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    かけはし2017.年7月24日号

生きて無罪を勝ち取るぞ


7.12

「狭山」江東地区集会開催

なんとしても再審かちとる

石川一雄さん、早智子さんがアピール


 【東京東部】七月一二日午後六時半から、東京・江東区総合区民センターで「7・12狭山江東地区集会」が部落解放江東共闘会議の主催で開かれた。最初に、江東共闘会議代表幹事の山口純一さん(東交十号常務支部)が「共謀罪が成立・施行された。これから監視社会が広がっていく。これを許してはならない。大崎事件の再審がかちとられた。狭山再審闘争も今年が勝負の年だ。がんばろう」と主催者あいさつを行った。続いて、加瀬純二さん(ふれあい江東ユニオン)が毎月一回の亀戸駅「23狭山デー情宣活動」、一九九六年から石川一雄さん夫妻を呼んだ地区集会を連続して行ってきた活動を報告し、狭山再審闘争の局面、えん罪を生み出さない取り組み、地域から市民的広がりをもって狭山の闘いを前進させ、石川一雄さんの完全無罪を勝ちとろうと基調提起を行った。
 河村健夫弁護士(狭山弁護団)が「狭山第三次再審請求審の現状と課題」と題して講演を行った。
 河村さんは狭山事件の事実経過から確定有罪判決(一九七四年東京高裁の寺尾判決)の内容、第三次再審と証拠開示、証拠開示から見えてきたもの、下山鑑定の提出(万年筆をめぐる科学的な新証拠)などについて詳しく報告した。とりわけ被害者の万年筆が石川宅から発見され、これが石川さんを犯人とする有力な証拠として提出された。しかし、この万年筆のインクが被害者の使っていたものと違うことを弁護団は明らかにしてきた。そして、昨年秋に出された下山鑑定が石川さんを無罪とする決定的な科学的な鑑定であることを強調し、このことを広めるように要請した。長くなるが、河村さんのこの部分の提起を別に紹介する。

大崎事件再審
決定は励みだ
次に、石川一雄さんと早智子さんからアピールが行われた。
石川一雄さんは「刑務所で八年間、警務官から字を習い、集会へのメッセージを書くことができるようになった。それは喜びであり、心が豊かになった。私は兄貴が『犯人』だとする取調官に騙されて自白してしまった。鞄、万年筆などあらかじめそろえて、自白によって出てきたようにしたのではないか。鞄を捨てた場所が自白と違う所であることが分かってきた。腕時計もシチズンでも型が違ったり、被害者の使っていたバンドとサイズが違うことなど無実の証拠が出ている。事実調べを行えば、一年以内で判決が出せる。私ももう一年半で八〇歳になる。なんとしても無罪を勝ち取りたい」とアピールした。
早智子さんは「六月二八日、熊本に行った。一雄さんはもしかして墜落したらと飛行機に乗れない。大崎事件で再審決定が出された。二度目の決定だ。再審者は九〇歳にもなる。私たちにとっても光だ。袴田事件を扱った映画『獄友』を紹介するNHKの番組に一雄さんも出演した。東京高裁前での要請行動も持続している。市民の運動になっている。狭山の風が吹いている」と話し、再審闘争への支援を訴えた。
地域の仲間からのアピール、集会決議採択の後、部落解放同盟江東支部の飯塚さんが地域で『部落』という差別落書きがあったことを報告し、部落差別をなくす闘いの重要性を訴える閉会のあいさつを行った。          (M)

河村弁護士の講演から

万年筆をめぐる
科学的な新証拠

 @「鴨居の万年筆」〜通常はあり得ない発見経過〜
二度の徹底した家宅捜索では発見されず、三度目の捜索で発見。しかも、発見場所である鴨居については、「すでに捜索済み」との警察官の証言もある。
A発見された万年筆のインクは、被害者が普段使っているインクと別物。
発見された万年筆に入っていたインクは「ブルーブラック」色。しかし、被害者の女子学生が普段使っていたインクの色は特殊な「ジェットブルー」(=ライトブルー)色。当用日記帳などの証拠から明らか。通常であれば、「発見された万年筆は、被害者が使っていた万年筆ではない」という結論になるはず。
B裁判所の苦しい「言い訳」
再審棄却決定「被害者の友人が事件の当日かその前日ころ被害者にインクを貸した事実が窺われるほかに、被害者は事件当日の午後学校を出てから狭山郵便局に立ち寄っていることが認められるのであって、同郵便局で万年筆のインクを補充したという推測を入れる余地も残されていないとは言えない」。
裁判所の「言い訳」を採用した場合「二種のインクの混合」が生じるはず。
C今回提出した新証拠(下山鑑定)の概要
(1)ペーパークロマトグラフィーの原理を使用した実験の結果を新証拠としている。
(2)調べたい物体をろ紙の上に置き、水溶液にろ紙の下部をつける。→毛細管現象で、調べたい物体が水溶液に吸い上げられて上方に「滲んで広がる」→その「広がり具合の痕跡」によって、調べたい物質が同一改質かを判断できる。
(3)証拠開示により、当時のインクが入手できたこと。インターネットの発達などにより、「発見された万年筆」と同一の製品が入手できたこと。
(4)実験から得られた結論:インクを混ぜると、ペーパークロマトグラフィー上、必ず混ぜたことが判明する。
(5)事件当時の「荏原鑑定」の内容
再審請求において裁判所が採用した「荏原第二鑑定」は、「発見された万年筆に入っていたインク」について、狭山郵便局備え付けのインクやクラスメートのインクと「類似する」と判断している。→下山鑑定を前提とすると、インクが混ざったのであれば、ペーパークロマトグラフィーにおいてその痕跡が現れるはず。しかし、荏原第二鑑定において、「二種類のインクが混じった痕跡」は存在しない。発見された万年筆の中にあったインクはブルーブラック単色であり、決してジェットブルー+ブルーブラックの混合インクであるはずがない、ということを意味する。
(6)導かれる結論
「発見された万年筆」に入っていたインクには、もし「狭山郵便局やクラスメートからインクを借りた」ならば存在するはずの混合痕跡が存在しない。→むしろ、荏原第二鑑定におけるペーパークロマトグラフィーの結果からすれば、「発見された万年筆」に入っていたインクは、狭山郵便局の備付インクやクラスメートのインク(いずれもブルーブラック)と同一のインクであったことが確定できる。→再審棄却決定が主張する「被害者が普段使用していたジェットブルーのインクに、事件当日ブルーブラックのインクが混入した」という理屈は科学的に否定される。(=発見された万年筆は、被害者が所持していた万年筆ではない)

6.16

反安保実が討論集会

自衛隊・安保問題はどこ
へ行ってしまったのか?

 六月一六日、反安保実行委員会は「討論集会 自衛隊・安保問題はどこへ行ってしまったのか」を文京区民センターで行った。この集会の趣旨は、「憲法九条改悪」をめざす安倍政権の動きの中で、それに反対する運動が、戦後長い間の「戦争と平和」をめぐる論争の中心点だった現実の日米安保や自衛隊をめぐる論議を後景化させてしまったのではないか、という問題意識から設定された。
 討論は、一九九〇年代の自衛隊PKO派兵に反対する運動の一翼を担った旧「派兵チェック」編集委員会のメンバーを中心に行われた。問題提起は太田昌国さん(編集者/民族問題研究者)、木元茂夫さん(すべての基地にNO!を ファイト神奈川)、杉原浩司さん(武器輸出反対ネットワーク)、池田五律さん(戦争に協力しない!させない!練馬アクション)、天野恵一さん(反安保実行委)の五人。
 参加者は少数だったが、「自衛隊派兵」をめぐる一九九〇年代以後の論議を引き継ぐ形で、「戦争国家」の構築から憲法改悪プログラムへと至る今日の現実の中で、あらためてどういう現実に今、直面しているのかの一端を照らし出す論議が行われた。
 PKO法が成立したのは二五年前の一九九二年六月。この間、自衛隊はPKOでカンボジアを皮切りに、モザンビーク、ゴラン高原、東ティモール、ネパール、スーダン、ハイチ、東ティモール、南スーダンに派遣された。それ以外にも様々な理由でアフガニスタン、イラク、インド洋、ルワンダなどに派遣されている。
 一九九〇年代以後、自衛隊の海外派兵はいわば常態化している。こうした「実績」の上に、自衛隊の実戦部隊としての戦争参加が、南スーダンにおいて現実のものとなりうる寸前にまでいたったのである。
 太田さんはこうした歴史を振り返りながら、軍隊と戦争、そしてその中での「死」を当然視しない立場をしっかりとしたものにすることを改めて提示した。

 天野恵一さんは、朝鮮半島における現実の戦争(核戦争)の危機を見据えながら、戦争が引き起こす核(原発)惨事をも、自らの政治目的に利用しかねない安倍政権を厳しく批判した。池田さんは日米の統合機動力強化と、明文・解釈改憲、改憲を通じた国家再編=「二〇二〇年体制」阻止・解体を見据えた論議と行動を呼びかけた。木元さんは神奈川県の自衛隊基地、米軍基地での動きを中心に問題を提起した。さらに杉原さんは、武器輸出大国をめざす日本の動きと、産業界・学会の動向を分析し、批判した。
憲法九条の改悪は、「戦争国家」の条件を整えた日本の現実の追認と、その飛躍的強化という意味を持っている。
九条改憲によって日本が「平和国家」から「戦争国家」になるわけではないが、それでも九条改悪によって何が変わるのか――現に世界有数の戦闘力を有する自衛隊の現実を、改めて見据えた改憲阻止の闘いが、今あらためて求められる。(K)

コラム

…だから落とすと決めた! 

 「共謀罪」の強行採決によって寒々とした雰囲気が漂う中で「東京都議選」は自民党の「歴史的惨敗」に終わった。安倍首相の敗因の弁。「政権の緩みに対する有権者の厳しい批判」と語った。「ちょっと待てッ!」と言いたい。安倍首相は「こんな人達に私たちは負けるわけにはいかない」と言い放ち、「落とすなら落としてみろ!」と二階幹事長は大見栄を切った。希望どおり「落してやった」だけ。「緩み」等と嘘をついてはならない。「安倍晋三流政治哲学」の「安倍友の、安倍友による、安倍友のための政治」を貫ぬき「友人諸氏」に儲けを与え共に分け合い称賛しあったではないか。志を同じくする「政治屋」はみんな同じ屋根の下で忠誠を誓い「忖度」政治を嬉々として進め盤石の体制なのだ。
 ケ躓いたのは盟友甘利大臣の献金疑惑から米国のTPP離脱。原発事故の「国の責任」を問う記者の質問に「本人の責任」と言い切り、不服なら「裁判でも何でもやればいいじゃないか」と言い放った今村前復興大臣。「うるさい!」と激しい剣幕で怒鳴られたのはテレビの向こうにいた「こんな人たち」。さらに「これはまだ東北であっちの方だったからよかった」と被災地を切り捨てた。
 成長戦略の目玉経済政策アベノミクスも「日本を覆っていた黒い雲(デフレ)が晴れ日本の隅々にアベノミクスの成果が全国に届く」と誇らしげだったが、大きく口を開け「日本の隅々」で「流れ落ちる滴」をいまかいまかと待ったがひと垂らしもなし。今度は目先を変え「東京オリンピック」成功を「目玉商品」に据えた。放射能の「安全基準」を緩和し避難指示を解除し避難者に「帰れ」と強制する。自主避難者は「国」の方針に反した奴らと切り捨てる。「東京オリンピック」成功のためには「原発事故避難者」という括りをなくし観光客を呼びこむ「騙し」であり原発事故の責任を放棄しようとする姿だ。
 何度となく聞いた「被害者の皆さまに寄り添う」という嘘。「どうにも止まらない」閣僚の問題発言、失態、暴言・暴行、献金疑惑。ゾンビの群れの如く登場し「揺ぎない」国民無視の「本音」を語る。
 一四年内閣人事局を創り役人を掌握した。「白を黒」と言い「黒を白」と言う「役人」が森友問題で登場し「厚顔無恥」の晴れ姿により「国税庁長官」に大抜擢。見え見えの「論功行賞」だ。「世間から何と言われようが思われようが」というわけだ。 丁寧な説明が欲しくば「読売新聞」を読め! 全部書いてあると安倍は言う。「もはや国民(主権者)を見ていない」。「自民党との決別」宣言が都の有権者の声から伝わって来る。主権者を「こんな人たち」と呼んではばからない宮廷に集う「私たち」。宮廷からは絶対に視えないもの、それは一生懸命働き生きている「こんな人たち」の顔と心だ。
        (朝田)

 


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