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    かけはし2017.年9月11日号

止めよう!朝鮮半島の戦争危機


民衆の連帯で東アジアの平和を

核兵器もてあそぶ支配者はいらない

韓国・沖縄の闘いに呼応しよう


ミサイル発射という暴挙

  八月二九日午前六時前、北朝鮮・金正恩(キム・ジョンウン)政権は、首都ピョンヤン近郊の順安(スナン)空港から中距離弾道ミサイル「火星12」を日本海方向に向けて発射した。ミサイルは最高高度五五〇キロで約二七〇〇キロ飛翔し、函館市から襟裳岬上空を通って太平洋上に落下した。事前通告なしのミサイル発射はキム・ジョンウン体制になって初めてである。
 すでに北朝鮮のキム・ジョンウン独裁政権は、韓国で八月三一日まで展開されていた北朝鮮との戦争を想定した米韓合同演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」に対抗して、グアム島を射程に入れた弾道ミサイル発射を行う、と明らかにしていた。現実に起きたことは、米韓合同軍事演習期間中のギリギリ残された期間に、グアム島までの距離(三四〇〇キロ)を想定した上で、北海道上空を通るコースで北太平洋に向けてミサイルを発射した作戦だった(実際の飛行距離は二七〇〇キロだったが)。政治的・軍事的威嚇と日本・韓国、そして米国などの政府と民衆の動揺をねらったものであろう。キム・ジョンウン政権は、さらに八月二九日が、一九一〇年の「日韓併合」の日であることも指摘し、朝鮮・韓国の民衆に対し、植民地主義に対する抵抗の歴史を喚起させようともしている。
 われわれは、北朝鮮のキム・ジョンウン体制が軍事的挑発政策を放棄するよう強く求めるとともに、「在日」の朝鮮・韓国の民衆に対する意識的・「無意識的」な差別・敵対のあらゆる現れを絶対に許してはならない。
 九月一日の関東大震災九四年にあたり、小池東京都知事が、虐殺された朝鮮人への追悼メッセージを拒否したことに示される、植民地支配の犯罪を意識的になかったことにしようとする歴史修正主義の蔓延にわれわれは抗議する。こうした排外主義こそ、東アジアの平和にとって、最悪の妨害となることを、あらためて強調しなければならない。

まやかしの「住民避難」


 安倍政権は、今回の北朝鮮による弾道ミサイル発射に対して、異例とも言える対応を取った。安倍首相は早朝と夕方の二回にわたり国家安全保障会議(NSC)会合を開催し、「これまでにない深刻かつ重大な脅威」として、米韓をはじめとする諸国と連携し、強い圧力をかけていくと強調した。
 その一方で、北朝鮮のミサイルについて発射の直後から「ミサイルの動きを完全に把握していた」と語り、「我が国に飛来する恐れがない」として、「自衛隊法に基づくミサイル破壊措置は実施しなかった」と説明している。安倍政権にとって、今回の北朝鮮によるミサイル発射は、Jアラート(全国瞬時警報システム)による警報、避難指示の発動にとって、絶好の訓練機会でもあった。しかし実態はどうであったか。
 「反改憲」運動通信13期3号(2017年8月31日)で、「長崎の証言の会」の山口響は、現実のミサイル発射を予想して八月に全国で行われた「避難訓練」について書いている。
 「『北朝鮮の脅威』は社会的に創り出されているものだ。そのための仕掛けのひとつが、弾道ミサイルを想定した住民避難訓練である。八月一八日時点で、八県で実施済み、今後も各地で行われていくことだろう。/……各地の訓練の報告を見ると、たいてい、住民らが都合よく屋外で集団清掃活動をしていたり、児童らがグランドで遊んでいたりする状況の中で、防災無線でミサイル飛来情報が伝えられている。要するに、混乱なく集団で屋内に逃げ込みやすいシナリオがあらかじめ設定されているのである」。
 「……それにしても、政府が私たちに推奨する身の守り方は、『屋外にいる場合には、直ちに近くの頑丈な建物や地下に避難する』『近くに適当な建物等がない場合は、物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守る』『屋内にいる場合には、できるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋へ移動する』、これだけである。相手が焼夷弾ならいざ知らず、核兵器や化学兵器なら、こんな行動はほとんど無意味だ」。
 実際に八月二九日に北海道や青森を中心に起きたことは、まさにこの山口の言葉通りだった。

高まる核戦争の危険性

 中距離ミサイル発射からわずか五日後の九月三日正午過ぎに、キム・ジョンウン政権は、中朝国境に近い咸鏡北道(ムムギョンブクト)豊渓里(ブンゲリ)の核実験場で核実験を強行した。北朝鮮として六回目、トランプ政権発足後は初めての核実験で発生した地震の規模は、マグニチュードにして六・一となり、前回(昨年九月)の核実験に比して一〇倍とされる(気象庁の測定)。朝鮮中央テレビなどは「大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験に完全に成功した」と発表している。
菅官房長官は、この核実験が北朝鮮の主張通り「水爆実験だった可能性も否定できない」と語った。米国は北朝鮮の核武装を絶対に認めない。北朝鮮が政権延命のために核武装を放棄しないとなれば、朝鮮半島における核戦争の危険性は急速に高まることになるだろう。
アジアの、そして世界の労働者・市民は、「ヒロシマ・ナガサキ」以来の核戦争の可能性を絶対に阻止しなければならない。核戦争の阻止を、国家支配者の「良識」や「善意」にゆだねることはできない。核戦争の現実的危機は、トランプやキム・ジョンウンといった特別の戦争屋的政治家だから起きたのではなく、帝国主義ならびに北朝鮮の「一族世襲独裁体制」の危機の現実から発している。そして安倍自民党政権は、トランプの米帝国主義と固く結びついて、核戦争の現実的危機を手繰り寄せる側に加担している。

東アジアの平和のために

 「これまでにない深く、深刻な脅威」――まさに朝鮮半島をめぐる情勢は、いかにして破局を回避する道を見出すのかという課題を提示している。
第三次安倍改造内閣の河野外相と小野寺防衛相は、改造内閣としての初の「2プラス2」(日米外務・防衛担当閣僚会議)でミサイル防衛システム「イージス・アショア」(一基八〇〇億円)の米国からの購入・配備、「宇宙部隊」創設、中期防衛力整備計画・防衛計画大綱の改訂による軍拡など、トランプ政権・米国防族・国防産業などの意にそった大軍拡と米国の軍事戦略とのさらなる一体化を確認した。
言うまでもなく安倍内閣の布陣は、改憲を視野に入れながら、米国の東アジア戦略への軍事的関与をいっそうはっきりさせている。その最初の試金石が、朝鮮半島をめぐる「核戦争の危機」に絞り込まれることになるだろう。
トランプ政権の戦争発動を許すな! 安倍政権の戦争参加を許すな! 沖縄、そして全土の基地からの軍事攻撃を止めよう。いまこそ沖縄米軍基地の撤去を! 朝鮮半島・東アジアの平和と人権、民主主義のために闘おう。
(9月4日 平井純一)


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