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    かけはし2016.年10月3日号

TPPの批准反対!




多国籍企業から主権と民主主義を
取り戻す世界の闘いに合流しよう

公正・民主・連帯の闘いを

民主主義を破壊するTPP

 昨年一〇月に米国・アトランタで「大筋合意」が発表され、今年二月にニュージーランドのオークランドで調印されたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、徹底的な秘密主義の下で準備され、加盟一二カ国の貿易政策だけでなく、環境や食品の安全に関わる規制、医療・保険制度、公共サービス等あらゆる分野の政策に著しい影響を及ぼす内容が盛り込まれている。
TPP協定の狙いと、昨年十月の大筋合意をめぐる米日政府の思惑については本誌一五年一〇月一九日号掲載論文を参照していただきたい。
調印されたTPP協定は三〇章、全五〇〇〇ページから成り、およそその詳細を知ることは不可能である。しかも協定の正文は英語とフランス語とスペイン語であり、日本語で入手できる公式の文書は現時点では、昨年一一月に内閣官房TPP政府対策本部が発表した「環太平洋パートナーシップ協定の全章概要」だけである。「概要」は日本語で一〇〇ページ弱であり、条文の具体的な内容はわからない。交渉の経過、日本政府が何を主張し、どの点で妥協したかについては一切機密のままである。
TPPに反対する全国的な運動を牽引してきた山田正彦元農水相、PARC(アジア太平洋資料センター)の内田聖子さんほかの人たちによる「TPPテキスト分析チーム」が各分野の専門家や海外の運動団体との協力で、全五〇〇〇ページの全文を分析し、条文に即して問題点を指摘している。「そうだったのか!TPP」(ウェブから入手可能)、「続・そうだったのか!TPP 24のギモン」(A5版・四〇ページの小冊子)、または山田正彦「緊急出版 アメリカも批准できないTPP協定の内容は、こうだった!」を是非熟読されたい。
TPPが単なる貿易のルールではなく、投資家の保護、多国籍企業の活動の自由、環境や公共性に関わる一切の規制の撤廃(食品の産地表示や「非遺伝子組み換え」表示の禁止など)、知的財産権の保護(後発医薬品の販売の制限など)、金融活動の全面的自由化などが全五〇〇〇ページの隅々まで事細かに書き込まれている。しかも、いわゆるISDS条項(投資家対国家紛争解決)によって企業は、規制によって不利益を受けたとみなした場合に当該国を相手に訴訟を起こすことができ、莫大な賠償金を得ることができる。
交渉の方法、つまり、完全な秘密主義が非民主主義的であり、条文の内容も国家や地方行政機関の権限を不当に制約するものである。ISDS条項による提訴を恐れて、有力企業が反対するような法律や規制の導入を躊躇する動きも出てくるだろう。
これらの問題点は従来から指摘されてきた。他のいくつかの通商協定に同様の規定が組み込まれている。しかし、TPPの条文に即して、これらの全貌が明らかになったことが決定的に重要である。TPPの具体的な内容と、それがもたらす影響について知られるようになれば、あらゆる分野から反対の声が高まるのは必然である(だから厳格な秘密主義が維持されてきたのだ!)。闘いはここから始まる。それは多国籍企業の横暴から民主主義を取り戻すための闘いである。

TPPの環大西洋版は事実上頓挫

 オバマ米国大統領がTPPと共に任期中の成立を図っていたTTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)協定は、事実上頓挫した。
ドイツのガブリエル副首相兼経済相は八月二八日に、「米国との[TTIP]交渉は事実上失敗した。実際には誰もそのことを認めていないが」と語った。メルケル首相はTTIP推進に固執しているが、党内からもTTIPに反対して離党する議員が出ている。
同三〇日付の英国「ガーディアン」紙によると、フランス政府はEUに対して、TTIP交渉の中止を要求した。
ベルギーとオーストリアの政府も同様の態度を示していると言われている。
背景として、一九九〇年代のMAI(多国間投資協定)反対の運動の勝利の経験や、九〇年代末からのWTOに反対する運動の蓄積と、交渉内容の漏洩、そして英国のEU離脱に伴うEUに対する米国の影響力の低下などの要因がある。特に重要な要因となったのはISDS条項が欧州各国の主権を侵害することへの強い反発と、遺伝子組み換え作物の規制や気候変動対策に対するISDS条項の悪影響への広範な批判である。
しかし、TTIP交渉が完全に中止されたわけではなく(オバマ米国大統領は一〇月の会合での合意を諦めていない)、カナダとEUの間の同様の協定である包括的経済貿易協定(CETA)の交渉も継続されている。また、米・EU・日など二二カ国・地域の間のサービス貿易協定(TiSA)も同じ狙いを含んでいる。
ドイツで九月一七日にベルリン、ミュンヘン、フランクフルトなど七つの都市でTTIPとCETAに反対するデモが行われ、三二万人が参加した。ATTACドイツをはじめとする広範な社会運動団体が、一〇月に予定されている次回会合での合意を阻止するために闘争を強化している。
TTIP反対の運動の勝利的局面は、TTP反対の運動にとっても大きな励ましとなるだろう。

米国、オバマ政権任期中の批准困難に


米国では一一月大統領選挙を前に民主・共和両党の候補がTPP反対を重要公約とするという異例の事態になっている。共和党のトランプ候補のポピュリスト的デマゴギーは別として、民主党のクリントン候補の「TPP反対」が予備選挙におけるバーニー・サンダース候補の予想外の善戦とその背景にある雇用不安を背景としていることは明らかである。但しクリントンの主張は、「今のままのTPPには反対」ということであり、大統領選挙が終わった後、いずれかのタイミングでTPP推進に転換することは十分に予想される。
オバマ政権はTPPを中国封じ込めと「アジアへの回帰」戦略の重要な一環として位置づけており、大統領選挙後、自分の任期中に批准することを狙っている。実際には中国封じ込めどころか、中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)や一帯一路(新シルクロード構想)にアジアや欧州の主要国が関心を示している中で、失地回復に腐心しているのが現実である。任期中の批准の成否は議会対策にかかっているが、現時点では両党ともまとまっていない。
従来は民主党内では国内の雇用への影響が最大の関心事であり、共和党内では業界ごとの利害の調整が中心的な問題だった。ところが、八月末にウェブ紙「バズフィード」と「ハフィントンポスト」に掲載されたISDS条項についての調査報告を契機に、ISDS条項をめぐる議論が大きな焦点に浮上した。
ISDSは企業に国家の主権を制限する法外な権利を付与すること、しかも訴訟の手続きが非民主主義的で、企業側に圧倒的に有利で、国家が敗訴した場合に法外な賠償金の支払いを求められることから「毒素条項」と呼ばれてきた。さらに、「バズフィード」紙の調査報告は、ISDSが「投資家の保護」を名目としてきたが、実際には大半がヘッジファンドの不当な利得や、ISDSを専門とする法律事務所の法外な利益をもたらしていることを明らかにした。いわば「ISDSビジネス」である。エジプト、インドネシア、エルサルバドルの三つの事例を通じて、ISDSが贈収賄などの犯罪の免訴のために使われていることも明らかにされた。
ISDSの制度そのものは一九六〇年代から存在しているが、活用され始めたのは一九九〇年代ごろからであり、二〇一〇年以降急激に増えている。米国の中では当初から、米国政府が提訴されることは想定されていなかったが、TPP協定はその内容が包括的であるため、連邦政府だけでなく州政府が提訴されるケースも増えると考えられる。TPP反対の運動を牽引している「パブリック・シチズン」の調査によると、TPPに関連して米国政府を提訴する権利を得る企業の数は九〇〇〇社を超えることになる。また、金融機関は将来に期待されていた利益が損なわれるような何らかの制度変更に対しても提訴を行うことができる。
このようにISDS条項の危険が明らかになる中で、これまで自由貿易協定を擁護してきた法学者や法律家の間でもISDS条項への批判が高まっている。
オバマ政権の下でのTPP批准はますます困難になっている。

今国会批准に固執する安倍

 安倍政権は九月二六日からの臨時国会でTPPの批准と関連法案の採択を行うことを表明している。同一二日には、わざわざTPP参加各国の駐日大使と石原経済再生相の意見交換会を開き、石原が記者団に「再交渉はあり得ないと各国から意見が出された」と紹介し、全一二カ国が速やかにTPPの国内承認を進めることで一致したと述べた。
四月に開催された衆議院のTPP特別委員会では、交渉過程の開示を求める野党側に対して、表紙以外が黒塗りの文書を示すなど、異常な対応が続いている。
安倍政権は日本が批准することで米国の早期批准を促すと説明しているが、現実には批准まで時間がかかればかかるほど協定の内容が広く知られるようになり、反対が強まり、批准が難しくなるという事情によるものと思われる。
重要なことは、TPPが参加各国で批准されるか否かに関わりなく、昨年の「大筋合意」発表以降、あるいはそれ以前から、すでにTPPを前提とした市場開放、規制緩和の準備が進められており、既成事実化しつつあることである。
TPP協定と、それに付随する米国との二国間の合意は、単に米国の圧力に屈したものではなく、経団連に代表される日本の財界の狙いが外圧を利用する形で現実化したものである。農産物市場の開放と農業の解体然り、金融改革然り、医療改革然りである。それは同時に、トヨタをはじめとする企業が米国市場で競争を生き抜くための「貢物」である!
一方、安倍政権にとっては、TPPは「アベノミクス」の失敗を覆い隠すための新たな呪文である。
労働者・市民にとってTPPは投資の自由、企業の利益をすべてに優先する新たなルール作りであり、その手法と内容は徹底して反民主主義的である。
昨年の安保法制反対の闘いの中で表現された広範な人々の民主主義への希求を、TPP反対の運動に結び付けていくことが重要である。
安保法制反対の闘いの中で形成された広範な共同行動とそれを背景とした野党共闘がこの運動の中でも発展させられるべきである。この点で民進党の前身である民主党がTPP加盟を推進してきたこと、連合系労組の多くがTPP推進の立場に立っていることは、運動の重大な障害となっている。
衆議院における採決の強行が予想される十月下旬から一一月初旬に向けて全国でTPP批准反対の運動を決定的に強化する必要がある。

世界の社会運動と共に

 TTIPの事実上の挫折が示すように、自由貿易・規制緩和の流れは不可逆のものではない。
今や新自由主義の総本山たる世界銀行やIMFが規制緩和の行き過ぎを認め、政策の修正をはかっている。一方では、新自由主義的グローバリゼーションの中でやりたい放題だった巨大多国籍企業による人権侵害や環境破壊に対するさまざまな闘いが発展している。
英国の「グローバルジャスティスナウ」(ATTAC UK)のウェブによると、二〇一三年にエクアドル政府は八五カ国の支持を得て、多国籍企業の活動を規制するための国際法の制定を国連に提案した。これは多国籍企業による人権侵害の犠牲者を保護し、すべての国家が企業にその活動が人々や環境に及ぼす影響に責任を負わせることを義務付けることを目的としている。
一四年九月には国連人権理事会が国際的な人権関連法に基づき多国籍企業の活動を規制するための、拘束力を有する条約を確立するという決議を採択し、作業委員会が設立された。
テキサコ(現在はシェブロン)の石油採掘による環境破壊と人権侵害をめぐってシェブロンの悪辣な逆訴訟に直面してきたエクアドルをはじめ、アルジェリア、ブルキナファソ、パキスタン、インドネシア、キューバ、ベネズエラなど「南」の諸国がこの条約の制定を支持しており、全世界で企業による土地強奪、資源開発、水の汚染、健康被害などの問題に取り組んできた千以上の農民団体、社会運動団体、NGOが条約制定の運動に参加している。
この運動は、ISDSの廃止、ISDS条項を含む通商協定の改定や、知的財産権の制限などを求めている。
また、企業の責任を追及する国際的機構が存在しない中で、象徴的な国際法廷が大きな関心を集めている。そこでは各国の社会運動団体が集まって、企業に責任を負わせるための具体的な方法を提案する。ローマの常設人民法廷(PPT)は七〇年代からこれまでに四〇の事例を取り上げ、法律の専門家が国際法に照らして審理を行い、被害者に発言の場を提供してきた。同様の試みとして、今年の一〇月一二―一六日にはハーグで、モンサントによる人権侵害、コミュニティーの破壊、環境破壊に関する国際法廷が開催される。ハーグの国際刑事裁判所(ICC)は九月一五日に、従来のジェノサイドや戦争犯罪だけでなく、環境破壊、土地強奪・強制立ち退きなどの人道上の犯罪に関しても審理を行うと発表した。これによって重大な人権侵害が告発された企業の責任者を提訴することが可能になる。
さらに、「タックス・ジャスティス・ネットワーク」などの団体によるタックスヘイブンの実態暴露と規制を求める運動も、ルクセンブルグ文書、パナマ文書等の暴露と連動して多国籍企業を包囲する国際的な運動を大きく前進させている。
われわれは多国籍企業によるクーデター的手法でのルール作りに対抗し、このような国際的な運動をベースに公正かつ民主主義的な国際ルールと国際機関の確立を目指すべきである。
そのような観点から、TPP参加国だけでなく、アジアと全世界の社会運動と連帯してTPP批准に反対する大きな運動を組織しよう(九月二一日、小林秀史)

9.10

「竹島の日」を考え直す集いin東京

外務省「固有の領土」論のウソ

排外主義宣伝を許さない


資料が語る
歴史の真実
九月一〇日、東京・文京区のアカデミー千石で「『竹島の日』を考え直す集いin 東京」が開催された。主催は、主に大阪を中心に活動してきた「『竹島の日』を考え直す会」で協賛は「独島財団」。この日の集会は、日本の「領土ナショナリズム」を問いなおし、当たり前のように考えられている「島根県竹島」=「韓国が不法占拠している『日本固有の領土』」という主張の問題点を一から洗い直すための集会として企画された。
日本政府・外務省は、「日本は古くから竹島の存在を認識していました」「日本は一七世紀半ばには竹島の領有権を確立しました」(外務省刊パンフレット「なぜ日本の領土なのかがハッキリわかる!竹島問題一〇のポイント」)などと述べているが、このパンフレットは歴史的事実の偽造・隠蔽によって構成されている、と言っても過言ではない。外務省パンフでは、一九〇五年「竹島領有・島根県への編入」の閣議決定について「一七世紀に既に確立していた竹島に対する領有権が、近代国際法上も諸外国に対して、より明確に主張できるようになった」とイラストの「博士」の言を通じ主張させている。
しかし、例えば「新しい歴史教科書をつくる会」の理事だった保守派の学者である伊藤隆が監修した『資料検証 日本の領土』(河出書房新社 二〇一〇年刊)でも一九〇五年の日本領有閣議決定について以下のように苦しい弁明を行っている。
「結果としては、日本側の手続き的な不十分さは非常に大きいが、編入を決めた一九〇五年当時は諸外国からの抗議はなく、一九四五年まで実効支配しつづけた事実そのものは、現在でも当不当は別として誰も否認していない」。
これは竹島併合の「不当性」を暗に証明するものであって、外務省が「一七世紀半ばに領有権を確立した」とする主張の根拠を否定するものではないのか。この閣議決定は「無主地先占」論によるものであって、決して「領有権を再確認」したものではないからである。何よりも一九〇五年の「竹島領有」の閣議決定は、日露戦争さなかの日本による韓国の「保護国」化と、その後の「日韓併合」へのプロセスの中で行われたものなのであり、根本的に否定されなければならない。

日露戦争と「韓
国併合」の中で
集会では、「竹島の日」を考え直す会副代表の黒田伊彦さん(元大阪樟蔭女子大教員)と久保井規夫さん(「竹島の日」を考え直す会理事長、元桃山学院大教員)が講演した。
黒田さんは「外務省も教科書も触れない竹島・独島の事象を指摘する」と題して、江戸時代から当時の幕府が「竹島・独島」の領有権を確立していたという主張が虚偽であり、逆に「竹島・独島」は朝鮮に属すると認めていたこと、その立場は、初期の明治政府にも貫かれていたことを資料に基づいて説明し、日露戦争のさなかにロシア艦隊(バルチック艦隊)との決戦に備える軍事的要請から「竹島・独島」を併合したことについて説明した。
『図説 竹島=独島問題の解決 竹島=独島は、領土問題ではなく歴史問題である』(柘植書房新社 二〇一四年)の著者、久保井規夫さんは『日韓における新視点・新史料で竹島=独島の領有権を明晰にする』と題して報告。長久保赤水の「改正日本輿地露呈全図」などを根拠に、竹島・独島の位置を「的確に認識していた」などという日本外務省の主張が資料の改ざん、意識的な曲解に貫かれたものであることを明らかにしていった。
質問・討論の後、東京でも今後、排外主義的「領土ナショナリズム」を批判し、「竹島の日」を考え直す会の運動を取りくむよう検討することが司会者から提起された。      (K)

コラム

軍事用AIロボット

 AI(人工知能)搭載のロボット兵器は火薬・核兵器に次ぐ第三の革命的兵器になるだろうと言われている。先月『毎日新聞』は、軍事用ロボット開発の最前線に立っているイスラエルの実情などを連載報告した。ロボット兵器の開発と配備は想像していた以上の速さで進められていて、SF映画でおなじみのあの恐ろしい「ターミネーター」の登場も、遠い将来の話ではないのかもしれないと考えさせられてしまった。
 イスラエルは一九四八年の「建国」から、周辺のアラブ諸国との戦争を繰り返してきた。人的戦力で劣るイスラエルはユダヤ人の入植促進と「国民皆兵」の徴兵制を実施する一方で、六〇年代から無人軍事兵器の開発に乗り出した。優秀な新兵を軍の開発部門に採用するなどして、軍産学一体のテクノロジーシステムを作り上げてきたのである。
 イスラエルの某大学研究員は「意思決定支援ソフト」の開発が進めば、「陸海空で同時展開する数百、数千のロボット軍団が自動で交信し合い任務を分担する。それを一人で操作する時代が訪れる」と豪語する。
 今年の七月に世界初の完全自動の警備車両(アムスタッフ)がイスラエル国内の核施設、国防省敷地内に配備された。対サイバー攻撃防護機能、ゴム弾・対自爆攻撃用装備で武装したアムスタッフを開発したのは、インド企業とライセンス契約を結ぶイスラエル企業だ。ゴム弾は実弾装備に変えることも可能である。それを将来的にはパレスチナとの境界に配備する予定だ。インド軍もカシミール地域に大量配備を検討している。韓国軍も非武装地帯に試験配備した。
 無人機の最大輸出国はイスラエルで、過去三〇年間で全体の六割を占める。その大半が偵察用だが、いまイスラエルの看板商品のひとつとなっているのが自爆型ドローン(ハロップ)だ。「カミカゼ・ドローン」「うろつき弾」とも呼ばれ、攻撃対象の情報を入力し発射すると、AIが標的を見つけて自爆攻撃する。無人機の輸出は米、中国も拡大させていて、遅れをとつたロシア、EUも開発に躍起となっている。ちなみに中国製無人偵察機「翼竜」の価格は約一億円で、米国製「リーパー」の約三〇分の一だ。また近年のイスラエルとの戦争において、レバノンのヒズボラやガザ地区のハマスも闇市場で手に入れたイラン製無人機を数機使用している。
 しかし一方では、日々進化するサイバー攻撃技術に対応しきれていないという問題も浮き彫りになっている。AI兵器が敵に乗っ取られるかもしれないという脅威を克服できないのである。
 AI搭載の軍事ロボットとの戦いはすでに始まっているし、日本でも近い将来、警備・警察用として日常生活空間の中に登場してくるに違いない。今は店内などで見かける癒し系のAIロボをただにらみつけることぐらいしかできないのだろうか。       (星)

 



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