| 間一髪で大惨事! 中華航空機炎上
かけはし2007.9.3号 |
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規制緩和による超過密運航と安全軽視が事故多発の原因だ |
ボルトが刺さり
燃料タンクに穴
八月二十日、沖縄・那覇空港午前十時半過ぎ、台北発那覇行きの中華航空ボーイング737―800型機(乗客百五十七人・乗員八人)が四一番駐機場の乗降ターミナルに到着後、左側のエンジン部分から火災が発生し爆発・炎上した。同機は、駐機場にむけて地上走行中、右側エンジンから燃料漏れを起こしていたが異常を示す計器反応がなく、地上整備士が発見し、機長への通報によってはじめて確認するという有様だった。乗客乗員は、ほぼ九十秒で脱出し、間一髪のところで重大な航空機惨事から逃れることができた。
国土交通省・鉄道事故調査委員会は、二十日、事故機の右側主翼と右エンジンの接合部(パイロン)付近で大量の燃料漏れが発生していたことから、主翼などの内部にあるタンクからエンジンに燃料を供給する配管に破損があったのではないかと指摘していた。ところが二十三日、右主翼の燃料タンクに長さ数センチのボルトが突き刺さってできた直径二〜三センチの穴を発見したことを明らかにした。つまり、右主翼前縁部にある高揚力装置「スラット」のアームに付いたボルトが脱落し、アームが収納される際に燃料タンクを突き破り、大量の燃料が漏れだし胴体直下を流れ、エンジンはアイドリング状態だったが、その熱で発火したのである。
さらに調査が進むと、そのボルトには先端にナットが付いたまま燃料タンクに突き刺ささっていた。通常、留め具のワッシャー、ダウンストップ、ストップロケーションが付いていなければならなかったのに外れていた。これらの事実から三種類の留め具は整備段階で付け忘れたか、締めが緩く運行中の振動・圧力などによって抜け落ちたか、破壊されたかなど考えられる。事故調は、事故機の整備内容について調査を進めるという。
中華航空広報担当は、「七月六日から十三日まで、台北の同社メンテナンスセンターで年に一度の最も整備項目の多い定期点検を受けていた。脱落したスラットのボルトも点検していた。ボーイング社の要請に正確に沿った手順で実施した」と述べ、さらに「事故機は就航後五年。飛行時間は通算約一万三千六百六十時間であるため安全性に問題はなかった」と強調した。
ところが事故機は、八月四日、札幌発台湾南部・高雄行きで主翼のフラップ(高揚力装置)が着陸前に異常を示す警告が表示していた。五日には、タイ・チェンマイ発高雄行きでも同様のトラブルが発生していた。いずれも原因不明のまま、運航を強行し続けたのである。広報は、整備結果、調査データ、科学的証拠と根拠を示すこともなく今回の事故とは無関係だと繰りかえすのみだった。このように手前勝手に自己に都合がいいように早急すぎる結論を出し、報道に明らかにすること自体、冷静に事故原因を直視していく誠実なアプローチとはほど遠い態度だ。企業防衛優先がミエミエである。
ボーイング社
にも責任あり
今回の事故は、中華航空がこれまで乗務員に対する長時間過密労働の強制、非正規雇用化と人件費の削減、パイロットと整備士のリストラ、機体整備の海外委託によるコスト軽減など押し進めてきた結果であり、安全軽視、ヒューマンエラーに追い込む体質を根拠とする組織事故なのだ。
過去の中華航空の事故・大惨事はこうだ。
一九九四年四月、台北発名古屋行きエアバスA300型機が名古屋空港で着陸に失敗し、墜落炎上。二百六十四人が死亡。一九九八年二月、インドネシア・バリ島発台北行きエアバスA300型が着陸間際に住宅街に墜落し、乗客乗員・近隣住民六人を含む二百二人が死亡。いずれもパイロットの誤操縦が直接の原因だったが、同じような事故を再発したためパイロットは、わざわざルフトハンザ・ドイツ航空の特別安全カリキュラムを受けるほどであった。
安全対策を行いながらも、整備面などのリストラを進めた結果として、二〇〇二年五月、台北発香港行きボーイング747機が台湾海峡上空で空中分解して墜落、乗客乗員二百二十五人死亡した。明らかな整備不良による組織事故であった。
このような重大な組織事故の連続発生、事故率の高さによって、米国の航空安全情報サイト「エアセーフ・ドット・コム」において中華航空の「重大事故率」(フライト百万回当たり)は最高位だ。また、ニューズウィーク誌(07年2月28日号)版「航空会社『安全度』ランキング」では世界の航空会社三百社中、二百十一位という危険な航空会社となっている。格安航空運賃を大々的にコマーシャルしてきたが、その裏の実態は安全軽視だった。これは重大な犯罪である。
ボーイング社は、機体整備不良の結果を中華航空会社の自己責任の結果だと押し付け、逃げ切ろうとしている。〇五年、〇六年にボーイング737―800型と同系機において二件のボルト脱落があり、その一件は燃料漏れを起こしていた。同社は航空各社にボルトなど強制力をともわない自主点検レベルの「サービスレター」を出していたが、現実に大事故が発生してしまい指導不足の企業責任が問われることは必至だ。指導の徹底による費用負担増の逃げ道として、責任性があいまいな「サービスレター」で対応してきたのである。ボーイング社の隠蔽策動と居直りを許してはならない。ボーイング社機の構造的欠陥の可能性も含めて全情報を開示せよ。
事故調は企業
防衛をやめろ
重大事故が発生したというのに政府・国交省は、アリバイ的に国内航空会社を対象とする「耐空性改善通報」(TCD)に基づく緊急点検を指示したが、安全軽視体質のアジア格安航空会社、外国航空会社を黙認したままだ。
八月二十四日、突然、国交省は、航空機事故につながる危険性がある安全上のトラブル(ヒヤリハット)が二〇〇六年十月から六ヶ月間で三百八十一件あったことを発表し直した。すでに三百二十五件と発表していたが、四社の報告漏れが五十六件あったことを国交省監査の「仕事」による手柄として押し出し、安全監視を行っていたとアピールしたかったらしい。なんという官僚的自己保身か。
日本経団連御手洗体制の忠実な代弁者である安倍政権・国交省は、資本のグローバリゼーションに勝ち抜いていくためのアジアゲートウェイ戦略を掲げ、アジア激安航空運賃競争に負けないために国内航空会社をバックアップしている。〇九年航空ビッグバンと称する二十四時間空港化をメインとする超過密運航と安全軽視政策の再検証が求められているにもかかわらず、航空業界規制緩和路線を凍結し、安全重視政策への転換姿勢さえも示していない。
国交省は、重大なインシデント、事故・大惨事が発生するたびに「耐空性改善通報」(TCD)、業務改善命令などを乱発してきたがどれだけ効果があったのか。つまり、航空業界の規制緩和路線を凍結・中止しないかぎり再発することは必至なのだ。今回の事故原因究明も、結局のところ規制緩和路線に触れることなく処理しようとしている。
このように今回の事故は、中華航空・ボーイング社・国交省が一体となって作り出した重大な人災事故なのだ。責任の押し付けあいを止め、安全重視政策に着手しろ。ただちに国交省は、航空規制緩和路線を中止せよ。国内外航空会社に対する強制立ち入り監査・検査権、危険航空機の運航中止勧告・停止命令権限の明記、安全チェック・監視体制の構築なども含めた法的規制強化が必要だ。航空法を抜本的に改正しろ。
事故の翌日、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調)は、中華航空会の企業イメージが低下するという理由から事故機の胴体左側面にある「CHINA AIRLINES」という英語の社名ロゴと垂直尾翼にある紅梅の花のマークを白いペンキで塗りつぶすことを認めてしまった。この判断は、まだ事故調と沖縄県警による実況見分の段階であり、日米台合同調査による本格調査前であったにもかかわらず事故機の証拠保全の逸脱、証拠隠滅・作為的変更を可能とする行為だ。
事故調は企業防衛と表面的な調査、根本原因を意図的に避けることを積み重ねてきたことによって、航空企業の安全軽視に加担してきた。事故調の監視を強化しなければならない。すべての調査結果、データを開示せよ。公開の場で調査審議を開催し、中華航空・ボーイング社・国交省の免罪へとつながる密室審議と根本原因の隠蔽策動を許してはならない。(遠山裕樹)
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