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    かけはし2016.年6月13日号

農業・環境・食の安全を破壊


4.16アジア連帯講座公開講座

TPPをマクロとミクロの視点から批判する(上)

 アジア連帯講座は、「アベノミクス」の枠組みを構成するTPPに反対する運動を作り出していくために、農業ジャーナリストで、反TPPの論陣を張ってきた大野和興さんを講師に公開講座を行った。TPP関連法案は先送りになったが、闘いはこれから正念場を迎える。共に反TPPの運動を!(本紙編集部)

 四月一六日、アジア連帯講座は、大野和興さん(「TPPに反対する人々の運動」世話人)を講師に「TPPをマクロとミクロの視点から批判する」公開講座を豊島区民センターで行った。
安倍政権は、食料主権と生活破壊、グローバル資本のための環太平洋経済連携協定(TPP)を昨年、一二カ国政府と談合し、強引に「大筋合意」を進め(一五年一〇月五日)、TPP署名式(ニュージーランド/二月四日)で署名した。TPPの既成事実化を押し進めながら自民、公明党は、交渉内容や協定などの情報公開、説明が不十分なままTPP関連法の改正案一一本を一括法案として国会に提出することを決め、三月八日にTPP協定承認と関連法案提出を閣議決定した。四月五日、審議入りを強行し、なんとしてでも批准し、関連法案なども成立させようとしていた。
しかし、アメリカは一一月に大統領選があるため批准に遅れるだけでなく、次期大統領候補たちもTPPに反対傾向が強い。
日本の国会では、強引に審議入りしたが、@甘利明前TPP担当相が金銭問題で失脚し、病気を理由に雲隠れ中ATPP衆院特別委員会に提出されたTPP交渉の経過・関連文書はほぼすべてを黒塗り状態で実質的に「審議」を否定B委員会の西川公也委員長(自民)が『TPPの真実-壮大な協定をまとめあげた男たち』(中央公論新社)という本の出版予定が判明。黒塗り文書提出とは真逆の対応で審議紛糾してしまった。
三月一四日の熊本震災の発生もあって、結局、安倍政権は参院選前のTPP争点化を避け、今国会での成立を断念し、秋の臨時国会に先送りすることになった。
TPPは農産品関税の撤廃と称する農業破壊の拡大、食の安全基準や食品表示の緩和、金儲けのための投資や金融、サービス貿易などの協定で貫かれている。世界の人々はTPPによる貧困の拡大、農業と環境の破壊、食の安全軽視など民衆の生活全般への深刻な影響へと直結するために不安と批判を強めている。安倍政権は、あくまでもTPP関連法制定をねらっている。大野さんの問題提起を材料に、さらに学習・論議を深めていきたい。(Y)

大野和興さんの報告から

三つの角度から捉えるTPP

地域から運動を作り直そう

 

 国会でTPPの審議が始まっている。だが緊迫感がない。なぜかというとアメリカが動かないからだ。米大統領候補全員がほぼTPP反対だ。最初はいいよと言っていたクリントンも反対に回った。大統領選挙が終わったら、すぐに賛成に転じる話もあるが、あれだけはっきりと反対と言っていたら、そんなに簡単に賛成はできないだろう。たぶん米は、再交渉を要求してくるだろう。米が主導してきたと言っても、積み木細工の再交渉は、なかなかうまくいかないだろう。そこを見越して批准をしていない国もある。議会の批准をしなければならない国は、アメリカの動きを見ている。
その中で安倍政権だけが、突出して前のめりだ。今国会で確実に成立させるということでやってきた。ところが甘利の失脚問題が起きた。さらに情報開示で黒塗りの書類が出てきた。やっていることが、すごくちぐはぐだ。熊本地震も重なって、強硬にやるメリットは日本にない。アメリカは大統領選で動かず、選挙後も一年、二年は動かないだろう。参院選あるいは衆参同時選挙前にTPP成立を強行突破するメリットはない。たぶん次の国会にまわるだろう。私たちは批准阻止を掲げて取り組んでいるが、やはり運動が上滑りしている所がある。ここらで地域からもう一度作り直すことが必要かなと思っている。 
本題にはいると、TPPをどう捉えるかの一つは、軍事と経済との関係、つまり、日米安保とTPPの問題だ。二つ目が、憲法とTPP。三番目が、具体的に暮らしの中でどうなるのか、というアプローチをしていきたい。

日米安保体制
とTPPの関係
二〇一〇年に民主党の菅首相が、一〇月の通常国会の冒頭で「TPP交渉に入る」ことを表明した。ほとんどの人がTPPを知らなかった。なぜ突然、こんなことを言い出したか。その背景は日米安保にある。
日米経済摩擦が七〇年代から八〇年代にあったが、そのとき改めて感じたのはそもそも六〇年安保改定だった。安保条約に経済条項が入り、単なる軍事同盟だけではなく、経済同盟にもなった。日米安保条約の第二条(経済的協力の促進)には、「締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによって、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する」と明記されている。安保条約で日米政府は、経済政策の食い違いを除くことになっている。アメリカの主張に沿って「除く」となる。
このことを具体的に示したのが、吉岡裕さん(元農林水産省経済局長)の「日米貿易摩擦とアメリカの農業政策 」(昭和六二年度〔日本農業経済学会〕大会討論会報告)だ。その中に「5.日米関係の特殊性と日本の政治状況」がある。
「特殊性」とは、日米安保の存在だ。「この条約には同時に『経済協力条項』が含まれており、自由な経済社会体制の強化をめざして両国は、経済政策上の相違を除去するように努力し、そのための協議を続けることを確認している。この防衛関係と経済関係のリンクは、米国側の政治的解釈としては当然視されており、『防衛での貸しは、経済で返させる』との期待が米国にはある」と述べている。
つまり、日米の貿易関係は、防衛と軍事に確実にリンクされている。東西冷戦下、安保はどんどん変質し、冷戦終結と同時に安保も経済もグローバル化していった。グローバル安保とグローバル経済のリンクがTPPだ。
二〇一一年東日本大震災の年の一一月にAPEC首脳の閣僚会議がホノルルであった。野田首相(民主党政権)は、オバマ米大統領と会談をし、TPPの交渉に日本も入ると宣言した。ぼくらもデモをするために現地に入っていた。
集会で、グアム、ホノルル、ハワイ、グアム、沖縄、韓国の済州島、オーストラリアの人たちが集まってのセッションで、米軍基地でなにが起こっているのかということを話した。これらの地域を線で結ぶと中国をすっぽり包囲する形になる。沖縄からは高里鈴代さんが参加した。この時にTPPの狙いを実感した。
野田首相は、中国の包囲網としての経済の軍事化、原発の輸出、武器輸出三原則をはずして武器輸出と兵器協力などを言い出していた。これが安倍政権に引き継がれ、アベノミクスの核のところに原発輸出と武器輸出がおかれた。日米安保は、冷戦下の安保からグローバル安保へと変わっていた。TPPはグローバル経済の象徴として位置づけられた。この二つがここで具体的に結合したとみてよい。TPPは経済のグローバル化であり、世界の市場化の一環だ、アジア・太平洋における自由な企業活動を行うためのものだといわれているが、実態は米日主導の経済のブロック化の一つの現れだとぼくはみている。 (つづく)

三里塚

6・26東峰現地行動へ

飛行制限時間緩和を許さない! 成田空港「第3滑走路」計画を撤回せよ! 横堀現闘本部裁判最高裁で勝利判決を! 反原発―再稼働やめろ! 沖縄・辺野古新基地建設反対! TPP反対!

三里塚空港に反対する連絡会

 安倍政権は戦争する国家体制構築を目指し、改憲をも射程に入れ、日米安保強化、安保法制の施行を推し進めている。また、原発再稼働、TPP推進、労働法制の改悪などを強行し、人民の生活破壊、格差の拡大、民主主義的権利の剥奪などを国会での議席数を背景に行っている。安倍政権を一日も早く打倒しよう。

夜間飛行時間制限の緩和をやめろ

 成田空港においては成田国際空港会社が二〇一六年度から三カ年の中間経営計画を発表した。それによれば「定時運行率を世界最高水準の九〇%に近い水準」を目標に掲げ、一時間あたりの発着回数を滑走路二本で現行六八回から七二回に、年間では二三・五万回から二七万回を目指すとしている。
また、LCC(格安航空会社)の就航割合を現行二五%から三〇%以上に増やすとしている。空港会社夏目誠社長は「LCCは従来の航空会社と共に成田空港を支える両翼」と語り、LCCの拡大に邁進している。国交省−空港会社は二〇二〇年東京オリンピックまでに離発着回数を増やすために夜間飛行時間制限(現行では原則午後一一時から翌朝六時までは飛行禁止)を緩和しようとしている。LCCの増便にとっては成田の夜間飛行時間制限は大きな桎梏となっているのだ。
成田は内陸空港であるが故に、住民の生活を騒音から守るため夜間飛行制限は不可欠である。それを需要の拡大を理由に利潤追求のためなし崩し的に緩和しようとしている。成田では地元の第3滑走路建設を目指す有志(利権)団体が制限時間の緩和を求める要望書を提出している。 騒音被害を拡大する制限時間の緩和を断じて認めることはできない。

「第3滑走路計画」を撤回せよ

 国土交通省は「二〇三〇年をめどに成田に第3滑走路を」という計画を打ち出し、その実現に向けた協議を四者協議会(国、千葉県、成田市などの関係自治体、空港会社)によって行っている。また住民有志という形で成田市や芝山町を中心に組織が結成され、第3滑走路建設の推進に向けて宣伝・署名活動などを展開している。
こうした動きには現に騒音被害を受けている住民や、第3滑走路によって新たに立ち退きを迫られたり、騒音被害を受ける住民の間からは反対の声が上がっている。目先の利潤のみを追い求め、住民の生活や環境の破壊をもたらす第3滑走路の建設を許すことはできない。

土地強奪を許さない

 空港会社は空港機能の拡充を名目に、用地内の反対派拠点を次々に裁判に提訴して強奪している。過去、農民・地元住民の反対に対して強権を発動して押さえ付け、空港建設を進めてきたことを「謝罪」し「反省」した国・空港公団は事業認定を取り下げ、「話し合いによる解決」を約束した。しかし、土地収用法による強制代執行が出来なくなった空港会社は民事訴訟によって、司法権力の強制力を使って土地を取り上げるという手段にうったえてきた。
反対同盟横堀現闘本部の土地(一坪共有地)を裁判で取り上げ、建物の撤去を求める裁判を提訴した。一審千葉地裁はたった四回の書面審理のみで空港会社の主張を全面的に認める不当判決を出し、二審東京高裁は一回目の公判で結審し、二月三日またも「空港会社側は長期間解決の努力を続けたと認められ、提訴は許される」と会社側を擁護する不当な判決を下した。反対同盟は最高裁に上告し裁判闘争を闘い抜いている。

6・26東峰現地行動へ

安保法制施行−日米ガイドラインにより空港の軍事利用の可能性は増大している。成田の軍事使用を許さず、日米安保粉砕の闘いとも連携して三里塚闘争を闘おう。用地内農民と連帯して東峰住民追い出し、第3滑走路建設反対を三里塚・東峰現地に結集し共に闘い抜こう!

?日時:六月二六日(日)/午後一時結集
?場所:旧東峰共同出荷場跡(成田市東峰65―1)、開拓道路に向けてデモ
?会場への行き方:東成田駅地上一二時集合/迎車待機で会場へ
(10:34発京成上野(特急)→11:41着成田11:52発→11:57着東成田)
?主催:三里塚空港に反対する連絡会/連絡先:千葉県山武郡芝山町香山新田90―5/電話:FAX0479―78―8101



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