もどる

                                  かけはし2003.3.17号より

イラク人民に対する帝国主義の攻撃を敗北させよう!

レバノンGCR(革命的共産主義グループ)の宣言


 以下に紹介するのは、レバノンにおける第四インターナショナルの支持組織GCR(革命的共産主義グループ)の宣言である。

 ジョージ・W・ブッシュの恥知らずなウソによれば、イラクが特にアメリカと全世界の平和を脅かしているという。このような口実で、ジョージ・W・ブッシュがイラクに対して仕掛けようとしている攻撃を、世界はいま、固唾を飲んで注視している。アメリカ帝国主義は、国際的な警察の役割を再度自らに課し、自分たちの利益に応えるだけでなく自らの野心にも合致する唯一の法則すなわち、ジャングルの法則、を適用する準備をしている。
 この事実から、以下の点を考慮する必要がある。

1、この二世紀の間に一貫して帝国主義の標的になってきたアラブ民族は、いまや帝国主義の最も危険な攻撃のひとつにさらされているとわれわれは考えている。過去二十年間の事態の発展は、アメリカの傲慢(ごうまん)さと最強の国の過剰な一方的傾向を抑止していたそれまでの国際的均衡を覆してしまった。この国がイラクとその人民に対して今日準備している攻撃は、われわれがその攻撃が加えられることをそのまま許してしまう場合には、この国を破壊し、粉砕し、そこに傀儡(かいらい)政権を樹立することで満足することにはならず、それがさらに拡大して、最終的には、別のアラブ諸国、そしておそらくイランのような非アラブ諸国をも攻撃するようになることがもっともありそうである。
 最良の場合でも、帝国主義は、たとえ軍事的な攻撃を加えなくても、アラブの諸政権をよりいっそう屈服させ従わせるためにイラクに対する戦争の結果を利用することだろう。しかしながら、軍事作戦は、たとえばレバノンやそこに存在するヒズボラのような厄介な勢力に対して、いぜんとしていつでも可能な状態のまま準備されているのである。

2、ジョージ・ブッシュとその首脳部は、自分たちが準備している攻撃を、道理や現実とまったく関係のない、むしろ最悪の力の論理にもとづく主張で正当化しようと試みている。いつの場合にも、アメリカの攻撃の本当の標的はイラク人民である。それは、一方では、途方もない地下資源であり、他方では、バクダードの野蛮なバース党独裁体制が作り出している誤りにもかかわらず、イラク人民が科学的、産業的能力の面で持っている潜在的可能性なのである。
 アメリカ帝国主義ならびにその後方に位置してアメリカ帝国主義と強固な協定によって結びついている国際シオニスト運動は、アラブ地域全体における帝国主義の利益にとってもイスラエル国家の存在にとっても真の危険であるこうした可能性が体現しているものが、後日けっして開花しないようにすることを目指している。
 同時に、アメリカの大企業と軍事機構は、イラクの富、とりわけ石油に対する自らの支配を打ち固めたいという野心を抱いている。それを出発点にして、大企業と軍事機構は国際的な燃料備蓄の主要部分に対する自らの支配を完成させることを目指している。
 それは、現時点におけるアメリカの国際的な経済的優位をアメリカの圧倒的な軍事的優位に対応するようにするためである。そしてこのことは、先進工業大国、とりわけ、EUと日本の重要性の実際の後退を意味するだけでなく、アラブ諸国を含む第三世界の進歩発展と近代化への真の移行に向けた熱望の破壊をも意味する。

3、そこから、以下の点が非常に重要であるということが導き出される。すなわち、現在の帝国主義の攻撃にいまから立ち向かい始めるとともに、ブッシュとその同盟者のイラク破壊の計画を阻止し、彼らが準備している戦争の開戦にあくまでも固執する場合にはそれを挫折させ、イラクとアラブの地をワシントンの現政権の帝国の墓場に変えるために活動することが重要なのである。
 このことは、アメリカの対イラク戦争に対決するアラブ人民の大衆動員、あらゆる場所での人民委員会の結成のための緊急で最も実現の可能性の高い努力を必要とする。この人民委員会の目的は、基本的なスローガンを提起してその実現のために闘うことによって、イラク人民と連帯し、できるかぎり大規模なデモと「座り込み」を組織すると同時に、人民の要望に応える署名運動を展開するといった活動を行うことである。これらの要求のうちの最も重要なのは次のようなものである:
b現時点でアメリカ政府と協力しているイラクの反体制勢力に対して、イラクを破壊するアメリカの犯罪的計画から離脱し、イラクの現体制と帝国主義の侵略の両方に同時に反対しているイラクの他の反体制勢力に合流するよう促すこと。そして、このような試みは、侵略に対する強力な抵抗を組織するためである。
bイラクに対する国連安全保障理事会の決議の履行、とりわけ国際査察の再開を迫る一切の要求の実現には、パレスチナの大義に関わる一切の国際決議、一九六七年のアラブの被占領地域からの撤退に関する決議の履行、さらには、シオニスト国家が保有するすべての大量破壊兵器、とりわけ核兵器の廃絶をイスラエルに強制するという条件をつけること。
b共同防衛協定を履行し、防衛のためにアラブの軍隊をイラクに送るという取り決めを実施すること。
bアラブの資金をアメリカとイギリスの銀行から引き揚げること。
bアメリカ合衆国とイギリスに対して、さらにまたイラク人民に対するこの戦争で米英と連帯しているすべての国家に対して、アラブの石油輸出を禁止すること。
b侵略に加担するすべての国との関係を断絶するとの威嚇を行うこと。

4、イラクで最終的にフセイン政権を退陣させて民主主義を確立するため、帝国主義の戦争に反対するアラブのすべての国における革命的・民族的・民主的勢力の闘争は、外国からの侵略に反対するとともにバース党の独裁体制とサダム・フセインの専制体制にも反対しているイラク人民自身との効果的な連帯を同時を進めなければならない。しかしながらこれは、イラク人民自身およびそれと連帯するアラブの大衆ならびにその民族的・進歩的前衛層によってのみ実現されなければならない。
 イラクにおける革命派および民族的、民主的勢力の任務は、イラク人民に対する帝国主義の戦争の開戦を阻止することである。もしそれが開始された場合には、イラクを出発点にアラブ民族に対する支配を打ち固めることをめざす、西側帝国主義、特にアメリカの試みを挫折させ失敗させるために、最も豊かな大衆動員の形態を通じて活動することである。
 このことは、同時にイラクにおいて全国的な抵抗を真剣かつ強力に準備するとともに、ブッシュとブレアが長期間にわたると宣言している帝国主義の占領に対する、さらにまたサダムの専制やその最悪のブルジョア的独裁体制に対する長期の武装闘争を発展させることを目的として、アラブと他の国々からの志願者がイラク国土に向うことを意味する。
 これは、アラブ革命の根本的任務の実現のための歴史的機会であり、将来のアメリカの作戦の敗北がアラブ民族のさまざまな国――湾岸地域をワシントンはアメリカの領土のように扱っている――から帝国主義を一掃する出発点にするための、アラブ世界における帝国主義の覇権に対する手厳しい回答なのである。
 このような使命が達成されるならば、それはパレスチナにおけるシオニスト国家の敗北、本来自らに属している富のアラブ世界による回復、アラブ民族の統一と発展の前進の道にむかう決定的一歩となる得るだろう。統一アラブ自由社会主義共和国への統合を促進しつつ、民族自決権にもとづいて非アラブ民族の問題を革命的に解決するための決定的第一歩が実現されるだろう。すなわち正確に言うと、アラブ革命が提案し、今日までその実現が期待されてきたすべての崇高な使命が達成可能になるだろう。
 人々は「われわれは夢想している」と言うだろう。だが、夢が生活と一致するとき、もしその夢が根気のいる長期の犠牲を必要とする活動と結びつくならば、それは現実となり得るだろう。これこそ、世界帝国主義との対決が要求しているものである。
 ベイルートにて、二〇〇二年九月一六日
(「インプレコール」(四七七号、02年12月)



反ユダヤ主義に満ちた残存ロシアスタリーニストのデマ

トロツキー研究所のホームページから


 三月一日付の『朝日新聞』の第八面に、スターリンの復権を狙った「歴史書」(『ゲネラリシモス(元帥)』)が出版され、ベストセラーになっているという記事が掲載されています。この著作の作者(ウラジーミル・カルポフ)のコメントも掲載されていますが、その内容が実に噴飯ものです。以下全文、引用しましょう。
 「国家保安委員会の秘密資料などを集め、五年がかりで『ゲネラリシモス』を書いた。弾圧と呼ばれる間違いも犯したが、スターリンは卓抜した政治家だ。部分的な事実を誇張して批判するだけでは、彼の指導者像は見えてこない。私の調べでは、レーニンの死後、実権を掌握したトロツキー派は、配下のユダヤ人を使って二百五十万人のロシア人を殺した。スターリンは同派との闘争過程で、ユダヤ人ら五万人弱を殺した。どちらが国民にとって大犯罪なのか。社会主義思想の破壊をたくらむ勢力に対し、強い指導力で国民の団結を勝ち得た。著書をプーチン大統領に贈り『お役に立ちますか?』と添え書きした。欠けているものを読みとってほしい」。
 最初から最後まででたらめで、反ユダヤ主義的なたわごとです。レーニンの死後にトロツキー派が実権を握った? いったいどこの惑星の話をしているのでしょう。レーニンが死んだのは一九二四年一月。このとき、トロツキー派は新路線論争で完全に敗北し、かろうじて持っていた拠点であるモスクワ党組織、軍事部門、青年学生部門、すべてにおいて基盤を破壊されました(次号の特集はまさにその過程を扱っています)。
 心底驚くべきは、そのときにトロツキー派が「配下のユダヤ人(!)」を使って「二百五十万人のロシア人を殺した」(!!)というくだりです。この党内闘争においては、トロツキー派どころか、スターリン派も人を殺していません。闘争は完全に党の枠内で展開されました。唯一、一九二三年にスルタン=ガリエフ(トロツキー派でも何でもないが、スターリンに対立していた)がスターリン派の差し金で逮捕されたぐらいのものです。スターリン派でさえ政敵を殺しはじめるのは、一九三〇年代になってからであり、とりわけ一九三六年以降です。
 そもそも、トロツキー派が二百五十万人も殺したというのに、その中にどうして最大の政敵であるスターリンは含められていないのでしょう? しかも、当時の共産党員数は全部で五十万人程度。全党員を殺してもまったく足りません。「配下のユダヤ人」とやらはどうやら、党内闘争とは何の関係もない人々を殺しまくるお間抜け野郎(ママ)だったようです。
 これは、モスクワ裁判のときにスターリン派によって唱えられた「トロツキストの陰謀」よりもはるかに荒唐無稽です。しかも、トロツキー派はユダヤ人を使って「ロシア人」を殺し、スターリン派は「ユダヤ人」を殺した、というわけです。ロシア人とユダヤ人を対立させるための見え透いたレトリックです。トロツキー派にもスターリン派にも、多数のユダヤ人が参加していたし、どちらにも同じく多数のロシア人が参加していました。

 このような前時代的な差別主義的文献が堂々と出版され、ベストセラーになっているという事実は、現在ロシアがどこまで思想的に退歩しているかを示しています。凋落したスターリニズムは、一九二〇年代と同じく、ロシアで根強い反ユダヤ主義に助けを求めているようです。


もどる

Back