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    かけはし2021年4月26日号

コラム「架橋」


なぜ国軍は民衆を虐殺するのか


 4月10日、衝撃的ニュースがミャンマーから届いた。4月9日、ヤンゴンの北に位置するバゴー市で軍により80人以上が殺され、200人以上が行方不明となる大虐殺が起きた。軍はバリケードを破壊し、デモ隊を包囲し対戦車用ロケット砲や迫撃砲まで使って殺しまくった。負傷者を助けようとする市民たちを近づけず、どこかに連れ去った。そしてその後の報道では、遺体を引き取るのに、日本円で9000円(ミャンマーでは30倍くらいの価値になるという)を要求しているというのだ。貧しい住民にそんなカネは出せない。
 なんでこんなことが起きているのか。非武装のデモ隊や街の市民、子どもたちまでも軍はなぜ虐殺を繰り返すのか?
 脱走した兵士の証言から浮かび上がる。「上官から、とにかく殺せと命令された」。「上官の命令は絶対だ。それが正しいか正しくないか問うことはできない」。兵士たちは最初から殺害する目的でちゅうちょなく銃撃している。
 将校、兵士の大半は国軍の施設に居住し、組織内では徹底した隔離、監視が行われている。辞めたいと思っても辞められない。辞めたら刑務所に送られ、逃げれば家族が拷問される。
 こうした側面だけでなく、国軍は「国家を敵から守る」というビルマ族優位のナショナリズムと軍が経済利権を持ち、その一員という運命共同体としての意識もあるようだ。兵士は軍に従わない者、抵抗する者はみな犯罪者とみなしている。「街頭で反クーデターの行動に参加する何百万もの市民こそが敵だ」ということだ。
 そして、軍は1988年、民主化運動に対して数千人を殺した経験を持つ。少数民族との間でも長年にわたり、殺人、放火、性暴力を繰り返してきた。常に実戦を戦ってきた国軍は、殺りくが日常茶飯事の戦闘集団だ。
 今日行われている、軍による殺りくを一般人が行ったら、とてつもない犯罪として裁かれることになる。国軍、警察による民衆に対する殺りくは明らかに国際戦争刑事犯罪だ。軍司令官や実際に実行している者たちは厳罰に処せられなければならない。国際社会は単なる経済制裁ではなく、戦争刑事犯罪として逮捕し裁かなければならない。ミャンマー軍は直ちに虐殺を止めろ。
 クーデター後、在日ミャンマー人たちは毎週のように抗議行動を行っている。私もその行動にできる限り参加してきた。ミャンマー人は全国で3万人、東京に9千人居住している。行動に参加しているのは研修生や留学生など若者たちが多数だ。ネットワークが出来ているようで実によく組織されている。
 もう一つの特徴は複数の少数民族とビルマ族の多数派が協力し合っていることだ。お互いを尊重して民族の旗や衣装で参加している。ミャンマーの人たちと話すと今後の将来の目標をきちんと持っている。軍の支配者たちとの闘いを一歩も引かない勇気を持ち合わせている。今は大変だが必ず未来は若者たちにあると確信できる。   (滝)


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