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    かけはし2021年3月29日号

コラム「架橋」


デイ・サービス(1)


  今のデイ・サービスに通い始めて、この3月で丸2年が過ぎた。最初は年度初めでなかったためか4人用のテーブルに1人で座らされ、不安を抱えた出発であった。2年も通うとシステムにも、その時々のスケジュールにもすっかりと慣れ、まるでベテラン気取り。都市、過疎地を問わず日本社会は高齢化しているが、デイ・サービスは、日本社会の縮図だとつくづくと思うこの頃である。
 私が世話になっている施設は東京の北部に位置し、かつては印刷関係の企業が集中していた地域だ。月曜日から金曜日までは約55人の人たちが通って来、そのうち25人が男性で、30人が女性。男性の多くはかつて印刷労働者で、退職まで3交代で頑張ってきて、お互い顔見知りであることはあいさつの仕方でわかる。また印刷会社に勤め、事務所で定年退職を迎えた者たちは、違う施設に通っているらしい。
 彼らの言葉によると「デイ・サービスを選ぶのでも〈伝〉(つて)らしい」。彼らの出身地の多くは、埼玉、栃木、群馬、そして東京という北関東圏の出身で、それに新潟を含む東北各県出身者がからむ。そして静岡より西の地方の出身者はほとんどいない。他方介護士、看護師という施設に勤めている若い従業員の出身は全国的で、専門学校を卒業後、田舎に就職先がなく、そのまま東京に職を求めた人が多い。またデイ・サービスに通う人たちの政党支持率も区議会を反映し、第1位が公明、第2位が共産、第3位が自民という順序のようである。旧社民党とか立憲の支持者というのはほとんどいない。彼らに言わせると「そんな変わりもんはいない」という。
 おそらく、どこのデイ・サービスにも午後は2時間程度のフリータイムというのがある。フリータイムの時間帯には誰でも自由にすきなことができる。それぞれの趣味に応じて、この大切な時間を過ごすのであり、この時間帯が各自の性格が最もよく表現される。最も愛されている娯楽は、カラオケで55人の4分1を占める18人程がフリータイムの時は毎日テレビの前に陣取る。毎日のように聞かされるのは、美空ひばりの曲、石原裕次郎、そして石川さゆりの津軽海峡冬景色だ。(しかし残念なことに、コロナによる緊急事態宣言下では、都や区からカラオケ禁止が出され、彼らは毎日テレビの前で静かにCDやビデオを見て聞いているだけ)。第2位はこの時間帯に雑誌や新聞を読む人たち。気をつけて見ているとこの読書派の人たちの趣味はそれぞれ違うところにあることがわかる。(選ぶ雑誌が文春から週刊大衆、女性自身と幅広く、かつての印刷労働者は読むというより印刷ミスを探す方に熱心だ)。次が大相撲のテレビ観戦だ。彼らは大相撲のテレビ中継が始まると午後2時とか3時からの序2段や幕下の取り組みから見ている。そして「こいつは2〜3年後は幕内で活躍する。こいつは将来の3役候補だ」というような専門的解説まで行う。
 しかし毎日この時間になると逆に静かに絵を描く人や書道の筆を取る人、パズル、数独、塗り絵、珍しいところでは連日マジックの練習をする人もいる。うるさいのは子どもたちと同じようにゲームに熱中し大声を上げる集団だ。まさに日本社会の縮図だ。そんな中で私も今や「社会の機微」を学んでいる最中だ。(武)



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