| いま空港で何が起きているのか かけはし2009.6.8号 |
四月七日、「いま成田空港で何が起きているのかプロジェクト」(略称:成田プロジェクト)がスタートした。呼びかけたのは、浅井真由美さん(『労働情報』編集長)、大野和興さん(地球的課題の実験村共同代表)、梶川凉子さん(成田バスツアーの会)、鎌田慧さん(ルポライター)、白川真澄さん(『ピープルズ・プラン』編集長)、高木久仁子さん、高橋千代司さん(三里塚一坪共有者)、中里英章さん(成田バスツアーの会)たちだ。「成田空港の暫定滑走路の供用中止を訴えます」共同声明運動や成田バスツアーの企画など、三里塚闘争を粘り強く取り組んできた。
成田プロジェクトは、10・22成田空港平行滑走路供用強行に対して「人権・生存権や環境、安全性の観点から問題点を明らかにし、声明を出したり国土交通省や成田空港会社に申し入れるなどの運動」の取り組みをめざしている。
さらに、「成田空港の現状や問題点を広く市民に知らせるための映像表現やネットを使った活動」、「航空機事故、騒音・低周波被害、環境汚染、グローバル社会のなかでの空港といったテーマについての研究会・学習会」を準備している。成田プロジェクトに参加しよう。 (Y)
成田プロジェクト呼びかけ
成田空港では、B滑走路(暫定平行滑走路、2180メートル)を北に延ばして2500メートルにする計画が急ピッチで進んでいます。延伸工事は住民が慣れ親しんだ入り会い地「東峰の森」を破壊して進められ、成田国際空港会社は当初の予定よりも半年早く今年10月には供用を開始するとしています。
わたしたちは、成田空港をめぐり何が起こっているかを検証し、社会に訴え、問題解決に取り組むプロジェクトの発足を広く呼びかけます。当面、次のような取り組みを進めたいと考えています。
(1)B滑走路の2500メートルへの延伸とその10月供用に対して、人権・生存権や環境、安全性の観点から問題点を明らかにし、声明を出したり国土交通省や成田空港会社に申し入れるなどの運動を行ないます。
(2)成田空港の現状や問題点を広く市民に知らせるための映像表現やネットを使った活動を行います。
(3)航空機事故、騒音・低周波被害、環境汚染、グローバル社会のなかでの空港といったテーマについての研究会・学習会を開催します。
もしB滑走路が2500メートルに延伸されるならば、ジャンボのような大型機が離着陸することになり、空港会社は年間の発着回数を2本の滑走路を合わせて現在の20万回から当面は22万回に、最終的には30万回に増やすと言っています。B滑走路の南端には農を営む人びとが暮らしており、いっそうすさまじい騒音と排気ガスが、さらにはさまざまの事故の危険性がその人びとを襲うことになります。これは、現地で生活する人びとに対するあからさまな人権や生存権の侵害であると言わねばなりません。空港会社は、公団を引き継いでいるわけですから、公団が現地や周辺の住民、反対同盟と取り交わした約束や協定を誠実に守らなければならない立場にあります。そうした約束を反故にしながら、B滑走路の延伸を強行し、また全国の一坪共有者に権利返上を求める動きを強めていることは、許しがたい行ないです。
さらに見逃せないのは、空港会社が3月にA滑走路で起きた米フェデックス貨物機の炎上事故を理由にして、大型機が飛べるようにB滑走路の延伸を早め安全運航につなげると言っていることです。初めての死者を出したこの事故は、開港前から問題視されていた空港立地の地理・気象条件そのものを根本的に再検討するべき必要性を示しています。こうしたことをまったく顧みず滑走路の延伸と発着回数の増大だけを追求するのは、安全性無視もはなはだしい態度です。
いま地球温暖化をはじめ地球環境問題が重要な課題になっているとき、石油燃料を大量消費してCO2などの排気ガスを撒き散らす航空機をどんどん増やしてよいのでしょうか。こうした視点からも、空港の拡張・新設や滑走路の増設・延伸が問い直されるべきです。
私たちは、成田空港をめぐる多くの矛盾や問題点があらためて浮き彫りになっている現在、現地で暮らす住民、空港利用者を含む市民、社会運動やNGOに関わる人びとが一緒になって成田空港のもたらす問題を考え、社会に広く訴えるための活動を始めたいと思います。みなさんの積極的な参加と協力を呼びかけます。
【連絡先】〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-13-5 影 山ビル 協同センター・労働情報気付 ファクス:03-6675-9097
成田プロジェクトが学習会
「元運航乗務員からみた
フェデックス事故」
元航空連副議長
村中さんが報告
五月二十七日、成田プロジェクトは、ピープルズプラン研究所で村中哲也さん(元航空連副議長・元全日空運航乗務員)を講師に迎えて学習会を行った。テーマは、「元運航乗務員からみたフェデックス事故」。
三月二十三日、成田空港A滑走路で米貨物航空会社フェデックス機MD11型が着陸に失敗し、大炎上、乗員二人が死亡する大事故が発生した。テレビ報道では事故シーンが放映され、「成田空港で初めての事故死亡者」などという見出しで世界的にも衝撃が走った。事故前の空港周辺の風速は、平均十三・九メートル、最大瞬間風速は二十・一メートルの突風が発生しており、気流が乱れやすく、風向きや風速が急激に変わるウインド・シアが発生していた。成田空港では春と夏に頻繁に発生していた。ウインド・シアに巻き込まれ事故に至ったと十分に考えられる。事故後、国土交通省運輸安全委員会、米国のNTSB(国家運輸安全委員会)が共同で事故の原因調査に入っているが、その結果報告はまだ公表されていない。
それにもかかわらず森中空港会社社長は、「フェデックス機事故によって二十三日は、各国の航空機170便が欠航、他空港に行き先変更となってしまい膨大な損失となってしまった」から北伸工事を十月までに完成させ、二〇一〇年三月供用予定だったのを半年前倒して十月二十二日に供用強行することを明らかにした。これは明らかに事故を利用した営利優先主義である。
成田プロジェクトは、空港の過密運航が増え、人命・安全軽視が強まっている状況下、フェデックス機事故に焦点をあて、成田空港が抱える問題点を浮き彫りにし、今後の運動に生かしていくために設定した。
事故発生のメカ
ニズムと空港問題
村中さんは、冒頭、航空機事故発生のメカニズムから取り上げ、「クリティカル・イレブンミニッツ(起こりやすい魔の11分間。離陸時3分と着陸時8分が事故が起きやすい)という言い方がある。事故発生を統計から見て時間軸で言ったものにすぎないが、航空機が非常に不安定な状態のことだ。フェデックス機事故の映像を見れば、明らかにウインド・シア(気流が乱れやすく、風向きや風速が急激に変わる)に起因しているなと思われる。この現象は上空ではしょっちゅう発生しており、ウインド・シアは成田空港だけで起きている現象ではない。逆説的に言えば、今回の事故の結果から起きないような空港設計をいかにしていくのかとして問題設定していくべきだ」と提起した。
第二のアプローチとしてMD11型機そのものについて分析した。
村中さんは、「MD11型機は軽量化、抵抗減のために機体が下降傾向になる設計だ。さらに〇・二秒ぐらいの操縦遅れが生じオーバーコントロールが発生する欠陥機種だと言われている。飛行機は、空気の中を動かすことによる複雑な難しさを持っている。だからこそ安全対策を重視しなければならないが、設計・事業経営は経済優先思想によって軽視されてしまう傾向がある。つまり、機体の軽量化のやりすぎ、ハイテク技術革新を口実にして省力化が進行してしまう。事業経営では安全基準の緩和、飛行訓練時間減少、労働条件の改悪などによって乗務員の負担が増し、これらが総合して空の安全が脅かされていくのだ」と強調した。
第三に成田空港の存在そのものについて検証した。
村中さんは、過密な運航と危険性を増す空域問題、国際的な空港建設基準の安全性、利便性、セキュリティーなどから分析した。
さらに「空港は、排気ガス、騒音など環境問題も非常に重要だ。そういう意味で二十四時間空港は環境保全との関係で見直す必要がある。周辺地域・住民との共存も必要だ。地域の発展に貢献できるか問われる。そういう観点から成田空港は、地域の住民の了解ぬきで着工というボタンの掛け違いが今もって改められていない。住民との摩擦が生じれば、航空労働者にとっても影響があり、私たちはほんとに困る。だから国際線用滑走路が一本しかなく、誘導路もたくさんあって危険だ。こういったことは了解ぬきに着工し、使っていることの反映だ。三十年以上もボタンのかけ違いが続いており、それをもとに戻す必要がある。また、巨額な国税を投入し、多くの人々が関与してきた。だから軽々しく空港廃止は言えない。こういう両面の矛盾を真正面にすえて地域、利用者、労働者は話し合う必要があり、理解を深めていくことができるのではないか」と問題提起し、新しい選択肢を模索していことが求められていると結んだ。
問題の根源にあ
る不平等協定
討論では、東峰現地から参加したらっきょう工場の平野靖識さんがフェデックス機事故時の状況を報告した。
また、「事故直後は、三分以下の間隔で暫定滑走路に着陸してくる飛行機が次々と降りてきた。成田空港は、カラっ風はしょっちゅう吹いているものだ。だけど事故が起きた後も強風は続いていたのだから、同じような事故が起こるのではないかと非常に怖かった。らっきょう工場では九人が働いていたが、みんな同じような気持だったのではないか。島村家の人たちも『未曾有の事故が起きたのだから空港運航を停止すべきだ。原因がわかるまで閉鎖すべきだ』と言っていた。私もそのように思った」と批判した。
最後に村中さんは、成田空港会社が三十万回発着回数を増やそうとしていることに対して、「問題の根源は、日米航空協定で日本がほとんど丸呑みしてきたことだ。不平等協定である。社会の様々な要請からすれば、飛行制限する検討が求められている。ほとんどアメリカの言いなりになるのではなく、協定破棄の姿勢も必要だ」と述べた。
司会の大野和興さんは、「村中さんから地域、利用者、労働者の話し合いのテーブルについて提起があった。それは第二次シンポジウム的なものが必要なのかなと感じた。新たな課題として継続して論議していこう」とまとめた。 (Y)
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