もどる

二百人を超える大量処分を撤回せよ           かけはし2004.06.7号

ドコモ携帯基地局鉄塔反対運動が画期的勝利

建設済み鉄塔の初の撤去へ

 

 【いわき】いわき市鹿島町下蔵持区と久保一区は、NTTドコモ東北による、住民の同意のない携帯基地局鉄塔の建設と、予想される電磁波被曝に抗して携帯鉄塔撤去移転活動を四年間続けてきたが、五月十二日、ドコモ側が鉄塔撤去を公表した。建設後の携帯基地局鉄塔が住民運動で撤去に至るのは、ドコモ東北には前例がない。
 ドコモは、仮称「いわき船戸基地局」(鉄塔四〇・三メートル、中継機建物)を計画。二〇〇〇年五月に基地局建設の建築確認申請が許可され、同年七月から八千万円をかけた基地局建設工事が開始。同年九月竣工した。基地局の稼動によって発生する電磁波で、生活環境及び健康上の被害を被る下蔵持区・久保一区の両区住民は、計画から竣工までの期間に何の説明も受けていない。
 立地地域は、いわき市が「福祉の町」作りを進めてきたところ。基地局の四百五十メートル以内に、総合病院・特別養護老人ホーム・公立保育園・私立保育園・幼稚園・公立小学校・公民館が集中している住宅密集地だ。基地局前の道路は児童・生徒の通学路であり、老人施設入所者の散歩道でもある。この地点への携帯基地局鉄塔の建設は環境的にも景観的にも不適切で、住民や行政区の同意もなく建設されていいはずがない。
 ドコモはTVへの電波障害の発生だけは認めており、鉄塔の建設後TVアンテナへのノイズフィルターの取り付けに関して両区の住民に同意書をとる活動を行った。しかしその際の説明は、携帯基地局鉄塔の電波障害があることを隠したものであり、携帯基地局鉄塔の建設に同意を求めたものではなかった。多くの住民は同意書を拒否したが、ドコモはだまされて署名した一部住民のノイズフィルター取り付け同意書と実際の一方的取り付けをもって、携帯基地局鉄塔建設の住民同意は得られたと強弁した。
 両区は、区と住民の同意のない建設は認められないとして、再三にわたって十分な説明と移転を求め二〇〇〇年十一月、両区総会で撤去決議を上げ、七千人を超す署名をいわき市や国に提出した。いわき市は、景観条例にもとづく住民との事前協議完了届けと工作物工事完了届けの受理によって、実質的に稼働の許認可を与える立場にあるが、ドコモに住民との話し合いに応じることを要請した。旧郵政省仙台電波管理局(現総務省東北総合通信局)も稼働には慎重姿勢で対応した。
 ドコモは両区の活動を営業妨害行為として、現地点での稼動を求める民事調停を二〇〇一年四月に申請。署名にダブりがあったから偽造だと難くせをつけ「区長を告訴する」とどう喝・強硬姿勢を示したが、二〇〇二年一月、調停は不調に終わった。
 以降、両区は話し合い解決へ向け八回にわたり申入書を提出したが、ドコモは、「現在地を移転するつもりはない。電磁波による被害補償の協定化などの条件についての話し合いには応じる」とした後、話し合いを拒否し続けていた。
 二〇〇四年二月、ドコモは再度「テレビ受信用フィルター取り付けのお願いについて」なる文書を両区住民に送付し強硬姿勢を示していたが、逆に両区住民から、一部取り付け済みノイズフィルターの撤去要求をされていた。二〇〇四年五月、膠着状態が続く中、ドコモは、TVへの電波障害を解消できないことを理由に携帯基地局鉄塔の解体撤去を公表した。これは、行政区単位で住民が団結しねばり強く運動を続けた住民パワーの勝利である。
 両区はこれまでに、毎年二月三日「鉄塔撤去祈願祭」や十月「地域交流・秋まつり」を合同で開催し、本年二月には、「携帯基地局問題交流会」を開催し、各地で起こる携帯鉄塔反対運動との連携・交流・支援の取り組みをも深めている。

※いわき市は、東北地域でありながらかろうじて在京キー局の受信が可能な地域であり、ここで問題になっている受信障害は、在京キー局の受信に関してでありローカル局の受信には問題はない。     (B)

電磁波公害と総務省の「電波防護基準」

 電磁波は、人間の健康を害する最後の公害とも言われている。携帯電話機本体や電子レンジはマイクロ波という高周波の電磁波を出し、WHOの疫学調査でも健康被害をもたらすクロの判定が出ている。携帯鉄塔や送電線が出す電磁波は低周波でWHOは健康被害の疑いがあるとして疫学調査中だが、まだ最終判定は出されていない。
 総務省は「電波防護基準」を作成し被爆の規制をしているが、電磁波の「刺激作用」と「熱作用」だけを考慮した基準値で、ガンや白血病の原因とされる「非熱作用」を考慮に入れていない。したがって、欧米の「非熱作用」をも考慮してつくられた基準値に比べ非常に甘いものになっている。
 スイスは、日本の基準値より約二百五十倍厳しい基準値を採用しているが、それはもし有害であった場合の予防的考え方からきている。日本の「電波防護基準」は数年前まで強制法規でさえなかったし、数値自体の甘さは、資本の意向に忠実であるともいえる。
 ドコモは胸を張って言う。「国の防護基準を下回っているから安全だ」と。「電波防護基準」は規制のためのものではなく、住民の健康への危惧を押しつぶすためにのみ機能している。       (B)


もどる

Back