かけはし重要記事

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市民・労働者と国会議員が緊急院内集会        かけはし2002.1.28号より

「有事法制案」と「憲法改正国民投票法案」を上程させるな!

「戦争国家体制」の完成を阻むために

 一月二十一日、通常国会が始まった。この日、午後一時から衆議院第一議員会館で、小泉政権が今通常国会に提出しようとしている「有事法制」案と、憲法調査推進議員連盟(改憲議連)が議員立法の形で提出しようとしている「憲法改正国民投票法案」に反対する緊急院内集会が開かれた。
 この集会は、「戦争のできる国家体制」の完成に突き進む小泉政権の暴走を食い止めるために、昨年九月以来の報復戦争と参戦法案と自衛隊の参戦に反対する闘いを繰り広げてきたキリスト者平和ネットワーク、日本山妙法寺、テロにも報復戦争にも反対!市民緊急行動が、社民党、共産党、民主党と無所属の国会議員と、労働運動団体や平和運動団体に広く呼びかけて開かれた。
 平日の昼間という時間にもかかわらず、多くの市民運動活動家や労働運動活動家が駆けつけ、会場は二百人の人々で一杯になった。国会議員も三十六人が参加し、社民党の土井たか子党首、共産党の志位和夫委員長、民主党の横路孝弘前副代表や、沖縄社会大衆党の島袋宗康参議院議員、無所属の川田悦子衆議院議員が発言に立って、「戦時法制」に他ならない「有事法制」と憲法改悪に反対する闘いを市民運動や労働運動と連帯して推し進める決意を表明した。
 集会は、テロにも報復戦争にも反対!市民緊急行動の高田健さんと、キリスト者平和ネットの小笠原公子さんの司会で進められた。最初に、主催者を代表してキリスト者平和ネットの糸井玲子さん、日本山妙法寺の木津博充さん、市民緊急行動の富山洋子さんがあいさつした。
 糸井さんは、有事立法のひとつとして「戦死者を墓地以外の場所に埋葬する法律」が検討されていることを紹介し、「本当に恐ろしいことだ」と語り、続けて訴えた。「いま東京でアフガン支援国会議が開かれているが、テロでなくなった人よりも多い何千人もの命を奪ったことに対して、まず謝ってから会議を始めるべきではないのか。ブッシュは戦争を始めるとき、四兆数千億円の戦争予算が認められたことに感謝した。アフガニスタンに攻め入った十月八日、二千機の戦闘機を十二兆円で注文した。アフガニスタン再建に支出されるのは全部で五兆円だという。殺す前にこのお金を平和を作るために使うべきではなかったのか」。
 木津さんは、「不審船」撃沈事件を糾弾して述べた。「不審船なら横須賀にたくさん入港している。北の船は証拠もないのに臨検する。多くの国民が核を積んでいるのではないかと疑う米艦は未だに一度も臨検したことがない。このような態度が差別と戦争につながっていく。外務省が伏魔殿だというが、戦争を起こそうとする議員の集まる国会こそ最も大きな伏魔殿だ」。
 市民緊急行動の富山さんは、有事立法と憲法改悪の国民投票法案を強行しようとする小泉政権を怒りを込めて糾弾した。「有事立法とは戦時非常事態法のことだ。生活権、生存権を奪い、人を殺し、殺される立場に立たせるものだ。世界の人々とともに全身の力で拒否しよう。十万人規模の集会を早急に作り出そう。小泉政権を打倒することこそ、アフガン人民、アジア人民に真に連帯する道だ」。
 集会に参加した社民党、共産党、民主党などの国会議員が紹介され、一橋大教員の浦田一郎さんが有事法制をめぐり自民党や防衛庁などで進められている論議の現状について解説した。評論家の佐高信さんは、戦死したある特攻隊兵士の遺書とその母親の話を例に、「有事法制とは戦時統制法のことだ。戦時には、怒りや悲しみの感情まで統制され、抹殺されていく」と語った。
 航空労組連絡会は、「仲間の命と利用者の命を守るためにも、絶対に有事法制は許せない。動員を拒否すれば解雇され、武器や兵隊を運べば多くの民間人を殺すことになる。新ガイドラインと周辺事態法に反対して五万人集会を実現した九九年の闘いを引き継ぎ、航空運輸関連二十労組は一致して有事立法に反対していく」と訴えた。さらに、全労協、平和フォーラム、全労連が、それぞれ闘いの決意を表明した。
 許すな!憲法改悪・市民連絡会の土井登美江さんが、声明「憲法改悪をくわだてる『憲法改正国民投票法案』の国会上程に反対します」(本紙新年号に掲載)の賛同署名への協力を訴えた。沖縄社大党の島袋さんは、米軍の新基地建設を阻止するために名護市長選挙で宮城やすひろ候補の勝利のために協力してほしいと訴えた。
 自衛隊派兵基本計画に反対して副代表を解任された民主党の横路さんは、「日本有事とそのおそれ、周辺有事とそのおそれ、災害とそのおそれなどを理由に非常事態を宣言して戒厳令を敷き、国民一人一人の権利をはく奪しようとする数百本の法案が提出されようとしている。広範なネットワークを作って対抗しよう」と訴えた。
 共産党の志位委員長は、小泉政権のねらいについて述べた。「一昨年のアーミテージ報告は、新ガイドライン実施のために集団的自衛権を承認して危機管理法を作れと言っている。米軍がアジアで武力行使して新ガイドラインを発動するときに、日本の港湾や空港や道路を戦争のために使い医者や看護婦や運輸労働者を徴発し、拒否するものは処罰する。小泉さんは備えあれば憂いなしと言う。備えがあれば憂いなく戦争に乗り出せるということだ。こうしたことを許さない闘いをスクラムを組んでしっかりやりたい」。
 社民党の土井党首は、「これまで研究は重ねてきたが憲法で認められないので提案すらできなかった有事立法を、周辺事態法を強行し、テロ対策法を強行した上に、小泉人気の続いているうちに行け行けドンドンということだ。法案が出されてからでは遅い。今日から、出させない姿勢で臨んでいく」とアピールした。
 無所属の川田悦子さんは、「アメリカの爆撃が続いているなかでアフガン復興会議が開かれている。ただちに爆撃をやめさせるべきだ。大人たちの愚かな行為のために子どもたちの命が奪われるようなことを許してはならない。平和憲法を守りぬいていくことこそアフガン復興の道だ」と訴えた。
 日本山妙法寺の武田さんの閉会あいさつで、通常国会冒頭の院内集会は終わった。有事(戦時)立法を阻止し、憲法改悪を阻止するために、全力を上げなければならない厳しい闘いが始まった。運動の広がりが求められている。しかし、集会決議案として準備された文章の中の、「年末にはまた『不審船』事件が起こり、海上保安庁の巡視艇が砲撃の上、これを撃沈させ、十五名の死者を出すにいたりました」という文言に、参加団体の一部からクレームがついて「決議」ではなく「参考資料」になったことに示されるように、この日の院内集会の参加者のなかでも食い違いは大きい。それを乗り越えて、小泉政権の政権基盤を揺るがすような闘いを推し進めなければならない。    (I)

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