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    かけはし2017.年5月22日号

年金イエス、テメル ノー


ブラジル

3・15行進、大きな出発点に

フェルナンド・シルバ


国中の大都市で
テメル出ていけ

 この国中の一九に上る州都と他の都市で、数十万人がデモに参加した。少なくとも二八の部門では、私立、国立両部門の教育労働者と公共交通労働者が先頭に立つことにより、部分ストライキがあった。さらに、諸省庁、社会保障事務所また他の公共建築物の占拠があり、いくつかの道路も封鎖された。
三月一五日は、長い間ブラジルが経験したことのなかった規模での、闘争、デモ、ストライキの一日だった。それは、ミシェル・テメル大統領、彼の財務相であるエンリケ・メイレレス、さらに彼らが支配する議会によって今推し進められている年金改革(そして労働者の諸権利を攻撃する他の改革)に反対する、勤労民衆と抑圧された者たちの極めて多様な層内部の、切望と闘争能力がどれほど強いかを示した。
しかし、ブラジル人の定年退職する権利(年金受給権)に対する攻撃への普遍的な怒りを超えて、諸々の街頭にはまた、クーデター一味、テメル政権そのものに対する大きく鋭い拒絶も鳴り響いた。一週間前の国際婦人デーデモにおけるもっとも重要なスローガンの一つ――「年金はとどまれ、テメルは出ていけ」――が三月一五日の行進に再び現れたのは偶然ではなかったのだ。この一五日を彼らなりに「慎重に」取り上げたグロボTV局(軍事独裁政権支持宣伝を目的に一九六五年設立された右派テレビ局:訳者、本紙一月一六日号ブラジル記事注参照)のカメラでさえ、そのレポーターのすぐそばに人々が置いた横断幕やプラカードが、「テメル出ていけ!」と語っているのを隠すことができなかった。

深まる政治危機
を逆行阻止力へ


同日、テメル政権には直接の打撃である、ハノットの「第二リスト」(ペトロブラス〈ブラジルの国営石油企業〉とオデルブレクト〈後述〉の腐敗スキャンダルに関して捜査対象となる政治的人物の)が公表されたが、それによるエリート内部の、「上部の」政治的・制度的危機によって、社会的抵抗の可能性が強められている。
連邦司法長官のロドリゴ・ハノットが最高裁に、議会や他の免責特権に安住している一〇七人の政治家の捜査許可申請状を送ったのだ。ここには、政権の二人の主な政治的指揮者、主な政権与党の上院議員、下院議員、上下院議長、PMDB(ブラジル民主運動党、テメル大統領の党)、PSDB(ブラジル社会民主党)、さらにまたもやPT(労働者党)の最高指導者多数が含まれている。
彼らは今、ペトロブラス腐敗スキャンダルの一部として、この国最大の建設企業グループであるオデルブレクトの最高経営首脳陣による司法取引から得た証言を基礎として、選挙不正、買収、マネーロンダリング、犯罪的談合に関し捜査を受けている最中だ。ハノットはさらに、この国の二七州知事のうち一〇人に対する捜査請求状をも最高裁に送った。
この湯気の立つ大釜に加えてテメル政権の極度の不人気と経済危機の深化があり、われわれの下には、年金改革を阻止する実体的な可能性の存在という情勢がある。それはいかなる意味でもかつてのような勝利にはならないと思われる。その理由は、その勝利がテメル政権およびそのブラジルの資本に対する有用性を、政治的に破壊する可能性をもっているからだ。これは「テメル出ていけ」を結集する最良の道であるかもしれない。なぜならば、街頭で掲げられた諸課題、そして「下部の」闘争がもつ強さの成長は、「上部の」諸々の危機に緊密に結びついているからだ。
政権が労働者と民衆に対して準備中の攻撃の規模にもかかわらず、大資本にとっての労働改革の重要性にもかかわらず、さらに、「テメル出ていけ」のスローガンがあらゆるデモで、カーニバルをも含んで得ている共鳴にもかかわらず、決起と統一に向けた最大の潜在力をはらんでいるのは、年金改革に対する反対だ。
実にそれは、あらゆるものを脅かす逆行改革であり、残忍に、またわが大陸では同等のものがないほどに、定年退職する権利を終わりにするだろう。それは、この世界で男と女が同じ期間働いているわけではないということが知られている時に、男と女に対し働く期間を等しくすることを含む提案なのだ。つまりそれは、年金全額を受け取る権利を得るためには、四九年間の保険金拠出を必要とするという提案なのだ。そしてそれは、もっとも貧しい人々に対する社会的援助を、厳しい貧困の中にある人々に対するこの支援を漸次廃止するというたくらみとして、最低賃金の再調整と結び付けている。これらすべては説明が簡単であり、住民の過半が理解することもたやすい。事実、三月一五日がはっきりさせたように、それはすでに理解されている。
挑戦課題は今や次の行動日の構築であり、その中で、街頭デモを新たなストライキとあらゆる種類の他のイニシアチブ(請願、国民投票、その他)と組み合わせ、年金改革を阻止する大きな一押しへと、住民の大多数を引き出すことの助けを可能にすることだ。今こそ勢いを拡張し、三月一五日によって広げられた裂け目を活用する時だ。

階級和解モデル
を超えた構想を

 その上でわれわれは、三月一五日のサンパウロのアベニダ・パウリスタでの集会への、物議を醸したルラの参加にふれる必要がある。今は行動における可能な限りのもっとも幅広い統一を求める時である(そしてそれは、テメル政権とその諸改革に反対の諸労組、諸社会運動、そして諸政党からなるこの幅広い戦線への参加については誰も拒絶されるべきではない、ということを意味する)とはいえ、われわれは同時に、この運動は二〇一八年の選挙に対するルラの立候補を支援することとは関わりがない、ということをはっきりさせる必要がある。さまざまな理由があるとしても何よりも、大統領としての彼の最初の大計画が公的部門年金の根本的な改革を始めることだったからだ。もっと重大なこととして、銀行家と大地主たちの特権を守る階級和解という破綻したモデルが、そしてそれは一連のPT政権を特性づけたものだったのだが、昨年の議会クーデターにより全運動が被った敗北に扉を開いたものだからだ。
年金改革反対の闘争は運動と左翼のすべてを統一している。しかしルラはそれらを統一はしないのだ。
左翼と社会運動は二つの大きな挑戦を前にしている。第一は実践の問題、すなわち、テメル政権とその諸改革を打ち破ることだ。そして第二は、もっと長期的かつ戦略的な挑戦であり、ブラジルとラテンアメリカでまさに閉じることになった、ピンクの時代という階級和解モデルを超えてさらに進むことのできる、ブラジルにとっての構想と綱領を作り出すことだ。

▼筆者はジャーナリストであると共にPSOLの書記長。(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年三月号) 

イギリス

総選挙での迎え撃ち

労働党に不可欠なのは
急進的オルタナティブ

アラン・ソーネット


国をさらに右
に向ける賭け
 英国首相、テレサ・メイは、労働党がコービン指導部への右派の攻撃により十分に弱められたと、またその結果彼女がさらに五年の任期で報いられるだろうと期待し、六月八日の総選挙を求めた。前回総選挙での不正を理由に王国検事局が三〇人の個人について動こうとしている、という噂が現れ始めたのは、もちろん完全な偶然の一致だ。
 そしてまた、昨週を通じた労働党の連続的な政策発表が、世論調査におけるいくらかの改善を起こし始めたという事実も、総選挙呼びかけとは何の関係もない。討論は、分裂や不和に関するニュースよりもむしろ政策問題――全員向けの無料学校給食や介護人手当の増額(求職者手当と調和させるための)のような――に移ろうとしている、と論評した昨週のサンデー・ミラー紙のジョン・プレスコットの記事は、メイの計算に関しては完全に見当違いだった。
 保守党の勝利はメイを、有権者の前でバラバラになる彼女自身の党という形の、分裂的事態を早期の選挙実施が回避する中で、強硬路線を通して党内右派が欲している「タックスヘイブン」のブレグジットを強要できる地位に置くと思われる。それはまた、彼女がもし勝つとすれば、保守党の新政権に彼女の権威主義的スタイルを刻み付け、保守党内の彼女の地位を打ち固め、ブレグジットを進める途上にトラブルを生み出しかねないすべてのキャメロン派を取り除く好機を彼女に与える。このすべては、昨年六月の国民投票後の事態よりも、英国をさらに右へと押しやるだろう。いわば、保守党の英国独立党化第二段階だ。
 ジェレミー・コービンは正しくも、この発表を歓迎し、ブレグジット、社会政策、NHS(国民医療サービス)、経済について幅広く保守党と闘うと誓っている。
 この発表は、メイが二〇一六年六月のEU離脱国民投票以後に問われた多くの機会に総選挙を除外してきた以上、メイの側での大Uターンを意味する。しかしそれは、一見したところ見えるかもしれないもの以上の賭だ。それは事実上国民投票の再演であり、彼女はブレグジット票が維持されていることを当てにしている。しかし現実は、誰も分からない――ほとんどあらゆることが起こり得る――ということだ。彼女は、ブレグジットがバラバラになるとすれば、二〇二〇年においてよりも今の方が、彼女のチャンスはより良好、ということに賭けようとしている。

急進的な左翼の
綱領で勝ち切れ
左翼の仕事は今、コービンのキャンペーンを後押しすることであり、われわれに可能なすべての票を呼び集めることだ。
この選挙での労働党の鍵は、保守党に対する鮮明で魅力的なオルタナティブを提供できる、社会主義的な諸方策を備えた急進的な左翼の綱領を推し進めることだ。それはまた、メイが計画しつつある強硬なブレグジットに対するオルタナティブも提供しなければならない。そこには、単一市場への参入権獲得の場合の移動の自由維持が含まれる。
労働党は、四八%(離脱ノー票:訳者)だけではなく五二%(離脱イエス票)の中でも多くから、一つの回答と見られる必要がある。しかしそれは、強硬ブレグジットがなぜ英国に暮らすすべての勤労民衆にとって惨害となると思われるか、を示すことによって、最も有効になされ得る。
決定的なことは、もし必要であれば政府を形成するために、労働党が議会内の他の反緊縮諸政党(つまり、緑の党、SNP〈スコットランド国民党〉、プレイド〈ウエールズ民族党〉)との進歩的連携の下に活動する用意があるということだ。これは、二回目の独立国民投票を求めたスコットランド議会の呼びかけを支持することを意味する。これはもちろん、トニー・ブレアがそれを求めて歪めて伝えているような類の連合とはまったく違う。ブレアが描く連合は、右へと動くことにより、自由民主党に便宜を図るものなのだ。
そして最後に決定的なことは、労働党が選挙制度の問題を取り上げることだ。ウエストミンスターに関し比例制度を支持する宣言は、労働党が必ず勝とうとするならば、この選挙における労働党の訴えを強力に高めるだろう。そしてそれは、われわれが過去に経験してきたような、少数票を基礎とした選挙による独裁にわれわれが直面することがないということを今後確実にするだろう。(「ソーシャリスト・レジスタンス」より)

▼筆者は、第四インターナショナルビューローメンバーであり、同英国支部のソーシャリスト・レジスタンスでは長く指導的メンバーを務めている。(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年五月号)


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