スペイン
シウダダノス―偽りの変革
ポデモスに右から対抗する勢力をめざす
ホセ・マリア・アンテンタス
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スペインのポデモスについては、スペイン政治の今後を左右する台風の目として本紙で継続的に取り上げているが、スペインではシウダダノスというもう一つの新勢力がポデモスに対する右からの挑戦として名乗りを上げている。以下ではそれがどのような勢力であるか、それに支配階級がどのような役割を期待しているか、が分析されている。(「かけはし」編集部)
「われわれは私的主導性をもっと指向する一種の右翼のポデモスを必要としている」。スペインで四番目の大きさをもつ金融グループ、バンコ・セバデル会長のホセ・オリウは、EU議会選におけるポデモスのまばゆいばかりの侵入から一ヵ月後の昨年六月二五日にこう述べた。それはなされ、はたきをかけられ、まさに間に合ってここにある。破局を避け、二党体制を強化するために、あるいはその崩壊のあかつきにはすべてが今のままとどまる(多かれ少なかれ)ことを確実にするために、だ。
シウダダノス(市民党)は、支配と政治的代表性の伝統的器具がもはや使い物にならなくなる際に必要になるつなぎだ。それは、PP(国民党)とPSOE(社会労働党)の低落がポデモスによって専ら満たされる可能性がある、いわば政治的真空を作り出さないようにする保証だ。アルベール・リベラ(シウダダノス党首:訳者)の党の機能は、二党体制に対する思いもよらない最後の支えという可能性を高めると共に、その逆転不可能な崩壊が起きた場合に、PP・PSOE交替システムの終わりが政治的断絶を伴わないよう確実にし、ポスト二党体制へのすべてが無傷で残る規則正しい移行を可能にすることだ。リベラが約束しているように見えるものは、ある種新たな「模範的」移行、最初の移行(フランコ独裁以後の:訳者)とその時の勇猛かつ合意の政治家を思い起こさせる、今やまさに崩壊しつつある移行であり、「中道」からの、あるいは右からの、危機のトンネルからの出口だ。
具体性も中味もない変革
リベラが約束した穏やかな変革は、現実には存在しない変革、中味のない変革だ。それは、その具体的実体が満たされることのない約束というブラックホールの中で蒸発する変革であり、すべてを同じに残す、リスクのない変革という幻想、頂点にいる者たちを困らせず彼らの憤りを招かずに到来する、多数のための前向きの未来という嘘、そうしたものを餌とする変革だ。
それはその意図の軽さの深みしかない、表面的で皮だけの再建を体現している。それは、中身が空の希望、刷新という約束と節度の古典的な組み合わせである定式を売っている。それは、変革と再建の諸提案だが、しかし現実には、彼ら自身とシステムに第二の機会を提供するための、彼らの熱望にもっとも好都合な経済的かつ社会的シナリオに向けた中道主義的の有権者の個人主義的希望的観測の他には、今とは異なるすべてに対して余地を残さない基準の枠内でのそれだ。
その前進は、何十年という新自由主義と消費主義の前進、あらゆる諸相における左翼の政治・文化的解体、さらに荒廃と社会的解体、こうしたものを経た後の非政治化という背景に直面している。
シウダダノスは経済政策でのいかなる変化からも切り離された、政治的、経済的、社会的危機との結びつきを切断した、民主的な再建を約束する。それは、政党システムの信用失墜を、経済的かつ社会的モデルとは独立させる。そこに一体化されているものは、型にはまった新自由主義政策(新自由主義図式の枠内では非現実的な個々の社会的約束をちりばめた)を付随させた単なるエリートの置き換えに切り縮められた民主的再建という中空の約束、そしてカタルーニャに起源を置く一政党という立場からのスペイン統一に対する死力を尽くした防衛だ。そしてそれらすべては、テレビ写りのいい斬新さと現代性で包まれている。強硬なスペイン中央集権主義と経済的正統性というコショウを振りかけられた再建主義は、Ibex35が受け取ることのできるものの中では最良のニュースだ。ましてポデモスという悪夢が始まって以後では最良だ。
支持層は元国民党(PP)
リベラはスペイン政治の中ではいわば成り上がりものだが、政治全般としてはそうではない。彼の党はその旅を二〇〇六年のカタルーニャで始め、得票率三%、議員三人をもって州議会に乱入し、内部の意見の相違と求心力の欠如を特徴とした初期二、三年の困難を克服した後二〇一〇年に再選を果たし、二〇一二年には得票率七・五八%をもって九人の議員にまでその勢力を増大させた。
最初の時期にはそれは、伝統的諸政党に反対する「再建主義」的レトリック並びに斬新なスタイルと組になった、カタルーニャ民族主義に反対する党、として登場した。それがこの党を際立たせた主な特徴だった。それは、多くがPSOEとPSC(カタルーニャ社会党、カタルーニャにおけるPSOEの連携政党)に近い、一握りの反民族主義カタルーニャ知識人から後援を受け、可能な限り左右分極のラベルを貼られることを避けつつ、最初はかなりの程度反民族主義の社会党支持層の中で成長した。とは言ってもそれは、この新党をカタルーニャ主義と分離主義の台頭する波に対する破砕ハンマーと見た、より保守的なメディアから後押しを受けた。
しかしカタルーニャにおけるこの党の最新の成長は、諸々の緊縮と腐敗に幻滅した元PP支持層に負っている。そして、彼らがスペイン政治への飛躍に向けその選挙での拡張に基礎をすえるべく計画している対象は、まさにPPの「中道的」支持層だ。シウダダノスがPPとUPyD(連合・進歩・民主主義、設立当初は中道左派的色彩を見せたが現在は中道右派勢力と見られている:訳者)との関係で立つ可能性のある位置は、ポデモスがPSOEと統一左翼(スペイン共産党を基軸とした左翼選挙連合:訳者)との関係で占めてきた位置だ。
緊縮・保守的政策を擁護
その外見上の中道左派起源とあらゆるイデオロギー的ラベルから逃れようとする試みにもかかわらず、それはカタルーニャ議会で、カタルーニャ民族主義に対し腹に応えるような反対を示す場合を除きけたたましく騒ぐことを避け、あらゆる聴衆に合う「中道派」イメージを磨いてきたとはいえ、一つの保守派の姿を示すことになった。議会でのその投票記録は、言われてきた再建構想の実体的な姿を示している。
すなわちこの党は二〇一四年、銀行預金への新規課税と相続税増税に反対投票し、汚染ガス排出に基準を新設する提案に棄権、加えてスペイン政府のウルトラ新自由主義的提案に制限をかける業務時間に関する法案とガリャルドン法相の妊娠中絶に関する反動的な法令の撤回を求める動議にも棄権した(この法案は幅広い反対を受け、昨年九月二八日に正式に撤回され、先の法相は辞任に追い込まれた:訳者)。もちろん忘れてはならないものとして、非正規な移住者に対する欧州健康保険カードの取り上げを支持する二〇一三年四月の恥ずべき提案もある。これはしかし、穏健さと均衡というイメージを磨くことを常に心がけているリベラが自分で提案したものではなかった。
危機から抜け出すためのその最新の経済処方箋もまた、ロンドンスクール・オブ・エコノミクス(LSE)出身の新自由主義エコノミストであり、党の新たな中心的顧問であるルイス・ガリカノの助言の下に、個人契約(つまり労働組合を通じた条件交渉を否認:訳者)を中心とした提案を含んで、はっきりした親市場かつ親ビジネスの構想を指し示している。リベラの穏やかな変革の中でわれわれを待ち受けているものに驚くようなものはほとんどない。
右から2党体制を強化
われわれが生きている時期は、党派的同一化と選挙での「流動的」行動(ツィグムント・バウマンの表現を借りれば)を特徴とした、選挙での古い忠誠は解体しているが新たなものはまだ固められていない、そうした政治的脆弱性が高まっている時期だ。現在の二党体制がいわば四党体制へと動くことになるのか否か、あるいは、PP、PSOE、ポデモス、シウダダノスが新たな配分の中でもつことになる相対的重み、それらをわれわれは分かっていない。確かなこととしては、統治の込み入った形態が諸々生まれるだろう。そしてそこではあらゆる政党が、協定と連携からなる危ういもつれにとらわれることになるかもしれない。
そしてこの理由からシウダダノスは中期的に、二つのものの間で増大する緊張を経験するだろう。その二つとは、第一にPPとPSOEとの短期的なあらゆる合意と逆の方向に押しやると思われる(その指導者たちが非常に短期的な視野に落ち込むことがないとすれば、また従属的な制度的役割に満足することがないとすれば)党の大義、そしてもう一つは、五月二四日の地方選と来る総選挙の後の政権配列を助けることに党を導く可能性のある国家の大義(同時に「トロイカの大義」)だ。
二党体制の危機には疑問の余地がない。そして政治情勢はめったにはないほどに白紙のままであり、断絶の本物の可能性を諸々生み出している。しかし断絶の具体化は確実とはほど遠い。
かわすべきリスクは四党システムだ。それは、支配と政治的統制の形態を複雑化しつつも、憲法に関わる推力に道を開く可能性のある現行政治システムの必要とされる統制不能な破裂を必然的に伴うわけではなく、下からの民衆的自己組織化の弱さを前提とした時、代わりに結果として上からの自己改革へと導き得る長期的―制度的な苦悩に変化する。
▼筆者はビエント・スル誌編集委員であり、バルセロナ自治大学の社会学教授。(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年四月号) |