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    かけはし2016.年12月12日号

改憲攻勢に正面から挑もう


11.19

アジア連帯講座・公開講座


徹底批判―自民党改憲草案

清水雅彦さんが講演



 一一月一九日、アジア連帯講座は恒例の公開講座を開催した。テーマは「徹底批判―自民党改憲草案」。会場になった東京・文京区の文京シビックセンター会議室に、三〇人近い人々が集まった。
講師は清水雅彦さん(日本体育大学教授)。憲法を研究するほか、「9条の会」世話人、「戦争をさせない1000人委員会」事務局長代行を務める。
安倍自民党政権は憲法改悪をめざし、衆参憲法審査会での議論を急いでいる。そのたたき台となるのが、自民党が二〇一二年に公表した「日本国憲法改正草案」(以下・草案)である。それは、天皇を国の頂点に据えて国防軍を創設し、首相の権限を強化し拡大する。「国民」の義務を大幅に増やすいっぽうで権利や自由を制限し、国家に隷属させようとする代物である。この日は清水さんの著作(※)も参考にして講演を受けた。

核心おさえて
鋭く切り込む
会場にはアジア連帯講座会員のほか、清水さんの支持者や改憲に強い危機感を持つ市民らも参加した。清水さんは、大学の講義でのエピソードを交えながら、詳細かつ明確に草案を批判した。草案文言にかかわる箇所だけではなく、私たちの生活態度すなわち市民運動を担う人々の価値観にまで言及した。たとえば、「健康増進法」(二〇〇二年)などで、国家が人々の健康――朝食を抜くなとか、メタボ体型など――に口を出すべきではないと厳しく指摘した。
人生を健康に生きられれば、それは楽だが、人間には不健康に生きる権利もある。市民運動圏の交流会では、「灰皿が置いてあるから煙草を吸う」などと、嫌煙者の合意も得ずに吸う。「公共の福利」の概念を理解していないのではないか、と疑いたくなるという。
天皇制をやめて共和制に移行すべきだと清水さんは主張する。「日の丸」や「君が代」が国歌によって押しつけられているが、それらの意味を正しく理解している人は少ない。改憲右派はこれまでの元号をすべて言えるのか。強要するならそれを暗唱できるくらいの学習をすべきではないか。清水さんは、天皇制はじめ安倍政権の政策を次々と喝破した。
質疑応答では、天皇制と大統領制の責任の所在について。国家財政の明文規定について。在日外国人の権利について。天皇ビデオメッセージに対する憲法学界の反応について。国民投票での改憲項目についてなど、多くの質問や意見が出された。
「憲法」という壮大かつ根源的なテーマを、わずか一時間あまりで講演することにはもともと無理がある。清水さんは主催者の意向に応え、無駄がなく、しかし要点をしっかりと押さえた分かりやすい話で聴講者を引きこんでいた。連日連夜全国を駆け回る忙しさのなかで、講師を引き受けていただいたことに、この場を借りて改めて謝意を表したい。なお講演の詳細については、別途公表する予定である。     (隆)

清水雅彦さんの講演から

主体意識持った行動を

もっと人びとに伝える努力を


自民党が二〇〇五年に作成した改憲案では、当時取りまとめをした舛添要一が、「こんな復古的な案では国民には通用しない」と反対した。舛添はケチだけどリベラルだった。一二年案はかなり復古的だ。
一二年案発表当時は民主党政権。与党との差異化を打ち出す意図や、野党としての気安さがあったのかも知れない。総裁も安倍ではなかった。安倍はその頃党内でほとんど影響力がなかった。総裁は谷垣だった。リベラルといわれた谷垣の下でもこういう案が出てきたことは、自民党じたいが右寄りになったことを示している。
天皇の行為について、憲法学界では二分説(国事行為と私的行為)と三分説(国事行為、公的行為、私的行為)がある。私は「公的行為を認めるべきではない」という二分説の立場だ。
ビデオメッセージのなかで明仁自身が「象徴的行為」を連発し、彼はそれをやるのは当然だと言っている。これは明らかに政治的発言である、憲法学界では公的行為や象徴的行為を認めないという議論がある。にもかかわらず天皇みずからが象徴的行為をするのは当たり前だといい、それが負担だから退位させろと言っている。憲法を厳密に解釈すれば、天皇の仕事は増えないはずだ。メディアにはその視点がない。有識者会議も御用学者ばかりだ。
憲法というと「人権規定」を思い浮かべるが、日本国憲法でさえ第三章たった一つ。残りは統治規定だ。国家を縛るために細々といろいろと書き、それによって人権を守る。
もともと封建社会を打倒して作られたのが憲法だ。公権力が暴走して国民の権利を破る可能性があるから、憲法規範に回復予防措置を入れている。
日本は市民革命を経験していない。このかんの運動の盛り上がりも市民革命とは言えない。とにかく権利自由の意識が、主権者意識が希薄な国民だ。もっと自分たちが主体意識を持って運動するべきだ。
幣原内閣がポツダム宣言を受諾したのに、それに反するような改憲案を出した。そしてGHQが原案を出した。それは単なる押しつけではない。
日本国憲法の中身は(1章を除いて)素晴らしいが、自分たちで勝ち取ったものではない。そういう意味で、出発点に不十分なところがあるのだから、それを国民が自覚をして、中身と理念を実現する取り組みをする。単に紙に書かれたものではなくて、憲法を自分たちのものにする取り組みをすることが大事だと思う。
安倍は着々と大統領的首相をめざしている。緊急事態条項が成立すれば、いよいよ大統領的首相が完成する。
こういう改憲は絶対に認めてはいけない。草案の恐ろしい中身が多くの人に知られていない。ぜひ周りの人に分かりやすく伝えて欲しい。みなさんの運動に期待しています。

※『憲法を変えて「戦争のボタン」を押しますか? 「自民党憲法改正草案」の問題点』高文研・二〇一三年/本書の案内は本紙一〇月三一日号に掲載

11.20〜21

辺野古埋め立てを許さない

最高裁前キャンドルナイト

口頭弁論を行え、高裁判決破棄を

 

 一一月二〇日午後六時から、最高裁西口前で、「最高裁は口頭弁論を行え、高裁判決を破棄しろ」キャンドル集会が「止めよう!辺野古埋め立て」国会包囲実行委員会の呼びかけで行われ、三五〇人が参加した。九月一六日、福岡高裁那覇支部が下した辺野古基地建設のための埋め立てを容認した不当判決を最高裁で破棄させるための最高裁への行動だ。
司会者が「『最高裁は、高裁判決を破棄しろ』署名は個人三五〇四筆、団体一五〇一団体集まっている。明日、最高裁前で行うアクションと同時に沖縄でも一五〇〇人規模の集会を予定している」と報告してから、集会が始まった。
オール沖縄会議の玉城健一郎さん(宜野湾市議、結・市民ネットワーク)は「民主主義が問われている。国に従うのではなく、沖縄県民の基地ノーの声を聞け」と訴えた。
島ぐるみ会議の島村さんら二人が「一番のふんばりどころだ。負けることはない」、「各市町村で市民会議が立ち上がっている。いったん米軍基地が作られれば、政府は口出し出来ないと言う。絶対に許してはならない」と語った。
伊波洋一さん(沖縄選出・参議院議員)は「今日行われている宮古島の自衛隊基地建設反対の集会に五人の国会議員が駆けつけた。私も埼玉の反戦集会に参加してきた。九月一六日の福岡高裁那覇支部の判決は防衛省のコペピだ。実質的審議を何もしていない。普天間基地問題を二〇年も放棄してきたのは政府だ。普天間基地爆音訴訟判決は住民被害が違法だと示した。辺野古基地建設は普天間基地移設問題ではなく、新基地建設問題だ。最高裁はこうした辺野古新基地建設のための埋め立てを認めた福岡高裁那覇支部の判決を棄却すべきだ」と訴えた。

司法は国の言い
なりになるな!
宮平真弥さん(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、流通経済大学教授)が沖縄・高江における警察の違法な取り締まりを批判した。藤本泰成さん(平和フォーラム事務局長)が那覇支部の判決文の一部を読み上げ、厳しく批判した後、「山城博治さんがたった二〇〇〇円の器物破損で起訴された。これは安倍政権の意思の表れだ。青森空港から駆け付け警護を認められた自衛隊PKO部隊が出発した。高江・辺野古の現実は日本そのものの表れだ」と指摘した。東京全労協副議長の高原さんは、横田基地への抗議行動を定期的に行っていること、一二月四日から一〇人が高江に駆けつける、と報告した。
FoEジャパンは「国のいいなりになっている司法なんかいらない。高江はひどい形になっている。絶対に高江を見捨ててはならない」と話した。キリスト者ネットは「大浦湾の抗議船の乗ったことがある。カヌー隊は命がけで阻止行動を行った。今、高江での行動も同じだ」と闘いへの参加を訴えた。
辺野古リレーは全国から派遣されている機動隊の暴力を糾弾する闘いが東京、大阪への広がっていることを報告し、その元締めである警察庁への抗議行動への参加を呼び掛けた。最後に、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの木村さんが明日の最高裁への署名提出行動、一二月一〇日の日比谷野音集会の行動提起を行った。ウェーブや沖縄の歌のライブなど工夫をこらした行動で最高裁へ訴えた。なお、翌日午前中にも最高裁への訴えと署名提出行動が行われた。     (M)

 


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