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    かけはし2016.年5月30日号

民衆的抵抗への国際連帯を


シリア

不屈に闘うアレッポの民主勢力

ジョセフ・ダヘル

 シリアにおける和平交渉が暗礁に乗り上げる中、アレッポを中心とする北部にアサド政権が攻撃を強め、多くの民衆の死を生み出した。以下は、この攻撃が現地民衆の民主的オルタナティブを根絶しようとする、政権側の意図的な戦略を背景とするものであることを明らかにした上で、当地で現に展開されている民衆的な抵抗の存在を具体的に伝えつつ、その抵抗に対する国際的な連帯を強く呼びかけている。(「かけはし」編集部)

非戦闘員への
攻撃の停止を
読者のみなさんは、赤いがっしりした枠に多くの人々が自分の人物紹介写真を貼り付けているフェースブックに注意を払ってきたかもしれない。それは、シリアのアレッポ市に対する連帯キャンペーンのためのものなのだ。
四月二二日からアレッポ市に打撃を与えた暴力の新しい波は、五月五日までに全体でおよそ三〇〇人の死という結果を残したが、その犠牲者のほとんどは、非戦闘員の民主派勢力、自由シリア軍(FSA)そしてイスラム主義志向の軍事部隊から構成されている反政府派〔ダーイシュ(またはいわゆるISIS)とジャブハト・アルヌスラ(シリア内のアルカイダ支部)、また他のサラフィスト・ジハーディスト諸勢力は排除されている:原注〕が支配する領域の非戦闘員だった。政権が支配する領域の何人かの非戦闘員も標的にされた。
諸グループと諸個人が、アレッポの全非戦闘員に対するロケット砲発射と爆撃すべてに停止を求め、傷つけられたこの都市に対する連帯を示すための、シリア革命を支援する「アレッポは燃えている」と名付けられた国際キャンペーンを世界中でこの数週間で始めたのは、先のようなことを全体背景にしている。数多くのシリアの解放された地域においてもまた、アサドとその同盟勢力の航空機による爆撃を強く非難し、アレッポの住民に対する彼らの連帯をはっきり示す、様々な民衆的なデモが起きている。
間違いないこととして、政権の火力は、武装反政権派陣営側との間では比較にならず、政権とその同盟勢力が殺害した非戦闘員の数ははるかに多い。しかしこのことはどのようなことがあろうと、反政権派武装グループによる砲撃と病院の破壊や非戦闘員の殺害を正当化するものではない(依然として証明される必要が残っているとしても、政権が保持しているアレッポ地域内の産院を直撃した砲撃で、反政権派武装グループが責められてきた)。
革命の始まりの時「人民を殺害する者は裏切り者」とデモ参加者たちが唱和したように、今日われわれは、同じことを叫び、さらに「非戦闘員を殺害する者は裏切り者であり犯罪者だ」と付け加える。われわれは、彼と同じような方法を使うことで怪物的アサドに代わる民主的なオルタナティブを提起したい、などとは主張できないのだ。

民衆を攻撃す
るアサド政権
そうであっても、政権側勢力およびその同盟勢力を一方とし、反政権派武装勢力を他方として二月二七日以後国中で適用されてきた敵対の中断がこの都市でそこなわれた後で、五月五日、アレッポでの一時的停戦が公表された。それは、政権の支配下にある地域で三人の非戦闘員を殺害した五月八日夜の反政権派武装勢力によるロケット砲発射にもかかわらず、これを書いている時点(五月九日)で今もそのままだ。
しかしこれは、この一時停戦開始のきっかり一日後に、ロシア大統領のウラジミール・プーチンに電報でアサドが以下のように言明することを妨げなかった。つまり、シリア軍は「最終的勝利を得ること」、そしてアレッポの反逆者による「攻撃の粉砕」に至らないものはどんなものも受け入れることはないだろう、と。ちなみにアサドはその電報の中で、その軍事支援の件でモスクワに感謝していた。
アサド政権とその同盟勢力は実際にも、さまざまな休戦にもかかわらず、この国の様々な地域における軍事攻撃を継続してきた。現にこれこそが、「和平」交渉が立ち往生している主な理由なのだ。
現に戦闘は、FSAの武装反政権派部隊およびジャブハト・アルヌスラやダーイシュのような休戦協定に含められていないジハーディストグループと政権部隊の間で、アレッポ州の他のところで、またデイル・エッゾール(東部)、ダマスカス、ホムス(中央部)、デラア(南部)の各州で継続中だ。五月五日にはイドリブ州(北西部)で、国内で追い出された人びとの難民キャンプも、シリア政府やロシア軍航空機によって爆撃された。そしてこの爆撃は、シリア人権監視団によれば、女性や子どもを含む二八人の人びとを殺害した。

なぜアレッポ
が攻撃対象か
アレッポの戦闘には意義深い政治的かつ軍事的な重要性がある。そして、アサド政権とその同盟勢力であるロシア、イラン、ヒズボラ、また他の者たちによるこの都市の再獲得は、反動的なイスラム原理主義者諸勢力を強化する一方で、反政権派に対する極めて大きな打撃となるだろう。アサド政権による空爆は、単にできる限り多くの非戦闘員を殺害することだけではなく、アレッポの解放領域のような、すべての民衆的で民主的なオルタナティブが場として存在することを阻止することをも目的にしている。
アレッポは実際、民主的で民衆的な反政権運動の強力な象徴を表現している。この運動は最初にアサド政権に反対し、それを押し出し、その後ダーイシュとジャブハト・アルヌスラの権威主義的で反動的な諸行為に反対し、この勢力を追い出した。この住民地域内に存在しているものは、自由シリア軍とイスラム主義志向の武装諸派だけだ。今も三〇万人が暮らすアレッポの解放区域は、諸々の現地評議会を通して現地住民によって自主的に組織化されている。そしてそれらの評議会が、学校の管理、廃棄物管理、食料と必需的産品の配給、民主的なキャンペーン、文化的な催し、市民に対する精神的な支援などの形で、社会のあらゆる部門を管理している。
市民の民主的諸勢力の力は、四月半ばにも見られた。それは、FSAとつながっている部隊である「トルクメン戦線」グループによる先頃の医療労働者に対する拷問と殺害に反対して、アレッポの解放区域中の医療スタッフがデモを行った時だ。非戦闘員の民主的諸勢力は革命の諸原則を守り、確認し続けている。

標的は民主的
オルタナティブ
これこそが、アサド政権あるいはロシア軍航空機がこれらの解放区域内にある戦闘には無関係の諸施設を主に標的にしている理由だ。こうした施設の例がアル―クッズ病院であり、この病院は四月二七日の空襲で破壊され、アレッポ市に残った小児科医の一人を含む少なくとも五五人が殺害された。二〇一二年以後この病院を支えてきた国境なき医師団(MSF)によれば、三四床のベッドを保持していたアル―クッズ病院は、この地域における「小児科に関する主な紹介先」だったのだ。
非戦闘員と北部諸州の反政権派諸施設に対する一連の攻撃の最後として行われた四月末の爆撃は、アレッポ周辺のアタレブ市唯一の市民防衛部署に対するものであり、そのメンバー五人を殺害したが、それをわれわれは、先と同じ論理の中で理解しなければならない。そして二、三日前に爆撃されたのもその市の病院だった。
過去においても、パン工場、学校、病院、治療センター、その他の諸施設が、あらゆるシリアの解放区域で政権の標的となった。「人権を求める医師団」は、戦闘開始後、戦闘に応じた諸党派によって、少なくとも三四六件の医療施設に対する攻撃が敢行され、そこには医療労働者七〇五人の殺害が伴われた、と伝えてきた。シリア政府軍とその同盟軍部隊は、その圧倒的多数に責任を負っている。アムネスティ・インターナショナルはその最新報告で、アサド政権とその同盟勢力による病院と医療センターに対する攻撃を強く非難し、これらの行為を意図的な戦争戦略であると特徴づけている。
この政権が欲していることは、解放区域から住民を根こそぎにし、民衆的で民主的なオルタナティブすべての存在を妨げることだ。そしてこの政権の最大の脅威は、先のようなオルタナティブなのであり、そのもっとも好都合な敵であるイスラム原理主義者諸勢力などではない。

民衆的な抵抗
は続いている
地域の活動家の逮捕に続くここ何週間の間には、マイノリティのドゥルーズが圧倒的多数を構成するスウェイダ市でもいくつかのデモが起きた。デモ参加者は、「シリア民衆は一つであり統一している」、「シリアはアサド一家のためにではなくわれわれのためにある」、「~のために宗教、そして全員のために故国」のようなスローガンを上げつつ、市の諸々の街頭を貫いて行進した(最後のスローガンは、一九二〇―一九四六年のフランス信託統治時代に、フランスの占領者に対する闘争の中で掲げられた有名なスローガン)。
このデモは市の主要な広場で終わり、この広場で抗議行動はハフェズ・アルアサド(現アサド大統領の父親:訳者)の像を取り除き、シリア革命の旗を取り付けて、この広場に「大統領広場」に代えて「尊厳広場」とあらためて名前をつけた。抗議に立ち上がったスウェイダの人びとには、シリアの他の解放区から連帯のメッセージが送られた。
東部グータの現地住民たちは彼らで、この地域を支配しているイスラム派の武装部隊と、その競合組織であるファリラク・アルラーマンが率いる諸部隊との間の内ゲバ戦闘に反対して大衆的デモを組織し、アサド政権に対してその銃口を統一するよう彼らに要求してきた。ちなみに後者の組織は、二〇一六年二月におけるその創立後のここ何カ月かで影響力の高まりを経験した。これらの軍事衝突は、当地の住民にあらゆる損害を与えても各々の軍事的影響力を高め、その領域を支配しようとの、二つの軍事グループがもつ意志の結果だ。
五月はじめには、ハマ刑務所で暴動も起き、囚人たちが刑務所を支配下に置いた。反乱は、臨時軍事法廷で死刑を宣告された五人の囚人をサドナヤ刑務所に移管するという警察のもくろみを受けて始まった。問題の刑務所は、収容者に対する極度の暴力が有名なのだ。「テロリズム」棟内の囚人たちは、五人の囚人の引き渡しを拒否し、彼らを連れ出しにやって来た警官九人を人質に取った。
反乱はそこから始まった。残りの囚人も蜂起に加わり、区域の扉を取り外し互いのために区域を開放、そして刑務所全体を支配下に置いた。この刑務所には、政権に対する彼らの反対を理由に逮捕された八五〇人の政治犯を含め、一二〇〇人内外の囚人がいる。政権は五月六日、反乱を終わりにしようと、催涙ガスとゴム弾を使用することでこの刑務所への襲撃を試みたが、成功はしなかった。
その後、政治囚の釈放を求めている囚人たちとの交渉が再開した。先週、すでに三〇人が政権によって釈放された。最終的に恩赦、および罪状のないまま収容された者たち、言葉を換えれば政治囚の釈放に導くと思われる仮の取引が、ハマにおけるストライキを終わりにするために達成された、というのが最新の(五月九日)ニュースだ。
その間、マアレト・アルヌマアンの町は民衆的抗議行動を継続している。その行動は、当地の活動家と抗議に立ち上がった人びとを脅迫し続けている反動的な組織、ジャブハト・アルヌスラに反対して、五〇日以上続いてきた。五月六日に行われた最新の大デモに対し、ジャブハト・アルヌスラの民兵はデモ参加者を暴力的に攻撃することで決起を打ち壊そうと試みたが、成功にはいたらなかった。

希望の障害は
アサド政権
国家の頂点にある権力にアサドと彼の協力者がいない民主的で自由なシリアに向けた移行経路の確定が、この国における本物の変化を求めて希望をもつために必要なことだ。そして、数年を経てアサドの牢獄から最近釈放された、人権活動家のマゼン・ダルウィシュが述べたように、どのようなものであれ移行に含まれるべきことは、一定期間の移行期において「復讐のスパイラルからシリアの共同体を防護するための唯一の方法は全員への責任」だ。そしてそれは、政権とその同盟勢力、原理主義イスラムグループ、またその他の全指導者が、非戦闘員やその他の者たちに対する犯罪のゆえに責任があると見なされなければならない、ということを意味している。
闘争を打ち砕こうとしている反革命のあらゆる形態に反対して闘っているシリア民衆への連帯を。マアレ・アル・ヌマアンの町の革命家たちが書いたように、「革命は全シリア人のためだ」「われわれは全員のためのシリアを欲している」。(五月九日)(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年五月号)

エジプト

エジプトの囚人を救え!

窒息死の危険迫る

熱波が襲う刑務所

  エジプトの気温は明日までに四五度cに達するだろう。この熱波に多くの者が苦しむ中で、特にエジプトの囚人たちはこの恐るべき気候の矢面に立たされている。
 元囚人たちはこれまで、エジプトの刑務所の諸条件劣悪化について、また刑務所当局が規律強制の手法として狭い監房にどれほどまで囚人を詰め込んできたかを詳細に伝えてきた。二〇人しか収容できない監房に、その倍が詰め込まれているのだ!
 いくつかの監房には、天井近くの小さな窓以外どのような換気手段もない。囚人たちは、息のつまる条件のために、立つことと眠ることを交代で行わなければならない!
 多くの者は、適切な換気がないために、呼吸不足に苦しめられている。ある元囚人は、彼の獄中時代を思い起こしつつ、僅かな風を感じようと裸のままでいざるを得ず、体をさますために「五分ごとに」交代でシャワーを浴びた、と語る。
 いくつかの人権組織は、この熱気を軽減させようと、扇風機を持ち込もうとしてきた。しかし刑務所当局は彼らの努力を阻止してきた。囚人の家族たちの場合は、収容されている親族に会うために苦労した。彼らは日向で何時間も待ち、刑務所の建物に入るためだけでもこの暑さの中で何マイルも歩いた。時に訪問日は、刑務所当局の指示により突然変更される。多くの人々は、囚人に食物や衣類や医薬品を届けることを許されていない。
 エジプト人権イニシアティブ(EIPR)は、エジプトの刑務所が示す現在の条件を厳しく非難し、それらに「中世の監獄」との烙印を押してきた! 彼らは、適切な医療の不在、換気の不在、適切な衣類と食糧の不足を含めて、刑務所当局の法令違反を詳細に挙げた。
 EIPRはまた、刑務所当局に対する実効的な監視の不在をも厳しく批判し、囚人の権利を保護している現憲法への留意を求めてきた。
 エジプトの囚人は彼らの監房の中でゆっくりと死につつある!
 今こそエジプトの囚人を救え!
#IwantToBreathe
#SuffocaingPrisoner
#WeAreSuffocating
(二〇一六年五月一六日)(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年五月号)


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