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    かけはし2017.年6月12日号

共謀罪法案を絶対に通すな!


廃案求める市民の集いに4700人
民主主義・人権破壊にストップ!

監視社会・憲法改悪止めよう


市民団体・NG
Oが一同に会し
 五月三一日午後六時半から、「5・31共謀罪法案の廃案を求める市民の集い」が同実行委員会が主催して開かれた。午後六時三五分にはすでに東京・日比谷野外音楽堂は定員オーバーになり、外での参加も含めて四七〇〇人が参加した。実行委の参加団体は以下のとおり。アムネスティ・インターナショナル日本/グリーンピース・ジャパン/自由人権協会/女性と人権全国ネットワーク/新聞労連/日本消費者連盟/ピースボート/移住者と連帯する全国ネットワーク/反差別国際運動/ヒューマンライツ・ナウ/人身売買禁止ネットワーク/共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会/共謀罪NO!実行委員会/戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会。

 「多くの市民が反対し、過去三度も廃案になった共謀罪法案。その共謀罪法案が、名前だけを『テロ等準備罪』に変え、国会での十分な審議もなされないまま、成立しようとしています。
共謀罪は、話したことだけを理由として人々を取り締まるものです。この法律ができれば、会話の内容は広く監視され、自由にモノを言えない社会が作り出されることになります。
共謀罪は、表現の自由、思想の自由を侵害し、市民団体の活動を萎縮させるものです。自由に物事を考え、自由に意見を表明することは市民の基本的人権であると同時に、民主主義の根幹でもあります。すなわち、共謀罪は、民主主義を破壊します。
真のテロ対策とは、さまざまな考え方や意見があることを理解し、民族的・文化的・宗教的な違いを乗り越え、差別や貧困、抑圧をなくしていくことです。『テロ対策』を名目に異なる考え方や意見を弾圧する今回の法案は、むしろ『テロ対策』に逆行しています。
私たちは、共謀罪の成立が監視社会の幕開けとなることを危惧し、将来に禍根を残さないため、今、共謀罪法案に反対します」。(呼びかけ文より)

国連人権理事会
特別調査員の声
集会前に豊岡マッシーさんの三線と沖縄の歌によるプレ企画が行われ、集会を盛り上げた。最初に野平晋作さん(ピースボート共同代表)が共謀罪反対・辺野古新基地建設反対の6・10国会包囲行動の呼びかけを行った。
米田祐子さん(グリーンピース・ジャパン事務局長)が「五月二五日、人権・環境団体も共謀罪の対象になると金田法相が国会で答弁した。監視・分断を深めるもので許せない」と主催者あいさつをした。海渡雄一さん(弁護士)が国連人権理事会特別調査員の書簡を読み上げ、「共謀罪法案の根本を批判している。共謀罪法案の審議をストップし、国連の問いに答えよ」と特別アピールを行った。
野党の国会議員が多数参加し、廃案に向けた熱の入った発言を行った。
山尾志桜里さん(民進党、衆院議員)「議員会館で次の日の国会質問を考えている時、いつも闘いの声が聞こえている。これが私を支えてくれている。私の検事時代の経験から言っても捜査機関のためらいをなくした時、自由がなくなる。あきらめていない。必ず廃案に持ち込める」。
山下芳生さん(共産党、参院議員)が「風力発電に反対する岐阜の市民四人に対して運動をつぶすために、警察が個人情報の収集をしていたことが明らかになった。共謀罪は普通に暮らす市民を監視するものだ」と批判した。福島みずほさん(社民党、参院議員)は「共謀罪成立の目的が憲法改悪のためであり、戦争ができる国造りの一環であること」を明らかにし批判した。森ゆうこさん(自由党、参院議員)は、「森友学園問題は八億円の土地の払い下げであったが、加計学園は二〇〇億〜三〇〇億円の話であり、さらに学校ができた後にも一〇〇億円の補助金が今治市などから出される。安倍政権がこれを進めた」と明らかにし、共謀罪によって「新たな戦前を作ってはならない」と痛烈に批判した。
糸数慶子さん(沖縄の風、参院議員)は「辺野古での抗議行動、座り込み、ブロックを積むことが共謀罪の対象にならないと政府は答えたが本当だろうか。現に山城博治さんは五カ月にもわたって拘束された。山城さんは六月国連に行って人権侵害を訴える」と報告し、共謀罪成立が沖縄の基地建設反対行動に適用される可能性について言及した。

人の心を破壊
する法案反対
特別ゲストの香山リカさん(精神科医)が「私の実家は小樽市で、プロレタリア作家の小林多喜二が生まれた。多喜二は一九三三年二月二〇日治安維持法違反で逮捕され、その日の夜に拷問で殺された。そんな社会にしてはいけないと小さい時から教わってきた。精神科医をやっているが、人間は自分で感じたり決めたりすることが大事。共謀罪は人の心を破壊する。これに反対する闘いは人間を守る闘いだ」と発言した。
続いて、実行委参加団体の以下の人たちが発言した。山口薫さん(アムネスティ・インターナショナル日本)、旗手明さん(自由人権協会理事)、小林基秀さん(新聞労連委員長)、小田川義和さん(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)、加藤健次さん(法律家団体連絡会)。山田健太さん(日本ペンクラブ言論表現委員会委員長)は、「表現の自由を奪うこと。警察・政府が管理する秘密社会をつくることになるために反対する。今後、記者会見を行い、反対をアピールする」と意気込みを語った。
集会では何回も、「共謀罪NO!」のプラカードを掲げコールを行った。集会は熱気に包まれた。集会後、銀座デモを行った。共謀罪を廃案へ。     (M)

5.30

大阪・「戦争法」違憲訴訟提訴1年

自衛隊はどう変わる

前田哲男さんが講演

 【大阪】『戦争法』違憲訴訟の第三回口頭弁論が五月三〇日大阪地裁で開かれ、その後、『戦争法』違憲訴訟の会主催の、提訴一周年の記念講演会がエルおおさかで開かれ、一二〇人の人々が参加した。
 初めに、会を代表して服部良一さん(共同代表)があいさつ、「今日の裁判は、原告適格性、被侵害利益・処分性をどう立証していくかという意味で重要な局面の裁判だった。戦争法によって自衛隊がどのように変容していくのかを、今日の講演でしっかり学んでいきたい」と述べた。
 事務局(岡本隆吉さん)からは、この一年間の会の活動経過と財政報告、安保法制違憲訴訟の全国状況の報告があった。
 また、冠木克彦弁護士(弁護団長)は、「この裁判は全国的に広がっており、全国で二一地裁約六千数百人の原告だ。現在腐敗した政治現象が起きている中で、最も重要な戦争と平和の問題をまともに提起している政党がみあたらない。そのような中で市民運動が違憲訴訟を提起している。過去の経験を現代につなげ、目の前で起きている危険を訴える、この二つを全国に広め宣伝していきたい。過去の戦争被害を確定しそれが現在に続いていることを訴えていくことで、世代交代の進行によりがらっと世論が変わって行くのを食い止める、朝鮮半島危機の中で何かことが起きたらどういう事態になるのか、具体的に語っていかねばならない。戦争法ができたことで自衛隊法が変わった。その逐条解釈をしていくと大変なことになっている。そのことを含めて、次回の準備書面をつくっていきたい」と、裁判の意義について語った。
 前田哲男さん(軍事評論家)が、「日本を戦争ができる国にしてはならない!」と題した記念講演をした。(講演要旨別掲)

 若干の質疑応答の中から、二点のみを掲載する。
 @ 第一次朝鮮戦争の時は、北朝鮮は日本を攻撃する力がなかった。今はその力がある。
 今、米朝鮮戦争が起きたとき、日本に米軍基地があるから日本は交戦国になる。日本(の米軍基地)から北朝鮮への直接攻撃は認めないという運動をつくる必要がある。安保では事前協議の対象となるはずだ。
 A 自民党の検討チームは敵基地攻撃能力の保持を提言しているが、米国マチス国防長官は、北朝鮮への攻撃は慎重にならざるを得ないと言った。それにはいくつかの理由がある。攻撃を始めても米軍が勝てるかどうか、明確な自信がない。韓国に駐留している米陸軍第二師団の安全は確保できるのか。韓国のソウルは守れるのか、などの問題がある。
 しかし戦争は、偶発的な出来事から起こるかもしれない。本来なら、そうならないようにするのは日本の役割であるはずだ。(T・T)

前田哲男さんの講演から

対抗プランを練り「民意」を対置する


GPS捜査は違憲だという最高裁判決もあったのだから、戦争法の危険を訴え、司法が行政を縛ることが必要だ。むずかしいことだが不可能ではない。朝鮮半島危機の中で、戦争発動が現実の問題になっているとき、違憲か合憲かではない現実との接点が存在しているのだから、危険を訴える訴訟の意義は大きい。

トランプ・安倍と
小説『1984』
大変な個性の持ち主であるトランプ大統領と五年目になる安倍首相の二人は、朝鮮半島危機を左右する要因になると思う。トランプが登場し、『一九八四』(ジョージ・オウエル)に書いてあることが現実になった。
この小説は米国でベストセラーになった。戦争は平和である(憲法九条の下で「戦争法」を制定)・自由は屈従である(「秘密保護法」や「共謀罪」による威嚇)・無知は力である(「弾道ミサイル落下時の行動」指示)というわけだ。
北の核ミサイルに悪乗りして恐怖をあおるのは、安倍政権の危機管理の手口だ(国民保護ポータルサイト参照)。それは、「頑丈な建物に避難を」や「地面に伏せれば新型爆弾恐れるに足らず」という、原爆投下時の防空総本部や大本営陸軍部の指示そっくりだ。
四月二九日、北のミサイル発射に対し、東京メトロや北陸新幹線が止まったが、そのことに何の意味もない。日本は原爆を何も教訓化していない。安倍内閣は、ミサイル危機をあおり国民の動きを統制し、ミサイルの脅威を口実に専守防衛崩しを図っている。
そもそも核の脅威の始まりは、米ソの核軍拡競争だった。安倍政権は、北の核のみが脅威であるかのようにいい、自民党の検討チームは、「敵基地攻撃能力」の保持を安倍首相に提言した(三月三〇日)。PAC3とイージス艦からの巡航ミサイルの間に地上発射型ミサイルを入れたミサイル防衛のための装備を米国から導入しようとしている。
一兆円の予算が必要だ。先制攻撃するとなると、歴代内閣が守ってきた専守防衛と財政コントロール(防衛費はGDPの一%)という二つの歯止めがなくなる。文民統制も歯止めの一つだ。GDPの一%枠については安倍政権になって崩れた。最近統幕議長が憲法九条の改正に言及し、憲法に自衛隊が盛り込まれたら、自衛隊の根拠規定ができるので一自衛官としてはうれしい、と発言した。これは自衛隊法違反だ。自衛隊法六一条は、選挙権の行使以外の政治活動を禁じている。
統幕議長が発言を理由に解任されたのは過去二度ある。しかし今回、内閣は注意すらしていない。自衛隊は南スーダンPKOから撤退したが、次に派遣されるときは、初めからかけつけ警護や宿営地の共同防護が任務となる。

自衛隊が「防護」
したのは米空母
安倍政権は戦争法(全部で一一の法律)を一括成立させた。国会は、立憲主義や集団的自衛権については審議したが、戦争法の成立で変わる自衛隊法の逐条審議をしていない。自衛隊はこの改正された自衛隊法で動いていく。
自衛隊法の改正の例を一つ上げると、自衛隊法九五条の二の改正により、武器防護規定を米艦防護にも適用した。もとはといえば、戦闘状態の現場から邦人輸送中の米輸送艦を防護するということだった。「戦争国から逃れようとしているお父さんやお母さん、おじいさんやおばあさん、子供たちかもしれない。彼らの乗っている米国の船を今、私たちは守ることができない」、これは、安倍首相が二〇一四年五月一五日記者会見を開き、集団的自衛権行使が必要だと国民に訴えたときに使われたパネルの文言だった。このように触れ込みしながら、防護すべき米艦とは実はカールビンソンだったのだ。
もし、米朝が海上で衝突すれば、米艦防護は、日本を米朝戦争に引きずり込む。安倍首相は、米艦防護の中身については、米軍の情報を漏らすことになるので、「実施の逐一についてはお答えすることは差し控えたい」(五月八日)と述べた。米艦防護はB52やF35戦闘機防護にいくらでも拡大できる。北ベトナム爆撃がトンキン湾事件から広がったように、はずみで戦争は始まる。

具体的な対抗
構想が必要
日本は、トランプ政権の望むがままに追随していく。その結果何が起きるのか。対「北朝鮮ミサイル防衛」の最前線になる(共同哨戒・THAADミサイルの導入)。対「中国海洋封じ込め戦略」の鉄砲玉になる(南シナ海での米軍の「海洋の自由作戦」への参加)。対「イスラム国壊滅作戦」への派兵(国際平和支援法により、多国籍軍や有志国連合の一員に引きずり込まれる)。
このままでは、日本は「本当に戦争をする国」になってしまう。「特定秘密保護法」と「共謀罪」で物言えぬ社会が到来。国家非常事態法の新設で基本的人権の一時停止。最後に、総仕上げとしての「九条改憲」がやってくる。しかし、「世論は九条改憲」など望んでいない。国民が望んでいるのは「はたらく自衛隊(戦う自衛隊ではなく)」だ。民意に沿った対抗構想の提示こそが必要だ。それがいま、護憲勢力がなすべきことではないのか。
私がかつて「平和基本法案」を提案した時、革新政党側から批判された。しかし、三年に一度内閣府が実施する「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」(三〇〇〇人対象、面接聞き取り方式)では、結果の傾向はずっと変わっていない。二〇一五年調査結果で見ると、自衛隊に良い印象を持っている(九二・二%)。自衛隊に対する関心のある理由として、日本の平和と独立にかかわるから(四六・一%)、大規模災害などで国民生活に密接なつながりがある(二六・五%)。自衛隊が存在する目的は、災害派遣(八一・九%)。自衛隊が今後力を入れていく面は、災害派遣(七二・三%)、国の安全確保(六九・九%)である。
冷戦終結後、EU主要国は兵員数を激減させたが、自衛隊は全く変わっていない。一九九一年と二〇一六年の比較では、ドイツは四七万六三〇〇人から一七万六八〇〇、フランスは四五万三一〇〇から二〇万二九五〇になった。自衛隊は二四万六〇〇〇から二四万七〇〇〇人だ。この傾向は、戦車・作戦機・主要戦闘機などの主要兵器数でもほぼ同様だ。
「自衛隊は違憲だ」というだけではなく、民意の内容やEU主要国の例などを考えた対抗構想が必要だ。
(講演要旨、文責編集部)




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