決定した」と語った。政府が落札者を発表したのは9月30日で、環境影響評価の協議が終わる前だった。
これと関心して目を引くのは各地方国土管理庁が出した「河川工事施行計画」告示の内容と時期だ。4大河川事業の優先施工分と関連した最初の告示は、洛東江を担当した釜山国土管理庁の10月16日付告示だ。仮設事務所設置を告げる内容だが、事業着手時期を10月と明示した。この日を前後して各地方国土管理庁は4大河川事業自体を10月に始めるという内容の告示を一斉に打ち出した。国土海洋部は10月1日に提出された水公の実施計画要請を返戻したが、その直後、国土海洋部傘下機関の各地方国土管理庁が事業開始を告げたのだ。
不思議なことは、さらに続けられる。地方国土管理庁の2番目の告示は優先工事分の着工を前にした10月27日〜11月12日、既存の仮設事務所設置に仮水止め工事を含めるなどの内容に変更される。事業着手時期も11月へと変わった。早晩、事業者が水公に変わるはずなのに、あえて地方国土管理庁が乗り出す理由が何なのか、おいそれとは理解しがたいところだ。
カギは河川法に隠されている。河川法によって国土海洋部など河川管理庁ではない機関が河川工事を行おうとすれば、地方自治体の意見を集約して施行計画を協議した後、国土海洋部から実施計画の承認を受けなければならない。けれども河川管理庁の実施設計諮問会議を経て「告示」さえ出せばよい。実際の工事に着手する時までにかかる時間がはるかに短い、ということだ。
ホン・ヒドク民主労働党議員は「事業者が水公に変更される工区は水公が出した実施計画が承認を得た後、着工をしなければならないが、このような手続きを経ないのは1日でも早く工事を始めようとする便法」だと指摘した。
低い経済性の小水力発電
4大河川事業の「正当性」を強調しようとして、事業の経済性も無視したまま押しつけもする。錦江6工区事業を担当したGS建設が9月に作成した「水利および構造計画書」を見れば、錦江扶余堡・小水力発電所は水車4台を設置して年間1万5194メガワット(メガワット時)の電気を生産することにした。
けれどもこの報告書を見ると費用=便益分析比(B/C比率)が0・79に過ぎず、経済性がないことが明らかになった。B/C比率は1を超えてこそ経済的妥当性があると認められる。このような結果は小水力発電所が設置される扶余堡の高さが4メートル(有効落差2・3メートル)で大形ダムの25分の1に過ぎず、生産できる発電容量自体が少ないからだ。
事業を担当した企業体でさえ経済性がないと認定した小水力発電所を政府は2092億ウォンをかけて4大河川に作られる堡16カ所全体に設置する計画だ。国土海洋部でさえ「小水力発電所建設に100ウォンを投資した時に生産される電力は25ウォン分ぐらい」だと認めた経過がある。それなのにこの事業を強行する理由を政府は「4大河川整備事業を通じてクリーン・エネルギーを生産するという象徴性のゆえ」だと説明する。河床のしゅんせつや堡の設置を核心とする4大河川事業を「親環境緑色事業」として飾り立てようとして数千億ウォンを投入するという事実を自認したわけだ。
4大河川以外はすべて別扱い
政府の主要政策の課題として選定された「水質改善事業」も予算配分では4大河川事業に押しきられる情況が至る所で現れる。代表的事例が、都心のひからびた河川や覆蓋川を生態河川に復元させることにした「清渓川+20プロジェクト」だ。この事業は昨年12月の大統領業務計画報告、今年初めの緑色ニューディール推進計画報告などで政府の主要政策課題として選定された。
4月、大邱・大田市、京畿儀旺・議政府市、江原春川市、忠北堤川・忠州市、忠南牙山市、慶南馬山・統営市が協約を結んだ。「都心のふさがれた河川を清渓川のように開かれた水路によみがえらせ」「グリーンの生活空間を造成し、国家的課題である緑色成長の先導的役割を果たすこと」というのが協約書の主要内容だ。これに伴い政府は来年から2013年まで国費2982億ウォンなど4446億ウォンを投入することにした。
小川・せせらぎ再生予算は全額削減
ところで環境部(省)が来年の予算案で策定した事業費は全部で48億ウォンにとどまった。大邱市は40億ウォンを要求したけれども3億ウォンだけが配分され、70億ウォンを申請した京畿議政府市には5億ウォンだけが回ってきた。他の地域に配分された予算も申請規模よりも大幅に削られた。
これについて環境部は「事業推進の日程上、来年投入される費用は設計費だけだが、事業規模別に2億〜5億ウォンならば充分だ」「他の事業よりも予算を多く配分したのに不満が出てくるのは、各地方自治体が予算を少しでも獲得しようと過度に申請して削られたから」だと説明した。けれども議政府市は「来年10月に着工予定なのに、設計と施工を同じ企業体が担当するターン・キー方式で事業を進めようとすれば現在、配分された予算だけでは足りない」と反論しつつ「最小限10億ウォンは必要だが、環境管理公団に事業を委託し、公団の予備費で不足分の費用を充当した後、追加更正予算を申請するほかない」と語った。他の自治体の事情も同様だ。
国政課題に含まれた環境部の「小川・せせらぎ再生事業」は申請した来年予算10億ウォンがそっくり削られた。この事業は「4大河川再生マスタープラン」によって2012年まで500カ所を復元する予定だと4月27日にイ・ミョンバク大統領にまで報告された経過がある。
平均川幅2メートル未満、河川の長さが500メートル未満の小川・せせらぎは法的に政府の管理対象ではないけれども、生活下水、家畜の糞尿、ゴミなどによって汚染が深刻で、河川本流の水質を改善しようとするならば上流の小川・せせらぎをまず管理しなければならない、と指摘されてきた。
このため環境部は4大河川流域の環境庁、環境団体、自治体と共に小川再生推進事業団を構成して実態調査から浄化・復元まで体系的に小川・せせらぎを管理する計画を立てた。けれども予算案編成権を握った企画財政部(省)は小川・せせらぎの明確な法的定義がないうえで、実態把握もできず、各種の水質改善・生態河川復元事業と差別性がないなどの理由で環境部が申請した予算を残らず削った。
このような現象は事業自体が急を要さないせいとも見ることができるが、限定された予算を4大河川事業に集中的に投入するものだから、いくら「主要政策課題」だとか「国政の課題」だと言っても優先順位からはじき出されるほかはないとの解釈が可能だ。
工事を急ぐ理由は次の選挙
水質改善、緑色ニューディール、生態河川復元などを強調しながらも「名分」と一致する他の事業は無視したまま、なぜこれほどに4大河川事業を急ぐだろうか? 野党や4大河川事業に反対する市民社会団体などからは「4大河川事業を後戻りすることのできない『既定の事実』に仕立て、遂には強行しようとする意図」だと疑心を抱く。
事実、現在始まった仮水止めや仮設事務所の設置工事は本格的な4大河川事業と見るには無理がある。またすぐにも寒さのために工事をすることのできない「冬季工事中止期間」が迫っているため、今工事を始めても来年2月末〜3月初めまでは本格的な事業を始めがたい。
パク・チャングン関東大教授(土木工学)は「ビニールハウスを建てて工事をすることもできないし、今着工しようが来年に着工しようが工学的には同じことだ。けれども政府がこれほどまでに急いでいるのは政治的背景が作用しているとしか考えられない」と語った。
しかも4大河川事業を2012年までに完工するという政府の計画も現実性はほとんどないとの指摘が出てくる。しゅんせつ作業にのみ限ったとしても寒さや台風などの気候問題のゆえに1年に6〜7カ月ぐらいしか進めることができず、骨材採取だけで40年はかかるだろうとの主張もある。土地の補償に関わる各種の民願(行政への要求)や住民の反発、広がる世論の反対などを考慮すれば2012年の完工は「夢のような話」だというのだ。
ひたすら「イ・ミョンバク印」4大河川事業の写真1枚のために
ハンナラ党嶺南地域のある重鎮議員は「イ政権でも4大河川事業が2012年に完工するだろうと信じている人はほとんどいない。2012年の総選挙と大統領選挙の際に「イ・ミョンバク印」だと示せる写真1枚だけ撮ることができればよい。それが4大河川事業の本質」だと語った。けれどもその時まで写真1枚も撮ることができなかったり、反発が一層大きくなれば4大河川事業は、イ政権の「泥沼」となりかねない。結果は誰も分からない。明らかなことは4大河川事業を心配し反対する声が次第に大きくなっているという事実だ、ただ一つだ。(「ハンギョレ21」第786号、09年11月23日付、チョ・ヘジョン記者)
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