香港
多国籍の住民抱える都市の民衆決起
高まる抗議運動は移住労働者
無視を止めなければならない
プロミス・リ
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犯罪人引き渡し法を契機に始まった香港の大衆的決起は、要求を広げ急進化しつつ現在もその勢いを保っている。その中で見えない形にされているものの重要な一部として、移住労働者の問題がある。周知のように香港は多国籍の人々が活動している場であり、その中では女性の移住家事労働者の存在も大きな位置をもっている。しかし、今回の運動の中での移住者の動きや問題が伝えられることはほとんどない。以下はその欠落部分を伝え、運動の将来にとって移住者との連携追求が重要な意味をもつことを強調している。(「かけはし」編集部)
前例のない決起下の移住労働者
八月五日、三五万人を超える労働者が数世代では初めてのゼネラルストライキとして香港の街頭に繰り出した。大量の旅客機飛行が取り消され、この都市の交通システムは混沌に投げ込まれた。このストライキは、香港の犯罪者引き渡し法修正提案に反対する何週間もの抗議行動の頂点だった。ちなみにこの法案は、犯罪者引き渡しの諸決定を指令する、また議会を迂回する前例のない権力を、行政部トップに与えると思われる。
この運動は労働者と学生間の連帯に関する印象的な表現であり、この都市が示した近頃の一連の大衆的決起においては、前進への重要な一歩だった。しかしながらゼネラルストライキでは普通でないことに、労働条件をめぐる明示的な要求は一つもなかった。中国からの自律性を求める要求が、何百万人もの人びとを街頭に決起させた。しかし先のストライキが明らかにしたように、連帯に向けた道はなおいくつか存在し、それをこの運動は今も見落としている。
この都市の現在の闘争では、東南アジアからの移住家事労働者は、ある種類例のない、しかしむしろ無視された位置を占めている。香港では、フィリピンとインドネシア出身をほとんどとして、ほぼ四〇万人の移住労働者(ゼネストの規模以上になる)が極度に低い賃金で働いている。そのほとんどはより良い職を求めてこの都市にやってくるが、しかしほぼその八〇%は債務を抱え、募集代理人の搾取的な行為に起因する借りがある。最新の報告によれば、移住労働者は香港経済に一二〇〇万ドル以上貢献している(注一)。
これらの労働者の多くは、抗議行動に支持の気持ちがあり、そのいくつかが親民主派の香港労組連合(HKCTU)に加盟している移民の諸労組は、彼らのメンバーに街頭に出るよう強く促してきた(注二)。しかしさまざまな圧力が彼らの参加を限定し、抗議の諸要求はこれまで、彼らの物質的な懸念に直接取り組むことはなかった。ある者たちは、彼らの労働ビザが取り消されるという怖れによって参加しないよう強いられた。
たとえばフィリピン領事館は、移住労働者の抗議行動参加意志を打ち砕く通知を送った(注三)。フィリピン人移住労働者のクラリッセ(*)は、多くの雇用主は抗議行動への彼女たちの参加にいい顔をしない、そして何人かは法的に権利を与えられている休日を取ることを妨げることまで行った、と語っている。その上に付け加えて彼女は、移住者たちが通常集中している地域が警察と抗議行動参加者間の衝突における中心的な現場になった、と指摘している。
移住労働者取り巻く複雑な状況
国際家事労働者連合(IDWF)を代表する地域コーディネーターのフィシュ・イプによれば、政府の偽の通知、また死の脅迫すらも、移住労働者のソーシャルメディアプラットホームの中で、たとえばウイーチャットやワッツアップで匿名で流されてきた。一つのメッセージは特定的に、もし抗議行動に参加すれば、ネパール人、インドネシア人、パキスタン人を襲うと脅した。その多くは家事労働者ですらなく、それは、香港ではどれほどさまざまな民族的マイノリティがごっちゃにされているか、そして標的にされているか、を示している。
ゼネストの夜に香港の警察がひとりのフィリピン人ダンサーを虐待し逮捕したという報告が、これらの恐怖をさらに深めた(注四)。他の脅威が、ユエン・ロングにおける抗議行動参加者に対する攻撃に民族的マイノリティが関与したという噂、に発する報復として形作られた(注五)。
一九九六年から香港で働いてきたフィリピン人のホペ(*)は、引き渡し法が現地人と移住者双方にさらに悪影響をおよぼすと思われる諸政策に向けて道を開くだろう、と恐れている。彼女は何よりも、労組に団結する権利と集会の自由が危険にさらされるだろう、と心配している。
ホペはフィリピン領事館から、デモは家事労働者にとっての関心事ではない、と告げられた。しかしクラリッセは、「われわれは香港で暮らし働いている。ここはわれわれの第二の故郷であり、何が起きてもわれわれは悪影響を受けるだろう」と、領事館の姿勢を拒絶する。
しかし、香港の移住労働者の苦境に対しては広範な無関心がある。彼らの声は、親民主派の運動と政府両者によってひどく無視されてきた。これにもかかわらず移民労働者とのインタビューは、移住労働者が香港を故国から離れた故国と見ている複雑な形を示している(注六)。
そして最新の報告は、移住家事労働者が東アジアの女性がより多く労働力に参加することを可能にしている、と示している。すなわち、移民は彼らの限定された参加にもかかわらず、すでに諸々のデモで中心的役割りを果たしているのだ。つまり彼らの労働がより多くの女性がデモに関与することを可能にしている、ということだ。
排他感情が映し出す運動の弱点
今回の抗議行動は大衆一般にこの都市がもつ構造的諸課題に対する理解をあらためて検討する機会を与えてきたが、その一方移住労働者の諸権利は見えないものにされたままになっている。たとえば、警察行動に対して高まる不信は、急進化に向かう新たな、決定的な一歩だ。しかし移住労働者の諸条件に向けた沈黙は、この抗議行動参加者の諸要求の中にしつこくある弱さを露わにしている。つまり、香港の苦悩が世界化した搾取経済と新たな形態をとった植民地化の構造的な作用に深く結びついている、と認識することへの不能性だ。
この抗議行動に対して概して支持を感じている家事労働者であり、インドネシア人移住労働者連合(IMWA)のメンバーであるスリング・アティンは、この運動の諸要求は移住労働者の課題を具体的に扱ってはいない、と語る。彼女がこの決起の主な焦点と理解している新引き渡し政策に反対する闘いは、「もっとも周辺化されたコミュニティのために平等ときちんとした労働条件を確保することを労働者の要求に取り入れ」なければならない。
この課題をめぐる先を見通さない観点は、しばしば香港人主義イデオロギーの要素になっている排他的な外国人嫌悪の感情を表に引きだしている。「香港の独自性」に結びついた香港人民族主義の感性は、全体としての本土中国人に対する無批判的な外国人排撃を露骨に助長している、多くの香港人主義グループ、たとえば「土着香港人」から切り離せないものになった。この排他的な感情は、問題がその課題が香港の闘争にとっては補助的と見られている移住労働者の問題になる場合、より微妙に、よりさまざまに表出している。
階級と人種:運動まだ無自覚
香港は、米中間の地政学的闘争の間に押し込まれている。ウィルフレド・チャンは一つの論考で、「この間に位置する場の観点から生き延びる反資本主義的、反権威主義的諸政策を」この都市が「再構想する」上で、それが意味すると思われるものを問いかけている(注七)。回答は、この都市の労働者階級の運動にあり、それは新たな連携のイメージを必要とするだろう。国をまたがる反資本主義諸政策の潜在力はすでにここに、世界的な金融ハブとしての香港の独自性と争っているすべての他のブロックと向き合って、移住者と当地の人々が肩をこすり合っているこの都市にあるのだ。
しかしながら抗議運動の民族的分割は、この都市の労働経済と制度的な構造がもつ植民地の遺産に対するより深い理解を妨げている。香港の不完全な脱植民地化過程の作用の多くに耐えているのは東南アジアの女性家事労働者だ。この都市には、ジェンダー的特性をもつ搾取労働の諸行為に関する長い歴史がある。たとえば植民地期の中では、富裕な家族はしばしば、賃金のないあるいは低賃金の中国人家事労働者を頼りにしていた(注八)。
今日、故国のジェンダー的不平等や経済的不平等のような諸要素が理由でその国から押し出された東南アジアの四散した女性たちが、基本的なケア労働をやり続けている。移民学者のラセル・パレナスはこれを、「再生産労働の国際的分割」と記述している。彼女は彼女の著作『グローバリゼーションの使用人』の中で次のように書いている。 「送り出し国と受け入れ国の両者でほとんどの女性は、ジェンダー平等の家事労働分担を成し遂げてはいない。代わりに彼女たちは彼女たちの人種的あるいは階級的特権を、責任を伴う再生産労働をより特権のない女性たちに移すために利用してきた」と。
移住者と多国籍的ネットワークがこの都市の文化的独自性を形成してきたという事実にもかかわらず、所属に関する無批判的で排他的な考えが、人種的な分割を強化し続けている。この都市の深い不公正に真に異議を突きつけることができる急進的な運動は、普遍的な選挙権を求める要求を超えて進まなければならない。そしてさまざまな周辺化されたグループ間につながりを築かなければならない。
移住労働者が決定的位置占める
移住労働者の諸要求に光を当てることは中国の権威主義から注意をそらすことにはならないだろう。逆にそれは、われわれにあらゆる複雑な力学の中にある――ポスト植民地の香港内部とそれを超えて――労働を注視させるのだ。
香港の東南アジアの女性労働者はなぜそれほどまで賃金が低いのか、そして彼女たちの故国内ではなぜもっと低いのか? 香港と中国の政府はどのように共謀しているのか、あるいは抑圧のこのネットワークをどのように精力的に助長し続けているのか? この抗議行動はどうすれば周辺化された諸々の主体に近づきやすくなるのか? これらは、抗議行動参加者が香港のすべての者にとっての解放と民主主義を求めるならば、彼らが考慮に入れなければならない問題なのだ。
移住者の諸労組と諸組織は、これらの諸課題を前景に出す点で重要な役割を演じてきた。しかし、それらは何年も通じていくつかの勝利を得てきたが、新自由主義的グローバリゼーションに反対する連帯に大衆運動を決起させることができずにきた。現在の抗議行動をより包括的にさせる彼らの要求は、運動に対し一つの挑戦を提起する。抗議行動を支持する自己組織化した専業主婦たちによる最新の請願が示唆するように、家事ケア労働は正当な労働であるだけではなく、広がりのある闘争に向けた諸条件を確立する類型のものでもあるのだ。
抗議行動参加者のスローガン「自己香港自己救」(われわれは単独でわれわれの香港を救うだろう)の自己に含まれるのは誰だろうか? 「自己」のある部分に国をまたぐと同じほど当地に根付いている四散的な諸主体が含まれる場合、われわれの活動と分析には何が起こるだろうか? これらの問題は単に学究的で思索に向けたものではない。それらは、解放を求める香港の闘争の具体的な諸限界を定めるのだ。
中国の権威主義的資本主義下にある香港のあらゆる種類の抑圧と闘うことは、排外主義、香港人民族主義、さらに他の排他的な諸々のイデオロギーの解きほぐしを必ず必要とする。そしてわれわれは、中国の植民地主義的野心と闘うために、内側をも見なければならない。つまり自由は、黒いマスクを着けた前衛の中にだけではなく、前線にはいない多数の中にもあるものなのだ。われわれは、当地の人に含まれるのは誰か、そして当地の人はどれほど国をまたいでいる者とつながっているのか、を再考する必要がある。香港にとって、資本に対決する世界の、草の根の闘いに対する決定的な結び目は、その移住労働者にほかならない。
(「オープン・デモクラシー」より、※を付けた名前は当人を保護するために変えられている)
▼筆者は米国ソリダリティメンバーであり、その元専従オルガナイザーであると共に、ロスアンジェルスのチャイナタウンの「公正な開発を求めるチャイナタウンコミュニティ」(CCED)と協力する借家人オルガナイザー。現在はプリンストン大学で博士課程の研究を行っている。
(注一)タイム誌二〇一九年三月六日、「香港経済に移住家事労働者はどれほど貢献しているか」。
(注二)「ザ・ディプロマート」二〇一九年七月五日、「香港の抗議行動に移住労働者が加わっている理由」。
(注三)「ラプラー」二〇一九年八月一五日、「香港のフィリピン領事館、抗議行動予定地を避けるようフィリピン人に注意」。
(注四)「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」二〇一九年八月四日、「香港で働くフィリピン人と韓国人、モン・コクで逮捕さる―引き渡し法抗議行動で拘留された最初の外国人」
(注五)右同紙二〇一九年七月三〇日、「ユエン・ロングの攻撃に対する非難を彼らに向けているオンライン上の噂の中で、嫌がらせを受け差別されている民族的マイノリティグループ」。
(注六)ニコル・コンステイブル『香港の注文に合う召使い:移住労働者の物語り』第二版、コーネル大学出版二〇〇七年。
(注七)「ディセント」誌二〇一九年八月八日、「香港の死活を賭けた闘い」(本紙九月二日号七面)。
(注八)「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」一九九九年一〇月一七日、「奴隷制の伝統の中で失われた幼年時代」。(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年九月号)
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