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    かけはし2017.年7月10日号

福島原発事故は東電の犯罪だ


6.30

第1回公判─いよいよ刑事責任を問う日が来た

「想定外の津波」は全くの嘘だ

勝俣、武黒、武藤は真実を語れ


被災者・遺族の
悲しみを背負い
 六月三〇日、午前一〇時から東京地裁で、東京電力の勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長を被告とする、業務上過失致死罪強制起訴事案の初公判が行われた。
 二〇一一年三月一一日、福島県、宮城県を中心にする東日本を襲った大地震と津波による東京電力福島原発事故がもたらした惨禍は、まさに筆舌に尽くしがたいものだった。六年以上が経過した今も、家族、友人、故郷での生活を奪われた被災者たち、遺族の苦しみは終わることがない。
 大地震・津波は自然現象であったとしても、その被害、とりわけ地震と津波がもたらす原発事故は予測できたものであり、人的・物的被害の多くは、十分な対策を取っていれば回避・軽減が可能だった。しかし東京電力は、地震に伴う津波が、原発にもたらす破滅的事故を予想できたにもかかわらず、事故対策を放棄し、原発事故がどれほどの惨事をもたらすかを隠蔽し続けてきたのである。その事実は、事故直後から多くの専門家によって、膨大な資料をもとに明らかにされてきたことだった。
 原発事故の被害者たち、遺族たちは二〇一二年六月一一日、福島原発告訴団を発足させ、全国で一万四七一六人もの人々とともに東京電力経営陣の責任を取らせるための裁判を求める闘いに参加した。検察は二〇一三年九月に全員を不起訴処分としたが、市民で構成される東京第五検察審査会は二〇一四年七月に勝俣元東電会長ら三人を「起訴相当」とする議決を行った。東京地検は再び東電幹部を不起訴としたが、二〇一五年七月、検察審査会はもう一度「強制起訴妥当」を、議決した。
 こうして二〇一六年一月三〇日に福島刑事訴訟支援団が発足し、二月二日には検察官役の指定弁護士が東京電力の最高幹部三人(勝俣、武黒、武藤)を強制起訴した。「告訴団」発足から五年、「支援団」発足から一年半を経て、ようやくこの日が訪れた。

しっかりと罪を
認めてほしい!
六月三〇日午前七時半、一〇時から始まる公判を前にして、東京地裁前には小雨の降り続くなか、早朝福島からバスで駆け付けた人びとを含め、三百人近い人々が集まった。福島刑事訴訟支援団長の佐藤和良さん(いわき市議)は、「人類史上最大の『公害』の一つである福島原発災害を裁く日がついに来た。事故の真相を発信していただきたい。一人一人の権利が認められるか否かの闘いだ。被告人はしっかりと自らの罪を認めてほしい」と呼びかけた。
海渡雄一弁護士は、「起訴状朗読に二時間、検察役弁護士の冒頭陳述にも二時間、証拠認定に一時間をかける長丁場の法廷となるだろう」と説明。
続いて会津、鏡石、いわき、郡山などから駆け付けた被災者たちが訴えた。
「東電幹部はぜひ本当のことを言ってほしい」「福島第一原発から八キロ、第二原発から三キロのところに住んでいた。奪われたのは普通の生活だ。六年以上たっても元に戻れない」「多くの労働者は被ばくにさらされながら仕事をしている。東電側は反対する人びとのために復興が遅れる、などと言っている」「地域の労組で活動している。原発労働者が未払い賃金を払えと訴訟を起こした。ピンハネでまともな賃金が支払われない」「国は除染もできていないのに故郷に帰れと言っている」。「こんな事態でもコメの全量放射能検査をやめるとか、早く双葉町に戻ってきてほしいなどと東電側が言っている」。
傍聴のための抽選の後、午前一〇時からの法廷に入る人と、傍聴に外れた人びととに分かれて、長い一日行動が始まった。

津波の規模は
想定されていた
傍聴からはずれた多くの人びとは参院議員会館講堂に集まって、リレートークを行い、また一〇時二〇分から始まった裁判の報告に耳を傾けた。
海渡雄一弁護士が、検察役弁護士の冒頭陳述の内容を紹介した。
「人間は自然を支配できない。だから仕方がないのか? そうではない。病院に運ばれた避難者が、どういう状況で命を落とすことになったのか? 東電は二〇〇八年三月には、国の地震調査研究推進本部(推本)の長期予測に基づき福島第一に一五・七メートルの津波が襲来する試算結果を得ていた。東電側の言うように想定していなかった大津波なのではなく、明らかに計算上予測できた津波の規模であったにもかかわらず、その対策を取らなかったことは明らかだ」。
午後には,Our Planet TVが編集した二〇一一年三月一二日深夜から三月一四日深夜に至る福島原発事故対策についての記録である東電側の対策をリアルタイムで映し出した「東電テレビ会議 49時間の記録」が上映された。

言い逃れは絶対
に通用しない!
法廷の終了後、参院議員会館で第一回公判の中身が伝えられた。佐藤和良さんが公判の内容を報告。「勝俣も武黒も武藤も、事故の予見は不可能で、刑事責任はないと主張した。二三八点の証拠要旨の説明があったが、武黒が自分には指導権限がないというのとは裏腹に彼がいかに『指導力』を発揮していたかがわかる」と語った。
傍聴した人見やよいさんや蛇石郁子さんは「被告人の言動は仲間内のかばいあいで腹の立つことばかり」と語った。
海渡雄一弁護士は、「かなり勝負がついた。設計想定を上回る津波の可能性について推本の長期評価の中で示されているが、三人はそのための具体的対策を講じなかった。『想定外』との言い逃れは成り立たない」と強調した。
安田いくお弁護士は、被告側弁護団の反対尋問では、「福島第一原発は法令に応じて運転されてきた。推本の『長期評価』は未成熟だ。今回の津波は予見できない『想定外』のものだったと主張している。勝俣は『会長には業務執行権限はない。原発についての専門的知識はなかった』と主張している。武黒は『フェローには決定権限はない』と述べ、武藤は『計算結果は試論であり信用性はない』としている。二〇〇九年に津波対策をやることになっていたのに数値が大きすぎるからやめた、というのはひどい」と語った。
この日の公判は、「一五メートルを超える津波など予見できなかった」とごまかす東電経営陣の言い逃れを徹底的に暴き出していくものとなった。   (K)

【連続講座】

永続革命としてのロシア革命

マルクス・エンゲルスから
トロツキー・グラムシへ

講師:森田成也さん

トロツキー研究所/アジア連帯講座

 今年は1917年のロシア革命100周年に当たります。言うまでもなく、1917年ロシア革命は、歴史上初めて成功したプロレタリア社会主義革命であるというだけでなく、この革命の10年以上前からその発展力学が主要な参加者によって予見されていた世界で最初の革命でもあります。
 マルクス主義はその際、最も重要な理論的ツールとなりました。「永続革命」として成功したロシア革命の発展力学を理解するために、マルクスとエンゲルスのロシア革命論から始まって、プレハーノフとレーニンを経て、トロツキーとグラムシに至るまでのマルクス主義革命論の歴史を4回にわたって改めてきっちりと振り返ります。それによって、ロシア革命の歴史的意義とその限界とを理解し、21世紀における反資本主義革命を展望するための理論的基礎を学びます。ぜひご参加ください。

◎ 日程
7月21日(金)18:30〜21:00 文京区民センター3B
8月18日(金)18:30〜21:00 文京区民センター3D
9月22日(金) 夜 場所未定
10月13日(金) 夜 場所未定  

◎ 資料代 各回一〇〇〇円

◎ 講師紹介
森田成也:大学非常勤講師。著書に『資本と剰余価値の理論』(作品社)『ラディカルに学ぶ「資本論」』(柘植書房新社)など多数。翻訳に、ハーヴェイ『新自由主義』『<資本論>入門』(作品社)、マルクス『賃労働と資本/賃金・価格・利潤』『資本論第一部草稿――直接的生産過程の諸結果』(光文社古典新訳文庫)、トロツキー『永続革命論』『ロシア革命とは何か』(近刊、光文社古典新訳文庫)など多数。

◎ 共催
?トロツキー研究所 
http://www.fb.com/
237096053043869
東京都福生市熊川510 ヴィラ4 105号  
?アジア連帯講座 
http://monsoon.doorblog.jp/
東京都渋谷区初台1-50-4-103 新時代社気付  
TEL:03-3372-9401/FAX:03-3372-9402



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