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    かけはし2017.年12月4日号

隠し、不正し、責任追及は軽く


安全文化欠如は歴然(下)

現場の声:内部告発者の養成が急務

電源喪失すら隠ぺいされた

 思いがけなく流入した、とるに足らない異物がきわめて深刻な問題をひき起こした。蒸気発生器の細管が損傷するとともに放射性核種が含まれた蒸気が空気中に放出された。事件調査報告書を見ると、空気中に放出された気体にはジェノン―133など放射性核種7種が含有されたものとなっていた。ハンピッ3号機は高濃度警告値に到達した後、10分以上も大気に放出されていた後、気体を格納の建物内に回した。
 この事件調査報告書を見れば、原発の内部は至る所が穴だ。事件初期の10月16日午後1時30分に、既に原子炉の出力を下げなければならない「非常の状況」に突入する条件(放射能のレベルが非正常的に増加)に突入したけれども、誰もそのような決定をしてはいない。また放射能が含まれた蒸気の漏洩の徴候を捕らえようとして設置した監視機が10台あったけれども、このうちの5台がキチンと作動していなかった。1990年に設置された監視機の一部が使用年数(15年)を超過し、25年も使用されていたのが原因だった。ヤン・イウォニョン環境運動連合事務処長が公開した「核発電所別の気体放射性廃棄物排出放射能量についての資料(2002〜2014)」を見ると、ハンピッ3号機のジェノン―133の場合、放出量が年ごとに最大80万4千倍もの差(2008年11・9非ベクレル、2011年1480ベクレル)がある。
 1等級以上の事件のうち外部への放射能漏出があったのはハンピッ3号機を含め、ハヌル4号機(2002年4月)、ハンピッ5号機(2003年12月)事件など全部で3件だ。特にハンピッ5号機の場合、放射能によって汚染された液体廃棄物485万9千?が海に排出された。もちろん原子力安全技術院は事件調査報告書で放射性汚染物質が吐き出す放射線量が「基準値」にはるかに及ばない安全な数値だと明らかにした。
 韓国の原発ではフクシマの原発惨事の時のように電気の供給が中断される停電事故が発生したこともある。韓水原の責任者たちは、これを隠ぺいしさえした。2012年3月、古里1号機に電気供給が12分間、断たれる「停電事件」を発電所長と幹部たちは原子力安全委員会をはじめとする上級機関に報告しないことで談合したのだ。核発電所の停電は核事故と直結しかねない危険千万な事件だ。原子炉に電力供給が断たれれば冷却水の循環がされない。この状態が持続されれば核燃料が吐き出す熱に耐えきれず冷却水がすべて蒸発し、結局は核燃料が融け落ちる炉心熔融が発生する。古里1号機の停電はあきれたことに当時整備作業をしていた運転員が誤流信号を通常信号と誤認して操作を誤り生じたことだった。非常発電機がキチンと作動していたなら問題がなかったはずだが、これまた内部の損傷した部品のせいでキチンと稼働できなかった。
 発電所長ら幹部5人は「論議を通じて、上部および安全委などに報告しないことに決定」した。故障事件が起きた2月9日は政府と韓国水力原子力が「原発の故障停止再発防止総合対策」を発表した日でもあった。彼らはすべての故障事件の記録を故意に漏落した。

資材納入不正からも稼働停止


 当時、発電所長は原子力安全法違反などで起訴され、1審で懲役6カ月・罰金300万ウォンを宣告されたが、2審で罰金300万ウォンに減刑された。この刑は昨年、大法院(最高裁)で確定した。定年退職を2年後に控えた発電所長は内部の懲戒なしに定年退職したものと確認された。韓水原・古里原発本部関係者は「ハンギョレ21」との通話で、「最終判決を見て懲戒するのだが、退職した状態なので懲戒をできなかった。起訴された5人のうち退職者を除く残りの職員たちは譴責と減俸の懲戒を受けた」と語った。韓水原内部で安全文化がどう取り扱われているかをかいま見ることのできるところだ。古里1号機停電事件は歴代3件だけの2等級故障事件のうちの1つだ。
 チョン・ヨンジュ公共運輸労組韓水原非正規職支会事務局長は「原子炉が停止すればいったんは報告対象であるがゆえに調査するけれども、運転中に発生した事件は軽微な事項と考え報告しないことが少なくない。原子力安全委員会の委員たちは現場を知らない。韓水原報告だけ受けとるようにシステムが作られている。内部告発者を養成しなければならない」と語った。米国のエネルギー再編法(Energy Reorganization Act)は原子力産業の使用者が同法などの違法行為の是正手続きを告発したり告発しようとしたという理由で被使用者などを解雇したり、雇用条件において処罰することを法によって禁止している。
 故障のせいで核発電所が停まっているのはともすれば当然のことだ。パク・ジョンウン東国大教授(エネルギー工学)は「車がブレーキをかければ停まることのように、原子炉が停止するのは原発のために必要なこと」だと語った。しかし韓国の核発電所は欠陥や故障だけではなく非理(不正)によっても停まる。2013年5月、「不良ケーブル試験成績書偽造事件」が起きた。核発電所に非常の状況が発生すれば安全設備を作動させる役割をする重要な部品が、核マフィアたちの「食いぶちのネタ」になり下がっていたからだ。海外の機関に依頼したケーブルの試験結果が不合格となるやいなや、国内の試験機関の職員がこの報告書をでっちあげた。
 不良ケーブルが納品されていた所は新古里1〜4号機、新月城1〜2号機など、全部で6基だった。稼働中だった新古里1〜2号機と新月城1号機がケーブルを交換するために稼働を停止し、2013年末の商業運転を目前にしていた新古里3、4号と新月城2号機は稼働が延期された。当時、ケーブルを再購入して交換するのに1048億ウォンがかかった。このことによってイ・ミョンバク政府の時期に「ワン(王)次官」と呼ばれていたパク・ヨンジュン元知識経済部(省)次官ら140人余が起訴された。パク・ヨンジュン元次官はキム・ジョンシク元韓水原社長から「原発関連の政策樹立において韓水原の立場をよく考慮してくれ」などの請託とともに700万ウォンを受け取った容疑について2015年1月、大法院で有罪が確定した。

専門家を神にまつりあげた結果


 チェルノブイリ原発事故が、ソ連が自主開発したチャンネル型高出力原子炉(RBMK型)にあるとの結論が出ると、当時のソ連大統領であるミハイル・ゴルバチョフが語った。「われわれは30年間、あなた方(原発専門家、関連部署)からすべてのことが安全だという話ばかり聞いてきた。あなた方は神としてあがめられることを望んだ。そこですべての問題が発生した。結果は破局だった。今もあなた方が結論について考えている様子を見ることはできない。何よりも事実を確認しなければならないにもかかわらず、何とかしてだまそうとする」(「京郷新聞」、和田春樹のコラム『根拠のあるチェルノブイリ原発事故』2011年5月1日付)。韓国の『原子力マフィア』たちも神としてあがめられることを望んでいたのではないか。原発の安全神話から今やハッキリと目覚めなければならない。(「ハンギョレ21」第1182号、17年10月16日付、チン・ミョンソン記者)

低線量放射線と白血病の因果関係

「基準値以下」は本当に安全なのか

 核発電所の安全と関連した代表的神話は「基準値以下」論だ。これまで政府と核発電所を運営している発電会社などは放射能漏れの事件が起こるたびに「基準値以下」であるがゆえに大きな問題はないとの解明を伝家の宝刀のように使用してきた。それならば「基準値以下」の低線量放射線被曝は本当に安全なのだろうか。
 チュ・ヨンス翰林大ソンシム病院職業環境医学科教授(核のない世の中のための医師会)は「最近になって基準値以下の低線量放射線が、がんや白血病の発生に因果的影響を及ぼすという研究が出てきている」と語った。チュ教授が紹介した代表的な研究成果は、2015年に公開された国際的研究「放射線漏出をモニタリングされている勤労者たちの電離放射線と白血病およびリンパ腫による死亡の危険についての研究」だ。
 この研究を進めたチームはフランス、英国、米国の核発電所と核研究施設で働いた作業者30万8297人を27年間追跡調査して、調査対象原発労働者の22%(6万6632人)が観察期間が終わる前に死亡しており、死亡者の2%(4752人)は白血病のようにリンパ組織や造血組織に悪性腫瘍が生じる病で亡くなったとの結論を導き出した。特にこの研究を通じて被曝量が多いほど労働者の死亡確率が高くなる「因果関係」が確認された。これまでなされた被曝についての研究が甚だしい高線量放射線に被曝した人々を対象にしていたとするなら、今回の研究は低線量放射線に長期間かつ持続的に被曝した人々が観察の対象だった。今回の研究を通じて低線量放射線に持続的にさらされれば、大型の核事故によって高線量の放射線に被曝した人々のように白血病やがんの発病率が高くなるという事実が立証された。
 この研究報告書は「長期間の低線量放射線の漏出と白血病による死亡率との間の因果関係についての強力な証拠を提供する」として、突然に高濃度放射線にさらされる急性漏出だけを制限している現行の放射線保護システムの限界を指摘した。(「ハンギョレ21」第1182号)

朝鮮半島通信

▲アジア歴訪中のトランプ米大統領は11月7日午前、韓国京畿道平沢にある在韓米軍烏山空軍基地に到着した。また8日午前、ソウルの韓国国会で対朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の政策に関する演説を行った。8日朝に予定されていた非武装地帯(DMZ)の電撃訪問は、天候悪化のため中止となった。トランプ氏のアジア歴訪に対して朝鮮の朝鮮外務省報道官は11日、談話を発表し、アジア歴訪について「好戦狂の対決行脚」「戦争商人の商売行脚」などと非難。核ミサイル開発を更に早く完成させると表明した。また談話は、トランプ氏の8日の韓国国会での演説について「我々の思想と制度を全面的に拒否する暴言」と非難した。
▲安倍内閣は11月7日、核・ミサイル開発を続ける朝鮮への制裁措置として、朝鮮の銀行や、中国やロシアなどで金融業に携わる朝鮮人など9団体・26個人の計35団体・個人を資産凍結の対象に加えることを閣議了解した。米国が9月に同団体・個人を制裁対象に指定したことを踏まえ、日米で足並みをそろえ朝鮮への圧力強化を図ったもの。
▲韓国気象庁によると、11月15日午後2時29分ごろ、韓国南東部の慶尚北道浦項付近でマグニチュード(M)5・4の地震が発生した。浦項市は同日午後8時現在、41人が重軽傷を負ったと発表。
▲韓国軍合同参謀本部によると、朝鮮人民軍の兵士1人が11月13日午後3時半ごろ、南北軍事境界線上にある板門店の共同警備区域(JSA)から、韓国側に逃げ込んだ。兵士は逃げ込む際に朝鮮民主主義人民共和国側からの銃撃で肩などを負傷し、韓国側がヘリコプターで病院に搬送した。
▲韓国のソウル中央地方検察庁は11月14日未明、朴槿恵政権で駐日大使を務めた李丙h・元国家情報院長を、国情院が大統領府に秘密資金を提供した疑いで逮捕。
▲11月15日の朝鮮中央通信の報道によると、金正恩朝鮮労働党委員長が金星トラクター工場を現地指導した。日時は不明。同工場には過去、金日成主席が34回、金正日総書記が10回現地指導を行っている。現地指導には、朴奉珠、呉秀容、趙甬元氏が同行した。
▲韓国の国会は11月24日の本会議で、毎年8月14日を、元慰安婦をたたえる記念日に制定する慰安婦被害者生活安定支援法改正案を可決した。改正法では、8月14日に国や自治体が記念日の趣旨に沿った行事や広報を行う努力義務が盛り込まれている。韓国では元慰安婦の故金学順氏が1991年8月14日に初めて自らが元慰安婦であることを名乗り出た。
▲国連軍司令部は11月22日、板門店で13日に発生した北朝鮮の男性兵士の韓国亡命時の映像を公開した。韓国軍の当初説明とは異なり、朝鮮人民軍の兵士が韓国側に向けて銃撃。兵士は一時、軍事境界線を越えて南側に侵入もしていた。韓国側は朝鮮側に応射しなかった。
▲朝鮮の漁師だと語る男性8人を乗せた木造船が11月23日夜、秋田県由利本荘市のマリーナで発見された。8人は船が故障し日本の領海内に漂流したと語った。
▲朝鮮中央通信11月21日は、金正恩朝鮮労働党委員長が国産車の大部分を生産している勝利自動車連合企業所を視察したと報道した。視察には党中央委員会の呉秀容、朴泰成の両副委員長と趙甬元副部長が同行した。勝利自動車連合企業所の前身の徳川自動車工場は1965年、「勝利58」型トラックを生産し、1975年に勝利自動車連合企業所に改名した。



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