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    かけはし2016.年5月30日号

搾取も戦争もない世界へ


5.16

ATTACジャパン(首都圏)がシンポジウム

G7サミット反対の論理と運動を

 五月一六日夜、ATTACジャパン(首都圏)は、東京のアカデミー音羽多目的ホールで「シンポジウム G7サミット反対! 搾取も戦争もないもうひとつの世界は可能だ」を開催した。目前に迫った伊勢志摩サミットを前にして、反対運動の多様な課題を突き合わせて理解し、行動の糧としていくためにこの日の行動が計画された。またフランスで広場占拠という形態を含めて大規模に展開されている労働法制改悪反対運動「夜に立ち上がれ」との連帯が、司会者から訴えられた。

G7からの離脱
日米同盟の解消
最初に、ピープルズ・プラン研究所運営委員の小倉利丸さんが、急きょ参加できなくなったため、ビデオメッセージで「G7サミット体制とは何か」と題する基調提起を行った。
小倉さんは、ベトナム戦争後、地球規模で発生する危機や諸問題を欧米先進国の覇権構造の中でまわしていく装置として出発したサミットが、「資源ナショナリズム」を新自由主義的グローバル化で抑えこんできた経過を紹介し、さらに「対テロ戦争」の推進を担うことになったプロセスを報告。今回、日本で行われるG7サミットが戦争法施行下で行われる最初のサミットとして建前としての「平和主義」を大きく逸脱するものである、と述べた。そのことは広島でのG7外相会議が、「暴力的過激主義」や「イスラム国」(IS)に対抗するグローバルな連合を呼びかけていることにも示される。
小倉さんは、外相会議の中身が実質的に原発・核開発、軍事技術開発の推進を容認するものであることを批判した。またG7サミットのあり方は、トップが独断で決定する新しい独裁体制―民主主義からの逸脱である、と批判し、日本の運動は今こそ「サミットからの離脱、日米同盟の解消」を訴える必要がある、と強調した。

搾取・収奪と
「パナマ文書」
次に、労働、タックスヘイブン、難民問題、農業などの分野からの報告が行われた。
全国一般労組特別執行委員の遠藤一郎さんは、二〇〇〇年の沖縄サミット、二〇〇八年の洞爺湖サミットの時と比べて、労働組合運動の側の取り組みがきわめて弱い、と紹介し、新自由主義的グローバル化に反対する労働組合運動の困難さについて語った。
遠藤さんは、G7の側が国際的な資本主義経済の危機打開のために金融・財政政策だけではどうにもならない状態に陥り、再度、本格的に労働者への搾取と収奪の強化に踏み込んでいる、と語った。それは労働分野での規制破壊に現れている。
安倍首相は日本を「世界で企業が一番活動しやすい国にする」と語った。それは労働者の権利が一番無視され、破壊される国、ということだ。それは派遣労働の完全自由化、労働時間規制の撤廃、解雇の金銭解決、労働移動助成金、リストラのあっせん、などに示されている。遠藤さんは、こうした資本の攻撃に全面的に反撃する社会的公正を求める労働運動の構築を訴えた。
「パナマ文書とタックスヘイブン」については横浜アクションリサーチセンターの金子文夫さん(横浜市立大名誉教授)が報告。パナマの法律事務所モサック・フォンセカから流出した膨大な情報は一一五〇万件、文庫本にして二万六〇〇〇冊分にも達する。さらにその内容が世界各国の大物政治家(キャメロン英首相、プーチン露大統領、習近平中国国家主席など)、財界人、その友人・家族などに及んでいたため大きな衝撃が走った。
金子さんはタックスヘイブンの実態(大英帝国のネットワーク、アメリカ中心のネットワーク、ヨーロッパのタックスヘイブン)、システムのインフラ、その規模(タックスヘイブンに蓄積されている金融資産は二四〜三五兆ドル、タックスヘイブンによる法人税の逸失が年間にして少なくとも一〇〇〇〜二四〇〇億ドル、途上国の税収逸失が年間一七〇〇億ドル、富裕層個人資産の税収逸失が一九〇〇億ドル、日本の税収逸失が個人税・法人税合わせて数兆円)といったデータを紹介した。
そして国連、OECD、G20などによるタックスヘイブン規制の取り組みを紹介しながら、パナマ文書問題を好機にして制度改革の立案、実施過程を監視し、その限界をしっかり捉えて世論と行動を喚起していく必要があると訴えた。

 

欧州難民問題
そしてTPP
つづいてバルセロナに住み、スペインの社会運動や難民問題に取り組みながら発信を続けている海老原弘子さん(翻訳家)に帰国中の時間を割いて報告していただいた。
海老原さんは、二〇一四年、モロッコから泳いで国境を越えようとした人びとをスペインの警察がゴム弾で射撃し一五人が殺された「タラハル海岸の悲劇」に触れながら、シェンゲン協定(EUの主要な加盟国の間での移動に関して国境審査を省略する協定)の本質が労働力の自由な移動であって、人間の自由な移動ではないことを指摘。
そして中東からの「不法難民」問題に焦点があてられることで、それよりも多いアフリカルートの移民の問題が隠蔽されることに危惧感を表明した。またポデモスについて、ギリシャで政権についたシリザが不正債務の支払いに同意してしまったと同様の轍を踏む危険性についても指摘した。
農業ジャーナリストの大野和興さんは、TPPが「内なる辺境づくり」にならざるを得ないことを指摘し、東京二三区の生活保護受給者が北関東に送りだされていることや、山間農家の崩壊、手取り収入の半分以下への低落、年寄りが棄てられる社会になっている現実を批判した。
シンポジウムではさる四月にチュニジアで行われたCADTM(第三世界債務帳消し委員会)総会に出席したCADTMパキスタン、ATTACイタリアの仲間からG7サミットに反対する日本の活動家に寄せられたビデオメッセージが紹介された。またATTAC東海、科学技術大臣会合に反対するつくばの仲間からも、連帯のあいさつが行われた。      (K)

声明

5・19大阪府警による仲間3名の不当
逮捕に抗議し6・5現地闘争を呼びかける

米軍Xバンドレーダー基地反対京都/近畿連絡会


 さる五月二日、京丹後市Xバンドレーダー基地反対運動をめぐって大阪府警は「詐欺罪」容疑で一六カ所への強制捜索を行った(本紙5月16日号3面参照)。そしてついに五月一九日には、三人の仲間を不当逮捕するにいたった。この弾圧がいかに不当なものであるかについては、声明を読んでほしい。全国から抗議の声を!(編集部)

 本日、5月19日早朝、大阪府警公安3課は、米軍Xバンド基地反対「京都/近畿連絡会」の3名の闘う仲間を不当に逮捕した。これは5月2日、「詐欺容疑」で16か所の家宅捜索を行った弾圧の継続である。
5月2日、強制捜索の際に大阪府警が明らかにしなかった「詐欺」容疑の中味は、大阪・天満の【エル大阪(労働会館)】で米軍Xバンドレーダー基地反対やサミット反対の会議を行った際、自立労働組合連合の名義で会議室を借りた「名義詐欺」、又、【エル大阪】は労働組合に対して一般より安く部屋貸ししており、この差額の部屋代を「詐取」したというのが逮捕理由とのこと。
6/5京丹後現地闘争に対する事前弾圧であり、合わせて反サミットに対する予防弾圧に他ならない。全く不当な弾圧だ。
私たちは、非暴力直接行動で現地の住民と連帯して闘いを進めており、権力につけいる隙を与えない。デッチ上げやこじつけは権力の権威をおとしめ、安倍内閣の不当性を証明するものだ、ということを徹底的に暴露するものである。こうした不当弾圧を許さず、3名の早期奪還に向けた闘いを呼びかけ、みなさんのご協力をお願いします。

 (略)京丹後・宇川地区では、運転開始と同時に地域住民は精神的・身体的苦痛を伴う騒音に悩まされ、運転開始後わずか3ヶ月で20件に及ぶ米軍関係者の交通事故があり、昨年12月25日には、軍属の車が赤信号で突っ込み、地元の青年が負傷した。米軍属は「自分は青だった」と引き下がらず、結局、青年は生活のため裁判などしている余裕も金もなく、泣く泣く示談に応じさせられた。(略)
既に特定秘密保護法やマイナンバーを強行し、今国会で刑事訴訟法の改悪で詐欺容疑などにも盗聴法の範囲拡大を目論み、戦前の治安維持法に匹敵する人権侵害の網の目を張り巡らしつつある。(略)
今こそ安倍内閣の暴挙を人民「総掛かり」で阻止しなければならない。
沖縄の辺野古の闘い、原発全廃の闘い、戦争法廃止の闘い、消費税10%引き上げ反対の闘いなどどれをとっても人民の主権者としての立ち上がりと街頭における直接行動、そして沖縄・韓国・本土をつないだ人民の国際連帯活動が安倍内閣打倒に向けて前進している。
参議院選、衆議院選に向けて安倍内閣打倒の野党共闘の努力が積み上げられている。
こうした人民の「総掛かり」の闘いを前にして安倍内閣は、沖縄・辺野古につづいて京都・近畿で闘われている米軍Xバンドレーダー基地撤去、THAADミサイル配備反対の闘いを強権的に押しつぶそうとしている。
辺野古埋め立てを阻止し、京丹後のXバンドレーダーを撤去する闘いを更に前進させるため、大阪府警の組織破壊攻撃に団結して立ち向かい、6/5京丹後現地闘争を共に成功させようと呼びかけます。

コラム

入社面接

 年度末に二〇年近く工場で働いてきた機械のオペレーターが、父親の死を契機に突然退職してしまった。人員ギリギリの自転車操業をしてきたので、さっそくハローワークを通して公募することになった。職場は3K(きつい・危険・汚い)に1K(聞こえない-騒音)が加わる4K職場ということもあって、はたしてどれほどの応募があるのか少々心配はしていた。
しかしいざ公募が始まると、来るわ来るわ連日のように入社面接が続く。午前中に二人に面接するということもあったほどだ。「正社員・月給二四万円(残業月平均二〇時間)等々……」。面接に来た人たちのなかで同業の経験者は、会社が倒産したという四四歳の一人だけで、その他には元歯科技工士、バスの運転手、IT関連から大学新卒まで多彩である。
いろいろと話を聞いてみると、やはり「正社員」募集は皆無に等しいようだ。そんななか、がっちりとした体形で子供が生まれたばかりだという三〇代半ばの人を採用することになった。
しかしその彼も運が悪かったのか、仕事初日から午後一一時までの残業に悲鳴を上げて一日でやめてしまった。そして次に採用したのが、母子家庭で育ち大学を三年で中退しその後、郵政職場で転々とアルバイトをしてきた二〇代半ばの青年である。就労してまだ一〇日間ほどだが、昼食にカップラーメンをすすりながら長時間の残業にもめげずに何とか彼なりにがんばっているようだ。
「一億総活躍社会」なるホラ吹きラッパが鳴っているが、「正社員公募」が皆無の状態で、人間らしいまともな生活も子育ても老後の安心もあったものではない。そうした実態を如実に示しているのが「子供の貧困率」一六%という数字である。実に子供の六人に一人が腹を空かせているということだ。特に母子家庭の場合、その貧困率は五〇%を超える。
先日、児童扶養手当の給付金が雀の涙ほど上がった。しかし多くの母親たちは正規職につけず月一〇数万円の収入に扶養手当を加えて、月二〇万円ほどで生活しているのが実態である。父親から養育費を受け取っている家庭は全体の二〇%ほどに過ぎない。しかも扶養手当は一八歳までで打ち切られてしまう。大学に行きたければ有利子の奨学金に頼る以外にない。そして卒業と同時に数百万円の借金を抱えるということになる。
また「同一労働同一賃金」なる言葉がひとり歩きし始めている。「非正規の正規化」を実現していくためにも、まずは最低賃金の大幅引き上げが必要である。時給一五〇〇円(現・東京九〇七円)まで上がれば、一日八時間で二〇日働けば月二四万円になる。
米国のカリフォルニア州とニューヨーク州は、最低賃金を一五ドルに引き上げた。日本の労働運動・社会運動もこれに続く闘いを作り出さなければならないだろう。(星)


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