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    かけはし2016.年10月17日号

雇用破壊ストップ!


生活時間と賃金を取り戻そう

安倍「働き方改革」にだまされるな

雇用共同アクションが決起集会


労働者の闘い
で「改革」を!
九月二七日、東京・文京区民センターで「安倍『働き方改革』にだまされるな!Stop『定額働かせ放題の労基法改悪、首切り自由化、労政審解体』 生活時間と賃金を取り戻そう! 9・27決起集会」が開催された。主催は安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクション。集会には主催者の予想を上回り、資料が足りなくなるほどの二二〇人が参加した。この日の集会は、「同一労働・同一賃金の実現」「日本から非正規という言葉を一掃する」というデマゴギーによって、資本にとって都合のよい雇用のさらなる流動化・不安定化を進めようとする安倍政権の「働き方改革」の実態を暴きだし、反撃を強化するために企画された。
集会では最初にMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)の是村副議長が開会のあいさつ。「労働法制改悪でブラック企業が当たり前になってくる。戦争法制と労働法制改悪に反対してストライキで闘うことを確認してきた」とアピール。労働弁護団を代表して棗一郎弁護士は、「今日、第一回目の『働き方改革』実現会合が行われた。臨時国会ではTPPの批准を先行させ、労基法改悪については強行しないという観測も出ている。われわれは『骨太の方針』を立て、真の労働改革をわれわれの手で実現するという構えで闘おう」と呼びかけた。全国過労死を考える家族の会のメッセージも紹介された。

今こそスト権
行使で反撃へ
メインの講演は「安倍『働き方改革』のウソとマコト〜安倍政権下で私たちに求められるものは〜」と題して、毎日新聞記者の東海林智さんが行った。
東海林さんは「安倍政権は当初、派遣法改悪、限定正社員制度、解雇の金銭解決など新自由主義的な雇用流動化政策を推進してきたが、ここに来て一定の路線変更をした背景には、少子高齢化による労働生産人口の減少で、女性・高齢者の労働参加を促す必要に迫られ、そのためにも長時間労働や低賃金などが障害になっているという現実に直面せざるを得なかった」と分析した。
しかし「労働政策の書き手は変わっても、新自由主義的労働政策が取り消されたわけではない。労基法の改悪案を引っ込める気配はないし、派遣法が再規制される動きもない。非正規の処遇改善もお茶濁しに終わる可能性が大きい。最賃の格差も開いている(東京:九三二円、沖縄七一四円)。それにより地方からの若年労働者の流出は止まらない」。
東海林さんはこうした中で労働組合の役割がますます求められていると強調。「労組は今こそ職場での発言権を確保し、自分の労働条件に関与すること、人らしく働きたいという願いを現実のものにすること、人らしく働きたいと思う労働者たちが組織を超えて連帯することが重要」と訴え、「JAL解雇の最高裁判決は負けだったが、尊厳をかけた闘いにより労働者の共感と経営者への恐怖心を植え付けた。それは後輩たちを守り、労働界全体に影響を与えた」と評価した。
さらに東海林さんは安倍政権の強権政治に対してストライキ権を行使して闘うことの重要性を再確認し、東京メトロの売店労働者が組織した全国一般東京東部労組メトロコマース支部の闘いを高く評価した。
続いて、特別報告。建交労・京王新労組のバス労働者の闘いを佐々木仁委員長から、外国人労働者の実態と技能実習法案のねらいについて「移住者と連帯する全国ネットワーク」の山岸章子事務局長から、裁量労働化・非正規化が健康に及ぼす影響について「いのちと健康を守る全国センター」の岡村やよい事務局次長から行われた。
最後に「雇用形態、性別・性的指向にかかわらず、一人一人が持てる力を発揮できる社会の実現を求めていこう。世界で一番労働者が働きやすい国をめざして闘おう!」と呼びかける集会アピールを確認した。
労働組合は、安倍の「働き方改革」に立ち向かう運動を、職場・地域から掘り起こそう。     (K)

働き方改革と労働運動

突出した闘いの連携へ

自らの闘いで要求の実現を

遠藤一郎さん(全国一般全国協特別執行委員 )に聞く

8時間労働制の破壊

 もう一つ私見だが、「働き方改革」には労働時間への攻撃が隠れている。この労働時間は本来当然のこととして賃金とリンクする。だからそのリンクを壊すことで労働時間も壊す。八時間労働制そのものをなくしてしまう。その意図は、今回の労基法改悪、「定額働かせ放題」の制度導入に明白に表れている。
そうすることを前提に、働き過ぎは良くないですねとの一般論で長時間労働抑制、最近で言えば三六協定の規制、青天井だったものを一定規制したり、そうしたことはどんどんやるだろう。

――そこで言われている長時間労働抑制と労基法改悪と矛盾はないのか

 われわれから見れば矛盾そのものだが彼らにとってそこは矛盾ではない。労働の計り方を変えてしまえば、つまり労働時間を基礎にして労働を計測することをやめ、賃金と労働時間の関係を切断してしまえば、あとはどうにでもなるとの考えだ。
労働契約とは「成果」の契約、その成果を何時間でやろうが雇用主の知ったことではないということにしてしまえば、あとは働き過ぎはいいことではないよね、というちりばめはどうにでもできる。何しろ労働時間という概念そのものが曖昧になる。そこに一体化されている、雇用主による労働者の支配・拘束という決定的な側面が曖昧になるのだ。労働時間を規制する法的基礎があやふやにされている。
今回の労基法に規定された高度プロフェッショナル制度の本質とはまさにそういう「成果」の契約、だから塩崎厚労相が具体的に言っているが、「働き方改革プラン」を年内に形をつける、そこに向けまず労基法改悪案を通せ、となる。財界もそうだ。
彼らにとって「働き方改革」は、そこで言われている長時間労働抑制含めて、あくまで今回の労基法改悪が基礎になっている。そしてその核心こそ「定額働かせ放題」という形を取った八時間労働制の破壊だ。だからそれは、今回の「働き方改革」とは何か、を照らし出す決定的な側面と言いたい。
労働者が文字通り血を流して何年もかかって作り上げてきた労働時間規制、八時間労働制を基礎にしたその規制を破壊しようとするもくろみを打ち砕くものとして、今回の労基法改悪を阻止することは極めて重大な課題だ。同時にそれは、「働き方改革」に込められた反動的な狙いをも打ち砕くものになる。それをしっかり確認しておく必要がある。

最賃闘争と労基法改悪阻止

 雇用と労働時間ひっくるめたこの攻撃に立ち向かわなければならない。
そこで問題は労働者の闘いの完全な立ち後れだ。今回の「働き方改革」にちりばめられた美辞麗句的な要素を含め、労働者の闘いが見えないところで向こうがどんどん手を打ってきている。ここに危険がある。
今回の最賃引き上げも事実上そうなっている。全国加重平均二五円引き上げそのものは、われわれから見て明らかにまったく不十分だ。しかし、労働者の切実な状況から言って、最賃に張り付いている今や多数生まれている労働者から見て、この額は実際大きい。
そして今回これが中賃審主導ではなく、完全に安倍主導だったことも明確だった。われわれの闘いもまだまだ小さなものでしかなかった。要するに自分の力と闘いで取るのではなく、強力なイニシアチブというか権力に希望を託すという形。この形を安倍は政治支配の道具に使っている。そのスキを許してしまっていることについて警鐘乱打が必要だ。安倍が言っているのはごまかしと批判する前に、こちら側が具体的に見える形で敵を押し込むという過程ができていないことについて、徹底的な自覚が必要だと思う。
だからこの秋、見える闘いをどうつくるか、自らの闘いで要求をもぎ取るという過程にどう迫るかに意識して挑む必要がある。そこで重要な闘いが最賃引き上げを確実に実施させる闘いだ。二五円の引き上げは実際上簡単なことではない。地方によっては大変な事態が起こる可能性がある。黙っていて上がる額ではないのだ。
たとえばコンビニ、東京では辛うじてクリアできるかもしれないが、応えられないところが出てくるかもしれない。なぜ上げられないか追及しつつ、本部に迫る闘いにならざるを得ない。それは郵政非正規の場合でも同じ性格になるだろう。また公務非正規でも、予算の枠が関係してくる。今年一二月議会での補正予算が闘争の対象にならざるを得ない。その中ではじめて賃上げは自分たちの力で実現できた、ということになる。これらを総体としてつなぐ闘いの陣形を作ることへの挑戦が課題だ。
秋はこの最賃をめぐる闘いと、前述した労基法改悪案阻止、議会内外の闘い、この二つを見えるものにしなければならない。

飛躍のために「脱皮」を


最後に労政審改革について触れておきたい。塩崎厚労相は八月四日の記者会見で「誰の声を聞きながら政策を作るのかも大事なので、労政審改革をやる。働き方改革全般としてやっていくことになる」と発言している。それに先立つ前述の「働き方に関する政策決定プロセスのあり方」についての検討会では、冒頭のあいさつで「これまでのことはこれまでのこととして、新しい政策決定プロセスを作っていただきたい」と、政策決定過程を変える意図を明らかにしている。
これは労政審の部分的手直しとかいうところを最初から超えた、労政審が必要か、という根本的な踏み出しだ。しかもそれは「働き方改革」と一体のものとして位置づけられ、そして先に紹介したような議論になっている。その中で諸々のものが、たとえば残業時間規制とか、解雇の金銭解決も当然労政審にかかる。その過程で、労政審は物わかりのいい労政審になれという圧力がもう一方で強烈にかかるだろう。先に紹介した発言に労働者委員のあり方への注文があったが、それも圧力の一例、いわば現在の労働者委員を出している連合への恫喝だ。
「働き方改革」は、そこに美辞麗句がちりばめられているとしても、文字通り労働者への全面的な攻撃だ。それをしっかり見据えた反撃を真剣に作らなければならない。労働運動にはそのためにも、新しい結びつき方を可能にする脱皮が求められている。


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