| 反グローバリズム運動は世界を変えられるか? かけはし2003.8.25号より |
ATTAC京都設立1周年記念シンポジウム
新自由主義グローバル化との闘いを多面的に報告 |
【京都】七月十九日、京都市内でATTAC京都グループの設立一周年を記念してシンポジウム「反グローバリズム運動は世界を変えられるか?―もう一つの世界と日本を考える」が行われた。新自由主義のグローバリゼーションが引き起こす諸問題にかかわる五人の研究者・運動家が招かれたこのシンポジウムに六十人が参加した。
最初に主催のATTAC京都を代表して平川秀幸さんがあいさつに立ち、同グループがこの一年、労働や農業、ODA、地方自治などのさまざまな分野でのグローバリズムの問題を扱う講演会・学習会を開催してきたこと、フランスのジョゼ・ボヴェやインドのヴァンダナ・シヴァ来日に際しては従来の枠にとどまらない社会運動の連携により歓迎イベントを成功させてきたこと、そしてイラク反戦運動の時期には京都でも毎週のように行われたデモにメンバーが参加し、そのうちの一度はATTAC京都が呼びかけたものだったことなどを振り返った。
民営化、環境破壊と軍需産業
最初のパネリストとしてATTAC関西代表の杉村昌昭さんが登壇し、フランス社会運動の現状について報告した。収監されたジョゼ・ボヴェの近況とラルザックでのWTOカンクン閣僚会議へむけた闘争の盛り上がりについて触れた後、既存の左翼議会政党が新自由主義的改革――社会保障制度の改悪と公共サービスの私営化に対抗していくことができなかったために衰退し、かわりに市民運動が高揚してきたことを述べ、秋以降公共サービスの防衛をめぐって闘争が激化するという見通しを語った。
二人目のパネリストとして京都精華大学の細川弘明さんが発言に立った。はじめに細川さんは、タイ・メークロン川流域の環境破壊について河口から上流まで調査したことについて述べた。同川は、環境破壊の典型のような川で、エビの養殖場、火力発電所、バンコクに水を回送するパイプライン、ダムなどが建設済みあるいは建設中であり、そのすべてに日本がかかわっている。
環境破壊のケースはさまざまで、地域の人は自分が直面している問題しか見えてないことが多いが、しかしこれは地域間で住民が交流することによって容易に乗り越えていくことができるし、タイではそのようにしてきた。問題は日本の支援運動の側で、これらの問題が一つのものであるという認識がまだまだ不足している。破壊の現場に近い人々が連携しているのに、一方が日本の側の支援運動間の連携が不足していると指摘した。
二点目は、かつてのナイジェリア・ビアフラ内戦について。表面上は民族紛争だったが、実際はエネルギー資本、兵器産業が絡んだ戦争だった。あるときは国家に寄りそい、あるときは国家とは独立に、ビジネスの原理がうごめくグローバリゼーションの様相は、冷戦時代から存在しており、それが長い時間をかけて遠慮なく表にでてくるようになったのが現在の状況。いまではビアフラ内戦を多くの人が忘れてしまったが、イラク戦争から二十年たったとき、どう伝えていくのかと会場に問いかけた。
反戦運動と脱WTO運動の連携
三人目にマブイ・シネコープ代表の木村修さんが発言。まず米国バークレイ市の反戦運動について述べた。中間選挙で民主党穏健派が破れ左派のベイツ市長が登場し、バークレイ市主催で反戦集会が開かれたり、市議会では核搭載機が同市の上空に侵入することを禁止する決議、べクテル、ハリバートンなどの戦争で儲ける企業への非難決議、課徴金決議などがあげられているという状況を報告した。
次に米国の反戦平和運動の新しい展開として、反戦のみでなく社会的不公正に対しても取り組む恒常的な組織としてユナイテッド・フォー・ピース・アンド・ジャスティス(平和と正義のための連合)が数多くの団体の参加により結成されたことと、その大会の様子を報告。その活況と、今年の九月へ向けて広範な取り組みが予定されていることを述べた。
四人目はAM―NET共同代表の神田浩史さん。現在の日本では、河川、山林などの環境を維持してきた人々の伝統的な取り組みがグローバリゼーションによって危機に瀕していることを指摘。人の手による管理が不可欠な人工林が放置され、成長不良で細い樹木ばかりになった山地が土砂崩れの危険を生じていること、日本の気候にマッチした、生産するダムとしての水田が放棄されつつあること、その原因が貿易自由化ににあることを説明した。
また農村の人たちが集まれば言葉自体は知らなくてもグローバリゼーションの問題が話し合われている、都市型NGOの活動にこれまで参加してこなかった人々とどのようにつながっていくかが重要だと述べた。その中で日本の農村の荒廃と途上国の熱帯林の破壊やモノカルチャー化がひとつながりの問題であるという認識を広げていく交流が求められていると参加者に訴えた。
五人目のATTAC―JAPAN運営委員の三井加洋子さんは、ATTACが中心になって二月に東京で行われたWTOの閣僚会議への一連の抗議行動をフォーカス・オン・ザ・グローバル・サウスのウォルデン・ベロー氏を招いて取り組んだこと、今年九月のメキシコ・カンクンでのWTO閣僚会合へむけて、日本国内の地域でのグローバリゼーションの影響とそれに抵抗する各地の住民の運動に力点をおいた脱WTO草の根キャンペーンに取り組んでいることを報告した。
今後の運動の方向をめぐり討論
パネリストの報告が一通り終わり、休憩後に会場の参加者を交えてのディスカッションが行われた。現在の世界や日本の現状について意見が交わされた。細川さんは、ヘッジファンドや環境破壊というと大企業が推進しているイメージがあるが、現在ではそれほど大きくない会社が世界経済の不安定化の原因になり得るというグローバリゼーションの時代の特徴を指摘した。
現在の日本社会の中の各セクターの分断状況のなかで政府によるグローバリゼーションが推進されていることについては、現状維持を望む生活保守主義と大国意識が、人々に勝ち組になれるという幻想を抱かせていることが背景にあるのではないかと神田さんが分析。次にこれからどのように運動をすすめていくべきかという問題に議論が移り、木村さんが、ユナイテッド・フォー・ピース・アンド・ジャスティスでは代議員に必ず決まった割合以上の社会的マイノリティを含むように取り決めており、また大会にあたっては日本の従来型の運動とは異なり、執行部以外からも多様な提案文書が出されることをを紹介。
また杉村さんは、ヨーロッパではEUの成立により域内の移動が容易になり、そのことが民族や国籍を超えた人々の交流を促進して中東地域をもふくむ連帯意識につながり、イラク反戦の高揚の背景となったことを紹介した。会場からは、トービン税を実現していくためには世界レベルで諸国の政府を同意させる力をもった運動が必要となることや、各地域が経済的な制度を選択する権利を持つべきであるという意見が出された。
このように、この日のシンポジウムは、欧米、途上国、そして日本国内の政治経済状況と運動の現状に幅広く触れ、これからの新自由主義的グローバリズムに対抗する民衆のグローバリゼーション運動のイメージを参加者に抱かせる集まりとなった。(K)
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