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北朝鮮列車爆発事故                   かけはし2004.05.3号

情報の公開と民主主義の確立で全民衆的な救援活動を!


                                   
大惨事は専制支配による人災だ

 四月二十二日、中国国境から十五キロの北朝鮮・竜川(リョンチョン)駅で列車爆発事故が起きた。死者百六十一人、負傷者千三百人(うち約三百人が極めて危険な状態にある)、民家千八百五十戸と学校などが破壊され、住民八千人が住居を失った。事故の原因は、爆発物が送電線に触れたとされている。北朝鮮の送電線がボロボロになっていることは、すでに以前から指摘されていた。事故が人災の要素を強く持つことは明らかだ。
 このような重大事故が起きたにもかかわらず、事故現場からの映像放送が流されたのは数日たってからだ。日本のテレビでは二十六日朝から、二十五日に現地に入ったWFP(国連食糧援助機関)のビデオによって、生々しい被災者の状況が伝えられた。北朝鮮の朝鮮中央通信が公式に事故の発生を認めたのは二十四日になってからであり、二十六日朝まで朝鮮中央テレビは被災現場を放送していない。
 世界で事故や災害が起こった場合、いち早く現場を映し出し、被災者の状況を伝え、国内や全世界からの救援の手をさしのべるものだ。

金正日は全国民に真実を知らせよ!

 しかし、北朝鮮政府はこうした対応をしていない。北朝鮮国民は、被災地がどのようになっているのか、被災者がどんな困難な状態にあるのか、ほとんど知らされていない。
 中国丹東市では二十二日の夜から、各病院で負傷者の受け入れ態勢をとり、ベッドを用意し救急車を待機させたが、二十三日、二十四日と負傷者は運ばれてこなかった。
 「消息筋によると、北朝鮮側から丹東市当局に、負傷者を送るわけにはいかないという趣旨の通知があったという。関係者は『事故を隠してきたから、国外に運び出すわけにはいかないだろう』などと話している」という報道さえされている(毎日新聞4月25日)。
 さらに、北朝鮮政府は韓国が支援物資を陸路運ぶことを拒否した。
 今回の北朝鮮政府の対応の遅さは、被災状況を知らせることにより、事故の原因を作り出した政府への批判を恐れているからだ。そして、仮にすばやい報道がされたとしても、移動の自由が制限されていたり、自主的な行動を奪われてきた民衆にとって、何をしていいのか分からない。北朝鮮民衆が自主的に救援にかけつけるなど不可能な状態に置かれている。全国民的な救援活動をするには情報の公開、民主主義が不可欠だ。北朝鮮の非民主主義的で、大衆のことを考えない独裁体制のひどさに改めて怒りを覚える。北朝鮮政府は民衆に被災者の現状を伝え、全力で支援態勢を築くべきだ。

中国と韓国を先頭に緊急の人道支援

 いち早く、救援態勢をとったのは中国であり、北朝鮮内にいる国際的援助機関であった。二十三日に中国丹東市の救急車二台と医療支援チームは北朝鮮の竜川に入り活動を開始した。二十五日、テント三百張り、毛布二千枚の他、インスタントラーメンや缶詰などの食糧が北朝鮮側に引き渡された。二十四日に、中国は一千万元(約一億三千万円)相当の物資援助を行うことを発表した。
 二十四日、韓国政府は医薬品や食糧など百万ドル(約一億九百万円)相当の救援物資を北朝鮮に提供するとともに、世界保健機関(WHO)にも二十万ドル拠出することを決めた。

緊急援助を渋る小泉政権の非道

 こうした各国のいち早い対応に対して、二十三日の記者会見で、福田官房長官は北朝鮮から救援要請があれば「被害状況をよく把握したうえで、総合的に判断する」と述べた。また自民党の安倍晋三幹事長は、「人道的な支援は考えなければならない」としながらも、同時に「誠実に北朝鮮を向き合わせるためには、時には圧力も考えなければならない」とか「困った人たちに援助が届くかどうか、慎重に確かめ、検討しなければならない」と二十四日や二十五日の演説で述べ、緊急援助にブレーキをかけている。
 日本政府が援助を決めたのはようやく二十五日になってからであり、それもたった十万ドル相当(日本円で千九十万円)の医薬品などだ。日本政府は緊急に必要とされる援助を大規模に取り組むべきだ。
(4月26日、滝山五郎)


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