| ウルグアイ選挙で左翼連合が勝利(上) かけはし2005.10.17号 |
| 右派政権が作り上げた新自由主義の枠組みから離反できず |
解 説
南米諸国で相次ぎ成立した左派政権の政治的背景
昨年十月三十一日に行われた南米ウルグアイの大統領選挙で、二十以上の左翼・中道勢力が参加した「進歩会議・広範な戦線・新多数派」のタベレ・バスケス候補(社会党、元モンテビデオ特別県知事)が、国民党のララニャガ候補などを大きく引き離し、第一回投票で過半数を獲得して当選した。
ブラジルとアルゼンチンにはさまれたウルグアイは一八二五年の独立以来、軍部独裁政権時代を除いて、国民党とコロラド党という伝統的な二大ブルジョア政党によって支配されてきた。百八十年の歴史の中で初の左派政権の誕生である。 今回の左派・中道ブロックの中心となった「広範な戦線」は元都市ゲリラ組織のツパマロス、共産党、社会党、第四インターナショナル派などラディカル左翼をふくむ左翼連合戦線で、その中での最大勢力はツパマロスである。
前回の一九九九年の大統領選挙でも「広範な戦線」のバスケス候補は得票率四四%で第一位となっていたが、過半数に満たず、決選投票で二大ブルジョア政党の連合候補に敗北した。
今回の勝利は、何よりも新自由主義政策の下での経済危機、二〇%に上る失業や貧困の拡大に対する民衆の闘いを背景にしている。その意味で、ベネズエラ、ブラジル、アルゼチンなど南米諸国で相次いで成立した左派政権と同様の背景をもっており、反グローバリゼーション運動が政権交代をもたらした端的な例といえる。
しかしブラジルのルラ政権の例に見られるように、新自由主義的枠組みからの決別が国際的にきわめて困難な状況の中で、膨大な債務返済の重圧にさらされているバスケス政権もまた、世界銀行やIMFの強制する民営化・規制緩和路線との妥協を余儀なくされている。それは労働者・農民・貧しい人びとの期待を押しつぶすことを意味する。
このような中で、新自由主義的秩序との断絶をどのように押し広げていくかがすべての左派に問われている。ブラジルPTでの左派の分岐・再編と合わせて、ウルグアイの状況についても注目してほしい。 (純)
社会党のバスケスが大統領に
二〇〇四年十月三十一日に行われたウルグアイの選挙で、左翼連合が勝利し、社会党のタバレ・バスケスが第一回目の投票で五一%を獲得して大統領に選出された。新大統領は、二〇〇五年三月に政権を引き継いだ。
ウルグアイの「進歩会議」政権を「裏切り」として非難するのは行き過ぎである。新政府は、反新自由主義的な「断絶」を提起してこなかったし、「ポピュリズム」を唱導したこともない。まったく違う。政府は新自由主義的「改革」をラディカルに解体するいかなる提案にも反対してきた。
政府は「期待のインフレ」を押さえ込むために、「安易な約束」をする「煽動政治家たち」を力をこめて非難してきたし、民衆の期待に冷や水を浴びせてきた。「進歩会議」は、資本主義的生産様式と利潤と支配の継続をあらゆる形で保証しつつ、「可能な変革」への道を約束したのがせいぜいのところだ。約束がなされた以上、いまやそれは満たされなければならない。
新自由主義のマトリックス
経済路線が、内容と体裁の両面において規定された。オルタナティブな政綱の面では、さしあたりどのような「論争」も存在していない。しかし牧場・農業・漁業相のホセ・ムジカ(元ゲリラ運動のツパマロス出身)からは、若干の不満の声が聞こえてくる。この緊張は、「農業生産者」の債務への新たな資金供給、共和国銀行が生産のために与える、そして輸出業者の「競争力」に影響を及ぼすいわゆる「支払いの延滞」のために与える信用に端を発している。
経済政策はむきだしの継続性を保っており、右派政権が作り上げた新自由主義の配列図から一センチも離れていない。もし誰かがそれに疑問を呈したとしても、大統領自身がそれを打ち消してしまう。
五月五日、ブエノスアイレスで開かれた米州貿易生産協議会の会議に出席した五百人の大企業経営者、銀行家、投資―投機家を前にして、タバレ・バスケスは「自由市場」を擁護し、「国営企業と提携」するひとかたまりの機会を提供し、「ウルグアイでは国内の投資と外国投資の差別は存在しない。……公共投資は限定されたものだからだ」と再び述べた。さらに彼は「利益の本国送還の自由、……銀行取引の秘密の尊重」を強調し、対外債務の「遅滞なき支払いの実行」を保証した。
社会運動、知識人、左翼政党、環境保護ネットワークのあらゆる抵抗にもかかわらず、政府は「エンセ―ユーフォレス」(スペインの多国籍企業)と「ボトニア」(フィンランドの多国籍企業)のセルロース・プラントを承認した。政府はルラ(ブラジル大統領)とともに、労組弾圧方針のために国際的に非難されている多国籍醸造業の「アンベフ」を歓迎した。そして、アメリカの多国籍携帯電話会社モバイルが来るよう進めている。同社のオーナーにはメキシコの億万長者でテレビジアの社長であるカルロス・スリム・ヘルがふくまれている。これらの企業はすべて、投資法などによる優遇措置を受けるだろう。すなわち税の軽減、コストの五〇%にあたる補助、特別の信用の便宜である。
公共投資のマージンが「限られ」ている中で、資本主義的投資家と国営企業の「公民提携」が企図されている。たとえばANCAP(国営の石油企業)の場合がそうである。二〇〇三年十二月の反民営化住民投票の大衆的決起で明らかになったことだが、同社の取締役会長のダニエル・マルチネス(社会党)は、企業は「民間企業の原則の下で」活動しており、従業員が憲法によって享受している非解雇の権利に同意できない、と述べた。
右派は彼に拍手を送った。「公共企業の代表取締役となった元労組指導者が、企業は民間企業の法則の基準にのっとって運営され、労働者の非解雇の権利をやめさせるという考え方を促進していることは、この国の構造への模範的な責任感を示すものだ」と。今のところ「提携」プランは、ベネズエラのPDVSAとの百万バレルの石油購入と石油精製業の拡張と近代化の協定を除けば、進んではいない。
政府の資本主義的投資家との約束は、水の問題に関してはっきりと現れている。二〇〇四年十月三十一日に行われた国民投票では、投票者の六四・七%の賛成で、水道サービスはもっぱら公共企業体によってのみ提供されるという義務を規定した基本法が確立されたが、それは完全な形では尊重されようとはしていない。タバレ・バスケスと彼の経済閣僚が署名した政令(二〇〇五年五月二十日)は、民間企業は「以前に合意された期間が満了するまで、こうした便益を提供し続ける」としている。国民投票の推進者だった「水と生活を守る全国委員会」は、すでにこの政令への法的異議を提起し、請願キャンペーンを呼びかけ、二百キロにわたる抗議行進を組織した。
したがって、米国との「相互投資保護促進協定」の締結が大きな怒りを呼び起こしたのは偶然ではない。タバレ・バスケスと彼の経済チームは、調印を支持している。政府と議会代表内のフレンテ・アンプリオ(広範な戦線)の他の部分、とりわけ民衆参加委員会、社会党、共産党は批判している。三月二十六日運動と幾つかの基礎委員会は、批准を拒否し、遅延している全国議会総会での討論を提案している。
しかし遅かれ早かれ、条約が批准されるのは確実だろう。ホセ・ムジカ(牧畜・農業・漁業相)は、すでに彼自身はそれを好まないが、賛成票を投じるとしている。なぜならそれが市場の支持を獲得するからだ。「私は腐ったパンを食べなければならないのなら、それを食べる。しかしこのパンがうまいと私が言うことを期待するな」と。
保証されたプログラム
六月八日、ワシントンでIMFはタバレ・ベスケス政権との新しい「趣意書」に賛成した。翌日、世界銀行もそれを支持した。「進歩派」政権の経済プログラムは、経営者の保証を手に入れた。他方、「生産性の高い国」と「富の再分配」の約束は、もっと良い時期まで待たなければならないだろう。
経済・財政相のダニロ・アストンはすでに次のように述べている。「今や、IMFとの合意ぬきには変化は来ない。……ほとんどの投資は民間で外国からのものだ。……そのために、ウルグアイが機能するかどうかは、こうした基金との協定に依存するようになっている」。そして協定は結ばれた。一部の政府職員や進歩派政権に同情的なエコノミストが期待した控除項目なしにである。
この「趣意書」(二〇〇五年六月から二〇〇八年六月までカバー)は、誤解の余地のないものだ。他の諸条件とともに、その年次計画はIMFの優先的要求を明示している。マクロ経済的安定、民間投資の優先、「価格」の凍結(たとえば社会的投資)、市場サービスの中で「競争性」を作りだすための公共企業の「現代化」、予算の黒字を確保するための「大衆課税の調整」などである。そして「中央銀行の自律性を増大させるための改革」、あるいはそれと同様の結果をもたらすもの、民間銀行に全国政府の支配の及ばない位置を与えるためににある種の「自由化領域」を創出することである。
政府は、三・五%(二〇〇五年)、三・七%(二〇〇六年)、四%(二〇〇七年)の「基礎的財政黒字」を得ることとされる。それは国家予算の黒字から対外債務の利子支払いと「国が引き受けた義務」の履行を確保することを意味する。要するに、収入と国民的富を「国際的信用供与者」に移転させ続けるためである。
対外債務に関しては、返済資金の枯渇が続き、現在ならびに将来の主権を危険にさらしている。二〇〇四年末には、国家債務は百三十三億三千五百万米ドルに達し、GDPのほぼ一〇〇%となっている。債務の四二%は、IMF、世界銀行、米州開発銀行関係である。支払いスケジュール(利子ならびに償却金の)に組みこまれた金額は、政府の一年目で二十億米ドル(社会的緊急事態に使われる額の二十倍以上)となり、二〇〇五年だけで利子支払いは中央政府の収入の二五%を吸収する。
政府の目標は、債務の重圧を削減する(五年間で債務とGDPの比率を一〇〇%から六〇%に減らす)ことを通じて「GDPの成長」を維持することだった。どちらも起きそうもない。同じ政府の経済チームは、二〇〇五年(六・五%)を顧慮した上で、二〇〇六年のGDP成長の低下(三・五%)を予測している。対外債務については、IMFと世界銀行から受け取る五億米ドルの起債の「成功」と「新規ファンド」が、中期的な負債を増大させるとしている。
調整と緊縮の経済政策
調整と緊縮はIMFとの協定における共通分母である。内閣はそれを「第一段階」として決定した。経済的優先性は「緊縮」と極端な「財政的規律」に置かれるだろう。公共投資のレベルは、右派政権の下でと同様なGDPの二・五%という悲惨な状態となるだろう。
これは次の国家予算法が策定される時、相互に関連づけられるだろう。「価格の調整」は医療費と教育費のきわめて不十分な増加を意味している。われわれはすでに「味見」を経験している。三月二十八日、政府は住宅省に向けて投資の上限を十一億ドル定める政令を発した。それは投資の四五%をカットすることを意味し、住居不足(現在は八万戸)を深刻化させ、臨時家屋に住んでいる幾万もの家族を苦難に追いやることになる。
賃金については、政府が選挙運動期間中に「サラリアーツォ」(大幅賃上げ)はないことを明らかにした。購買力の回復は、「GDPの成長」と「投資の増大」が「時間に耐えられる」二〇〇七年まで事実上引き延ばされた。すべてがうまくいけば、われわれはケーキの分け前にあずかれるだろう。
政府は七月一日以後、最低賃金を年間二千五十ドルから二千五百ドルに引き上げた。PIT―TNT(労働組合連合組織)は五月一日からの引き上げと、引き上げ額を三千ドルにするよう望んでいた。上昇率は(労組と経営側の賃金協議会での交渉を基礎に)、二〜四%にし、年四回に分けて与えられる。この三年間に実質賃金が二三%も減ったことを考えれば、この提案が労組が要求していた最低の線よりも低い。IPC(消費物価指標)とつながった年金は、六%の引き上げ(二段階に分けて)が「貧困者」年金に認められるとはいえ、賃金と同じ悪い運命に見舞われることになる。
総じてこの引き上げでは月額二百ドル以上にはならない。ホルヘ・バトルの新自由主義政権の下で賃金の一八%を失った公務員労働者にとっても、事態は良くならないだろう。「回復」は〇・六%程度であり、その後の賃上げは「機能性への責任」(「生産性」の婉曲な表現)と結び付けられる。
いずれにせよ優先性は、教育、公共医療、裁判、警察、軍隊などに振り向けられるだろう。市場理事者協会が組織した昼食会で、閣僚のエドゥアルド・ボノミ(元都市ゲリラ組織ツパマロス出身)は、政府の哲学を鮮明に表現した。「民衆の問題、それから公務員の問題を解決する必要がある」。彼は「賃金引き上げなしには生産性の発展もない」と付け加えた。
失業について言えば、政府の目標はそれを二〇〇六年六月までに一〇%に引き下げることである(現在のところ、公式の数字では失業率一二・三%)。つまり二%ちょっとの削減だ。経済的活動人口の五二%が完全失業、半失業、不安定雇用という状況にあると見なされており(就業者の四〇%は社会保障登録がない)、二〇〇五年に二万から二万五千、二〇〇六年に三万の新規雇用を生み出すという政府の目標は、いささか失望を生み出している。
それから? 所得の「抑制」(没収)を通じた労働力の価値の下落、失業と大規模な半失業が維持され続けるだろう。有名な「所得再分配」は、より良い機会を待つことになる。賃金は、対外債務を支払い、企業の収益性を維持するための調整によって変動しつづける。
他方、「税の公正」は凍結されている。付加価値税(二三%)は労働者を直撃し、所得税は年間一億八千万米ドルの超過搾取を意味する。実際のところ、政府はIMFと合意して、対外債務の支払いのためにもっと多額を徴収する一方で、不公正な税制の基本的特徴には手をつけないままにしている。直接税よりも間接税の比重が高くなり続けており、したがって税制が所得と富の集中を拡大することになるのである。
緊急措置の焦点
次々に登場した新自由主義的政権は、幾万人、幾十万人もの人びとが最も劇的な条件の下で生き残りをかける、という膨大な犠牲を後に残した。このため、「社会的緊急性への全国的関心計画」(PANES)は「最高度の優先性」を帯びている。
全国統計研究所(INE)の最新報告は、わが国の貧困地図をむきだしの形で描きだしている。約百万人の貧困層(全人口の約三〇%)、「窮乏者」のカテゴリーに入る二十万人がおり、三十万人が「持続的・慢性的」な貧困の中で生活している。すなわち「逆転不可能な」貧困である。
「排除された」階層の所得は、貧困層と見なされている人びとの所得の二十二分の一である。さらに悪いことに子どもたちの五七%は、「基本的必需品の不満足な」家に生まれている。
この基礎的な情景の下で、「貧困に対する戦い」は政府の四つの風に対して広げられた旗である。PANESは、二年間で約四万の家族(二十万人)を援助するものとして構想された。その目的は、「社会的に排除された人びと」を「社会に組み入れる」ことだった。PANESの予算は、年間で一億三千四百万米ドル(一億ドルは政府から、三千四百万ドルは米州開発銀行から)である。
政府が投資した額はGDPの〇・六%であり、対外債務の利子支払いに充てられた額(GDPの約8%)と比較すれば、恥ずかしくなるほどである。そこには千三百六十米ドルの「市民所得」、「街頭で暮らす」人びとにに与えられる医療、教育などへのさまざまな「補助金」、千九百ドル支払われる四カ月分の一時的な雇用などが含まれる。
「受益者」は、医療センターに行くとか、子どもや青年を学校に行かせる保証をするとか、コミュニティーでの一定の任務を遂行するといった、特定の「見返り」(条件)を満たさなければならない。
これまでのところ十四万人が登録した。しかし二万五千人だけが彼らの「貧困の実態」を証明するために相談に訪れた。たった一万五千人だけが手当てを受け取った。そのことは最貧層が住む地域で抗議のデモと無数のピケットをもたらした。したがって、PANESは状況の深刻さに対応した活動を速やかに行うという声明は、形を取ろうとはしていない。
それは、必要なインフラや経験ある職員に依拠できないためだけではなく、役所の「自発的」活動の約束が、情報、組織、旅費の支払いに関して一連の対立をもたらしたからである。
社会開発相(マリネ・アリスメンディ、共産党)の演説は、PANESは「完全な市民」として発展することができる「独立した主体を建設」し、貧困(より特殊的には不公正)の基礎である搾取と超搾取の現実に手をつけない政府の政策の実態と衝突し、基本的な民主主義的権利(健康、教育、住居、雇用への権利)となるべき諸条件に向かおうとしていると何度も繰り返した。
現在までのところ計画の全焦点は、教育センターでの核家族の子どもたちへの付き添い、家族の衛生コントロールといった補助制度である。もし、「独立した主体の建設」や「市民権」や「市民社会」における最新の解放的可能性といったものが、こうしたことに切り縮められるのであれば、PANESは大したものではない、と確言できる。
ブルジョアジーは「社会的緊急措置」の影響を受けてはいない。政府は財産所有階級との最小限の対立という路線を決定したからである。そうでなければ、当然のこととして貧困化した社会階層の一部分に大きく焦点をあてたプログラムではなく、その量と社会的公正の面からもっと重要な、金持ちによる資源の浪費に焦点をあてたものとなっただろう。
たとえば、それは大企業の大規模な脱税、スキャンダルに満ちた課税棒引き、経営者協会による労働法の体系的な違反、銀行システムにおける密輸マフィアの数億ドルにのぼる資金偽装に切り込むこともできただろう。貧しい人びとを統制したり、「見返り」の条件を満たさないPANESの「受益者」に制裁を加える代わりに、社会(そして政府)は、「持てる者が多く支払う」という基礎にたって、金持ちとその富により多くの統制を加えることができたはずである。(つづく)
(筆者のエルネスト・ヘレラはウルグアイの「左翼潮流」〔CI〕と「広範な戦線」の指導部。二〇〇三年の第十五回世界大会までは、第四インターナショナル統一書記局員だった。)
(「インターナショナルビューポイント」電子版05年9月号)
パキスタン
人権を守るフェミニストの闘い
台頭する原理主義勢力の行動を庇護する国家
ピエール・ルッセ
輪かんの被害にあったムフタル・マイの裁判闘争と男女混合マラソンコースの主催団体の闘いは、女性の権利のためにパキスタンで展開されている闘いの二つの面を示すものである。
百人を超える女性
が輪かんの被害者
パキスタンの若い女性、ムフタル・マイは、二〇〇二年に輪かんされた。その後、彼女は長期にわたる裁判闘争を続けている。十四人の男が地方裁判所によって有罪を宣告された(そのうちの何人かは死刑と終身刑であった)が、その後、そのうちの大部分がラホール州の高等裁判所によって釈放された。百五十人もの直接の証人がいるのに、証拠不十分だというのである。
六月末、パキスタン最高裁判所は、再審理を行って犯人の再拘留を決定した。犠牲者であるムフタル・マイの弟がより上位のカーストの娘に言い寄ったとの非難を受けた後、強かんが部族会議によって命じられたのだった。この弟の「罪」との平衡を取るために、彼女は輪かんされた後、全裸で村中の前にさらされた。
この闘いは、強い象徴的な側面を帯びてきた。未婚で読み書きができない、低いカーストに属する若い女性が、沈黙する代わりに自分よりも強い者に対して闘っているのである。
さらに、大統領のムシャラフ将軍は、彼女が証言のためにアメリカに招かれた時、国外に出ることを禁じた。この事件によってパキスタンの国際的なイメージが損なわれるようなことがあってはならない、と大統領は国外旅行禁止の理由を説明した。自立的な機関であるパキスタン人権委員会(HRCP)によれば、二〇〇四年の最初の七カ月間で、少なくとも百五十一人のパキスタン女性が輪かんされ、百七十六人の女性が「名誉の罪」で殺害されているという。
女性マラソンを
襲撃する警官隊
今年、公共の場でのパキスタン女性の権利を求める闘いは、スポーツという形をとって出現した。男女混合マラソン・レースが、男女の参加者の責任のもとに、組織された。
グジュラーンワラでは、四月に、マラソン・レースがイスラム民兵たちによって攻撃された。ラホールでは、五月十四日に、レースの先頭集団にいた女性たちに対して、警官が暴力的な介入を行った。弾圧は、典型的な性差別主義的な形を取り、警官隊は、女性マラソン選手をよりいっそう辱めるために、選手の髪をつかんで引っ張り、卑猥な侮辱の言葉を浴びせかけ、ユニフォームを引き剥がした。(この目的のために特別に女性警官が組織されていた)。
何十人もが一時逮捕され、その中には、パキスタン人権委員会の書記であり、弁護士でもあるアスマ・ジャハンジルと同委員会のイクバル・ハイダー議長とパキスタン労働党(フランスLCRの姉妹組織)の指導者、ファルーク・タリクも含まれていた。
原理主義の民兵は、法律に反して、女性を集中的に攻撃し、女性にとっての公共の場を強制的に閉鎖したがっている。マラソンは男女混合であってはならず、女性はスタジアムの中で走るだけで満足しなければならない。(こんなことがマラソン・コースとして問題外であることは明白だ)。スタジアムから外に出ようとする女は許さないぞ、というわけである。過激なイスラム指導者たちは、ハイルプルでの慈善基金を集めるための女性の祭りの開催をも非難している。
パキスタン人権委員会とJAC(民衆の権利のための共同行動委員会)は、五月十四日の弾圧の後に新たなマラソンの開催を決定した。多くの政治的=行政的圧力にもかかわらず、マラソンの開催は最終的にそれが正式に発表される前夜の五月二十日に認められた。
パキスタン人民党やパキスタン労働党のわが同志たちを含む三十団体が、このイニシアチブを組織することによって、この試みを支援した。二百人以上の女性と約五百人の男性がこのレースに参加した。これは政治的な勝利だった。
ジャーナリストのベーナ・サルワールは、パキスタンではデモや政治集会が一般に男女混合であり、これまでにそれが問題となったことはなかった、という点を『ザ・ニューズ』の五月二十二日号で強調した。男女の隔離を強制しようとする圧力は、原理主義勢力の台頭に対応しているのであって、この同じ原理主義勢力は、女性への教育の禁止を望んでおり、学校にも敵対している。当局にその直接の責任がある。
パキスタン人権委員会にとって、「公共の催しへの女性の参加」の強制的な禁止はただ過激な宗教原理主義勢力を助成するだけであり、「正統派」宗教勢力に対して、原理主義勢力の行動が国家によって庇護されていることを、知らせているにすぎないのである。(「ルージュ」05年9月1日)
パキスタン地震に緊急援助を
労働者教育基金アピール
以下は、パキスタン労働党(LPP)とともに活動している労働者教育基金から届いたパキスタン北部地震の第一報です。(編集部)
昨日(10月8日)午前8時52分、この100年間で最も強い地震が、パキスタンを直撃しました。これまでのところ2万人以上が死亡し、約5万人が負傷したと報じられています。死傷者の数はさらに数千人増えるかもしれません。通信手段の破壊と悪天候のため、実際の数字はこれまでのところ分かりません。
カシミールが最も被害の大きい地域であり、多くの村が完全に破壊されました。パキスタンの北西辺境州と北部地域も、激しい被害をこうむりました。私たちラホールにいる者も強い地震を感じ、多くの巨大ビルには亀裂が走り、3階建ての建物が倒壊しました。
大規模な救援・救出活動が政府と市民社会組織によって行われております。
労働者教育基金は、女性労働者支援ライン、全国労働組合連合、パキスタン労働党と協力して、最も大きな被害を受けた地域の被災者を支えるためにラホールとカラチに救援キャンプを設置しています。
私たちは、被害を受けた地域で私たちと連絡のある組織や個人と共同の作業を調整するために、密接に連絡を取り合って活動することになります。
私たちは、おもに薬品や食料のために募金をすることになるでしょう。
労働者教育基金に募金を送っていただければ救援活動を支援できます。われわれのラホールとカラチの事務所やキャンプに直接薬や食料品を送っていただくことも可能です。キャンプの詳細は、明日にもお知らせいたします。
連帯をこめて
カリド・モフムド
Tel:92-42-6303808 Fax:92 -42-6271149 Cel:92-321-9402322
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