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    かけはし2016.年7月18日号

都知事選で何が問われるべきか


舛添辞任で吹き出た矛盾

住民と労働者がつくる民主主義のために

東京都の自治体現場で働く労働者に聞く

舛添要一東京都知事は、数えきれないほどの政治資金疑惑によって、ついに辞任せざるをえなかった。後任の都知事選は七月三一日に行われる。任期途中での猪瀬、舛添と相い次ぐ都知事の辞任で真に問題にすべきは何か? 自公与党までふくめた「舛添叩き」で隠されている自治体行政のあり方への根本的な批判が求められている。都関連職場で働く二人の仲間に話を聞いた。(編集部)

厳しい職務規律と野放図なトップ

――五月から六月にかけて舛添要一東京都知事の政治資金疑惑が大きくクローズアップされ、知事与党の自民・公明を含む東京都議会の与野党全会派が不信任決議の提出で一致したことにより、ついに舛添はぶざまな形で辞職せざるをえなくなりました。東京都知事はこれで猪瀬、舛添と二人連続してカネがらみの不正行為により任期途中でやめることになったわけです。今日は、都関連の職場で働く二人の仲間に来ていただいて、労働者や住民の立場から、現在の都政の問題点について話していただければと思います。

A 六月というのは税金や保険料の通知の発送が集中し、区民の問い合わせの電話が多くかかってくる時期です。だから職場の反応としては、電話に対応する中で舛添のカネ問題での抗議に答えたり、謝ったりしなければならないのはイヤだな、という気分もあった。
それから職員はみな公務上の交通費はルールがきびしく一〇円、二〇円でも安く上げるために気を使わざるを得ないのに、都庁のトップがなんというでたらめなカネの使い方をしているんだ、という反応が多かった。

B 東京都の職員は厳しい服務規律でがんじがらめになっています。それなのに都知事のあの政治活動費の処理の仕方はなんだ、という怒りがあるのは当然です。
猪瀬も舛添も自分の予算を組んだのは一度だけ。評価の出る前に辞任するという結果になってしまいましたね。

A 舛添の場合は、「福祉」を売りにしていたこともあって期待はあったと思うんです。石原都政は、非常に攻撃的に職員を締めつけてきたのですが、猪瀬は国からの自治体の支出切り捨て圧力に抗議する姿勢も示していました。しかし舛添はオリンピック関連の部署を除けば住民サービス全体を減らす姿勢でした。五輪関連では、国からの会場にかかる費用分担に関しては国に抵抗していましたが。

B 舛添は「消えた年金」問題が追及されていた時の厚労相で、それをウヤムヤにしてしまった張本人です。彼は「福祉」を売りにしていたのだけれど、それをまじめにやるとは思えない。実際、何もやっていなかった。

A 都庁の幹部がどう見ていたかと言えば、猪瀬は気に入らないと怒鳴るので、みんな辟易していたが、舛添は毎日都庁に来て勉強していたし、新しくはじめた「補佐官」制度も定着したところだった。しかし舛添からの積極的な政策提案があったわけではなく、「怒鳴らない猪瀬」という評価だったと「都政新報」は書いていた。

B 新自由主義政策を進める官僚層としては、どちらもあまり変わらないということだったと思う。

都議会も責任
を逃れられない


――舛添の政治資金不正問題についての労組からの声明は出ましたか。

B 都労連、都庁職からの声明は出ました。政治資金疑惑が事実だとすれば許されないことという内容です。

A 都知事の出張費問題は、監査委員の監査を受けていたはずだし、条例で定められた金額以上の旅費支出は人事委員会の承認が必要だ。都議会も決算で審査したはずだ。自治体にはチェックする仕組みがありますが、今回それらが全く機能しなかった。
とくに都議会がひどい。元三重県知事だった北川正恭が早大マニフェスト研究会のサイトで公開している全国都道府県議会の情報公開度など改革度ランキングでは、二〇一五年度で四七都道府県中、三五位です。
「都議会だより」を見ても、無所属議員は写真を載せない、という取り扱いをしていますね。時代遅れの都議会に支えられている都知事という面もあるのではないでしょうか。

B 都議選・知事選が終わってしまうと、都民が東京都の政策決定に参加する余地がありません。様々な検討委員会などでも都民・利用者代表の参加はアリバイ的で公募要綱はほんの小さなスペースでしか掲載されていませんね。つまり官僚集団・非民主的議会・独裁的知事というブロックに対して、こういう政治のあり方を作ろうという提案はなかなか労組の中から出てきません。
次の知事はオリンピック開催にふさわしい人でないとダメということになるのでしょうが、現在東京は様々な大問題に直面しており待ったなしの状態です。例えば地震対策、木造住宅密集地域をどうするのか、保育・医療・介護不足の問題。いずれも命に直結した問題です。二〇二五年には超高齢化を迎え医療も介護もこのままでは破綻することは確実です。病気になっても入院できない、必要な介護も受けられない状況になってしまいます。対策は急務です、しかしオリンピックだけしかありません。
このような都政のあり方を根本的に変えなければなりません。

保育・福祉と
高齢者問題


A 「日本死ね」というブログが話題になりましたが、私の職場でもそういう人が出ました。保育園に子どもを入れられない人は東京都でもいっぱいいます。保育・福祉問題は深刻ですが高齢者問題もそうです。高齢者を受け入れる施設は都内では不足し、やむなく地方の介護施設に入っている。保育・高齢者問題は深刻化する一方です。
ホームレスは統計上減っているが、ものすごいカネ持ちと大量の貧困層という「超格差社会」が到来しています。今まで以上に貧困の問題に取り組む必要がありますね。

B 社会保障制度の解体、年金改悪が進行する中で「公共サービスには期待しない」という意識が広がっています。税金を取られるけれど公共サービスがないということになれば、外国では大変なことになるでしょう。ですが、日本では最初からあきらめさせられているので、政治になんか関わっても無駄、個人でなんとか対処しようという話になり運動につながらない。

A 住民参加できない都政の仕組みをなんとかしなければならない。都議会議員の数は一二七人ですが、私はこれでは議会の仕組みとしても数が少ないと思います。都知事が権限を持ち過ぎているのです。
二三区は基礎的自治体ですが、権限が少なく都知事に集約され過ぎているのです。そこを変えなければいけない。もっと言えば一三〇〇万人の人口を持つ自治体というのは、人口として多すぎます。

もう一つの自治
体を模索すべき

B いまトータルアウトソーシング・サービスということでシダックス(給食事業を中心に展開している企業)に自治体サービスを丸ごと委託しようという動きがあります。公務員が行うのは企画立案のみ、後はすべて民間企業が低賃金労働者を使ってサービスを提供するというビジネスモデルが生まれつつあります。東京でも足立区がかなり急進的な窓口業務の委託化を行いましたがそれ以上です。

A こうした時に、「公務員の給料を下げるな」と言うだけでは総スカンを食いかねない。いま株式会社が保育園をつくればいい、という流れもあります。赤字なのに公共サービスを守れ、というのはおかしい、と。このような自治体のあり方とは別な、もう一つの自治体のあり方は可能だ!という運動が必要です。政策的には、宇都宮健児さんの「希望の町、東京をつくる会」のマニフェストはよくできています。
六月都議会は舛添の高額海外視察批判で終わってしまいましたが、巨額の費用を使った海外旅行は石原都知事の時代から始まったものだし、舛添問題で東京五輪招致にからむ二億円の「コンサルタント」料問題もメディアの話題から消えてしまった。
舛添はある意味でマスコミにとって叩きやすかったのでしょう。しかし、もうすぐ行われる都知事選で問題にされるべき、根本の問題は何かを、しっかりと捉える必要があるでしょう。

――どうもありがとうございました。東京都政の問題で問われている課題は何かについて、しっかりと問題を提起し、闘っていきましょう。(七月二日)

6.23

沖縄「慰霊の日」に行動

キャンドル行動で死者に思い

加害者は「本土のあなた」

 

 【大阪】六月二三日、沖縄の慰霊の日に合わせ、ストップ辺野古新基地建設!大阪アクションが呼びかけた慰霊のキャンドル集会が、一八時から一九時半までJR大阪南の小広場で開かれ、六〇人の人々が参加した。
参加者は、一九日の沖縄県民大会の決議の一つである海兵隊撤退の要求を載せた琉球新報号外のコピーを通行人に手渡した。四月二八日米軍属に強姦・殺害・遺棄されたうるま市の女性を慰霊するキャンドルの火は、夕方とはいえ空が明るくて、ほとんど目立たなかった。

「もう限界」!
沖縄からの叫び
沖縄戦では、民間犠牲者は県民四人に一人の一〇万人以上。その犠牲者に日米の軍人戦死者を合わせれば二四万人が亡くなった。そして、戦後七一年経っても米軍基地あるがゆえの被害者が続いている。沖縄では六万五千人が集まった六月一九日の抗議・追悼県民大会で決議された要求(遺族・県民への謝罪と補償、海兵隊の撤退と米軍基地の整理縮小、県内移設によらない普天間飛行場の閉鎖撤去、日米地位協定の抜本的改定)を本土のわれわれも共有し、表向きは経済政策を選挙の争点にしながら三分の二を獲得すれば必ず改憲をするだろう安倍自民党の本当の姿を見抜こうと呼びかけた。
また、来る参議院選では、格差縮小に取り組む・戦争法の廃止をめざす・改憲阻止・社会保障に真剣に取り組む・辺野古基地建設を止めさせる、そのような候補者に頑張ってもらおうと呼びかけた。
参加していた一人の女性が発言し、「一九日の県民大会で二〇歳のシールズ琉球の若い女性が訴えていた。うるま市の女性が殺された事件について、加害者は米軍属かもしれないが、第二の加害者は安倍首相を初めとする本土のあなたたちだと。その通りだと思った。戦後、括弧付きであるとは言え、本土が平和な日常生活を過ごしている間、沖縄では女性や子どもが米兵に襲われるという日常が続いている。安倍首相は戦争法案の審議の時、日本人を守るためと何度も言ったが、沖縄の一人の女性の命すら守れていない。なのに、このような状況を未だに変えることができない本土の私たち。沖縄がもう限界だと言っている叫びを聞いてほしい」と訴え、ビラ配布を続けた。 (T・T)

 


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