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    かけはし2017.年3月27日号

東アジア情勢と自衛隊軍拡


池田五律さん(有事立法・治安弾圧を
許すな!北部集会実)に聞くD

緊張激化を民衆の側からどう考えるか

学校に働きかける自衛隊


――練馬に基地があるがゆえに、地域社会をゆがめていることはありますか。

基本的にそれは止めています。そこまで顕著になっていない。武器を作っている工場などがあるわけではない。北町を地盤としている自民党区議はトロフィー屋さん。トロフィーとか賞状は自衛隊がよく使う。基本的に住宅地。区職労ががんばってくれているのが大きいですよ。多くの区で危機管理室に自衛隊OBが入ってきている。自衛隊は、「危機管理のエキスパートです」と再就職先にしようとしているが、練馬は受け入れていない。
何といってもさっきも言ったけど教育絡みの動きが怖い。東京国体では、銃剣道大会が練馬で開催された。銃剣道をやっている高校は板橋の大東文化大第一高校とか数が限られていて、あの時は都立光が丘高校の生徒が出場した。開会式では、都立光が丘高校や区立北町中学の生徒が「ボランティア」で使われた。

――教育面で使われている。

 そうそう。じわじわと社会に浸透している。その点では、今後、区議会がどうなるかも心配だ。隊員OBの議員が増えたり、小池直系の議員さんができてくると、議会の雰囲気が変わってくる。それがこれから怖い。北町の方が苦しいと思う。練馬の朝霞駐屯地の南側にあたる地域の方がまだ子育て世代が多い。練馬や池袋が今なぜか人気なんです。横須賀とかは人口減になってきている。バブルの時、横須賀は通勤圏になった。人口減になった時、海軍カレーで町おこしになった。
横田は福生がつらい。横田のデモの時は殴りかかってくる人もいたりします。最近殺伐としています。福生の町は前より駅前もさびれている。16号線のアメリカ村で儲けようとした所も思った程ではない。その前を行くデモ隊につっかかってくる。ああなると怖い。

反対運動の相互連携


――原発村のように、原発がないと利権が続かないので困る。似ていますね。

 今のところ、朝霞市は完全に自衛隊の街になっている。選挙前にどっと自衛隊員を転入させたとか、そういうことも起こったりしていた。だけども旧革新系の田辺議員ががんばっている。練馬は共産党の議員さんも結構いるし、ネットの議員さんも無党派市民派の議員もいる。

――基地に対する運動を長年やられているので、いろんな団体をつなぐものとして重要な役割を果たしている。

 憲法の枠、沖縄連帯の運動とも仲良くやっている。基地があることでつながっている。平和委員会など共産党系の人びととも、共闘することが多い。生活者ネットの議員さんもこうした問題については熱心に取り組んでくださっている。他の地域だと労戦統一問題で分解していったが、みんなが支援し続けなければいけない労働争議が幾つかあったことと、自衛隊の駐屯地があったこともあって、争団連系と全労協系がいっしょに反戦課題に取り組むという他の地域ではめったにないことも成り立っている。
他にもそれぞれ、いろんなものをつながるようにしてくれる人がいる。東交も区職労と共闘との関係で知り合いだったりしていろいろ協力してもらう。現業共闘の枠組で東京土建も清掃や区職労も付き合っている。
観閲式反対など大きな集会になったら、東京土建も参加してくれる。ビッグレスキューの次の年に練馬区が東京総合防災訓練の会場だった。全部区の施設は東京都に使われた。東京土建が土建会館を貸してくれた。土建会館で「石原(都知事)来るな」、東京都防災訓練反対集会をやって練馬の駅をデモできた。

どう見る中国・北朝鮮

――中国の軍拡、北朝鮮の核実験、弾道ミサイル発射についてはどう考えますか。

 二〇一五年の練馬アクションの総会は羽根次郎さん(明治大学・政経学部教員、中国研究者)を呼んで学習会したり、いろいろ勉強しないといけないと思っている。とにかく脅威がないと自衛隊は存在できないのです。ないところに煙を立てたい、脅威を作りたい。日中とも軍事官僚は両方ともそうなんだと思う。そのスパイラル構造になっている。マジでやる気はなくて、やるぞ、やるぞという振りをしながら、さや当て合戦をしている。それで軍事産業は広がり、天下り先は増える。偶発的な戦闘のレベルだと思うけど、そうした危険を引き起こしかねない。その危険をどんどん増やして、彼らは肥え太る。

――日米の中国・北朝鮮への軍事的敵対を批判するのは当然ですが、今の中国・北朝鮮のあり方、人民に対するあり方を含めて、軍拡は当該の民衆にとってもよいことではない。批判すべきは批判した方がよいのではないですか。

いや、僕は自国帝国主義打倒ですから(笑)。というか、全世界に対して方針を出せるわけでもないし、全世界の人民を解放するような使命を負っているわけでもないし……。無党派市民なのでとにかく「殺すな、殺されるな」ということ。情勢分析的な話でいったら、北朝鮮の問題というのは中国なしに語れない。だから、アメリカが即攻撃ということは考えられない。だけども、いろいろ戦争シミュレーションを立てて、圧力は強化している。圧力をかけられればかけられるほど、北朝鮮はアメリカに相手にして欲しくて、たまらなくてダダこねている。北朝鮮の体制が良い悪いは別にして、「存在するものは存在する」としてアメリカは交渉するしかない。オバマ政権のように戦略的無視と言っていたらどうしようもないと思う。
一五年前くらいから、杉原浩司君と僕とで「核とミサイルNO!キャンペーン」をやってきた。「ミサイル防衛をやったら、東アジアにミサイル軍拡競争を呼ぶぞ」と。その悪循環をどうしていくか、ということだと思う。
中国問題で言うと、「台湾海峡危機シナリオ」。台湾が独立を宣言して、中国人民解放軍が乗り込もうとする。それに対して、有事来援をアメリカ本土からする。それをアンチアクセス、来させない。駆けつけて来ても、戦域で行動させない。エリアデナイアルを中国はやろうとする。
アンチアクセス、エリアデナイアルは南シナ海に潜らせてある潜水艦と宮古水道を出てフィリピンの東海岸に潜らせてある潜水艦から米機動部隊を攻撃する。そういう中国軍のアンチアクセス、エリアデナイアルの能力を粉砕する。だから、かつての中曽根の時の三海峡封鎖のように、南西諸島に自衛隊を置いて、地対艦ミサイルで中国艦船が西太平洋に出ないようにする。
潜水艦と哨戒機で自衛隊が中国海軍の動きを封じる。そういうシナリオでどんどん軍拡を進めている。そういう抑止力合戦。じゃあ、中国にとって尖閣も含め、東シナ海がどういう位置づけになっているかというと、アヘン戦争で奪われた範図を取り戻していくという意識ですね。中国自身は侵略と思っていない。

日本側の反省的視点

――清朝の帝国的範図ですからね。

 奪われたものを取り戻すという発想だ。近代国家ではなかったので国境という概念もなかった。反植民地闘争を通して国家形成してきた。
羽毛の採取から始まって、日本の商人も南沙に行っていた。植民地支配と南沙問題もつながる。日本もやってきたことなんです。一番最初ガイドラインができた頃、シーレーン防衛と言った。経済成長して、経済大国になってきたら、その輸送路を防衛するシーレーン防衛と言い出すわけで、てめえもシーレーン防衛と言っておいて、中国が外洋艦隊を持ちました、脅威ですというのは、どこかおかしい。おいおい、一九七八年頃からシーレーン防衛と言っていたではないか。インド洋まで海上自衛隊は行っているわけだ。それで給油作戦までやっている。それをアジアの人はどう見ていたのか。自分を見返して見ることがない。
フィリピンの政権が代わったから立ち消えになりましたが対中脅威をいいことに、アキノとの間ではフィリピンに自衛隊基地を作るという密約もあるという話があったくらいだ。互いにそういってやりながら、脅威を高め合っている。
もう一つ見えてない面というのは対テロという面では共闘しているということです。南スーダンには中国も行っている。影響力を互いに争いながら、特にアフリカは資源獲得の面でも、日本は常任理事国入りと中国に負けまいとしていて、おカネのまきっこをしている。競い合いながら対テロではいっしょになったりする。なんか新聞紙上をにぎわしている位置づけだけで見ないアングルで見ること、特に自己批判的アングルで見ないといけないと思っている。  (つづく)

3.10

「共謀罪」を問う講演・討論会

監視社会化への批判を!

大阪弁護士会が主催


 【大阪】三月一〇日大阪弁護士会主催の、共謀罪法案の問題点を浮き彫りにする講演・討論がひらかれ、四〇〇人の市民が参加した。
稲村泰一弁護士会副会長の開会あいさつに続いて、平岡秀夫さん(弁護士、元法務大臣)が「共謀罪と監視社会について考える」と題して講演をした。

あいまい極まる
「テロ集団」規定
講演の後、太田健義さん(大阪弁護士会共謀罪法案PT事務局長)の司会で、永嶋靖久さん(大阪弁護士会共謀罪法案PT座長代行)と平岡秀夫さんとの討論が行われた。その中でふれられたいくつかの点をまとめる。
@国家間の捜査協力のためには「共謀罪」が必要だという意見があるが。
TOC条約では、共謀罪か参加罪のどちらかを条件にしている。捜査協力は、共謀罪なら双方共謀罪があること、参加罪なら双方に参加罪があることが必要だ(双罰性)。日本が「共謀罪」にこだわるのは、TOC条約にこじつけて、共謀罪を持っているいる国と捜査協力するためではないのか。英米は共謀罪、独仏には参加罪がある。日本で共謀罪法案が出ると聞いて、ケネディ大使は喜んで、協力を申し出た。TOC条約一八条では、双罰性がなくても捜査協力はできるとしている。
A詐欺等では、共謀罪が必要だという意見があるが。
詐欺にあっても、犯人が捕まらないのに、法律つくったら捕まるとは考えられない。窃盗・詐欺は増えている。盗聴すれば効果があるというが、あらかじめ誰を盗聴するのか。その特定は難しい。令状捜査はできるが、現行犯逮捕はできない。オウム事件の滝本弁護士は、オウム事件では国の対応がまずかった、監視はほどほどにすべきだと言っている。
B自らが組織犯罪集団であると自覚できるのか。
それができるのは、暴力団ぐらいだ。多くは、知らない間に対象になっている。「共謀罪」修正案では、適用対象である「組織犯罪集団」を「テロリズム集団その他の組織犯罪集団」としているが、テロリズム集団は組織犯罪集団の例示か。計画する前はこの団体に当たらなくてもよいと読める。団体の目的が変わったり、将来該当する団体として計画すれば、この罪に該当する。例えば、労働組合も場合によっては該当するようになる。組織犯罪集団は縛りにはならない。
Cテロリズム集団の定義はなにか。
秘密保護の中で定義している「主義主張に基づき、恐怖を与える目的で、他人を殺傷する」。条約との関係では矛盾している。東京五輪に向け共謀罪は必要という立場が、北朝鮮の影響で賛成多数になったが、そもそも該当する団体をどのように認定するのか。結局それは、捜査当局の判断による。金田法務大臣は、一回は逃してあげると言っていた。(会場から、テロは犯罪の範疇には入らないとの発言あり)。
D準備行為は処罰要件なのか、構成要件なのか。
よく分からない。共謀罪では現行犯逮捕できない。共謀で逮捕したら、犯罪の実行はないのだから、その後他の人が実行することはない。ATMで出金したとき、航空券を購入したときなどは?常時監視するしかない。
E監視社会になるのか。
未然防止するなら際限なく監視するしかない。犯罪のピークは二〇〇二年だった。その後急激に減少している。これをさらに減らすために「共謀罪」をつくるのか。(T・T)


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