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    かけはし2016.年4月11日号

目取真俊さん不当逮捕糾弾!


沖縄報告 4月3日

臨時制限区域撤廃し、フロートを撤去し、工事台船を撤収せよ

沖縄 K・S

 四月一日の海上行動で、カヌーチームの目取真俊さんが、キャンプ・シュワブの軍警察(米軍の民間人警備員)により八時間にわたって不当に拘束された。その後、軍警察から身柄引き渡しをうけた海上保安庁により刑事特別法違反容疑で逮捕された。海保による刑特法の逮捕は全国で初めての例だという。
 キャンプ・シュワブゲート前、および中城海上保安部前での緊急抗議行動が行なわれ、海保から送致を受けた那覇地検は翌二日夜、処分保留のまま目取真さんを釈放した。

逮捕にい
たる経過
 
 カヌーチームや抗議船がフロートを越えて立入制限区域に入るのは今回に限ったことではない。海上行動のたびに毎回やっていたことであり、逮捕者はこれまでひとりもいなかった。三月四日の「和解」以前には、海保が「安全のため」カヌーメンバーを拘束・排除していたが、和解により工事が止まった以降は、海保は前面から退き、防衛局が契約した「マリン・セキュリティ」の警備船が立入禁止区域に立ち入らないよう警戒し、軍警は浜辺で監視する程度だった。
 四月一日朝、海上工事が止まっている辺野古の海にカヌーチーム八隻が出た。その内五隻がキャンプ・シュワブの突き出した先端になっている辺野古ア近くの浅瀬に張り巡らされたフロートを超えて大浦湾に入ろうとした時に事件が起きた。このルートは、辺野古の浜から大浦湾に抜けるカヌーチームの通り道になっており、三月四日の和解以後は、フロートを越えても海保の規制は全くなく、大浦湾にほぼ自由に入ることができていたところだ。
 釈放後の目取真さんの話を総合すると、拘束された場所はフロートを越えてカヌーを引っ張り上げる時にいつも寄る浅瀬であった。普段はMPも軍警備員も何も言わないが、突然、軍警備員が走ってきて、岩場の上からカヌーチームの一人を捕まえようとしたので、目取真さんがやめるよう抗議したところ、逆に陸上に引きずり上げられたという。軍警備員が二人がかりで、頭を押さえ、腕をつかみ、後ろ手に手錠をかけ基地内の詰め所に連行していった。
 目取真さんはこの間自身のブログ「海鳴りの島から」で積極的に発信を続けているが、今回の件についてもブログに文章を載せているので、ご覧になっていただきたい。
http://blog.goo.ne.jp/awamori777

「臨時制限区
域」は違法だ


 逮捕容疑は刑特法違反だというが、そもそも現在、辺野古の海では、刑特法違反は成立しない。「和解」により翁長知事の埋め立て承認取り消しの効力が復活した状態になっているため、ボーリング調査をはじめ辺野古新基地に関係するいっさいの工事は行うことができない。工事のための臨時制限区域の設定やフロート、工事のための作業台船は海上にあってはならないものだ。
 臨時制限区域は二〇一四年六月二二日、ボーリング調査の開始に当たって、日米合同委員会が「普天間代替施設建設事業のため」に立入禁止とした海域である。和解によって工事が中止されている現在、臨時制限区域の根拠は一切ない。臨時制限区域の根拠がないから、臨時制限区域に入ったことを理由とした刑特法違反の根拠もなくなる。
 今回の目取真さんの拘束・逮捕は明らかな不法拘束・逮捕だ。検察にしても勾留の根拠を示すことが難しいと判断したのだろう、早々に釈放せざるを得なかった。
 日米両政府は「和解」により原状回復の義務を負っている。辺野古の海と大浦湾にまたがる臨時制限区域の設定をただちに取り消し、フロートを撤去すると共に、作業台船三隻を撤収しなければならない。翁長知事も「逮捕は理不尽」と述べ、四月一四日に開催予定の県政府間協議の第一回作業部会で、フロートの撤去を議題として取り上げることを明言した。

米軍の治外法権
を許す法的支え


 米軍基地の詰め所に連行された目取真さんは八時間の間、ウェットスーツのまま着替えすることもできず、弁護士に連絡をとることも許されず、拳銃所持のMPの監視のもと拘束された。その間与えられた食事はハンバーガー一個とペットボトルの水一本だけだったという。こうしてまったく外界との連絡が遮断された状態が続いた。弁護士が沖縄防衛局、海保、県警にいくら問い合わせても、目取真さんの所在について「分からない」と繰り返すのみであった。外務省沖縄事務所に至っては、米軍に拘束されている事実すら知らなかったという。これら日本政府の出先機関は米軍基地内の状況をいっさい把握できなかったのである。
 まさに、米軍基地は日本の法律がおよばない権力が支配する治外法権の地域となっており、日本政府は米軍に対し何も権限を持たない実態が明るみに出たのだ。こうしたことを保障しているのが日米地位協定と刑特法をはじめとする米軍に特権を与える特例法であり、米軍の治外法権を放置してきた戦後日本の政治の仕組である。
 翁長知事は「自治体議員立憲ネットワーク」の研修会での講演のあと、記者団に対し、基地内に八時間も拘束されたのは地位協定の問題もあると指摘した。
 翁長知事の指摘する通り、サンフランシスコ講和条約、日米安保条約と共に締結された日米地位協定(初めは日米行政協定)は、日本の米軍に対する従属を明文化したものだ。前泊博盛『本当は憲法よりも大切な「日米地位協定入門」』(創元社、二〇一三年)に詳しいが、日米地位協定によって与えられている米軍の特権には次のようなものがある。
@財産権(日本は米軍関係者の財産の捜索、差し押さえなどの権利を持たない)
A国内法の適用除外(航空法の適用除外や自動車税の減免など)
B出入国自由の特権(出入国管理法の適用除外)
C米軍基地の出入を制限する基地の排他的管理権(日本側の出入を制限。自治体による基地内調査を拒否)
D裁判における優先権(犯罪米兵の身柄引き渡し拒否など)
E基地返還時の原状回復義務免除(有害物資の責任回避、汚染除去義務の免除など)
 アメリカによってすっかり魂を抜かれてしまっている日本は日米地位協定の問題を真剣に考えてこなかった。しかし、辺野古の闘いは、戦後日本の政治の根本的なゆがみを是正することを、地方自治と住民の自己決定権の主張と共に明確に打ち出している。

不当逮捕に抗議
即時釈放を求める


 四月二日午前一一時から午後7時半すぎの釈放まで、沖縄市の中城海上保安部前で、目取真さんの不当逮捕に抗議し即時釈放を求める緊急抗議集会が開かれ、約二〇〇人が結集した。
 まず、照屋寛徳衆議院議員が、米軍による八時間の拘束後身柄を海保に移された目取真さんと面会した際の様子を報告した。照屋議員は、国会議員ではなく弁護士として面会したと述べ、「弁護士との面会も許さない米軍は人権感覚がまったくない。」と強く抗議した。
 糸数慶子参議院議員は「安倍首相は日米会談で、オバマ大統領に、急がば回れだと和解に至った事情を説明したようだが、辺野古の新基地建設はできない」とアピールした。
 ヘリ基地反対協議会の安次富浩共同代表と共に立った抗議船メンバーとカヌーチームのメンバーは、海上行動を取りやめて急きょ海保に対する抗議集会に参加したと述べた。目取真さんと共に海上行動を行なっていたメンバーは、当日の様子を詳しく報告し、「軍警の拘束、海保の逮捕は不当だ、臨時制限区域は違法だ」と訴えた。
 集会のあと、海保の建物の周辺をデモ行進し、不当逮捕糾弾、即時釈放をシュプレヒコールし、「沖縄の未来は沖縄が拓く」「沖縄を返せ」などの歌を力強く歌った。さらに逮捕された本人が好きな歌だということで、「一九の春」をスピーカーで流した。逮捕者が拘置されているという二階の真中の窓が大きく開けられ、集会と抗議のデモの声は届けられた。

中谷防衛相が来沖

辺野古・高江・普天間で分断工作


 三月二六、二七の両日、中谷防衛相が沖縄を訪問し、名護市久辺三区(辺野古・豊原・久志)の各区長、北部市町村の七首長、稲嶺名護市長、翁長知事、中部市町村の八首長などと相次いで面談した。「和解」成立後初めて沖縄を訪問する安倍内閣の政府要人として、中谷防衛相は、翁長知事と稲嶺名護市長に代表されるオール沖縄会議を担う自治体の分断と懐柔を行なうために力を注いだ。さらに中谷は、報道陣に事前に公表された日程にはない、名護市の大手建設業・東開発の会長や名護漁協の組合長、市民投票を裏切って容認・辞任した比嘉元名護市長、辺野古推進を掲げて稲嶺市長と争い落選した末松前県議、島袋前名護市長など辺野古基地賛成派との会合を重ねた。
 「辺野古新基地ができなければ普天間は固定化する」「高江のヘリパッドを造らなければ北部訓練場の返還はない」と言いつのる中谷防衛相のオオムの一つ覚えのような態度は、沖縄の米軍基地再編強化に対する安倍の強硬な立場を反映している。彼らは和解の期間を利用して沖縄に対する工作に全力をあげてきている。
 中谷防衛相に続いて、自民党国会議員有志でつくる「沖縄の基地負担軽減をみんなで考える有志の会」(会長=山本一太元沖縄担当相)が来沖し、佐喜真宜野湾市長ら自治体首長、県議、市町村議らでつくる自民党県連青年局と会談した。山本会長は記者団に対し、「県内一一市の内八人の市長はオール沖縄の流れに入っていないので、オール沖縄というのは実態をあらわしていない」と述べた。
 かつて@オスプレイの配備反対、A普天間基地の返還、B辺野古を含む県内移設反対で県議会と県知事、県下のすべての市町村長と議会がまとまっていたオール沖縄の運動は、日本政府と自民党中央の強力な切り崩しにより、自民党とその影響下にある自治体首長や議会が離反・脱落したが、県民の民意に変わりはない。この民意を代表しているのが翁長知事、稲嶺市長、五人の国会議員、オール沖縄会議の運動なのである。日本政府の分断と懐柔をはね返さなければならない。

県民の反戦・反基地・アジア平和
友好を求める意識はゆるがない


 三月三一日に発表された県による県民意識調査(一二六五人の有効回答)によると、@日米安保は、役立っている五六・八%(二〇一四年の内閣府全国調査の八二・九%を大きく下回る)、役立っていない二三・一%A普天間飛行場の辺野古への移設に、反対五八・二%、賛成二五・五%B普天間飛行場の固定化を、容認できない六八・八%、容認できる六・七%C米軍に対する印象が、良い二八・三%、悪い五三・八%D中国に対する印象は悪いが九〇・八%だが、日中関係は重要が五九・八%、重要でない一〇・五%となっている。
 つまり県民は総体として、@日米安保を承認しながらも、A米軍に対する悪感情を抱き、B普天間の固定化に反対し、C辺野古新基地に反対し、D中国との友好を望んでいる。県民意識は依然ゆるぎなく、翁長知事とオール沖縄、そして反基地の現場の闘いを支えていると見ることができる。
 天皇制明治政府の琉球併合と悲惨な沖縄戦、戦後の米軍政支配と今日まで続く基地の島の歴史によって否が応でも形作られざるを得なかった県民の反戦・反基地・アジアの平和友好を求める意識は日米両政府に対峙し続けている。
 昨秋の日米会談で「代執行裁判で必ず勝つ」と豪語していた安倍は、今回の日米会談で、オバマ大統領から「和解に応じたのは何故か」と問われ、「急がば回れ。辺野古基地建設の方針に変わりはない」と答えたと言われる。しかし、安倍もオバマも気付くべきだ。回り道は行き止まりだということを。沖縄の闘う民意の前に辺野古新基地建設は不可能だ。

ネット上のデマに
反論する冊子発行


 インターネット上にはさまざまなデマやウソ、間違った認識がさも本当らしく横行している。辺野古に基地を造らないと中国が攻めてくる、普天間基地は何もないところに造られて後から人が住み着いた、オスプレイは欠陥機ではない、辺野古の座り込みに日当が出ている、などといったネット上にあふれるデマやうわさ話などを集めて五六の主張にまとめ一つひとつ反証した冊子「それってどうなの?沖縄の基地の話。」が発行された。発行元は「沖縄米軍基地問題検証プロジェクト」。
 沖縄国際大学の佐藤学教授、琉球大学の島袋純教授、星野英一教授、ジャーナリストの屋良朝博氏、ライターの宮城康弘氏など、九人が執筆した。佐藤学教授は「事実を踏まえて判断する力をつける必要がある。特に若い人はSNSを通じて広めてほしい」と語っている。
 それに基づき、四月三日、沖国大で、「沖縄米軍基地問題検証プロジェクト」が主催して、沖縄の基地に関するデマや誤解に反証する第一回ワークショップが開かれ、約三〇人の学生、市民が参加した。インターネット上に出回るうわさ話を拭い去り、真実に基づく情報を発信できる人を増やすことが目的である。第二回ワークショップは四月二四日に予定されている。
 冊子は五六ページで一部一〇〇円。問い合わせは下記のメール。
okirumor2016@gmail.com


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