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                           かけはし2008.4.14号

すべて「期限切れ」の福田政権

大衆運動の力で政治の流れを変える時



政権運営能力
を失った福田

 福田政権の危機は、第169通常国会の中で現れた政権運営能力の喪失として、日々われわれの眼前で深まっている。昨年七月参院選での自民党の歴史的な大敗と参院における与野党逆転、それに続く安倍極右国家主義内閣の自壊は、日本の議会政治のあり方を大きく変化させた。
 「野党との協調と対話」を掲げた福田政権は、一方で安倍前政権の改憲強行突破方針を修正しながら、参院で第一党を占める小沢・民主党との「大連立」の道を模索することになった。いったんは小沢代表が受け入れた「大連立」が民主党内からの異論の噴出によって頓挫した後、福田内閣の迷走は深まるばかりであった。テロ特措法の期限切れで、アフガン戦争支援のためにインド洋・ペルシャ湾に派遣された海上自衛隊は一時、撤退を余儀なくされた。再び、インド洋に海上自衛隊が送られたのは、新テロ特措法=「洋上給油新法」を実に五十七年ぶりの衆院再議決という強行手段によって成立させて以後となった。
 守屋・軍産疑獄、イージス艦「あたご」が漁船「清徳丸」を沈めた事件、在沖米兵の少女への性暴力、横須賀基地を母港とするイージス艦「カウペンス」の乗組員がタクシー運転手を殺害した事件など、グローバルな日米軍事同盟の強化の根幹を揺るがす事件も相次いだ。

自民党からも
見離される

 すべて「期限切れ」。これが福田政権を特徴づけるキーワードである。
 一月に召集された第169通常国会では、「大連立」構想の破綻以後「政権打倒」に焦点を定めた民主党の対決姿勢によって、福田政権は何も進められない状況に陥った。三月十九日に任期切れとなった福井俊彦日銀総裁の後任人事は、民主党に相次いで否認され、「空席」という異例の事態となった。三月三十一日には道路特定財源の暫定税率が期限切れとなり、ガソリン値下げがスタートした。
 福田首相は暫定税率期限切れ直前の三月二十七日には緊急記者会見を開き、道路特定財源を二〇〇九年度から全額「一般財源化」し、十年間で五十九兆円を投入する道路整備中期計画を五年間に短縮して策定し直すなどの新法案を発表した。しかしこの新方針は肝心の与党・自民党からは事実上棚上げになってしまった。
 年金問題に関しても、五千万件にのぼる「消えた年金」について自民党が昨年の参院選の公約で「一年以内にすべての名寄せを完了」としたにもかかわらず、なお未解明記録が四割以上の二千二十五万件もあることについて、福田首相は四月七日の参院予算委員会の審議で「誤解を与えたことについてお詫びする」と「謝罪」せざるをえなかった。
 こうして福田自民党政権は、もはや内閣からも与党からも見離され、いつ倒れても不思議ではない状況に直面している。福田と町村官房長官の関係もまったく疎遠なものであり、安倍に続く「官邸崩壊」現象も指摘されている(「週刊朝日」4月11日号)。小泉元首相は、数カ月以内に「なんとか風」が吹くと語り、サミット前解散の可能性も指摘した。福田内閣の支持率は、四月五日、六日に行われた毎日新聞の世論調査では前月比六%も下落し、二四%となった。他方不支持率は前月比六%上昇し、五七%になっている(「毎日」4月7日朝刊)。

自立的運動の
流れを作ろう

 われわれはこの政権末期症状をどのように捉えるべきなのだろうか。メディアは議会制政治システムの劣化と危機を煽り、議会を正常なルールにのっとって運営する必要性を強調している。
 サブプライムローンの破綻に端を発する米国発の金融恐慌は確実に全世界に波及し、日本経済もまた深刻な不況局面に突入しようとしている。それに加えて石油などの資源や穀物価格の暴騰により、食料品をはじめとした物価高が人びとの生活を直撃している。この経済危機に立ち向かうためにも強力な政権の確立と政策展開が必要だというのがメディアの強調するポイントであり、その点は民主党もまた同様である。
 しかしわれわれはこの資本主義の議会政治システムの危機を「正常化」することに関心はない。労働者・市民は、議会と選挙を無視することはできないし、この「ねじれ国会」で作りだされた一定の空間を活用することも必要である。だがわれわれは「自民・民主」の二大政党システムの枠組みの中での「政権交代」、あるいは「政界再編」の展望に期待をかけるのではなく、今や否定できない現実性をもって登場しているグローバル資本主義システムの危機の中で、労働者・市民の自立的大衆運動の掘り起こしとその結合、それを基礎にした左翼的オルタナティブの形成に向けた着実な努力を積み上げていくことを自らの課題としていく。戦争・貧困・環境破壊に対する抵抗を、七月G8洞爺湖サミットに向けて結びつけていくことは、そのための出発点である。 (4月8日 純)


読書案内
『サブプライム問題とは何か』
春山昇華著/宝島社新書/700円+税
――アメリカ帝国の終焉


 昨年のアメリカのサブプライムローン(低所得者向けローン)の破綻は世界同時株安、欧米の金融機関の倒産、関連商品に投資していたファンドの解散をもたらした。原油や穀物市場の高騰もこの問題に関連している。『エコノミスト』など経済雑誌でサブプライムローン問題の特集が組まれた。住宅ローンが証券化され、全世界の投資家がそれにむらがった」と解説されているが、日本の住宅ローンではそんなことはないので実感できず、理解しきれないでいた。
 本書はサブプライムローン問題がアメリカ政府の政策の結果作り出されたことを様々なデータを駆使して明らかにしている点で分かりやすかった。

借金がある限り
税金控除の特典

 「サブプライムローンは元々、ローンの遅滞履歴があるような低所得者向けのローンで、通常金利に三%ほど上乗せするといった高金利で設定している。金利改定後、一〇%になった例もある」。
 住宅バブルが続いていれば、買い替えによって、上乗せして資金が得られる。その時ローン会社は自動車や電化製品などを住宅ローンといっしょに組ませた。そして、その金融商品化されたローンは世界中の投資家に売却された。それらの仕組み債は格付け会社によってトリプルAという最高級の格付けがされた。
 アメリカは移民の国だ。移民にとってアメリカンドリームは一戸建ての住宅を持つことだ。それに応えるために、政府は政府系住宅金融機関を設立して、民間金融機関から住宅ローンを買い取る機構にした。民間金融機関は安心して個人に住宅資金を貸すことができた。政府は持ち家推進のために、住宅優遇税制を行った。控除できる上限はローン金額一億千五百万円まで、中古住宅でも平均して二千三百二十三万円だという。しかも、控除期間は無制限。借金がある限り死ぬまで控除できる。住宅ローンの金利支払い額が多ければ多いほど、節税効果が大きくなっている。そして、「今を楽しむ」ために借金をいとわないという国民性もローン地獄を作り出した。
 「ローン債権の転売という金融技術の発達により、証券会社の手によって、『どうせ他者に転売するから破綻しても構わない貸し出しに』なってしまった」。
 金融機関をきちんと規制していれば、今回の問題は起こらなかったかもしれない、と著者は言う。しかし、二〇〇〇年のITバブルの崩壊、〇一年の9・11同時多発テロ、〇二年の不正会計疑惑と立て続けてアメリカ経済を揺るがす事件が起き不況が訪れた。製品への注文が激減し、工場の機械は停止した。そこで、アメリカのFRBは超低金利政策を行った。金利を六・五%から戦後最低水準レベルの一%に引き下げた。住宅ローン金利も急低下した。住宅販売は増加した。不動産市場へものすごい勢いで資金が移動した。空前の住宅ブームが起きた。

明らかになった
商品化証券の暗部

 世界では二〇〇〇年のITバブルの崩壊によって、世界中の工場が止まり、大規模なリストラが起きた。資金需要が一気になくなり、投資先がなくなり、カネ余りが起こった。そのだぶついた資金がアメリカの不動産へと向かった。ユーロ高ドル安でヨーロッパやラテンアメリカの金持ちがアメリカの不動産を買いあさった。世界中の投資資金がアメリカに流れ込んだ。
 二〇〇五年に「浮かれ、悪乗り、非常識」の住宅バブルはピークを迎えた。しかし〇六年秋以降、中古住宅は売れず、売れない住宅が在庫として急増し始めた。住宅関連株価も下落し始めた。十二月に、世界的巨大銀行HSBCの株価が暴落した。アメリカ住宅事情の悪化で、不良債権が増加したと発表した。次に住宅ローン専門銀行が破綻した。二〇〇七年二月、宅建業者がついに白旗をあげ、住宅バブルが終わったことを明らかにした。
 八月一日から十七日の「驚愕の十七日」がやってきた。仕組み債と呼ばれる金融商品は世界中にばらまかれていた。隠されていた商品化証券の暗部が万人に明らかになった。世界で一気に同時株安が起き、何兆円もの負債を抱えて大手銀行が破綻した。
 今後、住宅ローンを抱えた低所得者は担保となった住宅が競売にかけられ、売却されてしまう。サブプライムローンの破綻によって、百七十万人以上の家族が家を失い、テント生活を余儀なくされるのではないかと言われている。
 アメリカ帝国が崩壊するのかどうかは、世界経済を支えていたアメリカ人が借金して世界の物を買い続けることができる力が残っているかにかかっている。さらに、資源大国だったアメリカは現在、ブラジルから農産物を、中東から原油、カナダから天然ガスを輸入している。資源価格の高騰がアメリカ帝国の崩壊を作り出す要因になるかもしれないと著者は指摘する。 (滝)




豊田直巳写真展in MARU
イラク・戦火の子どもたち
子どもたちは見ていた
米英軍の爆撃を、占領を、銃口を


b 4月18日〜30日、19日夜はライブにつき休み   
b Curry&Bar MARU 
火〜金 11:30〜15:00 17:30〜20:00 土・日11:30〜20:00 月休
西武新宿線 東村山駅下車 西口徒歩1分
東村山市野口町1-11-3 tel&fax 042│395│4430*入場無料
b 車座&署名会20日(日)18:30〜  参加費〜1杯付1000円
b 豊田直巳 東村山市在住 日本ビジュアルジャーナリスト協会会員
『イラク 爆撃と占領の日々』(岩波書店)『子どもたちが生きる世界はいま』(七つ森書館)『大津波アチェの子供たち』『パレスチナの子供たち』(第三書館)

bhttp://www.ne.jp/asahi/n/toyoda/
bhttp://senka-kodomotachi.cocolog-nifty.com/blog/4/index.html


コラム
沖縄戦「軍命」裁判

 アジア太平洋戦争末期の沖縄戦で、軍指揮官が「集団自決」を命じたとした大江健三郎氏の「沖縄ノート」(岩波書店)や故家永三郎氏の「太平洋戦争」(同)の記述が名誉毀損にあたると元戦隊長らが出版差し止めを求めていた訴訟の判決が大阪地裁であった。判決は原告・元座間味島戦隊長梅沢裕元少佐と元渡嘉敷島戦隊長赤松嘉次元大尉(故)の実弟秀一氏の訴えをすべて退けた。
 沖縄戦での軍の関与による凄惨な「集団自決」=強制集団死の発生は、私たちの常識的理解であり、学界の通説であった。「生きて虜囚の辱めを受けず」――捕虜になることを厳しく禁じ自死を強制した日本軍は、攻撃用と自決用の二つの手榴弾を配り、泣き止まない子供を殺し、「スパイ容疑」で住民たちを連行しては虐殺した。
 法廷では主張の矛盾が次々と露呈し、原告らは劣勢に追い込まれた。驚くべきことに、梅沢が「沖縄ノート」を読んだのは、提訴からずっと後だった。赤松弟にいたっては、生前兄と「集団自決」について話したこともなければ、裁判=名誉回復を頼まれたこともないと証言した。彼らを煽り利用したのは弁護士徳永信一や「靖国応援団」ら札つきの右派集団である。「慰安婦問題」「南京大虐殺」「集団自決」は彼らにとって先の戦争での「恥辱三点セット」であり、並々ならぬ執念で取り組む最重要政治課題なのである。
 歴史隠蔽の教科書検定、真実をねじ曲げる極右言論に、沖縄県民の怒りが爆発した。昨年九月の「十一万人集会」を前後して元日本兵や住民たちが、苦しみ悩んだ逡巡の末に、ようやく重い口を開き始めた。自らの体験と記憶を踏みにじられることへの激しい反発、沖縄戦の実態が偽造される危機感がそうさせた。
 写真家の森住卓氏は現地を取材。原告梅沢に関する以下の証言を紹介している。「米軍上陸後、朝鮮人慰安婦を連れて壕を転々と逃げ回り、各部隊を解散。本人は自決もせずに生き延び、米軍に捕まったときも慰安婦と一緒。住民から石を投げられ、米軍に保護されながらトラックに乗せられ連行された」(民医連「いつでも元気」07年12月)。そんな梅沢が八七年、突然座間味を訪れた。当時の兵事主任の弟に酒を飲ませて泥酔させ、「軍命否定」の念書に押印させていた。これを今回法廷に持ち出したのだ。なんとも姑息ではないか。だが梅沢が本当に消したいのは自身の「軍命」などではなく、指揮官に値しない破廉恥な「過去」なのかもしれない。
 家族が家族を殺しあう――沖縄戦で繰り広げられた阿鼻叫喚の地獄絵は、恐怖と絶望で住民を支配した日本軍の「軍官民共生共死」方針の結果である。原告らの控訴を許さず、裁判の完全勝利を。       (隆)


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