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    かけはし2019年12月9日号

有害無益がますます明らかに


リニア反対闘争

静岡県・水利組合との対立緊迫

山梨・長野の住民も抵抗


 リニア新幹線計画は静岡県工区の着工が出来ず、非常な困難にぶち当たっている。その打開のために建設主体のJR東海の意を受けて、愛知県や国交省が乗り出したが目途は立っていない。リニア建設問題を桜井建男さん(リニア新幹線を考える県民ネットワーク事務局員)に昨年一〇月と今年一一月にインタビューした。それに加えて、最近の動きについて編集部でまとめた。(編集部)

地元理解を端から無視の傲慢


 JR東海は品川―名古屋間のリニア新幹線の開業を二〇二七年としている。しかし、静岡県区間の工事は、県や大井川水系水利組合の反対によって、着工されていない。リニア新幹線は長野県中央アルプスをトンネルで貫通するものでトンネル率は八六%である。静岡県に駅は設けられず、トンネルの掘削によって大井川水系の水が枯渇する重大な影響が懸念されている。当初、JR東海は一部枯れる水を大井川に戻すとしていたが、組合の強い反対にあい、減った水の同量を戻すという出来もしないことを明言して、工事を強行しようとした。
 このJR東海を後押ししたのが、リニア新幹線の一番の「うみま」を取る名古屋駅を持つ愛知県だった。愛知県の大村知事は静岡県の川勝知事に、このままでは工事が完成しない、だだをこねないで工事に合意しろと圧力をかけ、会談を要請した。会談に応じた川勝知事の「水問題」の解決要求に対して、大村知事は何ら具体的に答えることはできず物別れに終わった。
 これを受けて今度は国交省が直接乗り出した。しかし、会談の事前情報を第一テレビが報じた。それに対して、国交省側は静岡県側を怒り、謝罪・土下座を要求した。これに川勝知事は激怒し、結局年内決着は破産した。「地元の理解を得た上で」ではなく、「地元の理解を得つつ」と国交省側が以前の太田国交大臣の約束を反故にする文案を持ち出し、あいまいな決着を目論んだからだ。そして、静岡市とだけしか話し合いを持って来なかった国交省が関係する島田、掛川、藤枝、焼津の四市長と初めて会談を持ったが、市長側から強く反発する意見が出された。

大きな危険、長野でも強い反対

 リニア工事は静岡県だけでなく、長野県でも大きな問題を抱えている。それはトンネルを掘った際出る残土の処理・置き場が決まっていないからだ。地元住民の反対は強い。
二〇一六年一一月、長野県大鹿村は、長野工区トンネルを着工したが、残土処分計画が頓挫している。同村内に仮置きされ、同村の村長は、「最終的な処分地が決まらなければ、本格工事はできないだろう」と議会で答弁した。
二〇一九年一月、松川町は、同町内に予定された六二〇万立方メートルの内、二カ所の五九〇万立方メートルについて、受け入れないとした。町の福与区の住民は、三六災害(1961年、死者136人、家屋の被害898戸)で寺沢川からの土石流により壊滅的な被害を受けたので、「盛り土の危険性を見抜き、JR東海のずさん極まる計画」を拒否した。
残土問題連絡協議会などの長野県民は、「残土の処分地として不適当であれば、計画自体を中止・撤回すること」と要求している。
「長野県で残土の引受先が決まっているのは全体のたった二%しかないこと、さらに、名古屋駅での土地取得も計画通りでないことも明らかにした」(読売、11月8日)。
「静岡県とつながる南アルプストンネル長野工区では作業用トンネル(斜坑)工事に二年近くの遅れが出て、工程表の完成を「未定」にしてしまい、本線トンネル着手など全く見えてこない深刻な現状を伝えた」(静岡新聞、10月23日)。

桜井建男さんに聞く
(リニア新幹線を考える県民ネットワーク事務局員)

――二〇一八年六月、唐突に静岡市とJRと東海が基本合意した。どのような内容ですか。

 大井川の水の減量に対して対策を取ります、環境保全を環境アセスに則ってやる、地域振興に責任を持ちます。井川、静岡市内の県道にトンネルを作ります。そうすると井川と静岡市内を結ぶルートが今までより、二〇分程度短縮になる。リニアは二〇二七年開通目標だから、二〇二〇年を過ぎてからしか完成が見込めない。だから、工事用道路としては使えない。NATOMU工法、掘削する大型機械。それはどこを通るかというと島田・本川根。それと合わせて林道整備。
県知事は水が減ることについての水の権利者、島田市、牧の原市や菊川市など一〇市町村と協定を結べと言っている。今のままでは県は工事の着工を認めないと言い続けてきた。

――トンネルを掘ることによって、毎秒二トン減る水を大井川に返さなければ工事は認められないと、水の関係自治体は主張している。JR東海は技術的にもこんなことを受け入れることはできないのではないか。

 一週間前に、JR東海が県の方針に従うと発表したがそんなことはできない。漏れる水、水源地に送水道管で水を流すといったって、そこに集めきれるわけではない。ありとあらゆる所から地下に浸透していた水が流れ出す。その水量はぜんぜん考慮されていない。毎秒二トンというのはどれぐらいなのか想定していない。華厳の滝なんだよ。あれが毎秒二トン。すごい量なんだ。しかもそれは掘って見なければどれだけの出水があるのか、どれだけの濾水があるのか想定できない。
環境アセスメントセンターの塩坂邦雄さんの講演会があった。今でも北岳と夜叉神峠の測量を毎年一回やっている。それを統計的に処理をしたら、静岡県の環境影響評価の委員や地震学者や地質学者も、南アルプスは年間四ミリ隆起しているという結論を出している。塩坂さんは三ミリかもしれないという幅はある。しかし、隆起は起きている。しかも、リニアのトンネルは大きくない。縦一八mと横一五m。天井部分と一五〜一六センチメートルしか隙間がない。

万が一の事故
に対策考えず
――そのトンネルを時速五〇〇キロで走る?

 毎年四ミリ隆起しているとどういう影響が出るか分からない。もし、事故が起きた時に、どこかでストップさせなけりゃならない。今の東海道新幹線は地震が起きて、二五〇キロで走行しているがだいたい一〇分前後でP波を察知したら、自動的に止まるシステムになっている。それが五〇〇キロだったら、P波で察知しても、どれだけ行っちゃっているか分からない。ものすごい危険だ。しかも、避難施設がない。どういうものになるかJR東海は回答していない。

――トンネルの中で事故が起きたらどうしようもないね。

 ケガ人が出たらどうするのか、ヘリポートの設置も決まっていない。それから残土の問題もJR東海は三六〇万リューベを山の上にそのまま置く。千枚沢なんか毎日崩れているのだから、どうしようもないよ。JR東海は資源として再利用すると言っている。どういうふうに再利用するのか知らないけど。
法的な問題もあって、源流域まで旧東海パルプの所有地だ。今は特殊東海製紙。大井川の河川区域は毎年流れによって変わるわけ。河川区域に構造物を設置するには県知事の許可を得なければならない。河川課と交渉したが、現状で区域に含まれている可能性がある。その場合は県知事の許可が必要になる。現場と突き合わせて、東海パルプと調整しますと回答してきている。これからどうなるか分からない。
もう一つの問題は渇水が起きる。その結果、動植物にどういう影響が起きるか、山梨県側で河が枯れている。水が抜けてしまっている。
あと、結果として、あそこには断層がいっぱい走っている。糸魚川・中央構造線が走っている。しかもそこに、破砕帯がどれだけの規模か確定できていないけども、かなりの規模である。そこで大規模な出水ともし地震でも起きたら、一発で山体崩壊が起きるという可能性がある。そんな所でトンネルを掘るなんてとんでもない、というふうに塩坂さんは言う。しかも環境保全でちゃんと対策をとりますとJR東海は言うが、環境アセス法はもともとザル法だから、いっぱい抜け道がある。何にも対策なんか取らなくてもいいアセス法だ。それは頼りにならない。彼が言うのは実測しかない。どこで何が起きているのか。工事に入る前のデータ、水量から、植生のデータをきっちり提出させる必要がある。静岡県もそれはやると言っている。

市民の声集め
幅広い反対へ
――川勝県知事はJR東海が水問題で新たな対応を言っても信用できない、反
対という立場は崩していないようですが。

 一番強硬なのは島田市長の染谷さんだ。そんな水量問題が見通しついたからといって、そういう問題ではない。地元に何の相談もなしに、環境がどういうふうに保全されるかも何にも説明のないまま、絶対に許せないと彼女(島田市長)は言っている。

――県や水組合の反対の姿勢は重要ですが、一つの反対理由だけでなく、トータルとしてリニアの問題の持っている重大な欠陥と環境破壊を許さない運動が重要でしょう。反対する市民運動どうなっていますか。

 林弘文さん(静大名誉教授)、林克さん(元県評議長)らが共同代表となり「リニア新幹線を考える県民ネットワーク」がつくられ、松谷静岡市議らによって「南アルプスとリニアを考える市民ネットワーク静岡」がつくられている。私は県民ネットの事務局をやっている。これまで、集会・学習会や現地調査を重ねてきている。台風19号でつばくろ沢の残土置き場やトンネルを掘る場所に行く林道がズタズタになってしまった。資材や重機、プラントが流された。林道を直すのに一年以上はかかるのではないか。これで工事がまた遅れる。
リニア建設に対して、事業許可取消し裁判を、各沿線で反対する市民グループが訴訟を起こし、裁判をやっている。口頭弁論が年内で終り、来年から証人申請・尋問に入る。これとは別にリニア建設によって南アルプスの生態系が破壊されるとして、損害賠償の民事訴訟を起こす準備に入っている。大井川水系を利用している農業関係者を含め市民が協力して提訴の中心を作っていきたい。
JR東海はトンネル工事残土や水利問題で重大な困難を抱えている。私たちは環境破壊・生活破壊のリニア建設を中止させるためにこれまで以上にねばり強く闘っていく。ご支援をお願いしたい。


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