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    かけはし2019年11月18日号

声上げず耐えてきた底辺からの憤りが噴出


チリ

反自由主義の蜂起が始まった

TSR(テンデンシア・ソシアリスタ・レボルシオナリア)


 チリでは、一〇月六日に政府が実施した地下鉄料金値上げを発端として、まず首都サンチャゴで民衆が蜂起した。これに対し政府は非常事態宣言と夜間外出禁止令で弾圧に出たが、蜂起はむしろ各地に拡大、結局政府は問題の地下鉄値上げの撤回に追い込まれただけではなく、一一月にチリで予定されていたAPEC会合とCOP25会議の主催国返上をも余儀なくされた。一〇〇万人規模のデモが連続するなど、チリ情勢は急速に進展中だ。この蜂起の根は深い。地下鉄料金はきっかけにすぎず、ピノチェト以来続いている極端な新自由主義政策への強烈な憤激が表出している。それを伝える以下の声明は、ゼネラルストライキ前日の一〇月二〇日に公表された。なお七面に紹介する別掲記事にあるように、ほぼ時を同じくして、エクアドルでも政府が実施した燃料補助金廃止などに反対する先住民を主体とする決起が爆発、政府は同政策の撤回に追い込まれている。(「かけはし」編集部)

若者が民衆反乱に火をつけた

 サンチャゴ市の地下鉄での無賃乗車によって、中学生が導火線に火をつけた。それは、最低賃金が月額ほんの四三七ドルでしかない国で、往復あたり一ドルに相当するものを超えた料金値上げに対する回答として、一週間前に行われたことだった。この無賃乗車行動は、職場に通う被雇用者が加わることで急速に数を増した。政府は抗議を無視し、地下鉄の駅を軍事化された警察(特別部隊)をもって占拠したが、この部隊はあっという間に圧倒された。総計で一三六の駅をもつ地下鉄路線は、六〇〇万人の住民を抱えるこの都市では交通の背骨になっている。
ソーシャルメディア上では、一〇月一八日の抗議行動日に向け一つの呼びかけが行われた。そしてサンチャゴでは人々が、バリケード、街頭封鎖、また暴力をもって、大挙して街頭に繰り出した。その夜地下鉄の焼き討ちが始まった。最初は四駅だった。今や地下鉄ネットワークのさまざまな路線で、四一駅が焼き討ちされた。
情勢は刻一刻と緊張を増しつつある。政府は、非常事態(民主的な自由の制限を可能とする憲法の例外状態)を宣言した。三〇年を経て(ピノチェト時代以来の:訳者)、サンチャゴ市は再び街頭に軍を見た。しかし民衆は、怖じ気づかなかった。彼らは引き下がらず前進した。昨日われわれは、「兵隊出ていけ」と叫びながら何千人という姿で街頭にとどまった。軍の当局は姿勢を硬化させ、午後一〇時以後の外出禁止を命令した。しかしこの外出禁止令は受け容れられなかった。われわれは午前〇時以後まで街頭にとどまり、その後休息のために撤退した。闘いが続くからだ。
政府は、何らかの政治的対応を行ういかなる能力をも使い果たしている。昨日政府は料金値上げ取り消しを公表したが、この料金問題がはるかに多くの構造的で深い問題の象徴にすぎない、ということを理解していない。

教育と医療は極端に劣悪化

 われわれは、四〇年前この地球上で知られたものの中で最も極端な新自由主義にさらされた民衆なのだ。彼らは教育を私有化した。勉学のために人は、銀行から借り入れしなければならない。「コンセルタシオン(協調)とヌエバ・マヨリナ(新多数派)」(中道左派連合、前大統領のバチェレは新多数派の指導者:訳者)の諸政権期を通じて、さらに巨大な学生の決起(二〇〇六年および二〇一一年)の結果として、いくつかの授業料免除が制度化された。しかしそれは完全に不十分だ。若者たちは貧困の中で暮らしている。過程の一つの再試験を受けることは非常にカネがかかることになっている。彼らは、それほどまでの高い圧力を前に自死に追い込まれている。
彼らは医療を私有化した。われわれが抱えているものは、貧者のための医療と豊かな者たちのための医療だ。金持ちの前には極めて高価で豪奢な私立の医院がある。貧しい者は医療措置を待ちながら死ぬ可能性がある。二日前、バルパライソの「バン・ブレン病院」が破綻した。国家予算計上の不足のためだ。
われわれの住宅街の家族たちは、誰かが病気になる場合、物を売ったり、食事会を組織したり、連帯を働かせたりすることで、互いに支えあっている。そして閣僚たちは、われわれをからかっている。彼らは、われわれが「社会的に譲り合うことができる」のだから医院で順番を待つのはよいことだ、などと言うのだ。

水は盗まれ年金も権利も蒸発


彼らは水を私有化した。この命に関わる要素は、少数の、輸出向けの鉱業、アグリビジネス、林業、アボカド生産を専業とする雇用主に握られている。それらは彼ら専用の水であり、想像ができない規模の惨状を作り出してきた。先祖代々の農民共同体(先住民とチリ人の)は、水や資料の不足を理由に動物たちが死に行くのを見ている。そしてそれらの動物たちは、彼らの生計なのだ。彼らはそれらからミルクを搾っている。そしてチーズを作り、自分で生計を立てる持続可能な経済を生み出している。しかしこれらのコミュニティは、無関心な諸政権と政治的当局の判断の中で死に続けているのだ。
鉱業の便宜のために、彼らは、淡水の蓄えを構成している氷河を破壊し続けている。海水淡水化が始まった。しかしそれは私的事業としてであり、新たなビジネスとして計画されているのだ。そして本日、二〇一九年一〇月二〇日、今回の社会的動乱の一つの結果として、盗人たちはいくつかの川の水を自由にした。その川は昨日まで、本日は水がそこを流れているのに、涸れていたのだ! それは渇水ではなく、盗まれ続けていたのだ!
彼らは社会保障を私有化した。彼らは、年金支払い目的とされた賃金の一三%の強制預金、そしてAFP(年金基金管理者)という名称の企業がその金を管理する、という一つのモデルを制度化した。一九八〇年代に働き始めた世代にとっては今が退職時期だった。そして年金額は、最低賃金の三分の一、約一四一ドルに相当している。それは、労働生活終了後は貧困の中で死ぬことを意味している。
彼らは、労働者を原子化したままにとどめる雇用の法制化を実行した。諸々の企業は、請負業者と、外部や家内の、別々に交渉することを義務づけられた下請け人、という一連のつながりを通してバラバラにされている。ストライキ権は厳しく制限された。
結果は社会的惨事だ。住民の半分以上は、五六三ドル以下しか稼いでいない。何年も働いてきた人々は、彼らの所得を引き上げようと、さらに多くの時間働くようになった。過重労働と重債務が、われわれの仲間である市民の首を締めている二つの鎖だ。

独裁終えんでも生活に改善なし

 チリで二〇一九年一〇月に始まった社会的動乱は、あまりに長い間声を上げずに耐えてきた民衆内部の、拒絶、憎悪、深い憤りを表現している。「民主的な」体制は一九九〇年に任に着いた。そして「コンセルタシオン・デ・パルティドス・ポル・ラ・デモクラシア」(前述のコンセルタシオンの正式名称、民主主義のための政党連合でキリスト教民主党、社会党、急進党、民主主義党などで構成:訳者)により率いられたが、それは多くの民衆の生活条件改善を意味しなかった。これは、「金持ちの民主主義」なのだ。
この民主主義は独裁下で実行された私有化を終わりにせず、独裁下で設計され確立された経済的、社会的、政治的体制の、基本的諸支柱を疑問に付すことを何年も拒否してきた。問題になっているものは、チリ社会内部の少数グループと世界資本主義に奉仕するだけの極端な新自由主義の生き残りだ。
われわれは、ここまで描かれてきたことと対照する形で、他国籍資本と連携する僅かの経済グループの存在が二、三年の中で打ち固められてきた、と強調する。それらは、世界の最富裕部分の中に登録されている。それらがチリを所有している。それらがチリの諸政党を所有している。それらが議会を所有している。これらの巨大な力が生み出す脅迫や買収による圧力から免れている政党や議員は僅かしかいない。
政府と大ビジネスは深刻な懸念を抱えてこの動乱に向き合っている。それは彼らが来ることを予想したものではない。彼らは驚かされることになった。そして、この抗議を黙らせるための力をもつ対話者を、誰一人確保していないことを分かっている。彼らは、「民衆の代表」という役割を演じる死者を生き返らせようと努めるだろう。われわれはそれらに含まれるものとして、共産党、社会党、CUT(労働者連合センター、チリの労組ナショナルセンター:訳者)、またフレンテ・アンプリオ(「広範な戦線」、二〇一七年結成の新政治勢力であり、旧来より左翼色の強い新しい中道左派:訳者)の諸個人までも思い浮かべている。

労組中央バイパスしゼネストへ


昨日、二〇一九年一〇月一九日、「コオルディナドラ・フェミニスタ3・8・デ・マルゾ(3・8フェミニスト共闘)」が、「アセンブレア・コオルディナドラ・デ・エストゥディアンテス・セクンダリオス(ACES―中学生調整会議)」に結集した中学生、および「ムビミエント・エコロジスタ・アグア・イ・テリトリオス(MAT―土地と水環境運動)」と共に、記者会見を召集し、それは本日開催された。多くの学生、住民、フェミニスト、環境運動組織が、さらにいくつかの労働者組織も参加した。
しかしCUTは参加しなかった。「ムビミエント・ノ・マスAFP」(新しい年金制度を求める対案運動:訳者)も参加していない。この最後の二つは確実に、政府の呼びかけを待ちつつ、その結果として彼らが有効な力をもつ対話者として登場できるように、彼らの持ち場で静かに待機している。
記者会見は本日行われた。第一のことは、われわれが明日、一〇月二一日にゼネラルストライキを呼びかける、ということだ。二点目は、われわれが非常事態の停止を、そして外出禁止令の停止を求めている、ということだ。われわれは、各分野の組織がそれらに、階級的独立の政策を、およびわれわれを何度も何度も裏切ってきた者たちに対する不信を取り入れるよう求めて声を上げている。
次いでわれわれは、「民主主義」の下で行われるわれわれの初めてのゼネラルストライキに際した明日のわれわれの行動を計画するために、3・8共闘と会合をもった。この都市は、交通サービスの途絶、断水、ショッピングセンターの略奪、地下鉄駅の焼き討ちを伴いつつ、動きを止めていない。そして爆発は諸地域に広がりつつあり、その地域は、新自由主義、水の盗み、生活の高費用、さらに道路やトラックの私有化に反対して立ち上がり続けている。
非常事態令は当初、サンチャゴとプエルト・エルトに発令された。それは次いでバルパライソ、オヒギンス、ビオビオ、コキンボに広げられた。われわれはこの状況がどう展開することになるのかは分からない。すでに死者や負傷者が出、投獄された者もいる。その数がどれだけになるか、われわれには分からない。可能ならば今後情報を送るだろう。
多国籍資本の指令に従わされた「典型的な」国であるチリにおけるこの社会的蜂起は、ラテンアメリカ内部ではもう一つのものだ。これは、世界資本主義の退歩を表している。われわれはすべての国際組織に、この重要性について共有した理解をもつよう、またわれわれを悲惨と死に追いやっている血に飢えた資本主義を終わりにするため、革命的諸勢力に加わるよう訴える。(チリ、サンチャゴ、二〇一九年一〇月二〇日)

▼テンデンシア・ソシアリスタ・レボルシオナリア(TSR)は、チリにおける第四インターナショナルのシンパサイザー組織。(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年一〇月号)    




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