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    かけはし2016.年2月22日号

9条改憲に踏み込む安倍を倒せ


首相・閣僚・党3役の相次ぐ暴言

安倍政権打倒へ多様な運動の集中を

沖縄の闘いに合流し、戦争法廃止へ!

緊急事態条項は
民主主義破壊だ


 一月四日に始まった第一七〇通常国会で、安倍首相は憲法改悪への構えをますますはっきりと公言するようになった。一月一九日の参院予算委員会の答弁で、安倍は二〇一二年四月の自民党改憲案にうたわれた「緊急事態条項」を、改憲案の重要な中身として打ち出した。
 ここで改めて、自民党改憲案に盛り込まれた「緊急事態」条項を検討しよう。改憲案第九十八条は「緊急事態の宣言」として次のように書かれている。「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、とくに必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる」。
 改憲案第九十九条はどうか。「緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる」。同3項は「緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない」。
 すなわちこの緊急事態条項は、内閣が議会の承認を得ないまま政令を制定し、その措置や指示に地方自治体やすべての人びとが従わなければならない、という議会制民主主義破壊の独裁条項にほかならない。国会の承認は「事前又は事後」となっており、事前の承認を受けることなく政府によって緊急事態に伴う諸措置が効力を有するのだ。
 社民党の福島みずほ参院議員がこの「緊急事態」条項について「ナチスの全権委任法と同様のもの」と批判したとき、安倍首相は顔色を変えて福島議員をののしったが、全権委任法の中心的内容は「ドイツ国の法律は、憲法に規定されている手続き以外に、ドイツ政府によっても制定されうる」とするものであり、この点において「緊急事態条項」は「全権委任法」と同質の機能を持っていることは間違いない。
 安倍内閣は、ISの無差別テロに対してフランスで「非常事態」が発動されたことを例に挙げながら、世論誘導を試みていることは明らかだ。

「憲法を現実に
合わせる」暴言


 一月二二日の施政方針演説の締めくくりが「改憲宣言」であったことが特に重要である。安倍は述べた。「民主主義の土俵である選挙制度の改革、国のかたちを決める憲法改正。国民から負託を受けた、私たち国会議員は、正々堂々と議論し、逃げることなく答えを出していく。その責任を果たしていこうではありませんか」。
 国政の基調をなす施政方針演説による「逃げることなき」改憲論議をまさに「挑戦」的に打ち上げた安倍の改憲トーンは止まらなかった。二月三日の予算委員会での質疑では、将来の初の女性首相候補とも取りざたされている稲田朋美自民党政調会長による「現実に全く合わなくなっている九条二項を変えないままにしていくことこそ立憲主義を空洞化する」との意図的誘導質問に乗っかって、自説を展開した。「憲法学者の七割以上が自衛隊の存在を違憲と解釈している」現実を批判し、そのためにも自民党改憲案に沿った論議を、とアピ―ルしたのである。
 稲田や安倍の主張は、憲法にのっとって権力の恣意的行使を縛るものとしての憲法という近代「立憲主義」の理解をひっくり返し、「現実に合わない憲法条項を現実に合わせるのが立憲主義」などという倒錯した論理で、改憲への道筋を突き進もうとしている。安倍は二〇一四年の国会答弁で「権力を縛るのが立憲主義という考え方は王権が絶対権力を持っていた時代の考え方」と主張した。こうして安倍は、資本主義の危機の時代における反民主主義としてのボナパルチズム的・ファシズム的権力のあり方を正当化しているのである。
 現在、高市早苗総務相が「政治的な公平性」を欠くと判断された放送局には、大臣の判断において「電波法七六条」を適用して「電波停止」を命じる、と繰り返し答弁していることも、報道機関への明確な恫喝であるとともに、「余裕のなさ」として捉えなければならない。こうして安倍政権は七月参院選、あるいは衆参同時選をも見据えながら、「おおさか維新の会」などをも巻き込んで両院で「三分の二」議席を獲得し、改憲の政治的条件を早期に作り出そうとしていることは間違いない。

安倍を引きずり
降ろす参院選を


 「マイナス金利」の導入もテコにした金融緩和の踏み込みによる「アベノミクス第二ステージ」の目論見が、逆に新たな危機を拡大しつつある。そしてアラブ・中東や欧州を発火点とした戦乱と、国家的・社会的秩序の崩壊とカオス化はさらに深まっている。
 スロベニアのマルクス主義者スラボイ・ジジェクは述べた。「愛国心あふれる強硬右派と認められた保守主義者にしかできない、革新的なことがある。アルジェリアの独立承認はドゴールにしか、米中国交樹立はニクソンにしかできなかった。いずれのケースでも、革新的な大統領だったら、国益を裏切った、コミュニストいやテロリストに国を売ったとたちまち非難されただろう」と(S・ジジェク『ポストモダンの共産主義』2010年 ちくま新書)。
 しかし安倍首相が直面する世界には、そうした「革新的」チャンスにありつく機会が見いだせない。こうした中での安倍政権の政策には選択の余地がますます見つからなくなっているというべきだろう。
 いま安倍政権は、「アベノミクス」第二ステージを看板に、憲法改悪への道を突き進もうとしている。そしてこの「アベノミクス」が彼の思いとは反対の結果に帰着しようとも、憲法改悪・戦争国家化への道は、安倍にとって引き返すことのできないものとなっている。
 沖縄の「島ぐるみ」の闘いをはじめ、反原発、貧困・格差との闘いなど広範な闘いの相互連携の力で、七月参院選で安倍与党を過半数割れに追い込み、戦争法廃止・改憲阻止・安倍政権打倒を実現しよう。 (純)

声明

安倍首相の九条明文改憲
発言に抗議する

九条の会

 安倍信三首相は、2月3日と4日と5日の連日、衆議院予算委員会の審議において、戦力の不保持を定めた憲法9条2項の改定に言及しました。その際に、「7割の憲法学者が自衛隊に憲法違反の疑いをもっている状況をなくすべきだ」という逆立ちした我田引水の理屈や、「占領時代につくられた憲法で、時代にそぐわない」という相も変わらぬ「押しつけ憲法」論などを理由に挙げました。これらは、同首相が、憲法9条の意義を正面から否定する考えの持ち主であることを公言するものに他なりません。
 昨年9月、政府・与党は、多くの国民の反対を押し切って、日本国憲法がよって立つ立憲主義をくつがえす、民主主義をかなぐり捨てて、9条の平和主義を破壊する戦争法(安保関連法)案の採決を強行しました。この時は、「集団的自衛権の限定行使は合憲」、「現行憲法の範囲内の法案」などと、従来の政府見解からも逸脱する答弁で逃げ回りました。ところが今度は、そうした解釈変更と法律制定による憲法破壊に加えて、明文改憲の主張を公然とするに至ったのです。それは、有事における首相の権限強化や国民の権利制限のための「緊急事態条項」創設の主張にも如実に現れています。
 私たち九条の会は、自らの憲法尊重義務をまったくわきまえないこうした一連の安倍首相の明文改憲発言に断固抗議します。2007年、9条改憲を公言した第1次安倍政権を退陣に追い込んだ世論の高揚の再現をめざし、戦争法を廃止し、憲法9条を守りぬくこと、そのために、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。
 2016年2月8日

 九条の会


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