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    かけはし2017.年2月20日号

米国にしがみつく改憲戦略


安倍・トランプ首脳会談

東アジアの平和のために闘おう

親密さをアピール

 二月一〇日(日本時間二月一一日早朝)、訪米した安倍首相はワシントンのホワイトハウスでトランプ米大統領との初の日米首脳会談を行い、共同声明を発表した。さらに一〇日夜から一一日夜までフロリダ州パームビーチのトランプ大統領別荘に二泊して、二つのゴルフ場で二七ホールのゴルフコースをまわり、その親密さをアピールした。
 今回の訪米とゴルフや別荘での歓談は、安倍首相にとっては、「未知のトランプ」に対して無条件の信頼の手を差し伸べ、トランプへの無二の「同志」として自らを印象づけるためのものだった。それはトランプにとっても国際的・国内的な批判をかわすためにも絶好の機会だったのである。
 すでに昨年一一月の大統領選でトランプが勝利した直後、安倍首相はペルーで行われたAPEC首脳会議に行く途中、ニューヨークの「トランプタワー」で、今や政権中枢の座を占めている長女のイバンカ、その夫ジャレット・クシュナーの同席の下に、トランプと一時間半に及ぶ会談を行い、「信頼関係を築くことができる、確信を得た」と語っていた。これは各国首脳としては初めての「米次期大統領」との会談だったのである(本紙二〇一六年一二月五日号五面「トランプ・安倍会談は何だったのか」参照)。
 しかし一月二〇日に大統領に就任したトランプは、「アメリカ・ファースト」の公約を全面展開し、TPP離脱、メキシコとの間の「壁」の建設、移民・難民の排除・追放といった排外主義に満ちた政策を次々に実行に移していった。日本に対しても「安保ただ乗り」「不公正貿易」といったキャンペーンを吹っかけ、日米支配階級の「合意」の土台を揺るがすような攻勢をしかけていた。
 表に出ることはなかったとはいえ、安倍政権と日本の支配階級の間には、疑念と不安が募っていたに違いない。

トランプに恩を売る

 二月三日に来日したマティス米国防長官との会談で「日米同盟の強化と尖閣諸島への日米安保の適用、普天間基地『移転』問題では辺野古が唯一の解決策」などの路線を再確認したことで、今回の日米首脳会談のレールはすでに敷かれていた。しかしTPPからの離脱、トランプ本人による「日本の不当な為替操作」発言など、「アメリカファースト」のトランプ政権の経済政策の方向は、安倍政権と日本の支配階級にとっても未知の不安を駆り立てる要因となっていた。
さらに、イラク、シリア、リビアなどムスリム七カ国からの入国を拒否した攻撃的レイシズム・人権破壊と「イスラムフォビア」、女性蔑視丸出しのトランプ政権の政策は、盟友であったはずのイギリスのメイ首相からの危惧もふくめて、国内外から大きな批判の対象となっていた。ところが安倍首相は「揺るぎのない日米同盟」に少しのヒビが入ってもならないと、「入国管理や難民政策は内政問題なのでコメントを差し控えたい」とトランプ政権に事実上の助け船を出したのである。これは「難民認定率」がわずか〇・二%という人権無視の日本の現実を反映したものでもある。
安倍首相は、この不安をぬぐい去るための訪米とトランプとの交渉に、「個人的信頼関係」の構築をふくめて全力を尽くしたのである。
すでに二月三日に来日したマティス米国防長官と安倍首相、稲田防衛相との会談で「尖閣への日米安保の適用」や、駐留経費の日本負担への高評価という従来の関係は再確認されていたが、今回の訪米とトランプとの会談は、イスラム諸国からの「入国禁止」措置への欧州諸国をはじめとしたトランプ政権への批判に加わらず、手を差し伸べることでトランプに恩を売るものとなった。

沖縄の闘いと日米同盟


ここであらためてトランプ・安倍の日米共同声明の本文に立ち入って見よう。冒頭は言うまでもなく「日米同盟」についてである。
共同声明は「揺らぐことのない日米同盟はアジア太平洋地域における平和、繁栄、自由の礎である」ことをうたいあげ、「核及び通常戦力の双方による、あらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない」ことが確認される。その上で、二〇一五年の「日米防衛協力指針(ガイドライン)」による日本側の「より大きな役割および責任」を強調する。
次に沖縄についてである。
「両首脳は、日米両国がキャンプ・シュワブ辺野古地区(沖縄県名護市)およびこれに隣接する水域に普天間飛行場(同県宜野湾市)の代替施設を建設する計画にコミットしていることを確認した。これは、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策である」。こうしてトランプ・安倍両首脳は「国家意思」として辺野古新基地建設に反対する「オール沖縄」の堅い意思をあくまで力で踏みにじることを相互に確認した。
さらに「宇宙軍拡」「テロとの闘い」における日米の共同戦線を強調している。「日米両国は、変化する安全保障上の課題に対応するため、防衛イノベーションに関する二国間の技術協力を強化する。日米両国はまた、宇宙およびサイバー空間の分野における二国間の安全保障協力を拡大する。さらに日米両国は、あらゆる形態のテロリズムの行為を強く非難し、グローバルな強化を与えているテロ集団との戦いのための両国の協力を強化する」。
その上で共同声明は「両首脳は、外務・防衛担当閣僚に対し、日米両国のおのおのの役割、任務および能力の見直しを通じたものを含め、日米同盟をさらに強化するため、日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開催するよう指示した」としている。
ここで「日米同盟をさらに強化」という際、世界中どこにおいてでも米国とともに戦闘に参加することが想定されているのは明らかである。
こうして沖縄における「島ぐるみ」の反基地闘争の意味が、この「共同声明」の中から改めて浮かびあがっている。そして沖縄とともに反安保・反基地の闘いが、全力を挙げて取り組むべき最重要の課題であることを提起しているのである。

矛盾の拡大は不可避


共同声明は、「日米経済関係」について次のように言及している。
「日本および米国は、両国間の貿易・投資関係双方の深化と、アジア太平洋地域における貿易、経済成長および高い基準の促進に向けた両国の継続的努力の重要性を再確認した。この目的のため、また、米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した点に留意し、両首脳は、これらの共有された目的を達成するための最善の方法を探究することを誓約した。これには、日米間で二国間の枠組に関して議論を行うこと、また、日本が既存のイニシアティブを基礎として地域レベルの進展を引き続き推進することを含む」。
TPPからの米国の離脱の中で、経済問題に関しては麻生副総理・財務相とベンス副大統領の間での「二国間協議」を軸にして懸案の協議・調整が進められるという。
トランプは首脳会談を前にして、日本の「円安誘導」などの為替操作を批判していたが今回の首脳会談ではそれが触れられなかったことに財界は安堵している、と報じられている。しかし状況の変化によって、そうした批判が再燃することは不可避である。今日のグローバル資本主義の危機は、不可避的に国家間の利害対立の対立・抗争をより深刻な形で再生産し、それが排他的・排外主義的気運の爆発へと誘導される基盤を広げることになる。
このような情勢の中で、今回の安倍・トランプの日米首脳会談はあらためて米国への軍事・外交的依存、「強いアメリカ」の復活こそ安定の基盤という日本の支配者たちの願望を確認させるものとなった。
「日米同盟」をあくまで基盤とした改憲・戦争国家化という安倍自民党政権の総路線は、しかし「トランプのアメリカ」の衰退の中で、さらなる危機を拡大することになるだろう。
トランプ・安倍会談のさなかに、それを狙ったような北朝鮮キム・ジョンウン政権によるミサイル発射実験のニュースが飛び込んできた。
われわれはキム・ジョンウン政権のこうした軍事的冒険とそれを利用した米日韓の実戦体制に反対するとともに、東アジアの平和のための民衆的闘いを国境を越えて築き上げる課題に挑戦しよう。沖縄の反基地闘争とともに!(平井純一)


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