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小泉への「強い警告」だ                かけはし2005.10.24号

首相の靖国参拝を違憲とした大阪高裁判決が確定


 【大阪】台湾原住民の遺族ら百八十八人が、小泉首相と靖国神社を相手に一人一万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が大阪高裁で九月三十日にだされたことは本紙10月10日号で報告した。その後のことについて報告する。
 原告側はこの判決を高く評価できるとし、上告しないことを決めた。判決は、原告側の損害賠償請求を棄却しており、結論で勝訴した国側は上告できず、大阪高裁判決は確定する見通しだ。
 判決は、靖国神社がどういう神社か認定し、小泉首相の参拝は職務行為であると認定し、首相の参拝は靖国神社を特別視しており憲法二十条三項に違反していると述べている。また台湾の歴史・台湾原住民が受けた苦痛を詳しく認定し、憲法十九条の内容について「戦没者をどのように回顧し祭祀するかしないかに関して、公権力の圧迫・干渉を受けずに自ら決定しこれを行う権利」を有すると解釈する余地があるとしている。
 今までに政教分離に関係する多くの訴訟が闘われてきたが、その多くの判決の中で理論においてもまた緻密性についても、大阪高裁判決は突出しているといわれている。
判決について弁護団は非常に高く評価できると表明していたが、台湾の原告たちは「日本人から見れば勝訴に等しい判決でも、憲法違反の判断は日本人でないわれわれには関係ない」とし、手放しでは喜べないと述べていた。そこで、台湾の原告が帰国後再検討して上告するかしないかを決めることになっていた。

「還我祖霊」運
動はやめない

 その後、台湾原住民の原告たちの各部族代表高金素梅さんら七名の名前でメッセージが届いた。その中では、「大阪高裁判決は完全な勝利判決とは言えないが、日本がすでに軍国主義の復活と人類平和に危害をなす事に気づいたこと」を示すもので、これは重大な意義を有する勝利である、と述べている。そして、日本はいまだに、日本が当時台湾原住民族に対して行った罪行を直視できないでいるとし、日本政府が「反省・謝罪・賠償」しない限り、台湾原住民族「還我祖靈」運動を停止しないと述べている。
 その上で、五年間にわたり協力し三年にわたり共闘して裁判闘争を担った人たちに「同志間の情は天空に輝く太陽や月のごとく永遠に不滅である」という言葉を贈っている。

台湾の原告団と
の連帯のきずな

 これを受けて、小泉首相靖国参拝違憲アジア訴訟団は直ちに台湾の原告たちにメッセージを送った。日本国憲法は世界の人に、九条によって国軍を持たず人民を戦争に動員しないこと、二十条によって侵略宗教と国家の癒着をしないことを約束しており、今回の判決は約束の後者を果たそうとするものであり、このたびの勝利は台湾原住民族「還我祖霊」運動の成果であり、また韓国・沖縄・日本の遺族たちの合祀拒否のたたかいの成果である、今後も日本国家と靖国神社に対して、侵略と植民地支配の反省を要求していくと述べている。 
 このような経過の後、十月十一日、原告団は上告しないことを決定した。弁護団事務局長の中島光孝さんは「結論は不満だが、国家神道という戦前の問題や歴史的背景を踏まえた判決で評価できる。高裁レベルの違憲判断が残ることは、小泉首相に対する強い警告になる」と述べた。今後の事態の推移に注目したい。(T・T)



憲法集会で高橋哲哉さん講演
思想良心の自由・信教の自由は闘いとるもの

 【大阪】関西共同行動主催(協賛:小泉首相靖国神社参拝違憲・アジア訴訟)の憲法集会が、十月九日エルおおさかで開かれ、高橋哲哉さん(東大教授)が講演し、参加した二百人の市民で会場は満員となった。
 原田恵子さん(関西共同行動共同代表)が司会をし、和田喜太郎さん(関西共同行動共同代表)が主催者あいさつをし、続いて高橋哲哉さんの講演に移った。
 高橋さんは「これまでの改憲反対運動には、9条に特化した運動と靖国に関わる運動があって、これがうまくかみ合ってこなかった。平和を保障するには、思想良心の自由・政教分離・信教の自由・教育における民主的な価値などが保障されていなければいけない」といい、「自民党の新憲法草案では9条改憲が最大の目的だが、ねらいはそれだけではない。自衛軍を動かす法をつくっただけでは戦争はできない。彼らは戦争を遂行できる国民精神を創り出そうとしている。十月七日に新聞が報じた自民党の新憲法草案前文には、愛国心が入っている」と言い、思想良心の自由や信教の自由を守ることが大切だと訴え、靖国問題を焦点に憲法問題の講演に入った。以下が講演要旨である。
内村鑑三の「勅
語」不敬事件

 一九四五年に終わったものは、帝国の体制だった。戦後日本人が帝国の体制をどこまで乗りこえたのか、これを考えるときはいつも内村鑑三のことを考える。一八八九年成立の帝国憲法(1条 万世一系の天皇これを統治す、3条 天皇は神聖にして侵すべからず)の精神、忠君愛国を国民すべてに注入すべく、一八九〇年に教育勅語がつくられた。
 その後に行われた第一高等学校での勅語奉読式で、天皇の印が目に入り、内村はちょこんとだけ軽くお辞儀をした。内村は勅語の内容は受け容れていたが、そのお辞儀の仕方が後で問題とされ、ついに辞任に追い込まれた。このことを後に米国の友人ストラザースに宛てた手紙の中で述べている。「……かくまで愛する国民による迫害……僕は理解せざるべからず。政治的自由と信教の自由とはいかなる国においても試練なくしてはあがなわれざりしことを」。
 政教分離原則(憲法19・20・89条)は戦後ずっと踏みにじられてきた。靖国問題の第一の山は一九六九年提出の靖国国家護持法案の攻防のときだが、それまでは天皇や首相が参拝していても問題にされなかった。法案は廃案になり靖国側は首相の参拝を定着させる方に方針を転換する。第二の山は中曽根首相の公式参拝。内外からの批判で中曽根はA級戦犯の分祀を考えるが断念する。第三の山が二〇〇一年以降の小泉首相の参拝。

憲法はどこまで
定着してきたのか

 私は、靖国問題の解決策として、@国は政教分離を守り、靖国神社との関係を絶つこと。A無断で行った戦没者合祀については、遺族の取り下げ要求に応じて取り下げるべきだ、と論じてきたが、反発の強さに驚いている。戦後の日本社会に、憲法がどこまで定着していたのか問いたい。合祀そのものが思想良心の自由の侵害になるということが核心問題だ。
 初めて合祀取り下げを要求した人は、信州在住の角田三郎さんだ。その後台湾・韓国の遺族が取り下げを要求するようになっていく。角田さんはクリスチャンになったので、兄の霊を教会に移したいと考え、お寺は快く了解してくれたが、靖国は「天皇の意志により戦没者の合祀は行われたのであり、遺族の意志にかかわりなく行われたのであるから抹消することはできない」という理由で拒否をした。遺族の意志や感情が全く無視されている。靖国神社は例外を認めるとパンドラの箱をあけることになり、靖国のステータスが失われることを危惧しているのであろう。

戦後も合祀者を確
定したのは国家

 戦死者の確定を行ったのは、戦前は陸・海軍省、戦後は厚生省。常に国家が決定している。一九七〇年代遺族の再三の反対にもかかわらず、自衛隊は殉職自衛官を山口県護国神社に合祀した。一審・二審とも違憲判決だったが、一九八八年の最高裁判決は、祀る側の隊友会にも祀る自由があると合憲判断をした。憲法20条(信教の自由・国の宗教活動の禁止)を、特別の宗教の自由のことと勘違いし、無宗教の人には関係がないと思っている人が多い。この条項は、主権在民を保障するものだ。天皇は万世一系の神の子孫という思想の否定が政教分離の本質だ。ここが曖昧になると国家と宗教の癒着に帰ってしまう。
 自民党の新憲法草案では、20条・89条の条文の中に、「社会的儀礼の範囲内にある場合を除き」という文言を入れている。このねらいは政教分離の解体である。これが通れば靖国神社や護国神社参拝は公務で堂々とできるようになり、自衛隊合祀は合憲となる、今まで「私的」に行われていた護国神社慰霊大祭への自衛隊幹部の参拝、「同期の桜」奉納時のカブスカウトによる舞(北海道護国神社)なども合憲となる。
 靖国は九段のみにあらず。またいたるところに憲法番外地がある。帝国の負の遺産として存在してきたものを問うてみるべきだ。憲法の理念は戦争の敗北により手に入れたものだが、国民の多数がそれを求めて闘いとったものではなかった。ゼロから始める覚悟が必要だ。改悪されてもそれで終わるわけではない。そのような闘いを経験するのはこれからかもしれない。

ゼロから始める覚
悟でつながりを

 休憩の後質疑応答になった。
 @若者の保守化の原因と対策。――一九七〇年代以降は全体が保守化した。学生運動の退潮、メディアの問題が大きい。しかしもっと深い歴史的な理由もあるのでは。帝国の時代は生きること・死ぬことの意味付けを国がやった。戦後は民主主義を国是としたが、それは本当に国民が求めたものだったのか。戦時中ずいぶん無理をした日本人は、帝国崩壊後精神が空洞化し、そして消費社会万能の社会の中で原則への感性がうすらいでいった。
 A改憲が現実になったとき肝心なことは何か。――憲法・教育基本法の民主的価値を広げていき、あきらめずにつながり、精神的に生き残ること。
 B愛国心(新国家主義)と新自由主義の関係。――同じコインの裏表だ。小さな政府は自由の拡大と受け止められがちだが、強者の自由の拡大だ。新自由主義の中での敗者をつなぎ止めるものが新国家主義だ。
 C闘いの拠点をどのようにつくるか。――今のような危機的な時代には、民主主義・平和主義のグループをまとめていかないとダメだ。組織はしっかりした個人の集まりでないといけない。組織の決定によってしか対応できないようではいけないと思う。
 D何を戦略の中心にすべきか。――北海道では改憲賛成が七〇%。その内の四〇%は自衛戦争もできないように改憲すべきだという意見だ。現状を生きのび、その中で何を戦略にすべきか考えていこう。

合祀取り下げ訴
訟を準備しよう

 質疑応答の後、小泉首相靖国神社参拝違憲・アジア訴訟団の菱木さんがあいさつをし、「九月三十日の台湾訴訟大阪高裁判決は9条・20条をきちんと踏まえた画期的な判決だ。20条はまさに国家神道解体のための条文だとはっきり言っている」とのべ、今後、合祀取り下げ訴訟を立ち上げたいとの意向を表明し、支援を訴えた。
 教育基本法改悪を止めよう!全国連絡会の朴さんは十二月三日に東京日比谷公会堂で予定されている全国集会への参加を、しないさせない戦争協力関西ネットの中村さんは、10・21の行動、11月6日の「戦争あかん、基地いらん関西のつどい」への参加を呼びかけた。
 最後に、中北龍太郎さん(関西共同行動共同代表)がまとめをし、「体(9条)と心(20条)は憲法の二本柱。改憲派はこれをターゲットにしている。特別委員会はすでに設置された。しかし市民の中には勝ち組はそれほど多数ではない。11月3日の憲法集会、12月10日の憲法学習会にも是非参加してほしい、そして来春の一万人集会を成功させよう」と訴えた。(T・T)


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