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    かけはし2019年9月2日号

代議制の限界越える挑戦


アジア連帯講座・湯川順夫さん報告 B

フランス「黄色いベスト」の運動

直接民主主義の体現

この運動の評価をめぐる対立と論争
運動への2つの評価

 一方の評価。
「黄色いベスト」運動に対して「これは極右派の運動だ」という評価がある。当初、国民戦線をはじめとする極右派がこの運動を利用しようとして介入を試みたことは事実である。しかし、極右派の「介入」によって政府と交渉して取引、譲歩を引き出し、これを選挙での票獲得に利用をねらった。だが、これは運動側からも拒否された。また、マクロン政権の強硬な姿勢に本質的な譲歩はなく、強硬な姿勢を貫き、すさまじい暴力的弾圧が続いた。

 参加者への世論調査から全体の三分の一が、左翼でも右翼でもない「ノンポリ」だと言える。
政治的立場を表明した人々のうち――四〇%以上が自らを左翼としていて、革命派だと答えた人は一五%、右翼だと答えた人は一五%以下、極右と答えたのは五%だった。
その後、労働組合や左翼政党が参加し、こうした労働運動や左翼政治勢力との共闘の中で、黄色いベストに参加している人々の意識も変化していく。
労働組合や政党の側からはどのような働きかけがなされていたか。労働組合と極右派の攻防の現れとしてミュレでのCGT横断幕問題があった。「ファッショではなく、ファッショを(怒れ)を!」掲げる。これを妨害しようとした極右の試みは失敗する。
自分たち自身が運動を立ち上げ、運動していく中で人々の意識は変わっていくことの現われだ。ところがイギリス、アメリカとの違いでは、移民排除の「カリスマ」的政治家を受動的に選択し、それに委ねるところにとどまる傾向があった。
なぜ、このような評価が生まれるのか? 例えば、プジャード運動(一九五〇年代の自営業への税負担の軽減を求める極右運動)があったが、マリーヌ・ルペンの父はこの極右運動の議員だった。
フランスの左翼も民族主義を引きずっている。左翼のナショナリズムは、例えば、国外の敵―ヨーロッパの王政の攻撃からフランス革命を防衛したという起源を持っている。また、第一次大戦後にフランス共産党が成立し、第二次大戦後はド・ゴールのアメリカからの独自外交をフランス共産党が忠実に従った。
その政策がどうなのかは、インドシナ戦争、アルジェリア戦争に対する社会党と共産党の恥ずべき対応の歴史が示している。
今日、ヨーロッパでは、一九三〇年代のユダヤ人に匹敵する人種差別の攻撃対象はイスラム系の人々だ。今、挙国一致的「反イスラム」に対していかに抗するかがフランスでは問われている。
もう一方の評価。
「黄色いベスト」運動は、従来の「労働組合」運動や左翼の運動との違いを強調し、自分たちの自前の運動であることの意義を高く評価する。この運動を支持し、参加する労働組合や左翼の動きを、外からの介入として反発する気分がある。
例えば、日本の反原発運動の中での、青年たちの労働組合に対する反発 ドイツの緑の党の「世代交代」など今日の時代における全世界的に共通する課題と言える。
エンツォ・トラヴェルソは、二〇世紀の運動と二一世紀の運動の断絶・亀裂と言った。新旧二つの運動の亀裂にいかに立ち向かうか。

 6 われわれに問われているもの

◇この亀裂をどうすべきなのか?
まずこの運動は、きわめて大衆的な民衆によるマクロン政権に反対する運動であり、マクロンを窮地に立たせるところにまで追いやっている。フランス国民の圧倒的支持を受けている。ここから出発すべきだ。
そのうえでこの大衆的運動は、マクロン政権を窮地に追いやっているが、この新自由主義を体現するこの政権を打倒するまでに到達するには、労働組合を含むさまざまな社会運動や左翼の政党の合流が不可欠である。
どちらか一方が絶対に正しく、他方が絶対に間違っている、と考えるべきではない。これまでの運動がさまざまな限界をもっていて今日に至っている、それに対する不信から生まれている二一世紀の運動はいまだ形成途上であり、未だ不確定なままである。
古い運動の中で活動し、その限界を突破しようとして来た勢力はどうすべきなのか? 二つの運動の間の架け橋を試みる必要がある。共同の闘いの中で相互の経験と理論を交換、討論を積み上げ、長い時間をかけて共同で新しい運動と展望を練り上げていく必要がある。
今回の闘いの現実の展望からしても、両者が収斂して合流していく必要がある。二つの陣営のうちのどちらか一方の勢力だけでは、マクロン政権を決定的に後退させることはできない。「みんないっしょに」(tous en ensemble!)。すでにこの試みが始まっている。
実際に運動の合流に向けて次のような試みがなされている。
・コメルシーの黄色いベスト運動全国集会の呼びかけ(一月二六日)
・それを受けた社会運動と左翼政党の共同アピール(二月七日)
・パリでの共闘委員会でのアピール(三月一六日)。
・サン・ナザール全国集会のアピール(四月五日〜六日)

 ◇運動の変化

 「コメルシーの集会アピール 2月5日のストライキの呼びかけ」は、労働組合の運動への参加 共同のデモ、封鎖を呼びかけている。「ファッショではなく、ファッショ(怒りを)を」もその現われただ。
運動的にも女性の参加者の増大、「下からのCGT派」系組合+SUD系の組合、教員組合などの参加が増えた。
さらに気象変動をめぐる高校生の闘い、フォード自動車工場での闘い、グルノーブルの空き家占拠闘争、アルジェリア、スーダンでの民衆の決起が続いている。

7 今後の課題


課題として、以下のことが上げられる。
@黄色いベスト運動と社会運動との合流を強化・拡大していくこと
ACGT全国指導部の協調路線を変更させていく闘い
B極右派との闘い、人種差別主義、民族排外主義との闘い

 さらにRIC(市民のイニチアチブにもとづく国民投票)の要求が提起している問題を具体的な闘いに代議制民主主義(間接民主主義)の形骸化、空洞化に対してどうすべきか?
黄色いベストの人々は、政治家を選んだ後、議員たちが裏切っても何もできない代議制システムでは不十分だと考えている。
だからこそ議員の報酬を労働者の平均賃金にし、任期と途中でもリコールできるようにするだけでなく、重要問題について自分たちの意見を直接に表明できる「住民投票」、「国民投票」という直接民主主義を求めている。
スペインのカタルーニャの人々が自分たちの運命を自分たちで決定しようとしたようにだ。これは、原発問題や沖縄問題とも深く関連してくる民主主義の問題として重要である。「黄色いベスト」の運動を支援するということは、今日、全世界で問題になっている「民主主義の危機」、グローバリゼーションによる民主主義の空洞化、これまでの代議制民主主義のさまざまな弱点、限界の問題を取り上げ、それを具体的な要求にまとめ、そうした要求を実現する闘いを展開していく必要がある。  (了)

8.19

国会前行動に1600人

反韓国意識を煽りたてるな

安倍政権に抗議の訴え

 八月一九日午後六時半から、四七回目となる「一九日行動」が、参院議員会館前を中心に行われた。主催は「戦争させない・九条壊すな総がかり行動実行委」と「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」。参院選後初の「19日行動」には一六〇〇人が集まった。この日の行動は、日韓関係の急速な悪化、そしてトランプ米大統領によるイランへの軍事攻撃と、ペルシャ湾への自衛隊派遣の動きが強まる中で、秋の闘いに向けた意志確認の場となった。
 憲法共同センターの長尾百合さんの司会で進められた集会では、主催者を代表して高田健さんがあいさつ。高田さんは、参院選は自民・公明・維新の与党・改憲勢力が三分の二を割ったという点で、明確に勝利だったと強調。さらに八月一五日に韓国を訪問し、ソウル光化門広場の五万人集会に参加したことを報告した。
 「徴用工への補償問題で、安倍首相は反韓意識を煽り立てているが、個人の補償請求権の存在は日本政府自身が認めていた。日韓関係をこわす安倍政権への抗議を強めよう」。
 高田さんはさらに、「トランプ政権に追随してホルムズ海峡へ自衛隊を派兵することを許さない」と訴え、「目前に迫ろうとしている総選挙では二八九の小選挙区すべてで野党は共同して闘おう」と呼びかけた。

民衆の連帯で
平和を作ろう
続いて野党から立憲民主党の佐々木隆博衆院議員、共産党の山下芳生参院議員(副委員長)が発言。山下さんは、「都道府県の投票率のトップ五では、いずれも野党が勝利している。野党としての政権構想をつくり出そう」と訴えた。
安保法制違憲訴訟弁護団の長尾弁護士に続いて発言に立った和田春樹さんは、最悪の事態にまで発展しつつある日韓関係について、「韓国は相手にせず」とする安倍首相の姿勢を厳しく糾弾。「韓国は敵なのか?」と題する声明が大きく広がっていることを紹介し、「韓国を敵視することで、安倍首相はいったい何をしようというのか」と語りかけた。
ジャーナリストの志葉玲さんは、トランプ政権が進めているイランへの軍事攻撃に自衛隊が参加しようという動きに警鐘を乱打した。
市民連合目黒・世田谷の清水すみこさんは、改憲反対3000万人署名、立正佼成会の会員から六〇〇筆取ってもらった経験を紹介した。法律家六団体から大森典子弁護士は、韓国の徴用工問題に関して、新日鉄、住金が解決に向けて動こうとしていたにもかかわらず、安倍政権が圧力をかけて個別の解決への動きを妨害した、と批判した。
かつてないほど日韓関係の悪化をつくり出している安倍政権は、東アジアの平和への動きを阻止しようと懸命になっている。意図的に朝鮮半島の平和への道を壊そうとしている安倍政権を倒そう。     (K)

コラム

消費税を撤回せよ

 食パン、コーヒー粉、肉・野菜、缶チューハイ。週末のスーパーでレジを通過するたびに、眼鏡を外してはレシートを睨む。「こんな高額になるか、計算は合っているか」。財布に額を近づけ、一枚ずつ硬貨をつまみ出す高齢者の姿に、将来の自分を見る。消費税導入前は代金に端数が出ることが少ないか、暗算で合計額が割り出せた。一九八九年に事態が変わった。商品の価値に一切関係のない負担増。以後、買い物のたびに強い痛税感が私を襲う。
 消費税率が、あと一カ月で一〇%に上がる。二〇〇九年九月。選挙による戦後初の本格的な政権交代で誕生した民主党政権は、その年末に「税制改正大綱」を閣議決定し、「公平・透明・納得」の税制の実現をめざした。それは制度の基本的な改革を示したが、メディアは「増税―悪、減税―善」の旧態依然たる二項対立報道に終始。野党に転落した自民党の執拗な攻撃と、首相菅直人による増税発言もあり、わずか三年余で権力の座を追われた。
 「この税ほど市民に身近で、しかも誤解されている税もない」と、弁護士で法学博士の三木義一氏は書く。(『日本の税金』岩波新書)。「納税者」は誰なのか、税金はちゃんと税務署に行っているのか、業者がネコババしているのではないか。消費者のこの単純な疑惑こそ、同税制の複雑さと不公平さを象徴していると言える。
 八月二四日の東京新聞は一面トップで「税負担が五段階に変化する」(朝刊)と報じた。「軽減税率」の導入で、外食は一〇%だが持ち帰りは八%に据え置き。これに来年六月までの「キャッシュレス決済」による「ポイント還元」が加わると、「中小店舗」「コンビニ」「大手スーパー」など、小売店の規模によって負担税率は合計で三、五、六、八、一〇%と五通りにもなる。この還元制度は現在大手スーパーを除外しており、中小やコンビニに客を奪われる可能性がある。「日本チェーンストア協会の井上淳専務理事は『ポイント還元は不公平』と述べた」(同前)。さらに現金とカード払いで付与割合の異なる小売店独自の「ポイントカード」の類も広く普及しているから、自分の買い物が結果的に得なのか損なのか、もうワケが分からない。
 徴収する側の論理で設計された複雑怪奇な日本の税制は、取られる側をいかに欺き反発を抑え込むか、という策略が込められている。給与から天引きされる所得税の捕捉率は九割。自営業者や農林業者ら担税者の間でいがみ合いが続き、「敵」が入れ替わってきた。
 消費税を廃止させ、所得税における累進性の強化、巨大資本への大増税、国境を超えた金融取引への課税を求めて、今後も闘い続けよう。   (隆)



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