インド/カシミール
カシミールの自治権はく奪決定への声明
排外主義、文化的レイシズム、
軍国主義的民族主義との対決を
2019年8月9日 ラディカル・ソーシャリスト
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インドのモディ政権がカシミールからの自治権剥奪を決定し、現地で予想される抗議に対し当地を予防的な事実上の戒厳体制に置いた。モディ政権によるこの行動は、カシミール民衆の生活と人権に対する重大な攻撃であるだけではなく、パキスタンとの軍事的緊張をも高め、南アジアの大きな不安定要因をつくり出している。この事態を前にインドの同志が以下の声明を出し、民衆に抵抗を呼びかけた。以下に紹介する。(「かけはし」編集部)
憲法と民主主義を破壊する決定
ラディカル・ソーシャリストは断固として、また明快に、憲法三七〇条の目的と原理的意味を事実上廃棄すること、および同三五条Aの逆転に反対し、それを糾弾する。こうしたことは、反民主的、反憲法的な法的策略の駆使を通じて行われた。そしてそこには、カシミールの人々に対する意図的な軍事的恫喝が付随していた。これまでに起きたことは、憲法の関連諸条項の文言と精神両者に関する不誠実とある種の詐欺行為にほかならない。
三七〇条の投げ捨ては、一九五七年に解散させられたJ&K(ジャム・カシミール)憲法会議の再構成とその同意に基づいてのみ可能となるものだった。したがって最初に大統領令が、容認不可能な形で(憲法修正なしに)三六七条を変更し、その結果として破廉恥にも、代理的な権威しかもっていないJ&K州議会を、上位の主権的権威をもつ憲法会議と同等視している。そしてJ&Kには知事の推薦に基づく大統領の支配がある以上、こうして大統領が三七〇条と三五条Aの投げ捨てを実行するのだ。
その上に独立インド史上初めて、一つの州の地位をもつ地域を二分割されたJ&K連合領域に格下げするために、再編成法が提出され、両院で採択された。ちなみにこの地域は、ニューデリーとポンデシェリ(連邦直轄領)のように立法機関をもつことを認められるだろうが、その一方ラダク(ジャム・カシミール地方東部地域)は、立法機関がまったくない他の五つの連合領域に加えられるだろう。この再編法は、BJP(現政権党のインド人民党、強硬なヒンドゥー民族主義を標榜する極右政党:訳者)に同調した野党の無気力さがなかったとすれば、少なくとも通過することはなかったと思われる。
国民会議派(J&Kの自治を系統的に空洞化してきた点では歴史的に最大の責任がある)は、現政権によるこれらの行為に形式的に反対している。しかしそれは、その結果に対してではなく、それが行われたやり方に異議を表明している、党員や何人かの指導者に基づくものなのだ。主流の左翼諸政党のみが、即座に街頭の抗議行動を組織し、抗議の全インド一日行動を求めて声を上げた。
はっきりさせようではないか。BJP政府とサング(BJPの行動隊的役割を果たしている民族義勇団:訳者)による厚かましい政治的かつ軍事的占領というこの制裁の主な目的は以下のことなのだ。
?第一に、ムスリムに対する、そしてJ&Kがこの国でムスリムが多数であるただ一つの州という事実に対する憎悪。
?第二にそれは、この峡谷地帯の住民の自尊心を傷付ける決意を表している。こうして、すでにそこにいる六五万人を超える兵員に加えて、さらに三万五〇〇〇人の先行的派遣があり、そこには、主流的カシミール諸政党指導者の軟禁、夜間外出禁止令、峡谷地帯住民全体におよぶ完全な通信遮断が伴われている。
?第三にそれは、ヒンドゥー・ラシュトラ(ヒンドゥーの統治:訳者)設立構想をさらに進めることだ。
?第四にそれは、パキスタン、米国、さらに世界の残りに対し、以下の地政学的メッセージを送る一つの方法になっている。つまり、パキスタンとの間で双方向的に解決されなければならない「領土紛争」などというものは、もちろんそれが国連や国際的な議題で何らかの形で主役を演じなければならないということも、もはやいかなるものもまったくない、人道的考慮などとんでもない、というメッセージだ。
短期的、長期的に起き得る危険
この問題は最高裁(SC)に持ち込まれ、憲法法廷が設立されることになるだろう。しかし、SCが今や悪事を迫られどれほどまで執行機関の意志と権力に沿うよう成り果てたかを前提とした時、これらの条文に関する正確な憲法的規定に正直かつ誠実であることは無論、最終判定が行われるまで行われたことを取り消し、一時的な停止を命じる延期指令を出すことであっても、この法廷がそのような勇気や誠実さを示すことは決してないだろう。
この法廷が、たとえ満場一致ではないとしても、三七〇条と三五条Aの投げ捨てを多数で承認することは、完全に予想可能なのだ。どちらかの、あるいは両者のケースに関し、州の地位から連合領域への格下げに反対する裁定ならあるだろう、ということはあり得るとしても、しかしそれも依然ありそうにない。
非常にありそうなこととして、おそらくJ&Kの立法機関に対するこれからの選挙以前に、ジャム地域での議会と立法機関の議席を、将来の選挙によってBJPおよびその連携勢力に多数を可能にするために、より多くごまかしの細工をするための、境界決定委員会が設立されるだろう。
三五条Aの投げ捨ては、峡谷地帯を含むJ&Kの人口構成を変える過程を始めるために、その結果としてそこに住むムスリムを事実上少数派にするために、必要だった。
峡谷地帯では、特に若者の内部に、怒りの高まり、インドの残りからの深まり広がる民衆的な疎外感、が生まれるだろう。まったくありそうなこととして、パキスタン政府からもけしかけられた国境を越える反乱諸勢力に対する、支援や新兵募集、また協力もより大きくなるだろう。これは、非暴力の行動であっても、「テロリズム」に関する新たに修正された法、および「容疑者」と見られた者を恣意的かつ予防的に逮捕、虐待、さらに拷問まで行う「非合法活動(防止)法」(UAPA)の利用を含んで、より程度の高い残虐さと抑圧の行使に向けた、インド政府と軍の口実に使われるだろう。
この地域の発展がどれほど止められてきたか、そして今やどれほど進む可能性があるか、に関する話しにもかかわらず、この峡谷地帯における「サングのヒンドゥートバ」(ヒンドウートバとは、ヒンドゥー民族主義の核心となる概念であり、ヒンドゥーの価値と一致する形でインド文化を定義しようとするイデオロギー:訳者)構想は現実の事実として、残忍な部隊と永続的な軍事占領を通して、あらゆる民衆的抵抗活動を完全に終わらせようと挑むことにより、それを統合することなのだ。
パキスタンとの国境を挟んだ軍事的小競り合いの可能性は、同時にそれらがある規模と程度での通常戦争に転じる可能性と同じく、さらにまたそれによって計算違いのあるいは不注意な核の応酬が突発する可能性をも高めつつ、相当程度高まっている。
現政府によるこの動きが国の残りすべてで、反対よりもはるかに多くの支持を生み出すだろうという事実は、ある種傲慢な、攻撃性を帯びた豪腕のヒンドゥー民族主義の触手が、今日どれほど深くまた広範になっているかを映し出している。選挙に登場する主流の左翼を含んで、野党諸政党はどれ一つとしてこれまで、「強力な」インド建設に挑むというこの反世俗的で反民主的なやり方に、首尾一貫して、あるいは真剣に反対してこなかった。この思考法は、大きく支配的になった。そしてそれは、新たな非妥協的な左翼による長期的な闘いを求めている。
われわれは、連邦主義、およびより全般的に国家権力のこの腐食は、ヒンドゥートバ構想のまさに中心部分であり、BJPとの中央における卑劣な連携と暗黙の合意を通じて自身が成長し拡大できる、と考えている地域諸勢力に対しても危険をもたらす、と警告する。
カシミール民衆連帯の決起へ
われわれは、ヒンドゥートバ構想とは何であるかを認識し、それに反対しているすべての進歩的な心をもつ人々に、カシミールの人々と連帯して立ち上がるよう訴える。カシミールの人々に対する正義と敬意は、この峡谷地帯の即時の非軍事化、および、彼らが移動する、彼らがこれまでどのように扱われてきたかに対する正当な怒りを表明する、そして彼らが適当と見るどんなやり方でも民主的に抗議する、そうした完全な自由を求める。
われわれは、今生み出され続けている類の、排外主義、文化的レイシズム、さらに軍国主義的民族主義に強く反対し、もちろん、カシミールの抑圧された人々による全面的な政治的自己決定権をあらためて確認する。
▼ラディカル・ソーシャリストはインドの急進的左翼組織であり、第四インターナショナルのパーマネントオブザーバー。(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年八月号)
英国
ジョンソンの保守党
第2ブレグジット党へと変身
アラン・デイヴィーズ
英国のボリス・ジョンソン新首相は、取引きなしブレグジット強行のため、この問題に関する議会審議を事実上封殺する決定を公表、各地の抗議行動を含んで英国政治に鋭い緊張をつくり出している。以下はその決定以前に書かれたものだが、このようなジョンソンの暴挙の背景にある英国の深い危機的分断状況を明らかにし、その中で労働党の決断がカギを握っていると指摘している。(「かけはし」編集部)
六月七日にテレサ・メイは、英国の離脱条件について他のEU諸国と彼女が交渉し終えた合意に対し、英国議会の過半数の支持を得ることができずに、保守党党首を辞任した。これを受けて保守党は新指導者を求める選挙を実行し、それは、最右翼の候補者、ボリス・ジョンソンに帰着した。彼は、七月二三日、勝者と宣言され、七月二四日に首相に就任した。
ブレグジットの
正体が歴然と
以下こそがブレグジットを示すものだ。
粛清と辞任により形成されたボリス・ジョンソンの新内閣は、新指導者をもつ同じ党というよりも、はるかに新党の到来のように見え、事実上その通りだ。それは、第二次世界大戦後の英国ではもっとも右翼的な政府だ。それは、政治的な重心をさらに右へと動かし、レイシズムを正常なものにし、私有化、規制解体、不平等を力ずくで押し通すだろう。ブレグジットを強硬右翼と極右の構想と見ることを拒否してきた左翼の人々(レキジッティアーズ)は、再考しなければならない。
それはまた、欧州リサーチグループと「二〇一六年投票ノーキャンペーン」を出自とする強硬派による保守党の最終的な乗っ取りでもある。その上にはいたるところにナイジェル・ファラージの印がある(注一)。内閣メンバーのための資格は、一〇月末におけるEUからの取引なし離脱を支持する確固とした立場をとるという誓約――ファラージはその指導的主唱者――だ。
ジョンソンへの最も熱烈な支持は、驚くことではないが、ドナルド・トランプ――ジョンソンに「英国のトランプ」とのあだ名を付けた――から出てきた。そして彼はジョンソンの到来を、世界とEUにおける数を増す強硬派政権への歓迎すべき追加と見ている。こうした政権には、インドのモディ、ブラジルのボルソナロ、フィリピンのドゥテルテ、イスラエルのネタニエフ、イタリアのサルヴィニ、トルコのエルドアン、ハンガリーのオルバン、オーストリアの自由党、などが含まれる。それらはトランプから支持され、彼の反動的民族主義の、またレイシズムの世界観の枠内で仕事をしている。
ジョンソンは事実上、単一の目的、つまり一〇月末のEU離脱のために「実行か死か」という、いわば戦争内閣であるものをつくり出した。彼の閣僚は、「何が来るとしても」彼らがいの一番に欲したこととして、一〇月末には終わりにするつもりでいる。
彼は、中核的な省庁に強硬路線イデオローグを押し込む形で、保守党残留派は言うまでもなく、保守党内のソフトブレグジッティアーズにもいかなる余地も与えなかった。総体としてのまずい指揮のためにテレサ・メイから解任され、近頃は極刑を主唱し、メイの敵対的環境(注二)に対する大いなる支持者になっていたプリティ・パテルは、今や内務相だ。強硬なサッチャー派であり、異様なアイン・ランド(ロシア系米国人の小説家)の称賛者かつ強硬路線ブレグジッティアーのサジード・ジャヴァイドは財務相になっている。ブレグジット強硬派であり前ブレグジット相のドミニク・ラーブは外務相になっている。欧州リサーチグループ議長でそのイデオロギー的指導者であるジェイコブ・リーズ・モッグは下院議員団長――議会内の戦闘が幕を開ける場合に必要になる議事日程に関し、鍵を握る影響力をもつ――になっている。
情報操作の達人と見られているマイケル・ゴーヴは、ブレグジットを実行するためのにわか作りの閣僚だった。離脱投票キャンペーンの指導者であり、フェイクニュースを広めたことで議会軽視を認められたドミニク・カミングスは、ジョンソンの上級顧問――換言すれば、取引なしブレグジットのための主席スタッフ――になっている。リアム・フォックス(何度も閣僚になった有力議員、著名なEU懐疑論者:訳者)ですら、このチームの一員として十分に信頼できるとは見られなかった。
嘘を承知の主張
今も延々と反復
ジョンソンは一〇月三一日を、この国と議員の多数派がそれに反対している諸条件の下で強硬ブレグジットを強要し切る最後のチャンスと見ている――何らかの根拠で――。彼が語らなければならない他のすべては、これ次第になっている。その日付後も英国がなおEU内にいることにでもなれば、保守党の最終的内部破裂を含んで、何ごとかが起きる可能性があるからだ。そして保守党の内部破裂に対しては、彼がその責任を回避することは非常に難しいことになるだろう。
彼の計画は、彼の要求に応じないとしてEUに責めを帰すことだ。しかしそれは簡単なことにはならないだろう。彼は、内閣とブレグジットの進展に完全な支配を確保することにより、同時にものごと全体――それがブレグジットを承認させることへの失敗であれ、たとえ彼が成功してもそれに続きそうな大混乱であれ――の完全な責任をも引き受けている。
ジョンソンのチームは、メイが交渉した離脱協定は「死んで」いると宣言し、大きな楽観主義をもって、一〇月の終わりまでに彼が新たな合意を得ると期待している、と予言し続けている。これは思い違いだ。EUとアイルランド政府の両者は即座に、メイ政府が獲得した協定(実際には国際条約)は、法的拘束力のない将来の関係に関するあり得るものとしての「政治宣言」を除いて、変えられるものではない、と指摘した。しかし彼は、われわれがどれほどの自傷にも身を任す用意ができていると一旦実感した時のEUの心変わりについて、あれこれとおしゃべりを続けている。
彼はまた、アイルランド内に堅固な境界ができることはまったくないだろう、とも主張し続けている。そのような境界を持ち込む用意ができている者は誰一人いない、これが彼の主張する理由だ。この主張は先頃のBBCの番組で、アイルランドの外相、シモン・コヴェニーによって粉砕された。そこで彼は、アイルランドの境界がEUの対外国境の一部になる以上、したがってEUは、その確実な厳重化を図ることになり、それを実施する責任はEUとアイルランド政府が共同で負うだろう、と語ったのだ。
最終決着はまだ
今後の闘い次第
ジョンソンの課題設定を議会が阻止することは簡単ではないが、取引なしブレグジットのような重大決定を議会を無視して行うこともまた簡単ではない。いずれにしてもわれわれは、一〇月末の途方もない憲法的な危機に向かいつつあり、その阻害要因や結果の予測は非常に難しい。情勢は完全に二極化し、われわれは煉瓦の壁に突っ込もうとしている。保守党はこの問題が票決に付された前回よりも小さくなっていて、反対派はより強力だ――少なくとも、辞任したあるいはジョンソンから解任された閣僚のほとんどが、後ろの席から反対派に合流しそうであることを理由に――。
鍵を握る場面は、労働党が政府不信任動議を考えることを決定する時になるだろう。そしてそれは現在の休会後になりそうだ。それが採択されるならば、総選挙か二回目の国民投票、あるいは両方になるだろう。しかしそれは、何よりも、どれだけの保守党議員に賛成投票の用意があるか、また(驚くべきことだが)どれだけの労働党議員に反対投票の用意があるか――そうすると思われる者が何人か現にいる――、にかかっている。
保守党は総選挙という点では大きな問題を抱えている。彼らがブレグジット問題を「解決」し終える、つまり英国を壊滅させる、あるいは一〇月三一日に英国を抜けさせることができない、このどちらかの前に総選挙を行うことは彼らにとって惨事となりそうなのだ。彼らはまた、四馬レースの中で、ブレグジット党との間での票割れという可能性にも直面している。ファラージとの選挙協定は、必然的に保守党が議席の相当数を明け渡すことを伴うだろう。彼らがそれに同意することはありそうにないと思われる。
このすべてにおいて最大の要素は、一定期間これまでもそうだったように、先のような選挙において労働党がとる立場だ。換言すれば、労働党が二回目の国民投票を全面的に支持し、自身をあいまいさなく残留派として提示するかどうか、ということだ。たとえば議会におけるコービンのジョンソンに対する回答など、物事がその方向に動きつつある、という兆候はいくつかある。しかし決定はまだない。
取引なしブレグジットに進んでいるジョンソンの保守党に対する残留派政党として、労働党が先の選挙に入ることができれば、その時労働党は極めて良好な位置に着くと思われる。そして次期総選挙における労働党の勝利は、トランプやサルヴィニからファラージやジョンソンにいたる極右の構想全体に、大打撃を与えるだろう。(「ソーシャリスト・レジスタンス」二〇一九年七月二六日)
(注一)ナイジェル・ファラージは極右のブレグジット党の指導者。
(注二)敵対的環境とは、テレサ・メイが以前内務相だったときに語った言葉であり、その時彼女は、移民に対しそれを作り出したい、と語った。(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年八月号) |