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    かけはし2016.年6月13日号

翁長知事と共に闘う県民の意思明らかに


沖縄報告 6月5日

6・5県議選 県政与党が勝利

沖縄 K・S

米軍基地の撤去・縮小求める
世論と運動が大きく前進

 われわれは県議選に勝利した。六月五日投開票の沖縄県議会選挙は翁長知事の県政与党が過半数の二七議席を獲得した。一九人の候補者を立て日本政府のてこ入れの下、翁長県政与党の過半数割れを目指した自民党は敗北した。全四八議席の内訳は、翁長県政支持二七、不支持一五、中立六となり、選挙前より県政与党が増えた。翁長県政不支持は自民党の一四人と無所属保守の一人、中立系は公明党の四人と大阪維新の会の二人、翁長知事を支持する県政与党は、共産六人、社民六人、社大三人、結いの会三人、無所属九人である。与党・野党・中立系の勢力比は選挙前の二四:一七:六から二七:一五:六へと、与党の比重が拡大した。
投票率は、前回より〇・八二ポイント増の五三・三一%だった。政治的関心とエネルギーは後退していない。逆である。現実を打破するために声をあげていこうとする流れが大きくなった。二〇一四年、稲嶺名護市長と翁長知事を誕生させ、衆院選の全選挙区で辺野古NO!の候補を当選させて以降、現地の不屈の闘いを軸にして行政や議会と連携し、海上工事を中止に追い込んだ沖縄反基地闘争は今回の県議選を通じていっそう前進し、闘いの基盤を強化した。
琉球新報・沖縄テレビの合同世論調査(五月三〇日〜六月一日)でも県民の意思ははっきり示されていた。米軍の事件事故の防止策には、沖縄からのすべての基地の撤去四二・九%、基地の整理縮小二七・一%、合わせて七〇%をあげた。海兵隊については全面撤退五二・七%、大幅に削減三一・五%、日米地位協定は改定・撤廃が七九・二%、辺野古反対は八三・八%、女性暴行殺人・死体遺棄事件に対する安倍政権の対応には七〇・五%が支持しないと答えていた。
選挙結果を受けた記者会見で、菅は不機嫌な顔つきで「県議選は地方の選挙」「辺野古が唯一」と述べた。安倍政権には沖縄の民意を尊重しようという考えが少しもない。日本政府の中枢にこういう人たちがいて国家権力を行使しているのは実に不幸だ。沖縄の自治と民主主義は、県民がもっと団結を強め大きく声をあげていく以外に勝ち取れない。
日米両政府に対し、ひるまず臆さず勇気を持って闘い続ける沖縄反基地闘争の闘争隊伍に共に加わり、基地と戦争のない平和な沖縄をつくり上げていこう!

6.3那覇市でシンポジウム

米軍基地返還と汚染除去

ビエケス島米海軍基地閉鎖に学ぶ

 六月三日、那覇市国際通りのてんぶす館で、沖縄弁護士会主催のシンポジウム「ビエケス島の米海軍基地閉鎖から学ぶ〜基地返還と汚染除去〜」が開かれ、一〇〇人以上が参加した。
沖縄では米軍再編に伴ない返還される基地跡地を再開発する事業が各地であるが、ほとんど例外なく有害物質で汚染されており、跡地利用の足かせとなっている。沖縄市のサッカー場の枯葉剤汚染、北谷町や読谷村の複合汚染、最近返還された西普天間地区の汚染などを見ると、米軍基地問題は返還されて終わり、ではないことが分かる。返還跡地の汚染の実情と経歴、及び周辺住民や環境に対する影響を調べ、除染を進めて安全に利用可能な状態にする困難な課題がある。調査は誰がどのように行うのか。除染の責任は誰にあるのか。費用は誰が負担するのか。
こうした問題は実は沖縄・日本だけの問題ではない。韓国にもある。米軍基地の返還に取り組むところではどこでも存在する世界的な問題である。二〇〇三年に米海軍基地を閉鎖に追い込んだプエルトリコのビエケス島でも深刻な返還跡地の汚染に直面している。今回のシンポジウムは、沖縄弁護士会が、プエルトリコ出身で米軍基地の撤去や除染の問題に取り組むニューヨーク大のマリー・クルーズ・ソト准教授、沖縄での基地返還跡地の汚染問題に詳しい沖縄・生物多様性ネットワークの河村雅美共同代表(インフォームド・パブリック・プロジェクト代表)、そして法律的な観点からの金高望弁護士の三者の報告と会場からの質問に対する意見交換の構成で行なわれた。
最後に、喜多自然弁護士が、デイヴィッド・ヴァイン『米軍基地がやってきたこと』(二〇一六年、原書房)を取り上げ、「米軍基地は現在世界中に八〇〇、冷戦時の一六〇〇の半分になっているという。返還基地の汚染問題は世界的な問題だ。国際的に連携して問題解決に当たろう」と述べた。
三人の報告は要旨次の通り。

〈ビエケス島の米海軍基地返還と汚染の状況〉
 マリー・クルー ズ・ソト准教授


プエルトリコの東に位置するビエケス島はカリブ海に浮かぶ人口約一万人の小さな島。アメリカは一九世紀にスペインとの戦争でプエルトリコを奪い、パナマ運河の支配と合わせてスペインのつくった基地に軍隊を置いた。一九四〇年代に入って本格的に海軍の爆撃演習場を建設したが、住民との軋轢は拡大した。危険な上陸訓練や誤爆、地元の法律に従わない、地元の女性との関係や暴力も発生する中、米軍に対する抵抗運動が長期間継続された。
一九九九年から一年にわたる抵抗闘争は特筆されるものだった。爆撃場の中に入り演習場内で座り込んで抗議し続けることによって、二〇〇三年ついに演習場閉鎖に追い込んだ。しかし、プエルトリコは米領のため地元の行政には権限がなく、演習場は米内務省に管理権が移り野生生物保護区とされた。アメリカではよくあることだ。基地跡地は戦車や不発弾があふれ、土壌汚染もある。高濃度のカドミウムも発見された。住民のがん発生率も高く、環境汚染と健康被害は深刻だ。海軍は「魚貝類を食べないほうがいい」と言っている。汚染の実態をつかむため情報公開を求めてきたが、塗りつぶされた部分が多い。
米スーパーファンド法は汚染者の浄化責任を定めている。しかし政府はなかなか責任をとろうとしない。根拠となるデータは海軍が提出した資料だけで、第三者のチェックがない。現在回復のための委員会が組織されているが、住民の声は十分反映されない。
プエルトリコはアメリカの植民地として住民は無視され続けてきたが、はっきり目に見える抗議を続け、少なからず政府を動かすことができた。同じような問題を抱える沖縄も県民が強い信念を持って声をあげ続ければ必ず道は開ける。

〈沖縄の基地汚染・現実とポリティクス〉
   河村雅美さん


米軍基地跡地の汚染発覚のパターンは三つある。@返還後調査中に発覚(恩納村通信施設、キャンプ桑江、西普天間)、A返還後再開発・整備時に発覚(沖縄市サッカー場、北谷町上勢頭、読谷村補助飛行場跡)、B返還予定地の周辺環境調査で発覚(キャンプ・キンザー)。
二〇一三年、沖縄市サッカー場の芝張替え工事で土中から腐食したドラム缶が発見されたことにより汚染が発覚した。ドラム缶は枯葉剤製造会社のダウケミカル社の名前が記されていた。調査に伴ない土中から出てくるドラム缶が増え、最終的に発見されたドラム缶は一〇八本に上った。土壌、たまり水に高濃度のダイオキシンやPCB、DDT、フッ素、ヒ素による複合汚染がある。汚染土の処理が現在進行中。
北谷町上勢頭の住宅地は、二〇年前嘉手納基地の一部返還の後、町有地になっていたがその後民間に売買された。住宅建設中に廃棄物が発見され、北谷町、沖縄防衛局が協議し調査したところ、土壌汚染が発覚し、調査が継続中。
読谷村補助飛行場跡地は二〇〇六年返還され、農業用地整備事業が開始された。三年前不発弾調査中に廃棄物が発見され、調査したところ、ダイオキシン、鉛が検出されたが、汚染土壌は放置されたままだった。今年に入って、読谷村議会でこの間の経過が発覚した。
沖縄の米軍基地汚染の特徴は、@時間が経ってからの発覚、米軍だけではない複合投棄、Aさまざまな有毒物質による複合的汚染、にある。その中で、法制度が確立されていないため、米軍の責任回避、日本政府の隠蔽体質、地元自治体の当事者意識の希薄さ、情報公開と住民参加の弱さなど克服しなければならない課題が多い。重要なことはその土地に対する敬意を持って、データを元にした継続性、具体性のある真剣な取り組みの積み重ねが日米政府へのメッセージとなり、現状を動かす力となる。

〈米軍基地環境汚染の法的問題点〉
  金高望弁護士

 今後の返還地には「跡地利用特措法」の適用がある。情報公開、住民参加と自治体による主体的チェックが必要だ。返還されていない基地からの汚染には、立ち入り調査が必要だが、現状は米軍の意向に左右され実効性がない。根本的な問題は、米軍の管理権を定めているだけで環境保全に関する規定がない(第3条)、返還に際し米軍が原状回復義務を負わない(第4条)日米地位協定だ。汚染者負担の原則と国・自治体の立ち入り調査を明記する日米地位協定の改定が必要である。

日本政府が米軍犯罪対策を発表

警官一〇〇人、パトカー二〇台増強


米軍属による女性暴行殺人・死体遺棄事件のあと、米軍は沖縄に駐留する全軍人・軍属とその家族の基地外での飲酒や深夜0時以降の外出を一カ月間禁止することを決め、ローレンス・ニコルソン四軍調整官が陸海空海兵隊の幹部と共に記者会見を開いた。四軍調整官が記者会見を開くのは初めての事態だ。沖縄の反基地のうねりに危機感を募らせているに違いない。しかしその直後から、覚醒剤輸入で軍属ら四人が起訴、米兵の基地外での飲酒、嘉手納基地の米兵の飲酒運転での正面衝突事故などが立て続けに起こっており、軍当局の再発防止策が何ら役に立たないことを示した。
日本政府は「沖縄における犯罪抑止対策推進チーム」の会合を開き、六月三日、再発防止策を発表した。それによると、@沖縄総合事務局で非常勤職員を採用し、一〇〇台規模の車両による青色回転灯のパトロール隊を創設する、A沖縄県警に警官一〇〇人、パトカー二〇台を増強する、B国の公共施設や県、市町村に防犯灯、防犯カメラを整備する、となっている。菅官房長官は「国民の生命と財産を守ることは政府の重要な責務だ」と見得を切った。沖縄県民の生命と財産を危険にさらし続けているのが他ならぬ日本政府であることにはほおかぶりしているのだ。
政府が発表した犯罪抑止対策は予算や時期など具体的な中身がはっきりしていない。六月五日の県議選に向けてとりあえず発表し、沖縄の反基地感情が政府批判を強めるのを防ぎたいという思惑がまる見えだ。沖縄タイムスは社説で、「県議選を重視する官邸が関係省庁に再発防止策づくりを急がせたのではないかという疑念が拭えず、沖縄の実情を知らない霞ヶ関の官僚が机上でつくったプランであるとしか思えない」と指摘している。
警官やパトロール車を増やしてもあまり意味がない。犯罪の元凶になっている、米軍基地の集中と米軍の特権を擁護する日米地位協定にメスを入れない限り、犯罪を防止できると考えるのは幻想だ。むしろ警察力の強化が基地反対運動に対し行使されるなど警察国家化の危険がある。日米地位協定の改定で米軍の特権をすべて奪い、海兵隊をはじめとする沖縄駐留米軍の撤退への道筋をつけることこそが、米軍犯罪をなくす唯一の道であり、県民の犠牲をこれ以上増やさない方法である。

審査期限は6月21日メド

係争委は県民の声を聞け


翁長知事による埋立承認取り消しにたいする国交相の是正の指示の適否を審査する国地方係争処理委員会の会合が六月三日、第七回目を数えた。この間審査の進め方や論点整理をしているという。沖縄県が申し入れている稲嶺進名護市長など八人の参考人陳述について、まだ結論を出していない。
係争委の委員たちは六・一九県民大会に参加し県民の声にじかに接すべきだ。そして、国交相の是正の指示を却下し、翁長知事による埋立承認取り消しが地方自治に照らして正当かつ合法であると報告せよ。



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