| 都立駒込病院を守れとシンポ かけはし2008.3.10号 |
二月二十三日、東京・文京区民センターで「都立駒込病院を存続・充実させ地域医療を守るシンポジウム――守れ!駒込病院」が開催された。シンポは細井智駒込病院分会長の「十二月二十日に都立病院を守る会を設立してから約二カ月ですが、文京、荒川、足立、北の四区で進めてきた署名は一万千九百七十筆になりました。……都が進める民営化、PFIに反対する運動をともに盛り上げていこう」という開会あいさつで始まった。
最初に、東京の保健・衛生・医療の充実を求める連絡会代表の四谷信子さんは憲法二五条の生存権を引用しながら、来賓のあいさつを行った。「二五条は占領軍ではなく日本の国会議員が人間らしく生きる権利としてつくった……カネがないといって福祉を削っているが、米軍へのおもいやり予算や道路特定財源とかいらない物はいっぱいある。国も石原都政も最初からその気がないだけだ」。
学校給食の職場で働いていたことのある文京区議が五人の区議が今回のシンポに参加していることを報告するとともに、給食の民間委託がいかにひどいものであるかを実際の経験にもとづいて明らかにした。
守る会の大利英昭事務局長が、十二月の守る会設立以後の活動報告と署名の提出を予定している五月には、都議会に圧力をかける意味でも都庁包囲行動を行うという方針を提起した。
その後メインのシンポジウムに移った。パネラーは都立駒込病院の看護士の柳美智子さん、過労死弁護団の一員で全国で進められているPFIや民営化の実態を暴露する本を著した弁護士の尾林芳匡さん、地域医療・老人医療の専門家で足立区で診療所を開いている増子忠道さんの三人。
柳さんは「都立病院の民営化・PFIは、十二にある都立病院を大企業へ売り渡すことに他ならず、これを許すと病院の統廃合で七千人が合理化され、最初の三年間で四千人が削減される。これが進めば当然にも病院だけではなく医者も看護士も減り、都民は行きたくとも病院に行けなくなり、出産できる病院がなくなる」と医療現場で働いている実感をまじえながら語った。
オリックスなどが
医療を食い物に
尾林弁護士は資料を手にしながら説明した。
総務省が出している民営化・PFI指針ともいうべき「公立病院改革ガイドライン」は、@ベッドの空いている病院の統廃合A地方独立行政法人化B住民排除の三点で構成されている。@は病院を資本のビジネスチャンスとして差し出させるということだ。東京は全国の自治体で一番財政が豊かであり、石原の「カネがない」と言うのはウソであり、現にオリンピックに一千億円以上の財政支出を予定している。Aの地方独立行政法人化とは民営化・PFIという形で都民の財産を東京都から切り離し、利益が出る部分は資本と財界にくれてやり、もうからない部門は都民に負担増として押しつける方式・機関である。Bについてはすでに病院の民営化・PFIが導入され、悲惨な状況になっている高知、近江八幡、富山の氷見病院などを具体的な例に出しながら明らかにした。
増子医師は世界の医療の流れを説明した。
「世界的に医療のすう勢は公立化に向かって進んでいる。ヨーロッパの病院はすべて国立・県立・市立という形の公立で、誰もが病院に行けるように保険が適用されるシステムとなっている。逆にアメリカはほとんどの病院が民間で医療保険もない。金持ちは高額の保険に加入し、どんな病院にも入院することができる、しかしカネのない『貧乏人』は治療も受けられず、薬も飲めないというのが実態だ。そのアメリカ方式をいま政府や資本、そして石原が医療の規制緩和として押し進めているのだ」。増子医師はさらに、現在の診療報酬のあり方が規制緩和の流れを側面から支えていることを病院経営の経験から告発した。
その後、参加者がパネラーに質問するという形で討論が行われた。その中で明らかになったのは、全国でPFIの受け皿に立候補しているオリックス、三菱商事、日本生命などはオリックス宮内を中心とする「規制緩和小委員会」の事務局を構成している企業であり、自らが医療を食い物にする計画を立案し実践していることが明らかにされた。また開業医に有利な診療報酬のあり方が、多くの病院が救急医療や小児科などから撤退せざるをえない根本原因である、とも暴露された。命に直接かかわる問題がテーマであったため、参加者は最後まで熱心に討論し、これからも署名も含めてともに闘っていくことを確認した。 (D)
読書案内
週刊「東洋経済」(2月16日号)
「雇用漂流」派遣、パート、偽装労働―非正規ニッポン
週刊「東洋経済」(2月16日号)が派遣、パート、偽装労働―非正規ニッポンをテーマとした特集「雇用漂流」を組んでいる。
派遣労働者数は前年度比二六%増の約三百二十一万人だ。派遣業界規模は二〇〇二年に二兆円を超え、毎年一兆円規模で増え〇六年度は前年三四%増の五兆四千百八十九億円となった。いかに派遣業が日本企業を支えるものとなっているか明らかにしている。非正規雇用は、全従業員の三割以上、若者に至っては四割近くになっている。
そしてその実態は、「グッドウィル、フルキャストの違法行為が明らかになる中で、日雇い派遣の実態も明らかになった。低賃金、当日まで働く場所がわからない、教育機会もゼロ、ひとたび日雇い派遣で働き始めると、その境遇から抜け出せない――それはもはや『働き方の多様化』だけではすまない問題だ」。
見出しの一部を紹介しよう。
偽装請負 松下電器、日亜化学…疲弊する現場から悲鳴、でも企業は責任を問われない
この特集で一番腹が立ったのは、いったん偽装請負を認め、直接雇用を行うような振りをして派遣に切り替えて、労働者を切り捨てている企業の汚いやり方だ。それもトヨタやキャノン、松下産業といった大手大企業が平然と行っていることだ。
発光ダイオード大手の日亜化学工業(徳島)は、請負労働者が組合を作って闘った結果、「三年以上働く請負労働者について採用選考を経て直接雇用する」としたが、申告した請負労働者たちの業務は次々と打ち切られ、肝心の採用選考でも筆記試験こそ受かっても面接では一人残らず落とされた。県労働委員会も会社側と労組との合意に一役買っていたが会社側は是正を行うとしていない。
トヨタ自動車系の部品会社であるジュコーは、期間工として直接雇用に踏み切った。しかし、契約期間は一カ月短縮され三カ月、これまで五万円出ていた契約満了報奨金がなくなり、契約更新可能者は七割にされた。期間工から正社員への道は示されていない。
キャノン宇都宮光学機器、「期間社員になって変わったのは制服だけ。不安定な立場は何も変わらない」。
松下プラズマディスプレイにおいて、偽装請負を申告した請負労働者が期間工とされ、五カ月で雇い止めされた。これに対して、裁判で争ったが、昨年四月、大阪地裁は「偽装請負状態で働かされていたことは認めたが、派遣先が申し込み義務をしない場合、申し込みをしたとはみなされない、その後期間工になったから、違法状態はなくなった。期間工は契約を更新する義務はなく、雇用契約関係は問題なく終了した」と職場復帰を認めない会社のやりたい放題を認めるひどい判決を下した。
以上紹介されているのは氷山の一角だ。資本の横暴を許さず、労働環境の改善の道は、現場での労働組合の組織化と団結の力によって跳ね返していくと同時に、労働者派遣法の抜本的改正がいかに重要化を物語っている。 (滝)
コラム
入院日記U
右翼の介入、公安の面割り、機動隊の弾圧。「建国記念の日」、騒然とした空気のなか毅然と貫かれた今年の反紀元節闘争。一刻も早く伝えようと、その夜私は遅くまでパソコンに向かっていた。
翌火曜日。朝食がのどを通らない。体調がおかしいと感じたが、とりあえずは家を出た。ところが異変は深刻に。止まらない下痢、悪寒。本来ならここで早退するのだが、この日はそれができない予定があった。なんとか定時まで耐え、渾身の力を振り絞って自宅にたどり着き、そのまま床に伏した。
翌日は休み、市販のかぜ薬を飲み続けた。しかし回復せず夕方、外来終了間際の病院へ。年始に連れ合いが同様の症状で駆け込んだ急患窓口。勝手を知っていた。
「入院しますか」――医師の言葉に耳を疑った。体温は四〇度近く。そのまま病室へ案内された。その夜から、点滴と検査の生活が始まった。自宅の目と鼻の先、しかも着の身、着のままで。
病室の光景は、浮世とは別世界である。過去二度の入院はいずれも専門病院。他の患者の病状はすぐに理解できた。だが今回は総合病院。カーテン越しに漏れ聞く会話に思いをめぐらせる。古く硬いベッド。薄暗い廊下。空きばかりが目立つ大部屋。スタッフたちは「もうすぐきれいに、近代的になりますよ」と口を揃え、建設中の新病棟をPRしていた。
院内ヒエラルキーもまた旧態依然だった。肝臓を患った男の不満は、事務的で冷淡な看護士の態度。かいがいしく下着を換えるヘルパーに怒りをぶつける。毎回愚痴を受け止め慰める女性の、東北訛りの大声が響く。
全治三カ月の重傷は組関係者。ひと目でわかる面会集団が廊下を闊歩。「手術後はできるだけ動くように」と何度も注意された若者。スナック菓子片手に深夜までゲームに熱中していた。
点滴が終わり、下痢が止まりかけた入院四日目。朝から気分が良かった。「今日、退院しますか」。世襲の若い医師が回診で言った。窓に差しこむ強い太陽の光。今日退院すれば、明日の日曜は自宅で療養し、月曜から出社できる。なによりポカ休を延長せずに済む。「そうさせてください」。
地域の仲間が見舞いに来てくれた。誰もが異口同音に「無理しないほうがいい」と警告した。だが無理をしなければならない状況に追い込まれ、それが当たり前になると、感覚もマヒしてくる。疲労で落ちた体力に、病魔が容赦なく襲いかかる。過去何度も、それで痛い目に遭ってきたではないか。学習したではないか。
「家族に犠牲を押しつける男たちの『正義の闘い』とは、いったい何か」――「1・26集会」での、ある女性の発言。自ら本紙に紹介したのはいいが「わかっているようで、何もわかっていない」――連れ合いの憤怒は収まらない。
会計を済ませて二人で病院を出た。反芻と格闘の日々が、また始まる。見上げた真冬の青空が、いつもよりまぶしかった。 (隆)
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