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原発依存の「安定供給」ではなく
労働時間の大幅削減を実現せよ              
かけはし2007.9.3号

猛暑と「電力危機」


電力需給ひっ迫
という危機感

 連日、猛暑が続いている。八月十六日には、岐阜県多治見市と埼玉県熊谷市で、気温40・9度を記録し、これまでの最高記録だった一九三三年七月の山形市の40・8度を七十四年ぶりに更新した。両市以外に同日に40度以上を記録した都市は、埼玉県越谷市(40・4度)、群馬県館林市(40・3度)、岐阜県美濃市(40・0度)。それ以外にも関東や東海など二十五カ所で観測史上最高気温が記録された。この猛暑により、この日だけで熱中症による死者は十一人に達した。
 猛暑は「電力危機」をつのらせた。とりわけ「盆休み」があけた八月二十日以後、企業の生産活動がフル回転に入り、エアコン使用もピークに達する中で、柏崎刈羽原発の停止に追い込まれている東京電力は、中部電力など他の電力会社から融通を受けても電力需要に追いつかない供給量しか確保できず、停電が起きるかもしれないという危機意識に駆り立てられた。

17年ぶりに供給
カット要請発動

 八月二十二日、ついにその日は訪れた。この日、東京の最高気温は予報より2度高い37度を午後0時43分に記録した。このため同日朝段階の電力需要想定値6100万キロワットを超えて、午後二時から三時の平均で最大電力は6147万キロワットとなった。東電は、北電など三つの電力会社に融通してもらう電力量を朝の段階の60万キロワットからさらに90万キロワット追加し、火力発電の出力を60万キロワット高めた。またデータ改ざんで水利権を取り消されていた塩原水力発電所の運転を、国土交通省の許可を得て緊急に行った。
 その上に、バブル経済真っ盛りの一九九〇年以来十七年ぶりに、「随時調整契約」を結んでいる二十三の事業所に電力カットの要請を発動した。「随時調整契約」とは大手メーカーや役所などと結んでいるもので、電気料金を割り引く代わりに電力需給ひっ迫の際には電気の使用を控えてもらう契約である。この電力カットの要請によって、昭和電工の横浜、川崎、千葉、小山の事業所、旭硝子鹿島工場、東邦亜鉛安中精錬所、東京製鉄宇都宮工場などで電力供給が削減され、減産や午後の操業停止が行われることになった。
 こうした大企業の工場では、原油価格の高騰により、従来進められてきた重油を燃料とする自家発電システムのコスト高によって、電力会社からの電力供給依存に戻す例が相次ぎ、東電の供給能力を逼迫させる要因になっていた、と報じられている。この電力需給の逼迫に直面して、東電はメーカーや一般家庭に節電を呼びかけているが、メーカー側は「違約金を払っても、電力カットの要請に応じず、フル操業を続けたい」と本音をもらしている。

所得保障を伴う
長期休暇制度化

 われわれは、この「電力危機」をどう捉えるべきか。電力消費において過半の比率を占めているのは、言うまでもなく大企業である。そして大企業のわずかな「盆休み」の期間に、電力需要が大幅に減少していることは、われわれに「危機」解決策の方向を提示している。
 原発に依存したエネルギー浪費の産業構造を根本的に転換すること、二十四時間操業の超長時間労働システムを是正し、労働時間を短縮すること、正規・非正規を問わず、「猛暑」の時期における労働者の所得保障を伴った長期休暇制度を法制化することである。
 こうして「電力危機」問題は、労働者の権利を獲得する課題と密接に結びつけて提起されなければならない。
 地球温暖化の主因である温室効果ガス削減の切り札として、原発の役割を高めることが政府や財界によってキャンペーンされている。しかし、原発への依存度を高める政策は、柏崎刈羽原発の停止によって、きわめて甘い幻想であることが明らかとなった。
 八月十日に開催された、京都議定書による温室効果ガス排出削減計画の目標達成計画を見直している環境省と経済産業省の合同会議では、見直しの中間報告がまとめられたが、そこでは「全対策が計画通り進んでも、二〇一〇年度には二〇〇〇万トンの削減が不足し、対策が現在のペースなら三四〇〇万トンに拡大する見通し」とされている。しかも、この「厳しい見通し」は原発の稼働率を八七〜八八%といういまだ実現されたことのない水準に高め、産業界の「自主行動計画」が順調に達成されることを前提にしている。
 住民の安全を無視した原発の稼働率のアップや、誰も信じない企業の「自主行動計画」に依拠して温室効果ガスの削減を実現することはできない。八月四日〜五日に毎日新聞が行った世論調査では、原発の耐震性に不安を感じる人が九一%に達したのに対し、エネルギー確保や地球温暖化防止のために原発の増設を、という政府・資本家の主張に賛成する人は一六%にとどまっている(反対が23%、現状のままで良いが57%――「毎日」8月12日)。
 「脱原発」の実現、エネルギー多消費社会からの脱却と一体のものとして、新自由主義的な規制緩和・労働法制の改悪に反対する要求を提起する必要がある。
 政府・資本やマスメディアの繰り返す「電力危機」キャンペーンに対して、「脱原発」の必要性と現実性、地球温暖化の防止と結びつけた資本の新自由主義戦略を批判するエコロジカルな対案、その核心としての賃金カットを伴わない労働時間の大幅な短縮の要求を掲げよう。それは個々人の「生活習慣の見直し」に委ねられるものではない。労働者・市民の資本に対する集団的行動こそが必要なのである。    (純)


世界陸上開会前日の「微罪」逮捕
大阪府警による弾圧を許すな!
N君を今すぐ返せ!

 大阪府警によるまたしてもとんでもない弾圧が起こりました。
 八月二十四日午後一時ごろ釜パトのメンバーであるN君のアルバイト先や別のメンバー宅ともう一ヵ所が家宅捜査され、N君は逮捕されてしまいました。
 逮捕理由は「道路運送車両法違反」という耳慣れない法律ですが、要するにN君が大阪市内では使用してはならないディーゼル車を昨年中に市内で運転したということです。しかしN君はこの車両を半年以上使っていません。
 驚くべきことに、このような事例で逮捕されたのは日本で初めてということです。なぜそうまでして大阪府警はN君を逮捕する必要があったのか。
 それはN君が長居公園の強制排除や住民票の強制削除など日雇・野宿労働者への攻撃に対しての抵抗を先頭で闘っていたからであり、だからこそ大阪府警は世界陸上開会式前日にN君をこのような「微罪」で逮捕したのです。これは世界陸上開会式への抗議の声を圧殺しようとする予防拘禁に他なりません。私たちはこのような大阪府警の弾圧を絶対に許しません。
 知っての通り、今年の二月五日大阪市はN君ら長居公園で生活していた野宿の仲間のテントや小屋を強制撤去しました。それは五千筆を越える強制撤去反対署名を無視し、ヤラセで「排除を求める地域の声」をつくりだし、多額の税金を投入して、野宿の仲間たちの要求や質問に何一つ答えることなく強行されたのでした。
 なぜこのような暴挙を強行したのか、その理由は明らかに天皇出席の世界陸上のためです。野宿者の強制排除と天皇制や国際的なイベントは決して無関係ではありません。これまで天皇や皇族が出席する式典のために、そして「国威」の発揚が迫られるオリンピックなど国際的なイベントのたびに、目障りとされた野宿者はまさに「ゴミ」のように排除されてきました。昨年のうつぼ公園の代執行であり(世界バラ会議)、二〇〇五年名古屋白川公園の代執行であり(愛知万博)、長居公園でも一九九七年なみはや国体、二〇〇二年サッカーW杯の時にも野宿者排除の嵐が吹き荒れました。
 また大阪市は日雇・野宿労働者二千八十八名もの住民票を強制削除し、高齢日雇労働者や野宿者の失対事業である「高齢者特別就労事業」(年間約3億円)を「予算がない」という理由で削減する計画を進めています。一方で世界陸上には四十億もの税金を投入しながら!
 大阪市は天皇出席の世界陸上を利用して「環境美化」「公園整備」の名目で野宿の仲間を排除し、仲間の生きる条件を次々と奪おうとしています。そしてその動きに呼応するかのように警察はN君を「微罪」で逮捕し、世界陸上開会式への抗議の声を圧殺しようとしたのです。今どきこんな無茶な手法を使って!
 うつぼ・大阪城公園、長居公園の強制撤去、昨年の9・27弾圧(反排除を闘う5名の仲間の逮捕。今年8月9日には全員が執行猶予で釈放)、住民票の強制削除、特別就労事業削減計画、司法・行政が一体となって貧困者の生きる条件を次々に奪おうとしているのです。
 貧困者への戦争、棄民化政策とも言える状況の中で行われる世界陸上、そして今回の弾圧を私たちは絶対に許せません。
 ぜひとも多くの皆様が私たちと共に抗議の声をあげていただくように心から訴えたいと思います。
野宿者排除の世界陸上弾劾!
大阪府警はN君をすぐに返せ!
弾圧粉砕!闘争勝利!

釜ヶ崎パトロールの会
kamapat@infoseek.jp 090―8380―0269(内山)

大阪府警に抗議の声を!
b大阪府警察本部 大阪市中央区大手前三丁目1番11号
TEL06―6943―1234



コラム

獰猛(どうもう)な夏


 ぼくは夏は好きなほうだ、と自分では思ってきた。毎年、梅雨明けが近づくと、嬉々として部屋の模様替えをして夏に備える。模様替えといっても、窓や間仕切りにスダレやノレンをかける程度のことだから一時間とかからない。
 開け放した窓から時おり吹き抜ける風が汗にあたって心地よい。冷房装置などはないが、夏バージョンの自分の部屋を、ぼくはけっこう気にいっていた。
 西側の窓は廊下に面しているので、スダレは内側と外側に二重にかけてある。消灯した部屋の様子は明るい廊下側からはわからないようだ。ある夕暮れ時、不動産の営業マンがその窓に向ってしきりに喋っていた。そのうち、「いるんだか、いないんだか知らないけど、いつまで家賃を払う生活をつづけるつもりだ。いい物件なんだから買えよ」と毒づく始末だった。
 「大きなお世話」と言おうとしたが、ぐっと言葉をのみこんだ。人の気配は感じるのに返事がなく、中の様子もわからないので、つい腹を立ててしまったのだろう。
 夏の暑さとじゃれあうのも悪くない。これも毎年のことだが、休日になると、ぼくはきまって自転車に乗って荒川べりの道を河口近くまで行っていた。
 出発は、風が海に向って吹く午前中でなければならない。午後になると、向かい風に悪戦苦闘して疲労困憊するだけである。持参するのは、握り飯、魔法瓶に詰めた冷たい麦茶、それに文庫本である。
 河口に向って二時間ほど自転車をこぐ。風に吹かれているためだろう、照りつける強い日差しが苦にならない。どこが河口かは釈然としない。が、彼方に船が行き交う姿がかすんでいても、もうどこにも道が見つからなくなる。そこで終点。
 そろそろ木陰を見つけて昼食の時間である。握り飯と冷たい麦茶が胃と喉に大いなる喜びをあたえてくれる。こんな時の握り飯の味は格別だ。食後の昼寝をして、ゆったりと緑陰読書としゃれこむ。時間が静かに流れて陽が傾きかけるころ、こんどは陸に向かう風に吹かれて帰路につく。これが、ぼくにとって、至福の夏の一日である。
 だが、こんな夏は、おそらく去年でおしまいだ。今年の夏、雲があらわれる気配さえない空から降り注ぐ日差しは、身体に突き刺さりそうなほど容赦なく獰猛である。気温は夜になっても一向に下がらない。朝の六時が近づくころには、全身汗みどろになって睡眠の時は断たれる。そんな日が、何日も何日もつづく。
 こんな夏は、これまで経験したことがない。じゃれてみたりしようものなら、身の危険を覚悟しなければならない。暴力的に襲いかかってくるからだ。実際、熱中症のためにたくさんの人の命が奪われている。「お年寄りは特に気をつけましょう」というテレビのアナウンスが、自分自身に向けられていることに、はっと気づかされる。
 地球温暖化にともなう気候変動は、ぼくのささやかな至福の夏を奪ってしまった。    (岩)


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