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    かけはし2020年11月23日号

核のゴミを住民に押しつけるな


「文献調査」受け入れ表明から一カ月 

未来への選択を誤るな

寿都町・神恵内村めぐる攻防

 【札幌】寿都町と神恵内村が文献調査受け入れを表明してから約一カ月、これまでの「核のゴミ」をめぐる動きをまとめておきたい。
 一〇月一七日、オホーツク管内滝上町の商工業者が原子力発電環境整備機構と核のゴミの最終処分に関する勉強会を町内で開いた。参加者は約二〇人、町長は参加していないが、主催者は今後も勉強会を続けると述べ、寿都町に続く動きが道内に波及していることを示している。

続く調査・誘
致反対の動き


一〇月一八日、北海道平和運動フォーラムなどによる「STOP再稼働!さようなら原発北海道集会」が札幌の中心部で開かれ、約四〇〇人が参加。
二三日「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」(町民の会)が町長に応募の是非を問う住民投票条例の制定を直接請求した。直接請求に必要な署名数五一人を上回る二一七人分の署名簿を手渡し、受け入れに反対している町民が多いことを示した。
この請求について町長は一一月一一日に臨時町議会を招集し、町長の反対意見を付けて条例案を提出した。早ければ一三日にも採決される。町議会では、町民の会が提出した条例制定を求める請願も併せて審議される。九人の町議の過半数が応募に賛成しているが、町長は「住民らの賛成と反対が微妙なラインなら応募を断念する」と言っていた以上「肌感覚」で決めるのではなく住民投票によって民意を確かめるべきだ。
二五日、北海道平和運動フォーラムなどによる「北海道・高レベル放射性廃棄物シンポジウム」が札幌で開催され、約二〇〇人が参加。
二九日、「核のゴミ最終処分法の嘘と真実」がShut泊(札幌・脱原発を目指す市民団体)主催で行われた。山本行雄さん(原子力公害に取り組む札幌市民の会代表・弁護士)は、処分地選定プロセスを定めた特定放射性廃棄物最終処分法には「撤回の規定」がなく、「途中でやめられない。処分地選定のレール上には前進と一時停止の措置しかない」「国はいったん手を挙げた市町村を簡単に手放さない」と強調した。
また一一月一日にもShut泊の主催で「核ゴミを受け入れないという選択」というテーマで元東洋町長、澤山保太郎さんを招いた集会があり、約一〇〇人が参加。

嫌がらせはね
のけて講演会


町民の会が企画した小泉元首相の講演会の入場整理券を二一日に町有施設七カ所で配布したところ、「施設の利用目的に合わない」とし、町は配布中止を求めた。以前、町長は「核のゴミについて勉強しよう」と呼びかけていたが、それとは裏腹に反対運動の締め付けをしている。一一月三日の講演会には、町の嫌がらせにも関わらず約四〇〇人が参加し、小泉元首相は「原発ゼロ社会」を目指して持論を語った。

町が公開を拒
否する議事録


NHKが入手し、九月に報道した非公開の町議会の議事録には、「町民に伺いを立てたらかえって面倒になる」「決して最終処分場を受けるということではない」「ここは将来的な財源確保のためにうまく活用することが寿都の幸せにつながるのではないかと思う」という町長の発言があり、文献調査に応募して交付金を得るべきだという考えを示している。
そして八月の全員協議会で、町長が「寿都町の方針として、どうあるべきかというのも、盆明け、なるべく早い時期に計画したい」「できれば出さないと。よそに先手を打たれたら、もう一番はとれない」と述べている。
九月に議事録の情報公開を町民の会は求めたが、請求に対して町議会は非開示を決定、それに続き情報公開審査会も非開示を妥当と答申をした。まさに住民に対する秘密主義と町運営の強引さが際立っている。

民意を無視して
応募を急いだ理由


応募を急いだのは、逼迫する町の財政はもちろんだが、もう一つは洋上風力発電だ。町では新たな財源として洋上風力発電の誘致に期待し、国から「促進区域」の指定を受けることを目指している。
町長は全員協議会で「資源エネルギー庁の官僚をくすぐった中で、洋上風力を浮上させるという、いやらしい戦法かもしれないが、結果よければなんでもよし」「きれいごとで勝ち取れるというものであればそれに越したことはない。遅れを取り戻すためには、私はどんな手を使ってでもやってやるという思いでいる」と述べ、最終処分場の調査と引き換えに国の指定を得たいというねらいを見せている。
寿都町は日本海に面した周辺七町村(寿都、岩内、共和、泊、神恵内、蘭越、島牧)と四漁協で協議会を設立して誘致活動に取り組んできたが、現時点では交付金の使い道の制限の有無や、他の六町村の賛同が得られるかなどは明確ではなく、町長の想定通りに洋上風力発電導入への動きが進展していくかは不透明だ。
寿都町長は風力発電推進市町村全国協議会の会長であり、全国の市町村で初めて風力発電所を作った先進的な自治体としての自負を持っている。
一九八九年に全国自治体初の風力発電所として建設した五基は、立地条件の悪さによる稼働率の低さと施設の老朽化のため、わずか一一年で休止し六年後に廃止、そのまま野ざらしになっている。その後も次々と風力発電建設計画を押し進め、九九年に一基、〇三年に三基、〇七に五基、一一年に二基がそれぞれ稼働中である。
しかし風車の平均稼働率は二〇%程度、さらに再生可能エネルギー固定価格買い取り制度頼みの売電価格が下げられ、約七億円の売電収入は減少する見込みだ。設備の耐用年数は一三年から一七年(注1)と言われ、設備の更新期を迎えるため二二年に運転を開始する予定の風力発電を計画している。

風力発電は環
境に優しいか


超大容量の蓄電池というものはないため、電気は同時同量、つまり使用量と発電量がほぼ同じになるように調整されている。
大型風車は風速二・五メートルあたりで発電を始め、風速二五メートルを越えると止まるように設計されている。風速一二メートルくらいが定格風速と言われている(注2)。
したがって、風力発電はその不安定性と予測不可能性のためバックアップ電源としてベースロード電源が必要となるが、温室効果ガスを出す石炭火力のため、政府・産業界は採算性の望めない再生可能エネルギーも熱心に進めているというイメージ作りをし、原発の再稼働を認めてもらおうと考えているのだろう。
風力発電は、実際には何の役にも立たず有効な発電をしていないと言われ、周辺住民に著しい健康被害を起こし、野鳥など自然環境に大きな影響を及ぼしているようだ(注1)。

使用済み燃料の
乾式暫定保管


原子力規制委員会は九月、東電と日本原子力発電がむつ市に建設した乾式の中間貯蔵施設を事実上合格とし、四国電力伊方原発の施設の設置も許可。東電は廃炉を決めた福島第二原発に乾式施設を新設すると明らかにした。    
金属容器に入れた燃料を自然の空気循環で冷やす乾式貯蔵は、冷却のために電源が必要なプール貯蔵より安全とされる。事故前から導入していた福島第一原発では、プールが津波の影響で冷却不能になったが、乾式施設に大きな問題は生じなかった。乾式貯蔵は日本原電も既に導入。中部、九州両電力も計画し、北電も将来的に検討する方針だ。
日本学術会議は二〇一五年、安全性の確保や国民の合意形成を図るため、ガラス固化体か使用済み燃料を五〇年間、地上施設に暫定保管するよう提言しているが、その提言にも沿うものだ。
再処理工場は完成が二五回延期され、核燃料サイクルが破綻している中で、乾式貯蔵という地上の暫定保管が拡充されれば、その流れはさらに強まり、地下への埋設を急ぐ動機は薄れ、寿都町、神恵内村の最終処分地としての重要性は下がるだろう。全くの憶測だが、町長はこの流れを見越していたのかもしれない。

温室効果ガス
排出ゼロとは


菅政権は温室効果ガス排出を実質ゼロにするとの目標達成に向け、地球温暖化対策推進本部を開き、「五〇年への挑戦は新たな成長戦略だ」と宣言し、まさにグリーン・ニューディール政策による国土改造の大型投資を推し進めようとしている。再び、原発依存体質と同様の巨大開発を作り出そうとしているのであり、寿都町が推し進めていることは、この補助金頼みの依存体質そのものである。
政府は、自然エネルギー発電施設に超低利融資、税制優遇、高い固定買取価格などさまざまな優遇措置を施し(注3)、電力会社や企業に利益が十分出るように保護し、その利益は国民が支払う電気料金と税金だ。
二〇五〇年の日本の人口は二〇〇五年に比べると、二六%も少なくなり、現在の電力需要の四分の三まで減ると予測される。さらに高齢化の影響と省エネ技術で電力需要は減っていく(注4)。エコのイメージに惑わされて、未来への選択を誤ってはいけない。
(白石実)

 【参考文献】(注1)風力発電の不都合な真実・武田恵世(注2)ストップ!風力発電・鶴田由紀(注3)自然エネルギーの罠・武田恵世(注4)電力危機をあおってはいけない・川島博之

 

女川原発再稼働地元同意
は県民の総意ではない!

怒りをもって抗議する

 

 【宮城】村井宮城県知事は、一一月一一日、石巻市長と女川町長と石巻市内で三者協議を行い、たった三〇分で協議を終え、女川原発2号機再稼働に同意することを表明した。この決定に怒りを持って抗議する。一八日にも経済産業大臣に「理解の表明」(地元同意)をするとしている。


賛否双方の意見
同意確認を断念


 一一月九日、村井知事は、県内のすべての三五首長から意見を聞くとして「市町村長会議」を開催した。賛成反対問わず、多くの首長から安全性確保への懸念が表明された。賛成意見は、「立地自治体の議会と県議会での容認を尊重すべきだ」とか「新規制基準に適合し安全性が確認された」「エネルギーの安定確保が必要」などと「国策」を踏襲したもので、再稼働に対する住民の不安など無視したもので、一方の反対意見は、「避難計画の実効性が担保されていないこと」「福島原発事故が今も続いていること」「核のゴミの最終処分場がないこと」「民意をないがしろにするのは地方自治の否定だ」など再稼働はすべきではないという内容であった。
 この場で再稼働同意を取り付けようとした村井知事は、この状況では判断ができないとして、石巻市長、女川町長との三者協議で判断したいと一任を求め、拍手で「総意」を取り付けたとして、二日後の一一日の三者協議で結論を出すことを決めた。賛否双方の意見があるのであれば、もっと熟議してから結論を出すべきであり、何故、「三者協議」になるのか、何故拙速に進めるのか、同意ありきでしかないことが明らかだ。
 会場のホテル前では、「女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション」に結集する市民や「女川原発再稼働ストップ!みやぎ女性議員有志の会」の議員など四〇人が、再稼働反対の横断幕を掲げて、会場に入っていく首長に「知事は同意しないでと伝えてください」と声がけしながらスタンディング行動を行った。結集した市民は、宮城県庁前で一一月四日から毎日昼休みの時間に、再稼働を止めようと横断幕を掲げてスタンディングで訴えてきた。

避難道路整備
にすり替えた


女川町長は、三者協議まで同意の賛否は表明せず、宮城県の姿勢を聞いてから判断するとしてきた。その内実は、「避難道路の整備」への県、国の本気度を確認するというだけのものだった。
女川町議会、石巻市議会、宮城県議会と再稼働容認を示してきた議会での議論は、広域避難計画が実効性に欠けていることを認めながらも、継続して実効性を高めていくとし、そのためには「避難道路の整備が必要」というものであった。 屋内退避の被ばく問題、自家用車での避難時における渋滞問題や食料、ガソリン確保、受け入れ先の問題、避難所のコロナ対策など全く未整理のまま、避難道路が整備されればすべてが解決するかのような「議論のすり替え」で論議は終始していた。
三者協議のなかで、石巻市長と女川町長は、村井知事から「国への(道路整備の)働きかけを着実に実行する」という約束をもらったとして再稼働を容認したと会見で話していたが、ここでも、市・町は県へ、県は国へその責任を丸投げして責任を上へ上へと押し上げて、最後は「国策」だからといって容認していく構図である。

県民の意向を
前提と詭弁


村井知事は、再稼働同意表明の記者会見で「三者合同コメント」を読み上げ、原発の「必要性」について、「エネルギーの安定供給、エネルギーミックスに必要なベースロード電源」だとし、「安全性」については、「規制委員会が世界で最も厳しい基準で審査したもの」で、三人も現地視察して安全性を確認できたとし、「防災対策」については、「原子力防災会議で了承されたので実効性は確保された」と、国の言ってきたことの踏襲でしかない内容であった。
さらに、国策、再稼働ありきで、知事主導で進めてきたのにも関わらず、「『県民のみなさまのご意向』を前提に判断すると考えて、様々な取り組みを行ってきた」と言いきった。地元同意までの過程のなかで、アリバイ的な住民説明会、二度にわたる住民投票条例への消極的、否定的姿勢、UPZ圏内に留まらず全県的な説明会開催の要求などの「県民の意向」をことごとく拒んできたのである。「県民のみなさまの意向」を前提にやってきたと「中立性」を装い、住民説明会や立地自治体議会、県議会、市町村長会議に責任を押しつけての同意表明にはあきれるしかない。「最後まで悩んだが、苦渋の選択だった」と最後に語ったが、再稼働ありきなのに、「苦渋の選択」など白々しく聞くに堪えない。

原発事故を交
通事故と対比


「原発がある以上、事故の可能性がある。事故があるからダメとなるとすべての乗り物も食べ物も事故が起きた経験から否定される」と原発事故を交通事故に例えて語ったと報道されている。なんと愚かな知事か。まともな避難計画のないなかで県民の命と財産を守る自治体の首長として失格だ。九月三〇日、仙台高裁が「生業訴訟」で国と東電の責任を明確に示してから二カ月しかたっていないなかでの再稼働同意に、原発事故で苦しんでいる避難者がいる隣県の知事がこの程度の認識しか持っていないのかと愕然とした。宮城県民として恥ずかしい。発言の撤回と辞任を求める。

私の力の及ぶ
ところでない


「県民投票条例案は、県議会で二回も否決されたが、私の力の及ぶところではない」と、県民投票条例案否決に対しても県議会に責任押しつけだ。一一万筆の署名とともに条例案を提出した時に付議された「知事の意見」では、下記のように述べている。
「再稼働同意については、住民の多様な意見を反映して判断すべきである。本県の判断にあたっては国策としてエネルギーの在り方、安全性の県の確認、地球温暖化対策など、多様な観点からの議論が必要で県議会での議論が有益である」として「県議会、立地市町、市町村長の意見をしっかり伺い、知事が判断するのが妥当な判断である」さらに「(県民投票は)県議会で行われる多様な観点からの議論に制約を与える」と、県民投票条例案に消極的、否定的な意見を示していたのであり、県民の多様な意見を反映しようとするならば、積極的な意見を付議できたはずであり、「私の力の及ぶところではない」という責任回避の発言は看過できない。

スケジュール
ありきの同意


村井知事は、「東北電力の要請『事前了解』から七年間議論してきた。『事前了解』がないとできない工事がある。このタイミングでないと全体のスケジュールに支障が出る」と言っておいて、「(同意表明は)スケジュールありきではない」とも。二〇二三年度再稼働を見越しての今回の同意表明であることは明らかであり、支離滅裂な答弁である。ここにも、住民無視、事業者のスケジュール優先の政治姿勢が明確だ。
三者協議の翌日の地元紙は、知事の地元同意について「安全対策工事が二〇二二年度まで続く中、何故、生煮えのままゴーサインを出すのか!」「妥協の産物による拙速な決断は、将来に禍根を残す」と鋭く批判している。まさにその通りである。

原発マネーの
麻薬的な効果


「原発がなければ、町の財政や経済活動は破綻し衰退する」と女川町議会での再稼働推進派議員の発言があった。石巻市議会議長も「再稼働して地元にお金を回してほしい」と県知事に要望していた。宮城県も立地自治体も「原発マネー」という「麻薬」に浸り、市、町の財政を潤わせ、一時的な経済的効果にしがみ付く旧態依然の政治から今回も抜けさせずに、「国策」を進めるための国の仕掛けに乗った。安易な原発依存の受け入れは、自立した自治が出来なくなり、地方自治が崩壊してしまうだろう。今回の女川町議会、石巻市議会、宮城県議会の議論を聞いてきて強く感じたことだ。

再稼働は「県民
の総意」に非ず


三者協議の石巻合同庁舎前には、「再稼働に同意するな!」という横断幕を掲げた四〇人を超える県民、市民が集まり、スタンディングで抗議し、同意するな!と声を上げた。
村井知事が「地元同意」を表明した後、県内五三の住民団体は、会場のロビーで「同意に抗議し撤回を求める声明」を発表した。
民意を把握するために県民の意見を聴き取り、県民の意向を確認する場がほとんど持たれなかったこと、県民投票条例を二度にわたって否決した上、県議会は請願者の意見陳述さえ拒んだこと、コロナ禍の中、開催された住民説明会では住民の疑問や不安はまったく解消されていないことを指摘。安全性検討会、県議会、そして市町村長会議における「熟議」はまったくなく、県議会環境福祉委員会の請願審査時間はわずか一〇分足らずであり、市町村長会議は二時間ばかりの意見表明のみで三者協議に「一任」と、県民からの意見聴取も議論もまったくない中で行われた同意表明が、「県民の総意」でないことを指摘した。
また、避難計画の実効性さえ担保されていないこと、渋滞対策としてUPZ住民は「屋内退避」という住民に被曝を強いる内容であること、さらに女川原発が「被災原発」であること、古い沸騰水型原発であり、重大事故時の安全対策上の検討も極めて不十分であることを上げ、同意の撤回を求めた。そして、再稼働に反対する県民は、引き続き、「県民の総意」に基づいて女川原発2号機再稼働の是非が決せられることを求めて活動していくことを表明した。
宮城県知事の地元同意表明は、行政手続きが終わっただけであり、再稼働に反対する活動を進めていく。          (m)



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