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    かけはし2021年3月8日号

読書案内


「韓国社会の現在(超少子化、貧困、孤立化、デジタル化)」

春木育美著 中公新書 880円+税


子どもがいると
社会的制約が大


 本書は現代韓国社会の「カルテ」であり、その苦悩はまさに「日本の近未来」を指し示している。2月24日、韓国政府は20年の人口が統計を開始した1970年以降、初めての自然減(約3万人)を記録したと発表した。同年の出生数は27万人(前年比10%減)で、これも最低だった(日本は87万人で前年比3%減の過去最低)。これにはコロナの影響もあるのだろうが、コロナ前の19年の韓国の出生率は0・92(同年の日本は1・36)だった。
 韓国人口保健福祉協会の19年の調査によると、20代女性の57%が「結婚しない」(男性37・6%)、71・2%が「子供を産むつもりがない」と回答している。「結婚は女だけ損する」「旧来の家父長制を受け入れることになる」などの理由があげられている。また韓国女性政策研究所の19年の調査でも「結婚を負担に感じる」と回答した女性は64%(日本では32・3%)で、「子供がいると社会的制約を受ける」と回答した女性は77・2%(日本では35・6%)だった。

若者も高齢者も
生活不安が深刻


韓国の受験戦争は有名だが、大学進学率は女子が男子を10%ほど追い抜いている(20代女性の7割以上が大卒)。しかし教育費は半端なものではない。子供ひとりの大卒までに少なくとも3億ウォン(2600万円)かかるとされている(日本では1500万円)。子供を持つリスクはここにもあるわけだ。
しかし少子化の最大の要因は、極度の就職難と不安定雇用だが、深刻なのは若者ばかりではない。高齢者の自殺率と貧困率(43・7%−17年)はOECDの中でトップだ。韓国で「国民皆年金」が整ったのは1999年で(88年に従業員10人以上の事業所を対象に始まってはいたが)、満額受給には40年の加入期間が必要だ。しかも半分が無年金状態で、現在の受給額も少ない。

日本社会の課題
相対化し可視化


若者の中で「ヘル(地獄)朝鮮」と言われてから久しい。広がる格差社会によって多くの韓国人の「暮らしにくさ」が顕著になっている。しかしその一方では、進歩的な改革も世論と運動に押されて進んでもいる。国会・地方選の比例区でのクオーター制の義務化と、小選挙区での女性枠30%以上などだ。それでも女性道知事は0で、基礎自治体首長でも4%にとどまっている。
本書は韓国社会の現状分析を通して、日本社会の現状と課題を相対化して可視化する上で優れたものだといえるだろう。 (竜)




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