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    かけはし2017.年5月1日号

許すな「働き方改革」 止めよう改憲


第88回メーデーアピール

日本革命的共産主義者同盟(JRCL)/国際主義労働者全国協議会(NCIW)

 第八八回メーデーに参加した労働者の皆さん。日本革命的共産主義者同盟(JRCL)と国際主義労働者全国協議会(NCIW)は、あらゆる戦争に反対し、平和を希求し、民主主義を求め、搾取と抑圧に抗して闘っている人々に心から連帯のあいさつを送ります。

(1)

 二〇一六年〜一七年にかけて私たちが目撃した最大の出来事は、昨年六月にイギリスが「EUからの離脱」を決めたことであり、一一月にはアメリカで排外主義者トランプの大統領就任が決定したことです。この二つの事件を世界中の多くのメディアも、政治・経済の専門家たちも予想することはできませんでした。
多くの人たちは「新自由主義的グローバリゼーションの行き詰まり」を指摘しましたがこれ程深刻に社会が根底から分解していることが見えなかったし、理解していませんでした。
これは次の三つの点で明らかです。第一は「気候変動」問題に端的なように資本主義的生産体制の限界が否応なしに私たちに突き付けられています。第二は、戦後アメリカ帝国主義が主導した世界が終えんしたことです。アフガン〜イラクと二〇年の間続けてきた戦争政策の失敗が、アメリカの「世界の盟主・世界の憲兵」という位置を奪ったのです。
そして第三は、旧来の支配体制のもとで維持されてきた「国民融和」が分解し、先進国では労働運動が衰退し、大きく排外主義的極右が台頭したことです。EU各国に見られる極右の台頭と拡大はその典型であり、極右の日本会議に支援される安倍政権もその一翼です。イスラム世界ではIS(イスラム国)に体現される原理主義・テロリズムが台頭し、ロシアは民族主義と排外主義をかざしてウクライナに介入し、クリミアを併合しました。中国もまた領土拡張主義を押し立て南シナ海に進出してきています。
第八八回メーデーに問われている課題はこの排外主義、民族主義に抗する闘いを開始することです。
安倍政権は後退したアメリカ帝国主義を支え、「積極的平和主義」を掲げ、米軍ととともに地球の裏側も含め、世界中のどの地域でも戦争を遂行できる国家を作ろうとしています。そのために昨年は「集団的自衛権」の先取り的実施として自衛隊の南スーダンへの派遣に「駆け付け警護」の役割を付与しました。そして今は、「現代の治安維持法」と呼ばれる「共謀罪」を今国会に上程しています。その最終的目的は戦後日本の平和を支えてきた「憲法九条」の改悪です。

(2)


安倍政権はこれによって対中国包囲網を形成し、アジアにおける政治・軍事・経済のイニシアチブを形成しようとしているのです。そのための最大の攻撃が沖縄県民の意思を無視して進められている辺野古の新基地建設です。これは普天間基地の代替などではなく、米軍と自衛隊が使用するあらゆる機能を持った出撃拠点の建設そのものです。南西諸島の与那国島、宮古島、石垣島、奄美で進められている自衛隊の基地建設もその一部であり、ベトナム、インドネシア、フィリピンへの兵器や新造巡視船の供与による囲い込み政策もその一環です。
四月六日、トランプ政権は「シリアの化学兵器使用を許さない」という口実で突然シリア政府の軍事基地に対して巡航ミサイル攻撃を行い、数日後には核兵器を除いて最大の殺傷力を持つという巨大爆弾をアフガンのIS基地に投下しました。その一方で、この攻撃は「北朝鮮の金正恩政権に対する圧力だ」と公言し原子力空母カール・ビンソンの空母機動部隊を朝鮮半島近海に向かわせています。
私たちはシリアの化学兵器の使用を絶対に許すわけにはいきませんが、「アメリカ・ファースト」をモットーとするトランプのシリア爆撃を言葉通りに受け取るわけにはいきません。おそらくは「メキシコ国境の壁建設」や「オバマ・ケアの廃止」というトランプの中心的政策が否決されたことに対する巻き返しであり、主導権の回復をねらった国内向け強硬策である可能性が十分にあります。化学兵器攻撃がシリア政府の攻撃だという確証もないまま爆撃を行ったことにそれは鮮明です。
だが安倍政権はこの攻撃の直後、ただちに「日本政府は全面的に支持する」と発言しました。「平和は力によってのみはじめて達成される」という好戦的立場で北朝鮮を攻撃するならば、韓国は火の海となり日本も無事ではありません。私たちはこのような安倍政権に対して、沖縄県民とともに対決していくことが必要です。「九条改悪」の前哨戦である「共謀罪」の成立をなんとしても阻止しなければなりません。

(3)


安倍政権の高支持率の背景にあったのは、「アベノミクス」による景気回復の期待でした。しかしこの政策の中心にあった金融緩和は、株などへ投資できる一部の富裕層を一層富ませただけで、安倍政権が望んだデフレの克服はついに実現できず、今や「異次元から異常」ともいえるマイナス金利政策まで進んでいます。こうした金利政策は労働者人民のわずかな貯蓄まで減らさせたばかりか、国・各自治体の財政赤字を天井まで押し上げ、「国家破産」寸前まで追い込んでいます。円安政策も自動車産業などの輸出増大を作り出しましたが、その利益は三〇〇兆円の内部留保金にされ労働者人民には一切還元されませんでした。その上、十数年間にわたり労働者の実質賃金は下がり続け、逆に非正規労働者は倍以上に増加しています。
安倍政権の肝いりで進められた「TPP(環太平洋経済協力構想)」は、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプの拒否によって止められましたが、逆に日米二国間の貿易協定(FTA)交渉の圧力に直面しています。「日米安保」を最優先に置く安倍政権はこれに屈服することは明らかです。そしてこの犠牲を労働者人民に押しつけることも明白です。
今日安倍政権は「一億総活躍」社会の実現と称して、三月二八日に「働き方改革」を閣議決定しました。貧困と格差と過労死をなくすと大言壮語された「働き方改革」は、「長時間労働の是正」と「同一労働同一賃金」の二つの柱で成り立っています。しかし改正案は労働者が長い間要求してきた一日八時間労働どころか本来の上限である月残業四五時間の基準をも大きく上回る月一〇〇時間を容認するという「過労死拡大」のための新しい攻撃です。
また「同一労働同一賃金」でも最も重要な対象であるべき女性について一切議論の対象からはずされ、盛り込まれているのは賃金、手当、職場研修についてのわずかな「是正」だけです。最も核心的課題であるはずの非正規労働者の権利や職の安定については一切言及されていません。
私たちは労働者への新たな攻撃である「働き方改革」を絶対に阻止し、「最低賃金時給一五〇〇円の実現」のために闘うことが重要です。

(4)


福島第一原発の事故から六年も経過しましたが、いまだ溶け落ちた核燃料のデブリの所在が不明のまま大量の放射能が放出され続け、東電が最後の切り札と言った氷の壁は不完全で、汚染水が海に流出し続けています。この結果、現在も故郷を失った六万人の人たちは避難を余儀なくされ、検察審議会がようやく起訴を認めた東電幹部に対する裁判もいまだ開かれていません。
逆に政府は今年三月末で「避難指示準備地域」と「居住制限区域」の避難指示を解除し区域外避難者への住宅支援の打ち切りを発表し強引に帰還を進めています。さらに来年の三月までで東電は賠償を終わらせる方針を打ち出しています。これは被災者を切り捨て、事故の収束を宣言するねらいであることは明白です。
政府が除染基準を一ミリシーベルトから何の根拠もないまま二〇ミリシーベルトに引き上げたのは、この帰還政策を推し進めることが目的であったことは明白です。仕事がなく、生活するための収入もないまま、子どもの安全を考えると「帰りたくとも帰れない」のは当然です。私たちは大きな声を上げ「福島を見捨てるな」と叫び続けなければなりません。
福島を切り捨てる一方で、政府と規制委員会は高浜、川内、伊方と次々に再稼働に突き進んでいます。繰り返される言葉は「新基準に合格」しているというコメントです。しかしどの再稼働される原発も事故の際の避難道が十分に確保されていないのです。加えて裁判所は辺野古新基地建設への対応と同じように政府の提灯持ちの役割を呈しています。これではおよそ法治国家とは呼べません。
今や世界は原発・核燃料から撤退の方向に向かって大きく動きだしています。東芝がアメリカの原発会社を子会社にして倒産の危機に突入したのもこの結果です。この一年をとって見ても熊本の二度にわたる震度7の地震、米子を中心とする震度6の中国地方地震があり、関電の高浜、九州の玄海、四国の伊方原発の付近にも断層帯が存在していることが指摘されています。この一つだけをとっても日本社会にとって原発は危険きわまりないものです。福島を見捨てるな! 原発再稼働反対! 原発輸出反対! 原発を廃炉に! 脱原発社会を実現しよう。

(5)


安倍政権は天皇の「生前退位」問題に対して当初反対の言辞を呈していたが、メディアを始め多くの声が「生前退位」を認める声に押され、「有識者会議」をつくり「一代限りの特例法」を前提としたうえで「皇室典範」に付則を入れることで国会の承認を得ようと動き出しています。それは「教育勅語」を暗唱させ「森友学園」にテコ入れするという極右排外主義、国家主義を捨てたのではなく、安倍政権の延命路線、政治的プログラムのために利用しようと切り替えたに過ぎません。このブログラムとは二〇一八年の「明治一五〇年」の行事とキャンペーン、二〇一九年の天皇代替りとラクビー・ワールドカップ、二〇二〇年の東京五輪・パラリンピック、そして「憲法改正」というスケジュール構想を描いているのです。
しかし今回の「森友学園」に見られるように極右路線が土地買収問題でその矛盾を露呈させたように多くの点で安倍政権の政策は現実と衝突し始めています。それは自衛隊の南スーダンからの撤退にはじまり「保育園落ちた。日本死んだ」問題や「東京五輪の指令塔である電通での過労死」問題などという形で火を噴いて来始めています。そして連日繰り返される閣僚の暴言やスキャンダル。そしてTPPに代わってアメリカから提案されたFTA問題、さらに北朝鮮問題では「対中国包囲網」構想とは反対にトランプ―習近平ラインができ、フィリピンのドゥテルテも動揺し始めています。今や「安倍一強体制」の基盤が動揺し始めており、全国に安倍政権を包囲する戦線が確実に広がっています。二年前の戦争法反対闘争は民主、社民、維新、生活、共産党の五党による野党共闘をつくり上げたように「共謀罪」阻止に向け再び大きなうねりをつくっていきましょう。私たちはこうした闘いの最先頭を担うとともに新たな「反資本主義左翼」の形成に向けて闘う所存です。

〈スローガン〉

?東アジアでの軍事的緊張激化に反対しよう!
?トランプの戦争に追随する安倍政権を倒そう!
?共謀罪の成立を阻止しよう!
?辺野古新基地建設阻止 沖縄県民とともに闘おう!
?一層の労働強化を策す「働き方改革」反対!
?福島を忘れるな 被ばく補償の打ち切りを許すな 再稼働反対 原発輸出反対!
?「生前退位」を口実とする新しい「Xデー」に立ち向かう 天皇制の廃止を!
?「森友学園」問題をあいまいにさせるな!
?築地市場の豊洲移転反対 東京五輪・パラリンピック開催反対!
?第八八回メーデー万歳 ともに闘おう!



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