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    かけはし2016.年2月29日号

平和と人権の東アジアを


北朝鮮のミサイル発射実験反対!

米日韓は臨戦態勢を築くな

「挑発」と「脅し」の繰り返しに終止符を

戦時情報シス
テムの訓練場

 一月六日の三年ぶりとなる核実験につづき、二月七日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は事前の予告通り「人工衛星」発射を名目に、長距離弾道ミサイル発射実験を行った。「テポドン2号改良型」とされる同ミサイルは沖縄上空を通過して、フィリピン沖の海上に着水したとされる。この発射実験では確かに切り離された「物体」が地球をまわる軌道に乗ったことが韓国、米国によっても確認されており、北朝鮮の長距離ミサイル発射技術が、着実に発展していることが明らかになった。当初、北朝鮮の能力は米国本土にまで到達する長距離弾道ミサイル開発のレベルにまで達してはいないとされていたが、韓国国防省の二月九日の分析結果説明によれば、北朝鮮が「人工衛星」発射に使用したミサイルの能力は米国東海岸にまで届く射程一万二〇〇〇キロメートルに及び、管制技術も高水準にあると発表した。
 安倍政権は北朝鮮による「人工衛星」発射発表後、一月二九日に「ミサイル破壊措置命令」を発令した。防衛省は、この命令に先だって、一月二七日頃から海上配備型迎撃ミサイル(SM3)搭載のイージス艦三隻を東シナ海と日本海に配備、さらに首都圏三カ所(市ヶ谷、習志野、横須賀)と沖縄本島、宮古島、石垣島に地対空ミサイル(PAC3)を展開した。
 またミサイルの発射・通過情報を「Jアラート」で全国の自治体に送信し、また内閣官房の緊急情報ネットシステムである「エムネット」で自治体や放送局に速報した。それはまさに「戦時情報」システムの絶好の訓練の場となったのである。

体制危機に冒
険主義で対処


 われわれは一月六日の「水爆実験」と称する核実験に対して抗議したのと同様に、今回の「人工衛星」発射実験にも強く抗議する。それは今年五月に予定されている三六年ぶりの朝鮮労働党大会を見据えつつ、軍事的緊張を意図的に作り出すことで金正恩(キム・ジョンウン)独裁体制の延命を図ろうとする反人民的意図に発したものだからである。
 実際、北朝鮮のキム一族支配体制を引き継いだキム・ジョンウン独裁体制は、相次ぐ粛清によってその危機を一層深めている。今回のミサイル発射に先だって二月初めには李永吉(リ・ヨンギル)軍総参謀長が処刑されたことはその現れである。報道によればリ・ヨンギルの処刑は「分派容疑」によるとされており、今回の処刑によってキム・ジョンウンが権力を継承した二〇一一年以後、処刑された高級幹部は一〇〇人を超えると言われている。この恐怖政治は、キム一族の血統にもとづく支配体制の矛盾、腐敗がさらに深まっていることを示すものだ。
 「戦争」の脅しで、国内からの批判のあらわれを抑え込もうとする意図を、われわれは強く批判する。

米韓合同演習と
GSOMIA


 こうした中で、米国、韓国、日本は軍事的・政治的に共同・連携しながら、北朝鮮への「制裁」などの圧力を強めている。
 韓国による開城(ケソン)工業団地の操業中止、この措置に対抗した北朝鮮側によるケソン工業団地の閉鎖と軍事統制区域化、さらに米国と日本による北朝鮮の追加的制裁の圧力、さらには北朝鮮による休戦ライン付近での軍事的示威や、「拉致日本人調査」の中止と調査特別委員会の解体など、さまざまな応酬が続いているが、ここでは米日韓の軍事的連携の側面について取り上げる。
 韓国政府は三月七日から始まる米韓合同軍事演習を「最先端、最大規模で行う」と宣言した。米国はすでに原子力空母「ジョン・C・ステニス」を米第七艦隊が管轄する西太平洋に投入し、横須賀基地を拠点とする米第七艦隊の指揮下に入れた。横須賀配備の「ロナルド・レーガン」を含め原子力空母二隻体制で、米韓合同軍事演習に臨むことになる。米海軍佐世保基地所属の強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」も米韓合同演習に参加し、米韓両海兵隊の上陸作戦演習にたずさわる。ボノム・リシャールは米第七艦隊の主力をなす第七遠征攻撃軍の司令部機能を持っている。
 米空軍F22ステルス戦闘機も韓国に飛来した。さらに北朝鮮のミサイル攻撃をも想定した高高度ミサイル迎撃システムである「THAAD(サード)」配備に向けた公式協議を開始することも米国政府から持ちかけられている。
 「北」をにらんだ実戦体制の強化は、米韓の間だけではなく日韓の間でも進められようとしている。それが自衛隊と韓国軍の間でのGSOMIA(軍事情報包括保護協定)締結にむけた調整作業の試みである。
 GSOMIAは軍事に関する秘密情報の共有システムであり、「ミサイル防衛(MD)や韓国在留邦人の退避など、朝鮮半島有事への対応に必要な情報交換の基礎になる。北東アジア地域で日米韓の安保協力を強化する効果もある」(朝日新聞2月9日)とされている。
 このGSOMIAは二〇一二年六月に締結予定であった。しかし韓国与党の反対で延期されていた。しかし米日韓の緊密な軍事的連携を求める米国の強い要請もあり、北朝鮮の軍事的挑発を絶好の機会にした形で、具体化していく可能性も大きい。反対の声をあげよう。

「休戦協定」から
「平和協定」へ

 最後に、朝鮮戦争の「休戦協定」に代わる「平和協定」締結をという北朝鮮の要求について考えてみよう。
報道によれば、一月に強行した核実験の前に、北朝鮮側が米国に朝鮮戦争「休戦協定」に代わる「平和協定」の協議を持ちかけていた。
これについて米国側は「朝鮮半島の非核化が議論に含まれるべき」と対応した。これに対して北朝鮮側は「平和協定」と「非核化」をセットにすることを拒否して、交渉は決裂したと報じられている。
他方、中国の王毅外相は、二月一七日に「朝鮮半島の非核化と、休戦協定から平和協定への転換を同時に進めるという考え方を提唱する」と述べたが、米政府は「北朝鮮が将来的に核兵器を放棄するか、当面の核開発を凍結するなどの話し合いなしに平和協定の交渉は認められない」という立場であり、日韓両政府ともそれを支持しているという(「朝日」2月23日)。
われわれはこの問題をどのように考えるべきだろうか。私自身は「休戦協定」の「平和協定」への転換と「朝鮮半島の非核化」をセットで交渉・実現することによって切り開かれる可能性について積極的に考えるべきではないか、と思う。それは北朝鮮の労働者・民衆が独裁体制を打倒して、みずからの権利と尊厳を実現する力を確実に蓄積していくための水路でもあると思うからである。   (純)

声明

北朝鮮 ミサイル発射を予告

増大する朝鮮半島における戦争の威
嚇を、反帝国主義闘争で阻止しよう

 韓国で、社会主義社会の建設を目標に掲げた「社会変革労働者党(以下、「変革党」)」が正式に発足した。以下は2月3日に北朝鮮が「地球観測衛星の打ち上げ」と称して、北朝鮮のトンチャンリから事実上の長距離弾道ミサイルを発射することを国際機関に通告したことを受けての韓国の変革党が発表した声明である。(「かけはし」編集部)


 2月2日、朝鮮民主主義人民共和国(以下、「北朝鮮」)が、今月8〜25日の間に 長距離ミサイルを発射すると通知した。これは今年1月6日の第4回核実験に引き続きその核兵器を投下する長距離ミサイルの試験を行うためのものである。北朝鮮のこのような行動は、自衛権行使と容認することはできず、むしろ朝鮮半島をめぐる政治的·軍事的緊張をさらに深めるだけである。
 朝鮮半島の平和を脅かす真の責任は、北朝鮮ではなくアメリカ帝国主義にある。昨年米国は、誘導爆弾(スマート爆弾)の開発を行い、今後30年間、核兵器の拡大に1兆ドルを投入する核兵器現代化計画を立てる等、北朝鮮と比較にならないほどの軍備拡大に注力している。米国はまた、いわゆる「アジアへの回帰」戦略をつうじて北東アジアでの覇権拡大を狙っており、それに便乗して米国とその傀儡のパク・クネ政権は、日米韓軍事同盟の強化とTHADD配置等、戦争の脅威を増大させる政策を行い、日増しに北東アジア情勢の不安が高まっている状況である。
 今回の北朝鮮によるミサイルの発射について米国とパク・クネ政権は、国連の制裁を含む「北朝鮮に高い代償」を払わせると表明した。それだけでなくこれをテコにして、反対を無視してTHADDミサイル(高高度防衛ミサイル)の配置をごり押しする見通しだ。しかし、対北朝鮮の制裁やTHADDミサイルの配置では問題の解決にはつながらないことは明らかである。対北朝鮮の制裁やTHADDミサイルの配置は、朝鮮半島における平和の実現を妨げ、さらに大きな戦争の脅威をもたらすものである。より大きな殺傷力のある武器を、より高く積み上げる競争では、平和を得ることは不可能である。
 2016年2月4日

社会変革労働者党

2.14

福島原発事故緊急会議連続シンポ

切り捨てられるフクシマの今

武藤類子さんが熱のこもった訴え


福島原発事故
は終わらない
 二月一四日、福島原発事故緊急会議は一〇回目となる連続シンポジウムを東京・水道橋のスペースたんぽぽで開催した。一〇回目のテーマは「福島第一原発事故から5年、切り捨てられるフクシマの今 そして加速する原発再稼働」。メインの報告者は福島原発告訴団団長で、一月三〇日に新しく結成された福島刑事訴訟支援団副団長も務める武藤類子さん。集会には五〇人が集まった。
 武藤さんは「パワーポイント」を使って「福島原発事故は終わらない」というテーマで、福島第一原発の現状(排気筒の鋼材破断、汚染水の海洋放出、一カ月で二〇センチ傾いた海側遮水壁、難航する凍土壁)や、累積される「除染土」などを詰め込んだフレコンバッグの山、利権にまみれた焼却炉建設などについて説明。
 さらに昨年六月に「帰還・復興」を名目に、「避難指示解除準備区域」と「居住制限区域」の二区域(約五万五〇〇〇人)に対する避難指示を二〇一七年三月までに解除し、東電が支払う精神的損害賠償を二〇一八年三月末で終了すると発表したのを皮切りに、「自主避難者」の住宅支援の打ち切りなどの被災者・避難者切り捨てがスピードアップしている現状をリアルに訴えた。

東電・政府の
側に立つ言説
こうした中で、被災住民たちは「原発事故被害者団体連絡会」(ひだんれん)を結成し、昨年七月と一〇月の二回にわたって住宅無償支援と賠償打ち切りの撤回などを求める交渉を行った。しかし子どもたちを動員して双葉町、浪江町など第一原発立地を通る国道六号線の清掃ボランティアに子どもたちを動員するなど「復興」キャンペーンが勢いを増している。
他方、福島大学特任研究員を務める社会学者の開沼博は「原発・放射能」や「政府・東電」を「敵」にして吊るしあげる「モラルパニック」なるものをあげつらって、そうした「魔女狩り」をやめろ、とする論陣を張っている。しかし県民健康調査によれば一八歳以下の甲状腺ガン確定者は一〇〇人に達しているのだ。武藤さんは東電や政府の側に立って「感情的議論」をやめろと言い続ける、こうした論議を厳しく批判した。

事故責任追及
の刑事訴訟開始
しかし東電・政府の責任を追及する闘いも前進している。東京検察審査会は、勝俣元東電会長らの原発事故への刑事責任を問う「起訴相当」議決を二回にわたって行い、ついに強制起訴が決定した。三人の刑事裁判は今年始まる。さらに元保安院の津波対策担当者を含めて国の責任をも追及する「二〇一五年告訴」も始まった。

再稼働ラッシュ
を止める闘い
武藤さんは、事故から五年目の福島をめぐるこうした攻防を具体的に説明しながら、福島原発事故の反省も忘れ去って、川内、高浜、伊方と再稼働を進める政府・電力会社の驚くべき無責任を厳しく批判し、私たち一人ひとりが「自分の頭で考える」姿勢がいかに重要かを語りかけた。
次に、川内原発再稼働後の、高浜原発や伊方原発の相次ぐ再稼働の動きについて、再稼働阻止ネットの天野恵一さんや、木村雅英さんが報告。その中で原子力規制委員会が「規制」という名とは裏腹に、政府・電力資本の「隠れ蓑」の役割を担っていることが改めて批判されるともに、伊方はもとより高浜でも住民の間に原発推進への批判的意識が形成されはじめていることなどが報告された。
参加者からは数多くの質問が武藤さんに対して発せられたが、武藤さんにはその一つひとつにていねいにこたえていただいた。
三月一二日には福島県郡山市で「2016原発のない福島を!県民大集会」(開成山陸上競技場 開場12時、開会13時10分)開催される。ともに成功させよう。(K)


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