左翼離脱派への批判
離脱キャンペーン、真の姿の直視を
フィル・ハース
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以下に紹介する論評は、英国の急進左翼の多くと労働党内左派の一部に根強い左翼の立場からEU離脱を支持する立場に対する批判。左翼離脱派に典型的な、労働者階級とその擁護に関する教条的な考え方も示され、それに対置する形で、労働者階級をより拡大してとらえ、その層に体現される進歩的な感性が左翼の守るべき伝統的な価値に則していること、およびその中で特に反レイシズム闘争の重要性を力説している。なおこの論評は、現在英国で進行している政治的危機の高まり以前に書かれている。(「かけはし」編集部)
今日の労働者階級に背を向けて
ジョン・クルッダスのガーディアン紙論文には、左翼離脱派に広く支持されている単純なメッセージ、つまり、労働党はブレグジットにおける「残留」を支持するならば、その伝統的な労働者階級の基盤を失うだろう、とのメッセージがある(注一)。彼はその上で、労働党に伝統的な労働者階級に基礎をもつ政党であることを止めさせ、「残留派」における階級性のより低い都会的基盤に向けて動いてほしいとする、間違った立場の強まりがある、と論じている。そしてそこには、これは中間階級の利害と諸々の価値に対する降伏だ、とする明確な含みがある。
クルッダスはこの間違った立場の鍵となる例としてポール・メイソン(評論家、ラジオのパーソナリティ:訳者)によるいくつかの論評を挙げ、次のように語る。「……近頃、社会民主主義者と急進左翼の両者は、新しい進歩的な『基盤』を主張しようとしてきた。この歴史的な再考の先導的な唱道者であるポール・メイソンは最近、『新しい戦略は、労働者の中核領域は今や大都市に、俸給生活者の中に、また世界的な志向をもち、教育を受けた労働力部分の中にある、との認識に基礎付けられなければならない』と提案した。彼はこれを、古典的な左翼プロレタリアートとは一定の距離がある、『労働党構想の新たな中核』と見定めている。この新たな『基盤』は、『残留派』内に属する『ネットワーク化された諸個人』を軸に形成されることになる」と。
われわれは後で、ポール・メイソンのけばけばしさの多い言葉のいくつかに戻るが、しかしここではクルッダスの反論を見よう。彼は、労働党はその伝統的な(そして親ブレグジットの)労働者階級の支持にしっかりと基礎付けられることによってはじめて勝利できる、と断言している。そしてその労働者は、労働の重要性のような、旧式な諸理念に忠実な労働者であり、労働党が二〇一七年の総選挙で大きなリードを確保した、ABC1(訳注)と称される諸々の社会的階級に入っているような人々すべてとは異なっている。
クルッダスの記述には、労働者階級が今日実際にどういうものであるかについて、またその社会的、職業的多様性についても、明確な説明がまったくない。彼の論文は、労働者階級に関する彼の概念があたかも、工場や鉱山や高炉、また鉄道で働いている主に白人の社会集団であるかのように読み取れる。しかしこれは、今日の労働者階級がもつ社会的で職業的な多様性に関してよく知られた事実すべてとは、真っ向から反しているのだ。
主張には大きな脱落部分がある
EU議会選におけるジェレミー・コービンの選挙区であるイズリントン・ノースでの自民党多数は中産階級の票だった、との議論が左翼離脱派によって広められてきた。理由は、そこではABC1の有権者が多数派、というものだ。
しかしこれはマルクス主義的階級概念ではなく、市場調査の標的グループ分けにすぎない。あいにくながらC1には、ほとんどの事務職労働者と非肉体労働者の大多数が含まれている。それゆえたとえば医療事務職、学校管理職、低賃金の公務員、図書館労働者、地方政府の低賃金職員の諸部隊、教員、および他の多くがC1の中に入り、彼らは主要な労働者階級としてある。しかもこの集団はおそらく、女性と何百万人にもなる民族的マイノリティの多数派を抱えている。
これが、今日の都会中心部にいる労働者階級の多くの現実なのだ。彼らは、世界化されたネットワークとつながって、年に一〇万ポンドを稼いでいる現代風の情報技術起業家ではない。彼らの多くはそれどころか、たとえ彼らの多くに大学の学歴があるとしても、極めて低賃金なのだ。そして彼らこそが、学生と共に二〇一七年の総選挙でコービンと労働党に大量の票を届けたまさしく労働者階級の集団だ。
ジョン・クルッダスの論文には、ブレグジットに関するその立場に関わりなく、確実にあらゆる者に印象を与えることになる一つの目立つ脱落部分がある。つまり、何であれブレグジットの社会的、政治的内容に関する議論がまったくなく、たとえばイギリス民族主義、外国人排撃、反移民の偏見、二〇一六年の国民投票後に雨後の竹の子のように出てきたレイシズムの高まり、にもまったく言及がない。ブレグジットが現にそうであり、二〇年以上そうだった、保守党強硬右派の一構想、という事実にもまったく言及がない。そしてこの強硬右派はその構想を、保守党の支配を奪取するために首尾よく利用してきたのだ。
ジョン・クルッダスはもちろん十分に、われわれは選挙の勝利や「トライアンギュレイション」(チェスの有効手:訳者)にかかりきりになってはならない、われわれはわれわれの核心的な諸原則と諸価値を守らなければならない。と語っている。
こうして「いずれにしろ政党は票を追い求めるためだけに存在しているのではない。それらは、公正と民主主義に関する競合的な諸理論、つまり社会はいかに組織されるべきか、に関する代わりとなるアプローチ、を軸に構築された伝統だ。労働党にとってブレグジットの対立は、党の性格と目的、さらには存在そのものに関する、党の心臓部における緊張に向かっている」と。
労働者は離脱を支持、は真実か
まことに結構だ。しかし確かなこととして、公正と民主主義の核心的伝統には、レイシズムと対決し、多文化主義を支持する闘いが、つまり移民と移民労働者の諸権利に対する支持が含まれているのではないのか? レイシズムと移民の諸課題はクルッダスの論文では触れられていない。これは実に象徴的な沈黙、聞こえてこない沈黙だ。そしていずれにしろ、社会的公正への献身がなぜ残留に反対することを意味しなければならないのだろうか?
クルッダスは一つの事実に言及することなく労働者階級について語っている。その事実とは、ウェイン・アッシャーが以下のように説明するものだ。
つまり「労働者階級地域は離脱に大量に票を投じたという一般的に受け入れられている考えは、部分的に正しいにすぎない。すなわち多くはそうしたが、ロンドンの伝統的な労働者階級地域は最高の残留票を届けた(ハリンゲイでは七五%、ハックニーとランベスでは七八%の頂点を印し)。残留は、労働者階級地域の大中心都市のほとんど(ブリストル、カーディフ、レイチェスター、リバプール、マンチェスター、リーズ、ニューカッスル―アポン―タイン)で勝利した。似たような重要性をもつ三都市だけが離脱に投票し、そうであっても僅差でそうしたにすぎない(バーギンガム、シェフィールド、ノッティンガム)。労働者階級のスコットランドはもちろん大挙して残留に票を投じた」という説明だ。
さらに「労働党支持者の三人に二人は残留に投票した(私の考えでは、保守党よりも労働党に投票するということが、階級意識では最低の入り口レベルとして重みがある)。働いている者の過半は、パートタイムであるかフルタイムであるかに関わりなく、残留に投票した。自らをアジア人と語る人々の三分の二(六七%)は残留に票を投じた。黒人有権者の五人に四人(七三%)は残留に票を入れ、ムスリム有権者の七〇%もまたそうした。これらの有権者は明確に、国民投票キャンペーン期間中の犬をけしかけるような実のあるメッセージを理解しているのだ」と付け加えている(注二)。
これは、何百万人もの労働者が事実として離脱に投票し、あるいはその多くが強行離脱を支持していると思われる、ということを否認するものではない。しかしそれは、本当の労働者は離脱に投票し、世界化された都会のプチブルジョアジーは残留に投票している、という考えを全体的視野の中で考えるものなのだ。
反動の高まり
への過小評価
同様に不安にする別のものがある。つまり、労働者階級の離脱派と世界化した残留派エリートの間に階級の線を引こうと試みること――クルッダスだけではなく何人かの他の左翼ブレグジット派がやっているように――は、UKIP(英国独立党)とブレグジット党が力説するもののたちの悪いこだまをはらむある種の戯画、ということだ。つまり、残留を欲しているのはグローバル主義者、エリート、と。
ジョン・クルッダスは、EU議会選では労働党が親ブレグジット諸党によってというよりも自民党や緑の党によって多くの票を奪われたというのは本当だが、長期的に見た場合労働党は離脱に区分けされた地域でより多くの票を失い続けている、と語る。そして思うに彼は、南ウェールズ、いくつかの南ヨークシャーの町々、さらにこの何回かBNP(極右政党の英国民族党:訳者)市議会議員を選出した、彼自身の選挙区、ダーゲンハムのようなところを念頭に置いている。
これらのところにおける労働党支持の長期的後退は、伝統的な工業の崩壊と全体として労働運動が喫した数々の敗北、そして結果としての労働運動の後退、これらに大いに関係している。これらの地域を窮乏と社会的悲惨から救い出す上で必要とされた抜本的な行動を、引き続く諸政権が、特に一九九七年から二〇一〇年の労働党政府がとることができなかったことに怒りをもつ点で、左翼はまったく正しい。この破綻は実際、政治的反動に扉を開いた。
「彼らの誰もわれわれを気にかけていない」との姿勢は、「置き去りにされた」地域に広がり、極右から情け容赦なく利用されてきた。しかしそれはどのようにしてか? 左翼と右翼のエリート双方とも労働者階級を気にかけていない、という主張の形をとっただけではなく、これらの地域の貧困と窮乏は、移民と「われわれの民衆」を上回る移民地域に対する援助の優先化(同じ議論が対外援助に関しても行われている)の直接的結果だ、という主張の形もとっているのだ。置き去りにされた町々にいる親離脱の人々に話しかけ、「ここには移民が多すぎる」との決まり文句に彼らのどれだけが同意するか確かめてみればよい。それは非常に高い比率になる。
同じ人々にドナルド・トランプと絞首刑に対する姿勢についても聞いてみればいい。それは確かに、政治的立場とその立場の社会的内容を人々が取り入れる理由を識別する初歩的な手続きだ。
中西部のラストベルト地帯のドナルド・トランプ支持は多くの場合確かに、ヒラリー・クリントンが体現した新自由主義のエリートに対する不信と憎悪の作用だった。しかしそれはそれでも、また完全に反動的な票だった。そしてEU議会選でブレグジット党に投票した多くの中産階級といくらかの労働者階級の人々もまた、反動的な票を投じたのだ。
反緊縮に立つ残留で左翼拡張へ
いくつかの貧困な地域における労働党票の長期的後退はブレグジット国民投票に先立っている。もちろんそれは大問題だ。そして現実に、それは労働党指導部に、いくつかの難しい戦術的な選択を提起している。
しかし言葉でのごまかしはどこにもたどり着かない運命にある。EU議会選では多くの運動員が、労働党について残留派は離脱支持と考え、離脱派は残留支持と考えた、と報告した。労働党は、今回自民党と緑の党を選択した社会的に進歩的な有権者内部のその基盤を、支柱で支えなければならない。コービン指導部は、緊縮に対する自由主義者の責任を、また緑の党の親環境諸政策を実行させる唯一の方法は労働党に投票することということを、繰り返し指し示さなければならない。
実際のところ、二回目の国民投票という問題は中心的問題ではない。鍵は、保守党のブレグジットノーだ! これは事実上自ずから強硬ブレグジットノーへと分解する! そしてその論理は極めて明快だ。強硬ブレグジットより残留の方がいい、と。
そしてそれは、本物の外国人排撃の中核を区別することになる問題だ。ここでは駆け引きをすることに絶対的に何の利点もない。われわれは、レイシズムが労働者階級のある部分で広がっていると断固として語り続ける。そして問題はそれと闘うことだと。
ポール・メイソンは大都市中心部のより新しい労働者階級について何か華麗で不確かな言葉を使用している。しかしメイソンの推測の合理的な核心は、単純に抜き取ることができる。新しい労働者階級はより若く、女性がより多く、民族的にはより多様、ということだ。
そのほとんどは、EU諸機構を彼らが好んでいるからではなく、彼らが親多文化主義であり、国際主義の心をもっているがゆえに、またナイジェル・ファラージと彼が立脚するすべてを嫌っていることを理由に、残留に票を投じた。彼らはまた、クライメート・ジャスティスを求める高まり続ける運動の基盤でもある。労働党と左翼の基盤が外へと拡張される可能性が生まれるのは、これらの価値を求める闘いによってなのだ。(「ソーシャリスト・レジスタンス」二〇一九年六月二八日より)
▼筆者はウェブサイトのマルクスサイト編集者で、ソーシャリスト・レジスタンスの支持者、第四インターナショナルと協力している。
(注一)ガーディアン紙今年六月二六日付け「労働党には、残留を後押しすることでその労働者階級基盤を失う余裕はない」。ジョン・クルッダスはダーゲンハムとラインハムを代表する労働党下院議員。
(注二)「ソーシャリズム・インターナショナル」誌二〇一九年一月号のウェイン・アッシャーの論評「穴に籠もり今も掘り続ける:左翼とブレグジット」。(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年九月号)
(訳注)ABC1はマーケティングにおける購買層分類用語。ABは上中流階級から中流階級を指し、C1は低中流階級を指す。 |