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    かけはし2017.年11月13日号

6選挙区中4選挙区で勝利


寄稿

総選挙:市民連合@新潟の挑戦

運動と共闘の積み重ねをベースに

B・B


 安倍与党が三分の二の議席を獲得した今回の総選挙で6選挙区のうち4つで自民党候補を破り、野党系が勝利した新潟県の経験は貴重な成果として、マスコミでも注目されている。この経験を全国で共有することが重要だ。新潟の読者に依頼して、勝利の背景を書いていただいた。(編集部)

野党・市民共闘の実績

 今回の総選挙では、新潟県内六つの選挙区で野党側候補が四勝(自民党側三候補も比例復活)し、残りの二つの選挙区でも善戦・僅差だった。投票率も全国と比べて高く、前回と比べて一〇ポイントほど上昇した。
 全国と同様、民進党衆院の事実上の解体・希望の党への合流という事態を受け、本県の民進党系候補も混乱の中で苦悩の選択を迫られた。希望の党での立候補を表明する者もいたが、結局一区の西村が立憲民主党、他は無所属を選択することになった。希望の党は県内で一人の候補も立てられなかった。
 もともと野党系の一定の力がある新潟県では、小選挙区でも共産党を含む統一が成立すれば単純計算では自民党候補を凌ぐ選挙区が少なくなかった。各候補が希望の党には行かないと決断した最も大きな理由は、その単純計算だけではなく、昨年参院選・知事選などで結果として実際に示された野党・市民共闘の力の実績だ。
 参院選・知事選で大きな役割を果たした「市民連合@新潟」も、県内の野党・市民共闘の連帯の気運を高め、政党や市民の接着剤となった。「市民連合@新潟」は「憲法無視の安倍政権打倒」「原発ゼロ・再生可能エネルギー」「貧困の根絶と格差の是正、社会保障充実」などを共通政策とする協定を各候補と締結、選挙直前には全野党・市民が一堂に会した調印式も開催された。
 以下、象徴的な動きを中心に結果を簡単に報告する(別表を参照)。

各選挙区の取り組み


 県都決戦となった一区では、立憲民主党の公認候補となった西村氏が自民候補に競り勝った。市民活動出身ということもあり、女性や市民運動を含むボランティアの支援も受け、政権に対する批判的な層に大きく浸透した。
 二区では共産党が県内で唯一候補を立てた。民進党県連代表だった鷲尾氏は無所属で出馬。民進党内では「右寄り」として知られる人物だ。しかし共産党候補も選挙活動の中で鷲尾氏批判を避け、自民批判に徹し比例選挙活動に重点を置いた。出口調査でも共産党支持層の多くが、(おそらく心の中で共産候補に頭を下げながら)鷲尾氏に投票した。二区は柏崎刈羽原発を抱えており、社民党は連続で候補を立ててきた方針を転換、今回は「立てない」という形で間接的にサポート、社民に近い県議・市議らも支援に回った。鷲尾氏は当選後、記者からの質問に「今回は『お前の主張は気にくわないが今回は応援する』というような多くの人たちの支持もたくさんもらった」ことを自覚している旨、明言した。そうした意味で、二区も広い意味での「野党・市民共闘」側の勝利と言える。
 三区は大激戦で、最終的にわずか五〇票差で野党側の黒岩氏が勝利。
 四区は「女の闘い」として全国的にも注目された。自民候補は「実績」を強調し、「無所属で何ができるのか」と野党側の菊田氏を批判したが、もともと持っていたその傲慢な態度は自民党系県議らの積極的支援を受けることに失敗した。有権者と丁寧に向き合い、反原発を強く訴えた菊田氏が大差をつけて勝利し、自民候補は比例復活にも及ばなかった。
 五区は衆院解散が決定する前に、自民現職の急死に伴い、野党市民共闘の枠組で無所属候補を準備、自民党側は泉田前県知事を擁立するというある意味「奇策」に打って出た。「反原発の泉田氏がなぜ自民党から」と全国から声も上がったが、泉田氏はもともと「反原発」を明言していたわけではなく、原発問題対応以外では知事としての姿勢に対し県庁内外から多くの批判があった。「与党の中から原発政策を変えていく」と訴えたが、詭弁としか聞こえない。しかし、圧倒的知名度を活かし、残念ながら泉田の勝利に終わった。
 六区の梅谷氏は元民進党県議で、市民運動やママさんたちにも支えられ、市民型選挙を展開、TPPへの自民党の対応に対する農協などの批判も取り込み、大善戦したが僅差で敗れた。政党所属であれば間違いなく比例復活できた数字だ。

大衆運動での蓄積

 ここで各野党系候補の応援の主軸となった民進党・連合系各組織に対して少し批判も書いておきたい。民進党・連合は、野党市民共闘の実績と基盤となった昨年参院選・知事選では政党・組織の中ではもっとも消極的な対応を取っていた(参院選では選対ではなく外部からの協力、知事選では民進党は自由投票、連合は与党系候補推薦)。にもかかわらず、結局その果実を手にすることできたのは、関わった他の野党や市民組織の力があったからこそである。その自覚や他者への敬意は、残念ながら希薄だ。枝野代表が「つくったのは私たちではなく皆さんだ」と訴えた立憲民主党所属の西村氏を支えた組織も含めて、政党や団体と「市民」との開かれた関係、他の野党との誠実な向き合い方が求められている。それは次の国政選挙などにおいても非常に重要なポイントになるだろう。
最後に、繰り返しになるが、これら新潟での勝利や善戦の背景には、昨年参院選前からの安保法制や柏崎刈羽原発の再稼働に反対するこの数年の運動での共闘関係の積み重ねと、そこで育まれた信頼関係の深化がある。「新潟ショック」は、単なる選挙協力の成果ではないということもあらためて強調しておきたい。

<表:選挙結果>
【1区】   得票 党派等
◎西村 智奈美  128,045   立憲民・前
 石崎 徹   113,045   自民・前
【2区】
◎鷲尾 英一郎  97,808   無所属・前
 細田 健一   81,705   自民・前
 五十嵐 健彦   10,055 共産・新
【3区】
◎黒岩 宇洋  95,644   無所属・前
 斎藤 洋明  95,594   自民・前
【4区】
◎菊田 真紀子  112,600   無所属・前
 金子 恵美   87,524   自民・前
【5区】
◎泉田 裕彦  91,855   自民・新
 大平 悦子  79,655   無所属・新
【6区】
◎高鳥 修一  94,292   自民・前
 梅谷 守  92,080   無所属・新

注:他に3区で無所属1名、5区で幸福実現党が立候補。◎は当選。自民党は小選挙区で敗れた4選挙区のうち、4区の金子のみが復活できず。5区以外の野党候補は全員旧民進党系


11.5

横田基地に降りた戦争大統領

トランプ訪日に抗議デモ

韓国民衆と連帯して250人


朝鮮半島での
戦争見据えて
 一一月五日、トランプ米大統領はアジア歴訪(日本、韓国、中国、ベトナム、フィリピン)の最初の訪問国として来日し、米軍横田基地に降り立った。一九七四年のフォード来日以来、歴代大統領が訪日しているが、米軍基地を使用したのはこれが初めてである(ちなみに成田を使用したこともない)。トランプは、安倍首相とのゴルフに赴く前に、横田基地で米軍兵士たちを前に演説し、彼らをほめたたえた。
 今回の訪日が朝鮮半島の核戦争危機を見据えた「戦争大統領」としてのパフォーマンスであることが、この横田基地への到着と米軍人を相手にしたスピーチで象徴的に示されている。

差別・排外主義
を絶対許すな!
この日、午後五時半から東京・新宿の柏木公園で、「トランプ・安倍の戦争会談反対 11・5新宿デモ」が「戦争会談反対、韓国・アジアとの連帯、沖縄反基地闘争連帯」を掲げて行われた。主催は同実行委。緊急の行動だったが二五〇人が参加した。
集会では、まず韓統連(在日韓国民主統一連合)の宋世一(ソン・セイル)さんが発言。「第二次朝鮮戦争計画を狙った戦争計画、『北朝鮮を完全に破壊する』などと叫ぶ戦争計画を糾弾する。そもそも朝鮮半島に核兵器を持ち込んだのはアメリカではないか」と厳しく批判した。
続いて、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの大仲尊さんが「横田に降り立ったトランプを迎えたのは全員が米軍人だった。沖縄で支配者としてふるまい、県民の土地を奪い、安全な生活を破壊する米軍を許さない。安倍政権とトランプ米政権による朝鮮半島、アジアでの戦争計画に反対する」と訴えた。
発言はさらに地域共闘交流会、「直接行動」の仲間から行われ、トランプや安倍が撒き散らすレイシズム、差別を許さないとアピール。日韓民衆連帯全国ネットワークの渡辺健樹さんは、「トランプ訪日・日米首脳会談に反対する共同声明」の運動について報告し、韓国でも進歩連帯、民主労総、全農など二二〇団体で、NOトランプ・戦争反対の共同行動が発足し、韓国・日本・アメリカの共同宣言が呼びかけられていることを紹介した。
この日の集会には、トランプに反対する欧米系の人たちも参加した。
デモは寒風をついて新宿の繁華街を行進。途中、レイシスト極右が「星条旗」を広げ、デモに向かって「北朝鮮の工作員!」などと罵倒する光景も見られたが、街頭からは連帯の意を示す人々も、これまでに比べて多かった。     (K)


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