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    かけはし2016.年12月12日号

成田空港 われわれの我慢にも限度がある


11.6

「成田空港機能強化」に関する説明会

加瀬勉さんが怒りの抗議



 一一月六日、千葉県多古町の牛尾共同利用施設で「成田空港の機能強化に関する地区説明会」が開催された。
成田空港会社は、九月二七日、空港機能の強化と称して住民の生活破壊に直結する「第3滑走路の配置」、「空港敷地の範囲」、「夜間飛行制限の見直し」(午後一一時〜午前六時から午前一時〜五時の短縮)、「予測騒音コンター」等を成田空港に関する四者協議会(成田空港の周辺9市町と国土交通省、千葉県、成田国際空港会社)に提示した。夏目誠空港会社社長は、騒音被害が大きいと予想される地域を対象に地区単位で説明会を実施すると表明していた。その一環として行われたのが牛尾地区説明会であった。
牛尾地区の住民である加瀬勉さん(三里塚大地共有委員会代表)は、空港会社が押し進める「成田空港の機能強化」に対して断固として抗議し、以下のような抗議文を明らかにした。           (Y)

 

加瀬勉さんの抗議文 (上)

人々の未来を破壊するな

「お前たちに警告する」

 お前たちは犯罪者

 成田空港の建設は国家犯罪の積み重ねの上に建設されたものである。お前たちは加害者であり犯罪者であり犯人なのである。

 人面獣心

 強権を突如発動しあらゆる者を奪い尽した。我々の闘争抵抗で強権が通らないと知るや、今度は「丁寧に説明する」「結論は急がない」と町村単位、地区単位、集落単位で説明会を開いている。鉄棒を振るっても鬼は鬼、笑っていても鬼に変わりない。「夜間飛行の制限緩和」「五〇万回増便」「第三滑走路建設」「騒音対策」に「ご理解をいただきました」この口実、既成事実をつくるための説明会ではないか。そこに並んでいる鬼ども、人間の皮をかぶった鬼ども衣の下に鎧が見える。我々は断じて、いかなる空港の機能拡大に断固反対する。

 殺人鬼

 「国策に反対するものは日本人ではない」「日本から出て行け」「空港に反対する奴は何人殺してもよい。お上からの指示である」。俺たちはあらゆる迫害を受け、多くの人が殺されていった。その事実をこの目で見つめ、体験してきた。いかにお前たちに殺されたか、殺されるような弾圧と迫害を受けてすべてを奪われたか。真実を語るから聞け犯罪人ども、空港機能拡大のペーパープランを撤回せよ。再び地域に大混乱を起こし、我々を殺して空港を拡大してゆくのか。人間の命を超える大義などこの世に存在しない。

 人間の良心の破壊

 「空港(株)、うつ向いていないで立って聞け」。お前のところの黒野(元空港株式社長、最高顧問)は、突如、三里塚東峰神社の御神木を無断で切り倒した。集落の鎮守、初詣、結婚の報告、出産の宮参り、七・五・三の宮参り・成人の宮参り、秋の収穫祭り。日常は神聖な場所として清掃してきた。御神木の一枝も折るものもない。集落の守り神として信仰の対象にしてきた。御神木を無断に伐採したことは、憲法で保障されている思想、信条の自由にたいする重大な人権侵害である。黒野は東峰集落住民に謝罪文を提出したが空港機能拡大の講演会を開催して歩いている。「黒野、人間として恥を知れ」。

 国土航空局

 空港(株)の黒野が東峰神社の御神木を伐採する重大な過ちを犯した。監督官庁の航空局はどのように指導し注意したのか。答えてみろ。なぜ黙っているのだ。答えられまい、真実は、航空局が指示し切らせたのであろう。真犯人は黒野でなく、航空局お前であろう。
一般社会では刑事事件である。なぜ刑事事件にならないのか。なぜそれが隠蔽されるのか。空港建設が国家犯罪であるからである。

 闘病生活

 私の集落では一戸一名の割合で病人がいる。ある者は通院し、ある者は福祉施設へ、ある者は自宅で療養生活を送っている。この人々にとって絶対必要なものは騒音のない静かな環境である。この人たちを騒音被害で苦しめ、さらに騒音地獄におとしいれ、立ち退きを要求するとはなにごとか。人権蹂躙である。人間の命を縮める空港機能拡張計画を撤回せよ。

 振興政策

 隣の家と軒先を並べていながら騒音a地区、b地区に分断され、同じく軒を並べていながら、騒音b地区と騒音区域外に分断されている。騒音被害は同じだが、測定線引きによって分断された。集落内に被害とともに差別をなぜ持ち込んだのだ。子どもたちが独立し、結婚し、屋敷内に住宅を建てローンを組んで生活している。四六年度以降新築した家には防音工事補助は出ない。防音の工事の補助は、家族構成割りであり、家の建ぺい面積にしたがってだされていない。集落の一戸の家族構成は平均三人である。工事費足りない。被害を受けている我々が不足分を出している。加害者の空港(株)のお前たちの会社が黒字で儲かっていて被害者の我々がなぜ工事費の不足分を出さなくてはならないのか。

 夜間飛行制限緩和

 夜間飛行緩和断固反対。二四時間稼働絶対に許さない。騒音の三〇デシベル(音の高さ)の特殊な防音装置の寝室を作ると説明しているが、密封した金庫みたいな部屋になぜ我々は寝なければならないのか。高温多湿の日本の風土は開放的な家屋でなければならない。牢屋のような中に我々を封じ込めるとはなにごとか。

 立ち退き

 第三滑走路一〇年後、五〇万回増便三〇年後、騒音被害立ち退き区域からになるから村を出ていってくれ。「ふざけるなこの野郎」、お前たちのためになぜ俺たち住民が運命を変えなければならないのか。縄文、弥生有史以前から生活している場所を離れなければならないのか。お前たちの最高幹部は天下って高額な退職金を二度、三度もらって、宮仕えのお前たちも、やがて定年退職してゆくだろう。いや来年にも職場の配置転換で空港問題の係から離れるかもしれない。俺たちは子々孫々、永久に騒音地獄の中で生活してゆかねばならない。なん人も人の運命に介入干渉する権利は有していない。我々の財産権、居住権、職業選択の自由、健康で文化的な生活を等しくおくる権利等の基本的権利人間の良心の世界になぜ行政権力をもって介入して来るのだ。三里塚の悲劇を再び作り出す夜間飛行制限緩和、五〇万回増便、第三滑走路建設計画を撤回せよ。

 重い経済負担

 防音工事個人負担は、当初、空港公団の統計では一戸当たり一〇〇万円支出されたと言われている。では、空港関連振興策の集落排水(下水・トイレ)の宅地内工事は最高個人負担二六〇万円、最低三〇万円、平均五〇万円から六〇万円負担している。成田用水事業はどうだ、米価格が安く一〇a当たり一〇万円ぐらいしかならない。生産費は一〇a当たり全国平均で一三万円である。年金、農外収入で組合費、賦課金を収めている。防音工事、集落排水、成田用水、空港関連振興策の経済負担は俺たちに重くのしかかつている。騒音被害で苦しみ、加えて経済負担で苦しんでいる。空港(株)は黒字、お前たちも月給をもらってのうのうと生活している。なぜ俺たちが犠牲にならなければならないのか。

 騒音対策

 空港機能拡大とは騒音の被害を拡大し深刻化させることである。どんなに金をかけても木造家屋では騒音被害は防ぐこととができない。芝山相川、多古菅澤、横芝光伊藤の首長は空港交付金が成田市ばかり優遇されていて我々は少ない額であるといっている。交付金が増額され道路、箱物を作っても騒音の被害はなくならない。私の集落に騒音迷惑料が年間七〇万円来ている。騒音被害が増大し、被害が深刻化すれば、迷惑料もそれに従って増額されるだろう。でも、「金をやるから我慢しろ」では騒音の被害はなくならない。我々の我慢にも限度がある。必ず爆発する。お前たちにそのことを警告しておく。

 世界の流れに逆行

 「空港と地域との共生」とんでもない、「自然と人間の共生」これが我々の理念である。日本有数の北総台地の畑作農業を破壊し、北は茨城水郷稲作地帯、南は九十九里稲作平野の自然を騒音地獄にし、我々の生活に被害を与える。増便によつて飛行機の排ガスをまき散らす。環境問題は地球温暖化に象徴されるように人類生存の危機をはらんでいる。京都議定書から最近のパリ―協定の枠組みまで、それでも地球の温度は三度上昇するといわれている。世界航空業界の総会でも二%の二酸化炭素の削減を議決している。空港機能の拡大は、この世界の流れに逆行するものであり、我々の未来に対する挑戦にほかならない。(つづく)




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