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    かけはし2016.年3月7日号

普天間基地の固定化を意味する
米軍ハリス司令官発言許さない


沖縄報告

2月27日

沖縄 K・S

2.24 四五〇人で工事車輌を阻止


 ゲート前の座り込み開始五九八日目の二月二四日(水)、早朝から四五〇人がキャンプ・シュワーブの資材搬入ゲート前に座り込み、工事関係車両の基地内進入を阻止した。水曜日と木曜日の結集の分担は、水曜日が中部一〇市町村を除く那覇、島尻、国頭地域、木曜日がうるま市、沖縄市など中部一〇市町村となっている。しかし、動員割り振りに関係なく毎日のように参加する人たちも多い。
 午前七時前に始まったゲート前集会は、はじめに、翁長知事支持の与党県議団から、社民・護憲ネットの新里議員、共産党の嘉陽議員、県民ネットの山内議員、公明党・無所属クラブの吉田議員があいさつ。金武町に住む吉田議員は「昨夜も一〇時半過ぎまで無灯火で米軍ヘリが着陸訓練をし、ブルービーチには上陸用舟艇三隻が停泊している」と糾弾、毎日の座り込み行動で世代との連帯を広げ新しい段階を開いていくと述べた。
 二・二一国会包囲行動に参加した各地の訪問団一〇〇人もこの日参加した。「フォーラム平和・人権・環境」の福山共同代表を皮切りに、北海道、東北、東海、四国、北陸、中国などから連帯のアピールが続いた。
 辺野古現地には、この二週間に限っても、全国から支援・連帯の人々がつめかけている。連帯ユニオンの組合員は「警視庁はヤマトに帰れ」の横断幕を張り付けた生コン車を大阪から船で運んで激励した。三月には関西一円の運転手が二五〇台で大阪市内をパレードするとのことである。土砂搬出に反対する熊本県連絡協のメンバーたち、滋賀県のママの会、桜美林大の学生・教授、京都府立大の学生・教授、兵庫の歌舞団「花こま」、音楽ユニット「キセル」、東京の学生グループ「直接行動」など全国各地から多くの人々が辺野古現地を訪れ、一つの大きな運動を作り上げていっている。
 資材搬入ゲート前の集会のあと、沖縄平和運動センターの山城博治さんのリードで、全員が行進しながら第二ゲートに移動し決起集会を開いた。第二ゲートはキャンプ・シュワーブのゲートだが、入って左へ向かうと辺野古弾薬庫に至る、米軍にとって重要なゲートである。辺野古新基地反対の闘いが第二ゲート前での座り込み・ゲート封鎖に向かってくるのかどうか、米軍は神経を尖らせている。
 国道をはさんだ第二ゲートの反対側のキャンプ・シュワーブの山手に、最近、木を伐採し人が立ち入ったような踏み跡が発見された。杭に目印の番号も打たれている。防衛局の工事計画によると、この部分の山を切り開いて平らにし、米軍兵舎三〇棟を建設すると共に、二〇〇万?の土砂を採取し大浦湾の埋め立てに使うとされている。埋め立てはまずキャンプ・シュワーブの山の土砂が使われる。防衛局の工事計画では、国道の上を山手から基地内に、ダンプが行きかうことのできる橋梁とベルトコンベアー(仮設道路)を設置するとされている。この工事の準備ではないか。現場はいよいよ緊迫してきた。

2.25 ゲート前集中行動に機動隊


 二月二五日(木)には、朝から二〇〇人が結集。今年に入って、水木の集中行動日には機動隊投入・工事関係車両の基地内進入はなかったが、この日はじめて午前七時前から機動隊が投入され、作業員の乗った車八台が通過した。一〇時前と二時過ぎにも強制排除が行なわれた。きわめて異例の事態だ。
 前日、米上院軍事委員会が開いた公聴会で、米太平洋軍のハリス司令官が辺野古基地の完了時期について、「現在二年遅れている。二〇二五年までに完了するとみている」と証言したと日本のマスコミでも大きく伝えられた。アメリカでも「辺野古新基地建設が県や住民の激しい反対に直面している」と報じられた。ハリス司令官は「工事の遅れは日本の責任」「基地の提供は日本の義務」と述べたという。
 米軍は実際のところ工事の遅れにあせっている。それ以上に、日本政府と防衛省の役人がこの発言にあわてたのは想像に難くない。予想外の木曜日の機動隊投入はこうした背景があったと見ることができるかもしれない。「工事はやっている」とアピールしたかったのだ。日本政府・防衛省をあわてさせた米軍司令官の発言は、沖縄では大きな怒りをもって受け止められた。
 ハリス司令官の「二〇二五年代替施設の完成」発言は「それまで普天間基地を返還しない」ことを意味する。翁長知事は「普天間の五年以内の運用停止の約束を守ってほしい」「普天間をこれから一〇年も使うとなると、固定化ではないのか」と追及した。安倍の支援を受けて当選した佐喜真宜野湾市長も「返還期日が延びることがあってはならない」「返還とは別に五年以内の運用停止を求める」と述べ、四月に訪米する意向を明らかにした。ゲート前では「普天間の即時閉鎖」の声が沸き起こった。菅や中谷は「県が辺野古移設に協力することが条件」といっているが、そんな脅しは通用しない。安倍が約束した普天間基地の五年以内の運用停止は文字通り県民共通の最低限要求である。安倍に逃げ道はない。

2.25 大成建設追及に向け学習会


 辺野古新基地建設を担う企業の中心は大成建設である。ゼネコン中のゼネコン、スーパーゼネコンの中でも大成建設が、現在の辺野古新基地建設の工事の大半を請け負っている。沖縄防衛局は辺野古新基地建設事業の平成二六年(二〇一四年)度「埋立本体工事契約」および「関連工事契約」で、その後の契約変更による増額分も含め、契約金総額七一七億三七九三万円の工事契約を結んでいる。そのうち、大成建設が単独あるいはJVの主企業として受注した工事は三件、「シュワブ(H二六)中仕切岸壁新設工事」(二二二億二〇〇〇万円)、「シュワブ(H二六)汚濁防止膜等工事」(一二億五〇〇〇万円)、「シュワブ(H二六)仮設工事」(一四七億一〇〇〇万円)合計三八一億八〇〇〇万円、率にして五三・二%にのぼる。
 大成建設とは一体いかなる会社なのか、そしてどう闘いを進めていくべきなのか。辺野古の現場で日夜闘いぬく仲間たちはこのような問題意識を持って、二月二五日(木)午後六時半から、那覇市のてぃるる会議室で「辺野古の海を埋め立てるゼネコンの徹底研究」と題した緊急学習会を開催し、七〇人余が参加した。
 司会は平和市民連絡会の岡本由希子さん。はじめに『大成建設一四〇年史』(全五六六ページ)を国会図書館に通って調べ上げた加藤宣子さん(Stop!辺野古埋め立てキャンペーン)が報告した(左に要旨)。
 北上田毅さん(沖縄平和市民連絡会)は、工事の現状と問題点を詳細に報告した。(左に要旨)
 真喜志好一さん(平和市民連絡会)は、辺野古新基地は普天間の代替施設ではない、増強された最新鋭基地だということを強調した。いくつかの質疑の後九時前に終了した。

軍と歩んだ大成建設

(加藤宣子さんの報告)

 大成建設の前身は一八六七年東京神田に店を構えた「大倉屋鉄砲店」。幕末・明治の内乱となった鳥羽・伏見の戦いに乗じて、武器食料の一切を調達する官軍御用達を仰せつかったのを契機に力をつけていき、一八七三年に大倉喜八郎を頭取として銀座で大倉屋商会がスタートし、大成建設一四〇年史の元年となった。
その後、台湾出兵、西南戦争、日清戦争、日露戦争の中で、兵站業務、佐世保軍港、全国各地の兵舎建設、函館・対馬の要塞建設、朝鮮半島での軍用鉄道工事、南満州鉄道関係の工事など軍関係の仕事を次々と請け負うと共に、東京湾の浚渫工事、鹿鳴館の建設、ホテル建設、水力発電所建設など官民の大型工事を手がけた。
第一次世界大戦後は株式会社となり、何回か会社の名前を変更したが、やはり一貫して日本の軍事経済活動に結びついて、地下鉄工事、明治神宮の諸施設、全国の中島飛行機の工場施設などを施工した。一九四三年には、業界三位にまで上りつめたという。
戦後、財閥解体と経済民主化の中で、大倉土木は大成建設株式会社と社名を変えた。戦後は、進駐軍関係の工事、原子力への進出、海外工事の着手、各地の道路・住宅建設、モノレール、トンネルなど国策と結合して業務を拡大し、資本金で業界トップとなった。その後も海洋開発、原子力発電所、海外での石油関連工事、高層ビル、青函トンネル、医薬品施設、石油備蓄基地、空港、ガスパイプラインなどなど、建設の分野における国策の実行部隊として歩んできた。
一九四九年から本格的に始まった米軍政下の沖縄での基地建設にもかかわり、復帰後の東海岸でのCTS建設も行なった。二〇〇四年一二月の段階で国内三二カ所、海外七カ所の空港を施工し、空港施工実績は業界一という。
さまざまな工事実績の中で、ジブチのケンピンスキーホテル(二〇〇八年)は特に注目される。ここは自衛隊の派遣地だ。自衛隊の派遣の前に、露払いのように大成建設がホテルを建設している。
大成建設に対する抗議の運動は、西新宿の本社前だけでなく全国に広がっている。大成建設のHPにある「生態系保全」「生物多様性の保全」「人に優しく、地球に優しく、いきいきと暮らせる環境づくり」は米軍基地建設と果たして両立するのか。

契約変更口実に工費水ぶくれ

(北上田毅さんの報告)

 現在の辺野古新基地建設の工事はすべて大成建設が関係している。まず「本体工事」について言うと、本体工事はまだ始まっていないが、工事契約は一昨年結ばれた。そして契約変更が重ねられ契約金額がうなぎのぼりに跳ね上がっている。たいへんおかしい。通常の工事契約では決してありえないことだ。あらたに変更申請が必要だ。しかも、巨額の前金がすでに支払われている。防衛局は、翁長知事の埋め立て承認取り消しに反対する理由の一つとして、工事にすでに投入した数百億円の金が無駄になるということをあげている。見せ掛けの口実に過ぎない。
「仮設工事」は大成建設の単独受注だが、おかしなことだらけだ。「仮設工事」にはさまざまな工事が含まれているが、まず落札率九八・〇%というのは防衛局と業者の癒着がなければありえない数字だ。通常九五%をこえると談合の疑いをかける。そして、五回にわたり契約変更をくりかえし、当初の契約金額五九・六億円が一四七・億円に、約二・五倍になった。このことは二月一〇日付けの朝日新聞にも報道された。会計検査院は当時の那覇防衛施設局にたいする二〇〇七年度の検査で、当初八億円の予算だった海底地質調査が次々と増額され二二億円支払ったことを「不当事項」と指摘、局長二人の懲戒処分を防衛省に要求したが、防衛省は従わなかった。同じことが今回行なわれている。
「仮設工事」の中にブイ設置、フロート、オイルフェンスなどと並んで、「陸上警備業務」「海上警備業務」もある。昨年夏まで大成建設が請け負っていたが、その後独立契約となった。今年の三月三一日までの約八カ月で海上のマリン・セキュアリティが二四億円、陸上のアルソックが一九・五億円の契約となっている。
五年前、識名トンネル工事にからむ架空契約で、沖縄県(仲井真知事)が補助金五億円を国に返還するという事件があった。この業者も大成建設だ。落札したあと契約変更して利益を確保する手口は同じだ。このとき県が支払った五億八〇〇〇万円は県民の税金だ。沖縄県政史上最大の不祥事だった。われわれは住民監査請求と住民訴訟で追及してきた。ゼネコンの不正を放置してはならない。


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