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    かけはし2016.年2月15日号

TPP反対は人権を守る闘い


1.30

つながれアジア 葬れTPP

国際連帯で包囲網形成を

アジア・太平洋の仲間がアピール


既成事実化を
くつがえそう
 一月三〇日、TPPに反対する人々の運動は、田町交通ビルで「つながれアジア!葬れTPP!1・30国際シンポジウム」を行い、約一〇〇人が参加した。
 安倍政権は、食料主権と生活破壊、グローバル資本のための環太平洋経済連携協定(TPP)を昨年、強引に「大筋合意」を進め(一〇月五日)、既成事実化のキャンペーンを広げている。二月四日に一二カ国政府による署名式がニュージーランドで行われる。TPPは農産品関税、食の安全基準や食品表示、投資や金融、、サービス貿易全般なども含まれており、民衆の生活破壊へと直結する協定だ。だからこそ十分な情報公開が求められている。
 ところが「大筋合意の概要」(日本語訳/一一月五日)を公表したが、協定文は五五〇〇ページと膨大であり、関連文書すべてが公開・翻訳されているわけではない。安倍政権は、今国会でTPP協定について審議を押し進め、なんとしてでも批准し、その延長で関連法案なども成立させようとしている。TPP交渉を行ってきた甘利明経済再生相(TPP担当相)が金銭授受疑惑で辞任に追い込まれ、政権を直撃したが、後任に石原伸晃衆院議員(自民党)を就かせた。石原は、TPPの全貌を知らないため官僚の指示通りに発言するのみだ。
 世界の人々の間にはTPPによる貧困の拡大、農業と環境の破壊、食の安全軽視への不安が広がっている。TPPに反対する人々の運動は、海外ゲストを迎え、国際的な反対運動の連携を強めていく一環としてシンポジウム(東京・山形・大阪)を開催した。
 主催者あいさつが山浦康明さん(TPPに反対する人々の運動共同代表)から行われ、「二〇一五年一〇月五日に合意したTPPは、二月四日には一二カ国の署名式が予定されている。その後、各国の国会で承認の手続きに入る。日本は、TPPの既成事実化が始まっている。国会ではTPPが成立していないにもかかわらず、対策の法律や予算が先行して行われるという異常な事態を迎えている。協定文を分析したが、政府が説明しているような内容ではなく、問題点がたくさんある。グローバル企業にとって有利なルールであり、農民、労働者、農民、消費者、市民にとってはとても問題が多い協定だ。TPP担当相の甘利が金銭授受問題で辞任した。政府はガタガタだ。米国においても大統領選がスタートし、TPPどころではない。TPPを葬りさろう」と訴えた。

利益の大半は
海外に漏れ出る
三人の海外ゲストから以下のような問題提起が行われた。
ファウワズ・アブドゥル・アズィズさん(マレーシア/第三世界ネットワーク)は「TPP、マレーシア、市民社会運動―日本での議論に向けて」について報告した。
「二〇一三年、五二の市民団体がTPPに反対する運動(BANTAH)を立ち上げ、TPPに関する市民への啓発、政府の署名決定を覆すことができない場合でも、マレーシアにとっての費用と効果を精査するよう働きかける取り組みを行った。主に@投資とISDS(投資家国家間紛争解決)A政府調達と国有企業に関して述べる」。
「投資の条文は、広範かつ曖昧な適用範囲であり、外国人投資家の『資本』と『投資』に与えられる一方的かつ過度な保護体制になっている。開発の努力に反する偏った条項だ。公益に反する外国企業や投資家の利益追求に対してTPP支持者は、安全策や除外措置があるから保健衛生、環境、社会的弱者の優遇政策などで政府の権利は維持されると主張するが、公益を守るための適切な措置とはなっていない」。
「TPPによって政府調達の際、国内企業と同じ待遇と市場参入の機会を外国企業に与えなければならなくなる。外国企業が受注した場合、国内経済への『波及効果』がかなり小さくなり、利益は大方国外へ『漏れ』出るため、成長をけん引する手段としての政府支出の効果が限定される。入札が国内企業にのみ開かれている現在の政策を変更し、基準値レベル以下の小さな案件を除いて同等かそれ以上の優遇された条件を外国企業に与えなければならなくなる。米国や他のTPP加盟国により相当額の調達案件が公開されるかもしれないが、どの程度マレーシア企業は参入できるだろうか?」。
アズィズさんは、反TPP運動の教訓と課題について、「人権問題や持続的開発の分野で活動する市民団体に、海外での貿易や投資に関する協定と関係があることを理解してもらうことは難しく、また非ブミプラトラ(地元民)の経済団体にブミプラトラ支持にみえる政策に納得してもらうことも簡単ではなかった。BANTAHはすべての民族に影響があることを指摘してきたものの、TPPがブミプラトラ寄りの優遇政策に打撃となる可能性があることが、優遇政策に反対する人々の注目を集めることになった」と指摘した。

世界金融危機
と対中国戦略
チョン・テインさん(韓国/韓米FTA阻止汎国民運動本部に参加)は「世界金融危機とFTA―TPPと韓米FTA」というテーマで報告。
「現在、世界金融危機から長期停滞に向かいパワーシフト(力の移行)という危機が進行している。アジアへの軸足移行だ。その中でTPP(韓米FTA)は、市場原理主義の頂点であり、国際的な合意による民営化と規制緩和だ。オバマ米国大統領は、『TPPがあれば中国は地域のルールを設定できない。米国はそれをする』と言っているように、米国にとってアジア重視の一つで非軍事的手段による中国封じ込めだ」。
「TPPが狙う分野は、サービス、知的財産権、投資などであり、公的部門の破滅だ。とりわけこれまでの金融機関、新金融サービスに対して規制する可能性を強くし、自由貿易と逆行する構想だ。TPPの批准に対抗し、新しい公正な貿易協定を求めるために@サービスの自由化はネガティブリストではなくポジティブリストへA不適合措置についてサービス分野からラチェットの仕組みを削除B未来最恵国待遇CISDSの抜本的な見直しまたは削除D保険医療に関する章の見直しが必要だ。今後の対策として、例えば、アジアと世界の平和と繁栄に向けて、米国と中国との間で中立的な地域協定を構築することは可能か?アジアに第三の地域は可能か?などを構想していくことが大事だろう」と強調した。

TPP批准阻止
へ国際的連携を
モアナ・マニアポトさん(ニュージーランド/先住民族マオリの芸術家)は、TPPによって「政府は知的財産権に関する提訴によって生じる事柄をどのように解決するのか。投資家の権利保護として、特に鉱物や水などの天然資源をめぐる投資家対政府の紛争解決(ISDS)による影響はどうなるのか。マオリの健康に関する権利はどうなるのか。手頃な価格で薬剤を入手できる権利はどのように保証されるのか。どれも紛争を誘発し、TPP参加国と投資企業は、自ら保護するための法的権利を手に入れることでしょう」と糾弾した。
さらに「交渉は終結したものの、未だに条文が発表されない時に、政府は条約を受け入れるための必要条件とした『最高水準』には十分達しない状態にあるとということを認めた。TPPは単なる新たな自由貿易協定などではない。すべてのものの商品化が急速に進む世界の中で、マオリは今まで以上に、未来世代に対する守護者として、私たちの祖先から受け継いだ責任というものを痛感しています」と発言した。
最後にシンポジウムアピールが提起され、「新自由主義的グローバリゼーションの最先端の動きがTPPなのです」と批判し、批准阻止にむけた国際的包囲網を作り出していくことを参加者一同で確認した。(Y)

1.28

靖国参拝違憲訴訟に不当判決

憲法判断回避し安倍に迎合

控訴審に向け新たな闘志

 【大阪】安倍首相が二〇一三年一二月に行った靖国参拝を違憲として大阪地裁に提訴された裁判の判決が一月二八日、同地裁で出され、同日の夕刻よりエルおおさかで報告会が開かれた。
 判決は、報告会で出された抗議声明が言うとおり、小泉首相靖国参拝違憲訴訟の最高裁判決(二〇〇六年)にいう、「人が神社に参拝をしても他人の権利を侵害することはない。これは内閣総理大臣が靖国神社に参拝したとしても変わりがない」をなぞっただけのものであった。
 首相の参拝が違憲であることは、二〇〇四年小泉首相靖国参拝違憲訴訟福岡地裁判決が明確にしている。このたびの訴訟の原告には、この福岡地裁判決を受けて損害賠償請求を断念した原告も含まれている。

余りにもひどい
開き直り判決だ
判決文は争点についてどのように述べているのか。報告会での解説をもとに整理する。
@内心の自由・信教の自由・解雇祭祀に関わる権利の侵害について
「人が神社に参拝する行為は、他人の信仰生活に対して圧迫・干渉を加えるものでないから、損害賠償を求めることはできない。そのことは内閣総理大臣の場合でも同じだ……原告らは、人が神社に参拝する行為と、内閣総理大臣が靖国神社に参拝する行為は異なるとし……内閣総理大臣の靖国神社参拝は、国またはその機関が靖国神社を特別視し、靖国神社への強い肯定的感情を形成し、参拝に反対する原告ら個人の内心の自由形成、信教の自由確保、回顧・祭祀に関する自己決定権に対する侵害だと主張する……しかし、参拝にとどまる限度において、圧迫・干渉を加える性質のものではない」と判決はいう。
また、「原告の中には、本件参拝とヘイトスピーチが関連するかのように供述するが、それを認めるに足りる証拠はない」とも。
さらにまた、「被告安倍は、本件参拝後、今の日本の平和と繁栄が、現在の日本人のみで成り立つものではなく、戦場に倒れた多くの方々の尊い犠牲の上にあることに思いを致し、二度と戦争を起こしてはならないと説明していることに照らすと、本件参拝が合祀者の死を、国のために喜んで死んだ、と意味づけるものではない」とまで述べている。
A期待権の侵害について
小泉訴訟で原告であった者が、その後に就任した内閣総理大臣は靖国参拝は行わないだろうと期待することは法的保護に値するとの原告の主張に対し、判決は、「その後の社会・経済情勢の変動や国民の権利意識の変化によって裁判所の判断が変わることはあり得る」とまでのべて、完全な開き直りを見せている。
B平和的生存権の侵害について
平和的生存権の具体的な内容は曖昧であり、憲法第三章に規定する基本的人権として保障される権利自由とは別に平和的生存権として保障すべき権利・自由が現時点で具体的権利性を帯びるものとなっているかは疑問である。従って、原告らの主張には理由がない。
Cその他
代理人として関わった弁護士が指摘した点は、?安倍の発言を根拠にしていることに腹が立つ?政教分離にふれていない?今までの靖国参拝違憲判決を覆し、合憲とした安倍迎合判決だ?沖縄のことに全くふれていない。加害意識が著しく欠如している?あまりにも軽い判決だ。
最後に、加島弁護士から、「ひどい判決だから、ファイトがわく。控訴審に向けがんばる」との決意表明があった。(T・T)


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