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    かけはし2017.年10月16日号

マクロンノン、万国の怠け者団結せよ!


フランス

ウルトラ自由主義との総対決へ

雇用と民主的・社会的権利への
攻撃打ち砕く統一した決起が鍵

レオン・クレミュー



 フランスでは夏を過ぎて、マクロン政権と民衆の衝突に向かう動きがようやく動き始めたように見える。主導力は、現場の、各地域の活動家たちの率先した奮闘にある。それは、もはや上部の指導性を待つことのない、全世界的に表面化しているすう勢に連なるものとも言えるかもしれない。こうして、動きが鈍かった労組ナショナルセンターにも、下部からの圧力に押されて対決への動きが現れている。以下は、このある種混沌とした複雑な状況を伝えている。マクロンが繰り出しているメディア戦略が、安倍や小池を彷彿とさせる似たような性格を持っていることも興味深い。(「かけはし」編集部)

予期された衝突への最初の砲撃


 ソリデールエマニュエル・マクロンと彼の政権との衝突は、今年五月と六月の大統領選および国民議会選後に不可避となった。すべての人びとは、彼の計画には、社会運動への抑圧政策と民主的諸権利への諸々の攻撃と組になった、雇用関係法と社会的保護に対する急速かつ底深い挑戦が含まれるだろう、と分かっていた(注一)。
 先の選挙から一ヵ月前の四月はじめ以後彼は、議会討論を迂回する、訓令による統治と指導を行う意図をはっきり述べてきた。彼はまた、主な制度的諸政党の信用喪失から教訓を引き出し、この信用喪失が選挙を経てホワイトボードのようにぬぐい去られることなどなく、彼もまた早々にその作用に苦しむことになるだろう、とも理解したのだ。このすべてが、民主主義に反するほどの早さをもつ決定策定の仕組みを導入するよう、彼を促した。
 さらに彼は、斬新さ、変革、若さを強調するメディアの人物像の先で、リバタリアン的な諸々の課題を、第五共和制の仕組み内に含まれた強力な国家の武器の悪性化された利用に結び付けた。他の欧州諸国との比較におけるフランスの「後進性」を克服するというこの綱領は、巨大な社会的衝突を作り出すだろう。そして九月一二日、二一日、二三日は、その後に他の多くが続くことになる最初の砲撃となった。

マクロンへの幻想と頂点の弱気

 あらゆることにもかかわらず、対応があるべきものになるには一定の時間がかかることになった。マクロンが彼の意図をはっきり公表していた中で、労働組合運動と全体としての社会運動すらも、対応には遅れが出た。選挙キャンペーン期間中、また何よりも二回の大統領選の間、これらの運動の一部は、マクロンのメディアに現れたイメージに引きつけられた。それが、古い指導部との決裂を通して、フランス社会を前進させる可能性をもつと思われる、若く民主的な候補者、何よりもマリーヌ・ルペンと対立する民主主義の代表者といったイメージだ。大統領選二回戦に向けて採用された投票勧奨とは独立したウルトラ自由主義の候補者に対するこの好意は、社会運動と労働組合運動の急進的翼を、何週間か極めてひどく孤立のままに取り残した。こうして急進派は四月二二日からおよそ二〇〇〇人の活動家を動員、第一回戦開票日の夜には、「社会的一回戦」の、次いで「社会戦線」の呼びかけの下に、CGTの戦闘的部分、SUD・ソリデール(連帯)の諸労組、CNT(無政府主義傾向の労組連合)、警察の暴力に反対するいくつかの共闘団体、「まず権利を」、「居住の権利を」、そしてNPA(フランス反資本主義新党)を結集した(各労組連合に関しては訳注参照)。
次いで五月八日、同じチームを軸とした社会戦線への要求をもって、そして何よりも六月一九日の約三〇の町でのデモを呼びかけて、社会運動と労働組合運動の統一的結集組織が、ソリデール労組の全国的支援に基づき地方的に設立された。六月二七日、マクロン選出からほぼ二カ月経って、バカンス期間が近づく中、CGTは最終的に、九月一二日に訓令に反対するストライキとデモの全国行動日を呼びかける報道発表を明らかにした。
数多いCGT組合が数週間反政権の決起を開始し続けていた時の、労組ナショナルセンターによるこの時間のかかったアピールはまた、以下の脈絡の中でも理解されなければならない。その脈絡とは、ソリデールを除いた労組諸組織が、この夏を通じた政府との「社会的対話」という一つの枠組みを受け入れた、ということだ。しかしこれは、新種の対話であり、文書全部を利用できる労組団交団を外した、一連の二者会談に限定されていた。それは、大企業人事担当部署にふさわしい手法だった。
そこに交渉というものはまったくなく、マクロンと彼の政権には、議員と論争する気がないことと同じく、交渉するつもりはまったくなかった。しかし、一年前反エルコムリ法の労働組合戦線に加わっていたFOが、CGTの呼びかけを支持するのを拒否したのは、この社会的対話を名目としたものだった。ちなみに先の呼びかけは、ソリデールからはすぐさま受け入れられた。さらにまた、CGCも、訓令に対しては非常に批判的だとはいえ、CFDTやCFTC同様、この決起に加わることを拒否した。FSUは、圧力の下にCGTの呼びかけを支持する報道発表を発する九月まで待機した。

多重的攻撃を民衆は明確に拒絶


それゆえわれわれは、この非常に重大な決起への乗り出しが、一八カ月前の反エルコムリ法決起以上に混沌とした条件の中で始められることになった、ということを理解できる。それは本質的に、各地の労組間共闘機関と社会戦線共闘組織が遂行した奮闘によって組織され、牽引されたのだ。
この統一的行動は、数多くの町と地域でFOやCFDTの諸労組を結集することに余地を与えたと思われる。さらにまた、FO下部労組の半分以上と七つの労組ナショナルセンターも、九月一二日への参加を呼びかけることになった。
指導部の側のこの臆病さは、訓令にはらまれた毒に満ちた性格とそれらに続く予定の社会的攻撃すべてに対する、被雇用者内部の非常に広範な意識とは、本当に一致していない。この間の世論調査すべては、訓令という手法、さらに労組と労働者の権利に対する攻撃の内容への、多数による拒絶を証明している。
攻撃の最初の波が主に(しかしもっぱらに、ではない!)二つの分野に焦点を絞っていることは明らかに偶然ではない。そして次のものがその二つだ。
▼交渉に関するさまざまな取り決め、代表機関の要員、つまり、労組の行動手段。
▼レイオフの犠牲者である私有部門被雇用者を保護する雇用法令の諸条項。
その目標は明らかに、被雇用者の大群から労組活動家を切り離し、公的部門を正面きって敵にしないことだ。そうであっても今後の攻撃は、すべての人びとに、また国家予算からの一〇〇億ユーロカット、一〇万の職の削減、そして指標(賃金計算に利用されているが、それはすでに多年無視されている)の凍結と彼らの地位への攻撃をもって、もっとも特別には政府の被雇用者(注二)に影響を及ぼすだろう。その上にやって来るものは、年金に対する、また鉄道労働者に関する制度のような特別な制度への全般的攻撃だ。
さらに、学生の組合連合であるフランス全学連(UNEF)が九月一二日と同二一日を支持したとはいえ、またAPL(住宅手当)の引き下げや大学入学選抜を引き締める意図をマクロンが言明していることにより、すでに学生に影響が及んでいるとはいえ、その学生たちはまだその日までには大学に戻っていない。
週を次いでこの訓令による悲惨な結末に関するさらに新しいニュースが出てきている。たとえば、産休に関するものであり、それはしばしば、労働法令におけるよりも部門別協定の方が長くなっている。しかし訓令は、大多数の企業において、たとえば銀行で、その短縮を可能にすると思われるのだ。

支持率低下の中メディアでの戦闘

 九月一二日にはまた、MEDEF(経営者団体)の指令に合わせた全国メディアによる十分に協調された中傷キャンペーンにさらされる余地もあった。この一日ストライキは、全面的に孤立したCGT指導部と過激派の行為と描かれた。さらにそれは、正統性を欠いた、労組運動少数派を代表する、本質的に政治的な一日行動として描かれた。
メディアは、マクロンの計画は大統領選挙を通じてすでに票決を受けている、と強調した。しかしそれは、彼に対しては四月二三日の第一回投票で最良でも有権者の一八・二%しか投票していないという事実、そしてその三〇%しか彼の綱領への支持を言明しなかったという事実、それらを忘れ果てたものなのだ。
メディアはまた、この決起の結果(政府によれば、一八〇の町でのデモ、四〇〇〇件のストライキ、デモ参加者二二万人、CGTとソリデールによれば五〇万人近く)についても、二〇一六年の反エルコムリ法決起との関係で信用を落とそうと試みた。それでも警察と政府が発表した数字は、実際よりもよく見せる新聞報道と共に、事実上二〇一六年の時と同じだった。
このコミュニケーションをめぐる戦闘に仕上げの筆を加えれば、マクロンは、確実に偶然にではなく、九月六日にすさまじいサイクロンで大被害を受けたサンマルティン島に出かける日取りをまさに九月一二日に選んだ。この旅行はメディアから大きく取り上げられ、そこでは、家を失った人びとを気づかう大統領が、労働基準の硬直さに固執して進歩を拒絶する者たちと対照させられた。
同じことが九月二一日にも起きた。そこでは彼は、二〇二四年オリンピックがパリとマルセーユで開催されるだろうと発表するためにマルセーユに向かうことにより、注意をものごとからそらし自分に向けようと試みた。
このメディアを舞台とした戦闘は空しく見えるかもしれない。しかしマクロンは数ヵ月間も、民衆からの信頼性を失い続けてきたのだ。音声と視覚に訴える猛攻にもかかわらず、マクロンへの支持率は今、任期のこの段階で記録されたものとしては最低のところにあり、フランソワ・オランドのそれよりも悪いとさえ言える。この状態は、彼の演説を通してまさに多くの真珠のようにまき散らされた、被雇用者、貧しい者たちを標的にした侮辱的な細々とした言葉(「何者でもなく、また無為に過ごしてきた者たち」、「怠け者」、その他)によって、救いのないものになっている。

労働運動の役割が再度問題に

 九月一二日を経て提起された問題は、マクロンの諸政策を、つまり明白に労働基準を攻撃している訓令を、また社会的賃金、社会的保護制度、職、さらに公的部門の報酬に対する攻撃を、打ち破ることのできる決起を労働運動が築き上げることができるかどうか、という問題だ。
これは明らかに、労働組合運動が公的部門・私有部門の必要とされる収斂を意識的に引き受けなければならない、ということを意味している。この収斂のための日程表はもっとも有利というわけではない。マクロンとフィリップ(首相)は、訓令文書を九月二二日の閣議により採択したが、九・一二後の新しい決起とストライキの一日行動は、九・一二の行動を呼びかけた諸労組によって九月二一日に組織された。その呼びかけに応じたのは、ストライキとデモという点では前回より僅か少なかったとはいえ、あらゆるところで、マクロンの攻撃と闘う同じ意志とそれへの拒絶は確証された。そして九月二三日、不屈のフランスの呼びかけに応じて、雇用法に反対する数万人がパリの街頭に繰り出した。
CGTとFO運輸連合は九月二五日から、封鎖、特に燃料貯蔵所封鎖を伴った新たなストライキをトラック運転手に指令した。九月二五、二六日には、警察の介入にいたった貯蔵所封鎖を伴う数十の行動が起きた。九月二六日には、数百人の学生が、マクロンがEU改革に向けた彼の提案を発表していたソルボンヌ大学前でデモを行った。警察に阻止された学生たちは街頭で、「ア、アンティ、アンティカピタリスト」、「誰もが大統領を憎んでいる」、そして「マクロン出て行け、学園はお前のものではない」と叫んだ。

反マクロン共闘の真剣な構築へ


このように情勢は複雑だ。一方で数万人の活動家たちが、労組、諸政党、また社会運動諸団体を結集する統一戦線に基づき、各地で決起を築き上げ続けている。その中でマクロンの諸政策と対決する行動の戦線は拡大してきた。九月二一日夜には、フィリップ・マルチネス(CGT書記長)が、新たな幅広い行動日を計画するために集まろうと諸労組に呼びかけた。つい今し方管理職労組連合のCFE―CGCは、訓令反対として登場するにいたり、統一行動への参加に同意した。
これらは実のある力関係の構築にとっては良い兆候だ。しかし今のところ労働組合のレベルでは、二〇一六年の運動の収支決算を出し、この国の経済に打撃を与える重要部門でのストライキ、デモ、封鎖により直接的な力関係を築くことが必要、と明瞭に語っているのはソリデールだけだ。
九月二一日の相対的弱さを説明するものは特に、公務員の九つの連合(CGT、FO、FSU、ソリデール、CFDT、UNSA、CFTC、CGC、そしてオウトノメス)が彼らの特殊な要求をめぐって一〇月一〇日の行動をすでに呼びかけていたという事実だ。この統一戦線はこの一〇年見たことがないものだが、それはまだ、職種間の勢揃いから完全に自立しているものには足りていない。しかしそれは今や、統一的職種間運動の次の日程として現れる可能性がある。たとえばCFDT―道路は、その日付から始まる新たなストライキに立ち上がるようトラック運転手に呼びかけた。
あらためて、決起とデモに結びついた全国レベルにおける鍵を握る部門におけるストライキ運動の可能性は、基本的に、労組運動の、特に経済の鍵を握る部門の戦闘的翼と各地の組合間共闘にかかるだろう。
さらにまた、民主的な自由に対する攻撃と警察の暴力に対する免罪に反対する闘争、そして学生向け住宅手当の引き下げと大学入学選抜プロセスの変更に反対する若者たちの闘争、これらとの合流も是非とも必要だ。政府の攻撃と闘っている者たちすべては、共通の運動の中で合流するための手段を見つけ出さなければならない。この合流はさらに、政治的諸組織と自身を政府への反対勢力と言明している諸運動にも関わっている。
ジャン・リュック・メランションの「不屈のフランス」(FI)は、マクロンに対するただ一つの反対派を表現していると主張している。こうした手法は、基本的に二〇一九年のEU議会選と二〇二〇年の地方選への準備を目標としたものだが、街頭と居住地区と企業内における社会的かつ政治的力関係の構築には役に立たない。こうしてパリにおける九月二三日のFI全国結集のデモに向けた準備の中では、メランションと彼の運動は統一に向けた役に立つ提案を一つももっていなかった。
しかしながら、九月二三日のデモの民衆的成功は、統一に向けた勢いを強めることになった。NPA、共産党、ソリデール、社会戦線からの代表の存在は、統一戦線構築の必要性に関するすべての同じ強調と一体となって、FI支持者内部ですら、メランションの姿勢が十分に受け入れられるものとして浸透しているとは言えないことを示している。道理はむしろますます、全国的にも各地でもその双方で、政府の政策に反対する政治的諸勢力による行動の統一という取り組みを構築することにある。それこそ何週間も、NPAのスポークスパーソンのメッセージとなっていたのだ。

(注一)「怠け者」はアテネでのマクロンの演説からとられている。その演説は、「怠け者、すね者、あるいは過激派」に屈服するつもりはない、とするものだった。彼は後で、「ファアネアン」(文字通り「無為の者」)によって彼が言いたかったことは、フランスや欧州では何も変わるべきではない、と考える人びとのことだ、とその意味を説明した。この用語は、デモのプラカードに広く使われた。いわく、「万国の怠け者団結せよ」、「私は怠け者」、「スローガンを一つ見つけ出すには怠け者が多すぎる」などと。
(注二)フランスで公務員にくくられる概念は特に幅広く、中央政府の被雇用者だけでなく、教員、病院労働者、また地方当局の被雇用者も含まれる。(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年一〇月号)

(訳注)この論考にあるフランスの労組ナショナルセンターの略称には、以下のような日本語訳が宛てられている。
CGT:労働総同盟
CFDT:仏民主労働総同盟
FO:労働者の力
CFE―CGC:管理職総同盟
CFTC:仏キリスト教労働者同盟
FSU:統一組合連盟
UNSA:独立組合全国連合
SUD・ソリデール:連帯統一民主労働組合



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