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    かけはし2016.年10月17日号

「黒い抗議」のデモ 国を貫く


ポーランド

中絶禁止法案反対の決起内外に

政権党による女性の権利抑圧
に広範な層が怒りの行動開始

テリー・コンウェイ


 ここで取り上げられている法案は、ポーランド内外に大きな反響を巻き起こした。そして以下の記事に紹介された一〇月三日の抗議行動には、全国で一〇万人が参加したと報じられている。その結果最終的にこの法案は、与党からも反対者が現れ、一〇月六日の下院で反対多数で否決された。(「かけはし」編集部)

ウェブサイトで
抗議の呼びかけ


 新たな中絶禁止法に向けたポーランドの計画に反対して、抗議が広がり続けている。この計画は、中絶の手続きに合法性を得ることをほとんど不可能にすると思われるものだ。九月三〇日、ポーランドの多くの都市で諸々の抗議行動が、また同じく他のいくつかの場所でも連帯行動が起きた。
 一〇月三日には、さらなる行動への呼びかけが以下のように出された。「ポーランド女性の健康と命に対する権利を守る黒い抗議を。われわれは、信頼の置ける性教育、避妊、そして効果的な体外受精措置の利用を要求する。われわれは、中絶禁止法のさらなる締め付けに反対する」と。
 また「あなたができることは何? 仕事に行くよりもデモに行こう。仕事をしたり、家にいたりしなければならないなら、黒い服を着よう。それを写真に撮り、連帯を表すために、ハシュタグ『#BlackProtest』『#CzarnyProtest』で、ソーシャルメディアに投稿しよう。あなたの母親、姉妹、いとこ、友達、同僚に話しかけよう。彼らに、ポーランドにおける状況とストライキについて語ろう」と。
 「Dziewuchy dziewuchom」(女の子から女の子へ)の組織者たちは、ポーランドでは少なくとも六〇の場所で行動が起きると確信している。そして国際的連帯が拡大中だ。
 以下に再録するものは、前の週末の新法反対のデモを取り上げた「クラクフポスト」の記事だ。

 「クラクフポスト」より

 【九月の秋晴れの下、露天商たち、そして心臓病のための広報キャンペーンの真ん中で、一〇〇〇人以上のクラクフ女性が黒衣に身を包んで中心広場に集まった。彼女たちは、PiS(法と正義、現政権党の右翼民族主義政党)によって進められ、あらゆる中絶を禁止することになると思われる法律に抗議するために、そこにいた。
国中における一〇のそうした集会(世界中の大都市ではさらの多くの)の一つ、「#CzarnyProtest」(黒い抗議)のデモは、「Dziewuchy dziewuchom」(女の子から女の子へ)によって組織され、民主主義防衛委員会のようなさまざまな反PiS政治グループ、また生まれたばかりの政党、ラゼム(共に)(本紙一月二五日号参照)からの支持を引き出した。フェミニスト組織は、この法案がカトリック教会の後押しを受けた一市民イニシアチブによって、今年初めに議題に上げられて以来、似たような諸々の抗議を一つにしてきた。
現行法は、「ニューズウィーク・ポルスカ」が今週行った世論調査によれば、ポーランド人の七四%から支持されているが、合法的なものとして認められた中絶――命に危険のある妊娠、証明されたレイプあるいは近親相姦の結果としての妊娠、あるいは重篤な障がいを持った胎児の場合――は年当たりおよそ二〇〇〇件にすぎない。
しかしながらこのPiSの後押しを受けた方策は、これらの例外をも廃止し、それを破った女性を投獄で脅しつけている。その上それは、体外受精――もっぱらカトリック国で問題とされている行為――の抑制を目的とした方策として、卵子の凍結や、一時に卵子一個以上の受精を行うことを非合法にすると思われる。
先週、ワルシャワの国会でこの法案を敗北させようとした試みは無効にされ、法案は委員会――採決前の最終段階――に送られた。
「クラクフポスト」は、彼らの考え方を知るために、参加者数人と話をした。
七九歳の参加者は「この新法は民主的ではない。それは女性の権利を脅かす」と語る。彼女は、法律は今のままであるべきだと信じており、その支持の点で今回は初めての抗議ではない、と語る。
「ポーランドでまさに今起きつつあることは病的だ。……それを受け入れないからこそ私は今ここにいる」(ツシア、二〇歳)。彼女は、この法案は、学校卒業後ポーランドにとどまるか、それとも西欧に行くかに違いをつけるかもしれない、と語る。
「女性は、特にレイプを理由とした妊娠の場合は、選択権をもつべきだと考える」(カロル、二〇歳)。彼は、現行法を支持し、ポーランド政府内でPiSの筆頭ライバル政党であるPO(市民プラットフォーム、中道右翼政党)を支持している。
六八歳になる退職した生物学教員のヤツェクは、彼の成長した息子が海外にわたり、年金生活に入って以来政治により活動的になり、女性の権利だけではなく難民や性的マイノリティ――政府からはいかなる保護も受けていない人々――の権利をも支持するグループに参加している、と語った。彼は、中絶禁止の法案作成者(ほとんどが男の)によって、妊娠した女性はあたかも「全員聖母マリアの群れであるべき」かのように、告発の標的にされているとのいらだちを感じている。そして、政治的得点稼ぎのために公衆の感情を操作しているとして、PiSを責めた。
彼は自らをカトリックと自認しているのだが、彼の自由主義的観点を理由に、教会のいくつかはカトリックだとは言わないかもしれない、と分かっている。ヤツェクは一つの願いを表した。それは、若い民族主義的ウルトラ右翼のメンバー――刈り込んだ頭をして、ジャケットにポーランドのワシをあしらったこれらの若者たち――が、歴史をもっとよく学び、そうすることで心を開くようになる、ということだ。しかしこれに関して彼は、「私は楽観主義者ではない」と告白する】
▼筆者はIV編集者の一人であると共に、第四インターナショナル英国支部、ソーシャリスト・レジスタンスの指導的メンバー。(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年一〇月号)

【訂正】本紙前号(10月10日付)1面安倍首相所信表明演説批判の最下段左から9行目の「民主党」を「民進党」に訂正します。

シリア

イラン社会主義者との意見交換

解決の道は世俗派/社会主義者の連帯

 以下では、二人のイラン人社会主義者、オミド・ランジュバルとアザデー・シュルマンドのもっと長い論文の要約を紹介する。二人は、イランのシリアに対する軍事介入に反対している。その後に、この論文に応じた、フリエダ・アファリーとジョセフ・ダヘルの見解を続ける。

知識人は姿勢をただせ―イラン

 民族防衛の主張が、イランの公衆を洗脳し、シリア、イラク、レバノン、イエメン、バーレーンにおける政権の破壊的役割に彼らが反対することを妨げるために、利用され続けている。政権はこの努力の中で、「民主的民族主義者」の改良主義的知識人によって助けを受け続けている。「民族防衛」は、イランとこの地域における民衆の福利とはまったく関係のない、ある種の抽象へと変えられつつある。
シリアに対するイランの介入は、政治的、イデオロギー的、そして経済的理由によって突き動かされている。イランの体制はシリアを、この地域における連携者として、またレバノンのヒズボラに達する回路として必要としている。それはさらに、シリアにおける再建に関わる諸契約や実体ある土地取引にも期待している。それはさらに、その役割をイラクにも延ばしている。この体制はそうすることで、イラクのシーア派住民の多くを遠ざけることにもなった。その彼らは、彼らがイランのサウジアラビアやトルコとの競合の中で利用され続けている、と考えている。
イランの知識人は、シリアに対するイランの介入並びにその戦争におけるイランの破壊的役割について、その立ち位置を公然と言明する必要がある。彼らは次のように問う必要がある。つまり、イランはなぜアサド政権を守っているのか、と。また、この点に関し、「保守的改良主義者」のロウハニ(現大統領)は、何らかの変化をつくり出すことできたのだろうか、と。その代わりに改良主義的民族主義者たちは、ISIS弱体化という点でイランは強力な一勢力であるとの誤った信念に合体する、という犯罪に関与してきた。
イランの知識人たちは、この地域の新秩序建設における鍵を握る要素としてイランの体制がシリアを利用し続けているそのやり方を、暴露する必要がある。この帝国主義は、イスラム共和国体制のイラン国内におけるさらなる塹壕で装備された拠点化に導くだろう。また社会のさらなる軍国主義化、および内部的不満派のさらなる抑圧に導くだろう。
ただ一つの解決は、社会主義派/世俗主義派の地域的連帯だ。この一例こそ、「シリアとイランの社会主義者連合」だ。
直接民主主義、民族的少数派と宗教的少数派の平和的共存、エコロジー的懸念、あらゆるレベルでの女と男の平等、そして草の根の指導性を強調する、シリア北部におけるロジャヴァの闘争は、防衛され、強化される必要のある、一八七一年のパリコンミューンを偲ばせる一つのモデルだ。ISISを支持する諸州とISISに対するロジャヴァの反対はヒロイックなものとなった。今ロジャヴァでは、一九三六年のスペイン革命と連帯してスペインに向かったものに似た国際旅団が必要とされている。
シリア人民の民衆的で民主的な運動とロジャヴァを含んで、この地域の進歩的な諸運動との連帯を生み出す目的に向け、イランに存在する反対派が様々なグループを結集するならば、この連帯は、イラン内部の民主的かつ進歩的な反対派諸勢力の強化に導くだろう。海外における帝国主義的諸政策と本国における抑圧諸政策との間にある結びつきを理解することが決定的だ。(二〇一六年八月二三日)

勇敢な言明を歓迎―シリア


われわれはこの勇敢な言明、そしてこの地域におけるイランの帝国主義的な諸々の動機並びにシリアに対するイランの軍事介入を支持している、イランの改良主義者あるいは左翼知識人に対するその異議の突き付けを歓迎する。
筆者たちは、イスラム共和国とその知識人支持者の嘘を暴くだけではなく、社会的公正、世俗的民主主義、また資本主義に対するオルタナティブを軸としたこの地域における社会主義諸勢力と進歩的諸勢力の原則的な連携をも呼びかけている。われわれは、シリア並びにこの地域の他のところにおいて自己決定を求めているクルドの人々の闘争が、社会主義者を自称するすべてにとってのテストである、という点に同意する。特に、諸々のクルド人に攻撃をかけ、彼らを黙らせることを目標としている、シリア北部に対するトルコの軍事介入を、世界的な諸大国と地域大国が今支えているこの時には、クルドの自決を求める闘いを防衛することが決定的となっている。
不幸なことだがさまざまな理由から、二〇一一年のシリア革命のはじめにおけるアラブ人とクルド人の協力は、その後相当に弱められた。その間レイシズムと宗派主義が高められた。
第一に、シリア人自由主義派の反政権派とイスラム派の反政権派の指導者たち、またその諸グループは、あらゆるタイプのクルドの自決に反対した。そしていくつかの場合には、クルド民主統一党(PYD)とクルドの非武装市民に対するイスラム原理主義者諸グループによる攻撃を支持した。そうすることで彼らは、強く非難されるべき排外主義的立場を表した。
第二にPYDは二〇一二年夏に、アサド政権打倒に向けなお精力的に戦闘中だった革命的大衆に直接つながりを付け、そこに加わる代わりに、アサド政権との実利本位の不可侵協定を選択した。加えて二〇一五年秋PYDは、もっぱらシリア人の民主的反政権派諸部隊と非戦闘員に狙いを定めた、そしてISISやジャブハト・アルヌスラを標的にする場合は第二義的なやり方でしかなかった、そうしたロシア帝国主義の大規模空爆を支持した。これらの空爆は、アサド政権の支配下にも、ISISやジャブハト・アルヌスラの支配下にもなかった地域で、必要不可欠だった市民的諸機関を多く破壊したのだ。
PYDが統治するロジャヴァの三つの県は、女性の諸権利、少数派の参加、世俗的諸機構を含んだ自治の一形態を提供してきた。そうだとしてもそこには、草の根の自己組織を代表しない、むしろ上から統制された手続きを表す、いくつかの矛盾や問題がある。
われわれは、それらの内部的な組織と機能の仕方、および意見を異にする観点や組織に対する彼らの姿勢と実践、この双方でのPYDの権威主義的行為を問題にしなければならない(さらなる詳細に関しては、「シリアとイランの社会主義者連合」のウエブサイトで、ジェセフ・ダヘルの論文とクルド活動家に対するインタビューを見てもらいたい)。
しかしこのことは、シリア、トルコ、イラク、イランにおけるクルドの自決を支持する原則的な立場を社会主義者が維持しなければならない、という事実を変えるものではない。
トルコ軍は今、PYD諸部隊を攻撃し、クルドの非戦闘員を爆撃また殺害し、シリアのクルド人とトルコのクルド人を分離するために境界に壁を建設するために、サラフィストや他のイスラム原理主義者諸グループと自由シリア軍のさまざまな小部分を利用している。
われわれは、ロシア、イラン、湾岸諸首長国、また西側諸勢力の軍事介入に反対すると全く同じように、シリアに対するトルコの軍事介入に反対する。それらは、民衆諸階級の利益を支えるものではなく、宗派的分断と民族的分断を強めるにすぎない。彼らはすべて、アサド体制の維持(アサドがいようがいまいが)を願い、クルドの自決を拒否し、こうしてこの戦争を続けるだろう。
結論としてわれわれは、アサド体制に反対し、クルドの自決を防衛し、あらゆる宗教的原理主義の体制、権威主義の体制、そして帝国主義者の連携に反対する、クルド人、アラブ人、イラン人、トルコ人の革命派間の連携が必要であることについて、イランの同志たちに同意する。それこそが、資本主義、その宗派主義、ジェンダー差別、レイシズム、排外主義に対する人間主義的オルタナティブを今探し求めている中東の社会主義者に、「シリア人とイラン人の社会主義者連合」が関係を広げようとしている理由だ。(二〇一六年九月七日)(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年九月号) 



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